結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年12月19日(木曜日)

猪瀬直樹辞任の「無私と利他」とスーパーマーケットの六重苦

東京都知事・猪瀬直樹、
67歳。

今日、辞任。

それしかない。
しかし、遅すぎた。

3週間ほど前の11月27日(水曜日)、
私はこのブログで書いた。

タイトルは、
猪瀬直樹の「親切な方」と
サラ・カサノバの「中心は家族客」

徳田毅衆院議員から、
5000万円を受領した問題。

その記者会見のコメント。
「親切な方だと思った」

その後の都議会での質疑でも、
何度も言った。
「親切な人だと思った」

私は書いた。

「こんな白々しい応対などせずに、
正直に謝罪して、
さっさと辞任するのが、
一番いい。

それしかないと、
言っておこう」

やはり、それしかなかった。

3週間、醜態をさらし続けた。
始終、目が泳いでいた。
猪瀬直樹の印象はそれだけだった。

苦境に陥った時に、
まさにその人間の真価が、
問われる。

国民、都民は、この3週間、
猪瀬という人間の
真の評価を見せられた。

しかしなぜ、
自分で気づかないのだろう。
自分で気づけないのだろう。

ここが大事なときだ、と。

その時にこそ、
自己客観化ができなければならない。
そして何よりも
凛としていなければならない。

私にも経験がある。

ここが一番大事なときだ。
ここを乗り切らねばならない。
あるいは身を引くときだ。

そんな時に頼りになるのは、
「利他と無私」の精神。
自分は何者であるかの自覚。

これがなければ、
冷静に状況は見えてこない。
自らの非に気づくこともできない。

3週間前に、
猪瀬直樹に「利他と無私」があれば、
それなりに潔い結末になったに違いない。

東横線の電車のなかの広告。
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2013年の横浜雙葉中学入試問題。

あなたが「かけがえのない」存在として、
大切にされた体験をあげなさい。
そして、その体験があなたの生き方に
どのようにいかされているかを書きなさい。

素晴らしい設問だ。
小学6年生の女子が、
どんな回答を書くのだろう。

読んでみたい気もする。

ピーター・ドラッカーの問い。
「あなたは何によって、
憶えられたいか」

雙葉の設問と、本質は同じ。

猪瀬直樹も、
「何によって憶えられたいか?」
と、自問すべきだったろう。

それは私にも、
あなたにも、
当てはまることだ。

さて今日は朝から、
東京・自由が丘。

雨の花屋が、いい。
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いつも値段と商品価値が、
はっきりと示されている。
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その上、全体に美しい。

クリスマスツリーもいい。
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自由が丘南口商店街のツリーも、
11月23日の夕方に点灯式が行われ、
なかなかいい。
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クリスマスに向かって、
例年よりちょっと明るい気分だ。

猪瀬直樹以外は?

さて今年の最後の月に、
毎日楽しんでいるフィリップ・コトラー。
日経新聞『私の履歴書』。

今日は政府や行政機関に、
マーケティング発想を持たせる話。

「マーケティングの手法を使い、
政府のパフォーマンスを改善することに
強い関心を持つようになった」

私も農林水産省の委員をやっていた時に、
「農水省にこそマーケティングが必要だ」と、
主張したことがある。

前の自民党政権時代、
石破茂さんが農水大臣だったころのことだ。

コトラーは言う。
「政府の職員は
企業並みの十分な教育研修を
受けていないことが多く、
研修さえすればサービスは
改善するだろうと考えていた」

しかし、それは甘い。

「欠けているのは顧客志向だ。
自らが高いサービス水準を目標に掲げ、
顧客満足度を高めようとする意識は薄い」

顧客志向こそ、
ドラッカーも指摘しているように、
マーケティングの本質。

もう一つ行政に欠如が見られるのは、
「イノベーティブに考える能力」

コトラーはイノベーションに関しても、
きちんとチェックを入れる。
「読者の中にはこの言葉が
技術に関するものだと思うかもしれないが、
そんなことはない」

ドラッカーは語っている。
「イノベーションの必要性を
最も強調すべきは、技術変化が
劇的でない事業においてである」

行政の仕事はまさにそれだ。

しかし「日本ではセブン-イレブンが
一部の地域で住民票の写しや
印鑑証明書の発行を手掛けている」

「民間の知恵を借りながら
優れた発想で改善できる行政サービスは多い」

これらの成果として、
2007年に出版されたのが、
『社会が変わるマーケティング』。

最後に、スマイル・マーケティング。
「フランスやシンガポールでは
国民に笑顔を呼びかけた」

微笑みこそ、
また来たいと思ってもらうことに効果絶大。
「おもてなしの国、ニッポンもその一つだ」

さて日経新聞『真相深層』に、
編集委員の中村直文さんが書く。
流通サービスの専門家。

スーパーマーケットの「六重苦」。
円安による原料高、
異業種との競争激化、
建設コストの上昇、
電気代の上昇、
パート社員の不足、
食品市場の縮小。

この「六重苦」。

中部地方のバロー。
独自物流・情報システムを武器に、
低価格競争を仕掛ける。

社長の田代正美さんの、
多分、ジョーク。
「業績が悪い方が、
好調時より説明しやすい」

業績悪化の要因を、
次々に上げた。

しかし既存店売上高は、
2012年10月からマイナス。
2013年上四半期連結決算は、
3年ぶりの最終減益。

「ビジネスモデルを
変えなければならない」。

北海道地盤のアークス。
こちらも2013年上半期は、
営業減益。

アークス社長の横山清さん。
年商200億~300億円超の企業を、
「買わないか」というM&A話の持ち込みが増えた。

月刊『商人舎』10月号特集、
「小売業M&A異変!!」の中でも、
横山さんは私の質問に答えて、
「アークス方程式とセンチペイド経営」
主張し、強調した。

センチペイドとはムカデのこと。

六重苦の中で、
M&Aが進むのか。

日本チェーンストア協会の報告。
既存店売上高は16年連続マイナス。

「それでもバローやアークスは強かった。
その構図も崩れた」と中村さん。

崩れる構図のなかで、
価格問題が浮上する。
「現状の円安・原材料高では
メーカーが打ち出す値上げを
スーパーも受け入れざるを得ない」

「特売のための販促費が削られる」

「低価格のプライベートブランドは、
輸入品への依存が大きく、
円安は収益を圧迫」

「価格戦略の自由度は
失われつつある」

その結果、
「集客力が低下している」

このあたりは実際に起こっている現実。

「既存店の苦戦にもかかわらず、
新店開業が相次ぎ、
需給ギャップは広がるばかりだ」

総合スーパーやスーパーマーケットは、
10年前と比較すると、
売場面積が19%増え、
売上高は14%減った。

さらに2014年4月の消費増税。
「ディスカウント競争が激化する」

だからM&Aの事例が目立つ。
商人舎magazineの
Daily商人舎ニュースを見てほしい。

「日本スーパーマーケット協会によると、
加盟企業全体の10月の既存店売上高はプラス。
しかし、店舗数25店未満の企業では、
マイナスが続く」。

イオンリテール社長の梅本和典さん。
「増税のインパクトは大きく、
コストアップ要因も増えている。
それを吸収するスケールメリットが
さらにものをいう」

電気代は前年比20~30%の負担増。

「イオンはすでに全店の照明を、
発光ダイオード(LED)に切り替え、
前年並みに抑えている」

中村編集委員の結論。
「体力格差が広がる中、
大手を軸にさらなる再編が進むのは
間違いないようだ」

この記事全体を見ていると、
地方スーパーマーケットに、
M&Aを煽りつつ、
それを推奨しているようにも見える。

店舗数25店以下、
年商200億~300億円クラスの企業だ。

もちろんこのクラスの経営者に、
決断が迫られているのは事実だろう。

しかし、合併もM&Aも、
是々非々の問題。

そこに求められるのは、
「利他と無私」の精神と、
自分は何者であるかの自覚。

そう、猪瀬直樹と一緒。

そしてM&Aをするもしないも、
コトラー先生が指摘するように、
マーケティングと顧客志向は、
不可欠である。

〈結城義晴〉

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