東海道新幹線で西へ。
冬の富士山は美しい。
晴(はる)る日や雲を貫く雪の富士
〈高井几董(きとう)〉
几董は江戸中期寛政時代の俳諧師。
和歌山に着いてタクシーに乗ると、
もう暗くなっている。
夕方6時半から、
㈱オークワ幹部の皆さんと会食、懇親。
右から森口宗徳業務推進室長、
武田庸司専務取締役、
小西淳上席執行役員人事総務本部長 、
そして小澤一雄人事部教育課長。
はじめてのことなので、
私、饒舌となった。
チェーンストアのマネジメント、
アメリカのHEBやウェグマンズのこと。
さらにチェーンストアの教育のことなど、
語り続けた。
そしてソシオ・テクニカルシステム論。
企業体を大きく分けると、
ソシオ(組織)システムと、
テクニカル(技術)システムになる。
技術システムに変革がもたらされると、
組織システムに変容が表れる。
そして組織システムが改善されると、
技術システムにも好影響が生まれる。
互いに作用しあって、
会社は良くなっていく。
商人舎最高顧問の故杉山昭次郎先生の持論だ。
だからトップや幹部はいつも、
ソシオとテクニカルの両面から、
会社を引き上げねばならない。
チェーンストアはどちらかといえば、
テクニカルシステムに関心が深い。
そして技術システムを学び、真似ることが多い。
しかしそのとき組織システムの、
Management教育を施すと、
想像を超えた成果が上がる。
1977年、47年前の新人のころ、
杉山先生の流通システム研究所を訪れて、
初対面の時に教えていただいた理論だ。
私の中をずっと貫いている。
そしてときどき思い出す。
日本料理のよし野。
離れでおいしい料理をいただき、
ゆっくりと語り合った。
ありがとうございました。
楽しかった。
さてお隣の国韓国で、
戒厳令が発布された。
驚いた。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領。
韓国の戒厳令には2種類がある。
「警備戒厳」と「非常戒厳」。
今回は後者の非常戒厳令。
1980年の民主化運動以来、44年ぶり。
与党の関係者も韓国軍の参謀たちも、
同盟国であるアメリカのホワイトハウスも、
もちろん日本政府も知らなかった。
今年4月に国会議員選挙があった。
与党・国民の力は大敗。
尹大統領の政権運営は機能停止の状態だ。
予算案も可決できていない。
五木寛之の小説に『戒厳令の夜』がある。
1976年発表の大作。
南米チリを舞台にした、
壮大なドラマだったが、
むさぼり読んだ記憶がある。
その戒厳令が今、
隣国で発せられている。
世界中の既存与党的な存在が、
脅かされている。
それは政治の世界だけではない。
経済界も経営の世界も。
ピーター・ドラッカーの言う、
「エントロピーの法則」
「物事は放っておくと、
乱雑・無秩序・複雑な方向に向かい、
自発的に元に戻ることはない」
この不可逆的であることが怖い。
だからドラッカーは強調する。
「先んじて自ら、陳腐化せよ!」
そう、積極的に意図的に、
組織の新陳代謝を促す。
それがエントロピーの法則を逃れる唯一の方法だ。
ソシオテクニカルシステム論でも、
どちらかに風穴を開けねばならない。
けれどそれは決して、
「戒厳令」の宣布ではない。
〈結城義晴〉