結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年04月27日(水曜日)

セブン&アイ鈴木敏文会長の震災と「社会的使命に対する自負」

ずいぶん暖かくなってきた。
6月の陽気などと、
気象庁は伝える。

東北関東大津波大震災で被災した人々にとっては、
寒さに震えることがなくなるのは、
少しはいいことか。

その東北にも桜が咲いた。

「さくらさくらさくらさくら万の死者」
<岩手県大船渡市・桃心地(日経俳壇より)>

日経新聞『春秋』が取り上げた俳句。
選者の黒田杏子さんの寸評は「国民的鎮魂歌」

暖かくなっても、
寒い日が来ても、
桜が咲いても、
桜が散っても、
私たちは、
忘れてはいけない。

いつも、心を一つにしていなければ。

日経新聞『大機小機』。
コラムニストのパピ氏が批判的に指摘する。
「メガバンクは頼りになるのか」

「東日本大震災後の混乱のさなかに、
メガバンクの1行がライフラインの一つをマヒさせた」。
みずほ銀行のこと。

「その結果、経済・社会の血流は滞る。
カネの流れをスムーズにするのが使命である銀行が、
大事なときに決済機能を混乱させた責任は重い」

さらに続ける。
「このところ銀行のサービス低下に、
不満を感じる機会が多い」

例えば「銀行の窓口で公共料金を支払おうとすると、
申込書を書けという。
コンビニでは、
そんな面倒なことを要求しないで受け取ってくれる」

さらに「このところ、おカネの流れは市場を通じたほうが効率的」とも。

「伝統的に経済・社会のインフラとしての役割を果たしてきた金融」の、
「国民の信頼」が失墜している。

「3メガ体制に集約され、
日本の金融システムは安定性を増して、
世界に雄飛するのかと期待していたのに、
むしろ寡占の弊害が気になる」

「寡占の弊害」。
どの世界にもある。

私はだから、
目指すは「大木もあり雑草もある森のようなもの」と、
たとえている。

そしてパピ氏は、最後に言う。

「社会的使命についてかつての自負を失った」

「社会的使命に対する自負」
小売りサービス業にとっても「以って自戒とすべし」である。

さて昨日の日経新聞「企業欄」。
何度も書くが、朝日や読売は「経済欄」で十把一絡げ。
しかし日経はそれを細分化する。
「経済・企業総合・企業・振興中小企業・投資財務・マーケット総合・商品」
この細分化の品揃え力が、日経の「強み」。

メディアでいえば、情報力、取材力がなければできない。
だから、トータルとして日経の経済記事は強い。

その企業欄のインタビュー「大震災と企業 復興への道を聞く」に、
セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さんが登場。
「自粛気分断つ刺激策を  消費税増税は時期尚早」の見出し。

今回の震災対応。
「対策本部を立ち上げたのは地震発生から4分後」

早かった。

「重要なことは商品をきちんと店に供給すること。
メーカーと交渉する際も、
交渉窓口をグループで一元化する取り組みをさらに強化した」

「グループ全体の配分を臨機応変に対応したことで、
他社に比べて円滑に商品供給できた」
セブン&アイのグループ力を強調する。

だから東北・北関東を地盤とするヨークベニマルに、
重点的に配分した。

原発問題の消費動向への影響。

「東日本の需要が旺盛な一方、
被災していない西日本のほうが沈滞している」

セブン-イレブンは39の都道府県に出店している。
だから良くわかる。

「例えばゴルフ場はガラガラだが、
映画館は人であふれている」
不思議な現象にもみえるが、
低価格で短時間のレジャーが、
好まれている。

鈴木さんは力を込める。
「過度な自粛を戒め
消費を盛り上げなくてはいけない」

朝日新聞の『天声人語』が言った「救国の散財」。
「消費を活性化し国内総生産を支えなければ、
被災地への応援とならない」

そのために何をするか、どうするか。
「小売業として矢継ぎ早にイベントを打ち出すことで、
消費者心理を刺激していく」

これでもかとイベントを打ち出す。
ゴールデンウィークの私たちの基本姿勢につながる。

しかしそれは「自分の顧客心理の刺激」を、
意図していなければならない。

「セブン-イレブンでは、
3月26日からおにぎり100円セールを実施」
急きょ、東日本だけで展開。

「あえてこの時期にやったのは、
東日本ではモノが足りないのでは、
という心理に陥っていたからだ。

やれる手は数多くある」

被災地復興に対する企業の役割。

「小売りの立場からは、仮設住宅の入居者に対して、
商品をどう届けるかが非常に重要な問題だ」
この地域では宅配も視野に入ってくる。

小売業や流通業、サービス業は、
社会になくてはならない機能を、
いつも見ていなければいけない。

「対応策としてインターネットと実際の店舗を融合させること」

そうは言っても高齢者が多い。

だから、「誰でも簡単に操作できる端末などを、
仮設住宅に設置することを検討している」

最後にちょっと、ご自慢。
「他社に先行し
ネットスーパーを軌道に乗せたノウハウを生かす」

「店舗の商品構成も変わってくる」
これは重要な指摘。

「近くて便利な店を標榜してきたコンビニでは、
例えば(生活に必要な)ドンブリや鍋、釜を置くことを、
考えなくてはいけない」
コモディティ消費の見直しを意味するし、
業態やフォーマットの品揃えが、
変わってくることを宣言している。

例えば今、セブン-イレブンの品揃えが変われば、
スーパーマーケットも総合スーパーも、
ドラッグストアも、ファストフードも、
品揃えやメニューが変わってくる。
「もともとコンビニはそういう店だった」

この鈴木敏文さんの発言には、
「社会的使命に対する自負」があふれている。

メガバンクからATMの主役の座を奪った。

いまや日本人は、私も含めて、
銀行よりもコンビニのATMを利用する人や頻度が、
圧倒的に多い。

公共代金の支払いなども、
コンビニが金融専業業態を凌いでいる。

自らの「社会的使命」をどうとらえるか。
「自分は何屋か」

それは狭い範囲でもいい。
自分にしかできないこと。
自分が一番強みとすること。

それが社会的使命と直結している企業や店が、強い。
幸せでもある。

<結城義晴>

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.