結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年04月06日(水曜日)

「東北関東大津波大震災」結城義晴・渾身の現地レポート・「序章 郡山編」

午前5時38分、福島第一原発、
流出していた高濃度汚染水が止まった。

一歩、進んだか。
期待させるニュース。
現場の努力に敬意を表したい。

原発の現場でも、
使命感に燃えて仕事してくれているに違いない。

いま、その使命感こそ、
私たち自身を支えるものだ。

立教大学総長の吉岡知哉さんから、
「新しい年度の初めにあたって」というタイトルで、
立教大学教職員に向けたメッセージが届いた。

「毎年4月、大学は新しい学生たちと新任の教職員を迎え、
新たな年度のスタートを祝います。
4分の1の学生が入れ替わるこの季節は、
大学という組織にとって、
毎年繰り返される再生の季節だということができます。

しかし、2011年4月は、
いつもとは大きく異なる春になりました。
3月11日の大地震の後、
私たちは卒業式と入学式を中止し、
授業開始をもひと月遅らせなければなりませんでした。
しかも私たちは今もなお、
終わりの見えない災害のただなかを生きています。

このたびの大震災は、未曾有の天災であると同時に、
人間社会と科学技術のあり方を根本から揺るがす出来事になりました。
学問を通じて文明社会の形成に大きな役割を果たしてきた大学は、
この出来事を真摯に受け止めるとともに、高等教育機関として、
困難を生き抜き未来を担う青年たちを育てていかなければなりません。

亡くなられた方々を悼み、
被災者の方々が一日も早く
安心して生活できるようになることを願いながら、
私たちは私たちの使命を強く自覚し、
研究と教育という日々の営みを着実に進めていくことが
何よりも大切だと思います」

「私たちの使命を強く自覚」し、
「日々の営みを着実に進めていく」

大学も小売りサービス業も商売も、
まったく変わらない。

さて昨日の朝、私は横浜を発って、
東北に向かった。
今回の「相棒」は鈴木國朗さん。
㈱アイダスグループ代表取締役社長。

スーパーマーケットのマーチャンダイジングとマーケティング、
そしてプロモーションの指導に関しては、
ナンバー1のコンサルタント。

『食品商業』には、私が編集長になる前から、
四半世紀以上、1号も欠かさず、原稿を書き続けている。
さらに『販売革新』『チェーンストアエイジ』にも連載をもっている。

私の盟友の一人。

その鈴木さんと一緒に、東北の被災企業を巡り、
経営者や働く人々の「使命感」を知る旅。

湾岸道路から東北自動車道へ。
東京スカイツリーの雄姿が、
私たちを送り出してくれた。
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東北自動車道に入って、
私は電話で、
㈱ヨークベニマル社長の大高善興さんと話した。

現在、ヨークベニマルは、
福島県郡山市の本部に加え、
栃木県宇都宮市の御幸ヶ原店内に、
仮設本部を設けている。

原発の問題はいまだ解決していない。
だから万が一を想定して、
2本部制をとっている。

これはリスクマネジメントの基本中の基本。

いわき市のマルトも、
いわき市内の本部に加え、
今回、茨城県内に第2本部を設定した。

大高社長は語る。
「私の仕事は、社員を守ること。
なのに店長たちは、口々に言う。
店を開けさせてください、と」

そのヨークベニマルを見に行く。
宇都宮、黒磯を過ぎて、
郡山に入る。

福島県第一の都市にして、
第一の商都。
県庁所在地の福島市に対する郡山市は、
たとえて言えば、
東京に対する大阪というより、
ローマに対するミラノに近い。

その郡山、まずはイトーヨーカ堂郡山店。
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タクシーで買い物に訪れる顧客がいる。
平日というのに、それくらいお客が入っている。

福島第一原発から60キロ圏に入る街。
福島県の浜通りから避難している人たちも多い。

総合スーパーの生活全般に対する総合性が、
現在の郡山のマーケットに、
ぴったりと合っている。

西友ザ・モール。
20110406022221.jpg
震災後、休業中。

そしてご存知、郡山を本拠とするヨークベニマル。
福島県に66店展開。
郡山市内に16店のドミナントを築いている。
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店頭に、ポスター。
20110406022141.jpg
「がんばろう! 福島」

そして店舗入り口の青果部門のトップには、
地元福島産の野菜コーナー。
「がんばろう ふくしま!
地産地消運動」

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放射能被害で出荷停止となったり、
風評被害に遭ったりと、
農産物や牛乳に被害が出ている。

ヨークベニマルは地元の企業として、
安全・安心を確認したうえで、積極推販している。

店舗は元気だが、
震災被害は鮮魚部門の天井と壁面などに受けた。
そこで応急処置として、
青いシートを張っている。
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ヨークベニマルは郡山から始まった。
そして今、盤石の高占拠率をほこる。

この郡山でのローカルチェーンの考え方を、
福島、会津若松と拡げていって、
福島で絶対的な信用と売上げをつくる。

それを宮城県に43店、
山形県に15店、
茨城県に26店、
栃木県に20店、
すこしずつ広げて、
日本を代表するスーパーマーケットのリージョナルチェーンをつくった。

しかし今回の東北関東大津波大震災は、
このリージョナルチェーンであっても、
全体にわたって影響を受けることを教えた。

とりわけ、福島・宮城・茨城の浜通りの店舗群は、
決定的な打撃を被った。

そのうえ、原発問題は、
時間を経ても打開策が、おぼろだ。

大高善興社長は、言う。
「毎日、ニュースばかり見ていると、
気が滅入ってくる。
そうするとトップマネジメントとして、
消極的になるばかりだし、
冷静な意思決定ができなくなる。

だからニュースは朝晩、1回ずつしか見ない」

トップとして強い意志をもって、
将来を見つめなければならない。

「これが最後の仕事」
それが大高さんの心意気。

さて郡山では、㈱ニラクの本部を訪問した。
パチンコホールのチェーンストアとして、
49店舗を展開し、
売上高2089億3円(平成22年3月期)、
経常利益38億円。

従業員数は1583名。

ニラク本部では、谷口晶貴会長と谷口龍雄副会長が迎えてくれた。
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ニラクは49店中、昨日現在で、
44店の営業にこぎつけた。

1店舗は福島原発20キロ圏にあり、立ち入り禁止区域。
1店舗は同じく20キロから30キロ圏内にあり、
こちらも営業再開の目途は立たない。

だが、店舗を3つに分類して、すぐに対策を練った。
①すぐに営業できる店
②復旧が早い店
③時間がかかる店

その中で46店までは4月第2週までに再開の予定。

谷口さんの話。
「パチンコホールには絶対的なファンのお客様がいらっしゃる。
ファンにとっては、こういった震災で被災されたときなど癒しとなる。
パチンコはオリンピックやワールドカップなどの大イベントの時にも、
根強いお客様があって、客数の落ち込みは少ない。
今回の震災の時にも同じだった」

ニラクでは約700人が社員。
約800人がパートタイマーやアルバイト。
震災などで店舗の閉鎖や休業があると、
そういった人たちは一気に収入が下がる。

そこで震災勃発直後に、
社長名でまず、
「ワークシェアリングのうえで雇用確保する」
メッセージを発信した。

当初は20%マイナスを予想したが、
今のところ10%に至っていない。

一つだけ残念なことは、
1583名の従業員のなかで、
1人、亡くなった点。

公休をとって、陸前高田での葬儀に参列していた人。
こういったケースは意外に多い。

谷口会長は最後に言った。
「踏ん張る覚悟はできている。
ひとつだけ、原発問題が引っ掛かる」

福島の発電力は全国の12%を占める。
その福島の電力のうち県内で使うのは12%。
残りの88%が首都圏に供給されている。

県外への電力供給88パーセントは、
だれが決めたか否かにかかわらず、
福島の使命となっていた。
それを県民が背負った。

大高さんにしても、谷口さんにしても、
郡山の経営者はそれを実感していて、
私たちの想像を超えた複雑な重圧を感じている。
最後に全員で写真。
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前列、私の隣がニラク会長の谷口晶貴さん。
後列真ん中が副会長の谷口龍雄さん。
そしてその左隣は人資部マネジャーの末次秀行さん、
その隣がニラク大学リーダーの遠藤信秀さん。
右端は経営企画室長の大石明徳さん、
私の後ろは、
今回の「相棒」アイダスグループ代表・鈴木國朗さん。
この旅は、
人間と組織の使命感を明らかにするに違いない。

私はそんな予感を抱きながら、
郡山を後に、東北自動車道を北へ。
私たちは、仙台を目指した。 (つづきます)

<結城義晴>

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