結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年12月16日(火曜日)

ウォルマート「NYSEからNASDAQへ」の証券市場転換の意味

商人舎流通SuperNews。

ウォルマートnews|
株式上場先をニューヨーク証券取引所からNasdaqへ変更

ウォルマートのダグ・マクミロンCEO、
多分、最後の仕事だ。

12月9日(火)、株式上場先を変更した。
ニューヨーク証券取引所からナスダックへ。
前者はNYSE、後者はNASDAQ。
20251216_walmart-nasdaq

アメリカの2大証券市場。

2025年5月末時点で、
両市場の時価総額は、
約62兆ドル。

1ドル150円で換算すると、
9300兆円。

凄い市場だ。

ウォルマートは1972年10月1日に、
ニューヨーク証券取引所に初上場した。

1株は16ドル50セントをつけた。

1945年の創業は、
ベンフランクリンの加盟店だった。
1962年にディスカウントストアを開発した。
「ウォルマート」の店名だった。

それから10年後に、
ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。

ナスダックは1971年に設立された。
世界で初めて完全電子取引を採用した市場だった。

しかしまだまだ圧倒的にニューヨークが、
社会的権威と資金調達力を持っていた。
NYSEは1792年の設立だ。

だからサム・ウォルトンは迷わず、
NYSEに上場した。
post-2-1140x570

それから8年後にサムは、
店舗フォーマットを改革した。
「1980年代対策店舗」と呼んだ。

つまり1972年から8年間は、
株式市場から調達した資金をもとに、
ハイ&ローで成長した時期だった。

この成長をばねに1980年から、
エブリデーロープライス戦略に転換する。

ウォルマートは投資家たちの需要に応えるため、
何度も株式分割を実施した。

実際に2024年に12回も、
株式分割をしている。

イトーヨーカ堂時代の伊藤雅俊さんは、
同じように株式分割を繰り返して、
株主の期待に応えた。

株主の多くが従業員だったからでもある。
これもサムと同じだ。

サムは40年以上連続で、
株主への年間配当を増額した。

マクミロンCEOは、
その伝統のニューヨーク市場から、
ナスダックへの変更を決定して、
花道を飾る。

そして語る。
「人間主導でテクノロジーを活用する
オムニチャネル小売業者として、
ウォルマートがイノベーションと成長に
深くコミットしていることを反映しています」

上場変更の理由は一言で示せば、
オムニチャネルリテーラーとなったからだ。

「ナスダックのテクノロジーへの注力と、
デジタル変革を推進する企業への支援は、
ウォルマートの戦略ビジョンと
完全に一致しています」

「お客さま、会員さま、アソシエートたち、
そして株主の皆さまにとって、
スムーズで円滑な摩擦のない
未来を築き続ける上で、
ナスダックへの上場は
新たな章の始まりです」

「新たなチャプターを準備して、
私は去ります」

マクミロン(右)の誇らしげな顔が思い浮かぶ。
Walmart_John-Furner_DougMcMillon (2)

ニューヨーク証券取引所には、
グローバル大企業が上場している。
ジョンソン&ジョンソンやコカ・コーラ、
日本のトヨタなどもニューヨーク市場組だ。

一方、ナスダック(NASDAQ)には、
GAFAを始め、名だたるIT企業が並ぶ。

12月時点の時価総額をランクすると、
1 エヌビディアNASDAQ
2 アップルNASDAQ
3 マイクロソフトNASDAQ
4 アマゾン・ドット・コムNASDAQ
5 アルファベットGoogl NASDAQ
6 アルファベットGoog NASDAQ
7 ブロードコムNASDAQ
8 テスラNASDAQ
9 メタ・プラットフォームズNASDAQ
10 イーライリリーNYSE

10位がやっとニューヨーク市場の薬品会社だ。

そして11位がウォルマート(NYSE⇒NASDAQ)。

以下、
12JPモルガン・チェースNYSE
13バークシャーハサウェイNYSE
14ビザNYSE
15オラクルNYSE
16ジョンソン・エンド・ジョンソンNYSE
17マスターカード NYSE
18エクソン・モービルNYSE
19ネットフリックスNASDAQ
20パランティア・テクノロジーズNASDAQ

24コストコ・ホールセールNASDAQ
25ホーム・デポNYSE
26プロクター・アンド・ギャンブルNYSE
30ユナイテッド・ヘルスNYSE

かつてのアメリカでは、
大企業の「オールドエコノミー」がNYSE、
新興企業の「ニューエコノミー」がNASDAQだった。

棲み分けがあった。

しかし、現在は、
いやウォルマートの変更以降は、
その垣根は全くなくなったと言っていい。

もちろんNASDAQは、
電子取引システムを活用する。
取引スピードが速く、コストが低い。

だから多くの投資家にとって魅力がある。

NASDAQは革新性がある。
常に新しいテクノロジーやビジネスモデルの企業を、
市場に招いている。

これがアメリカ経済のダイナミズムをつくっている。

NYSEの通常取引時間は、
午前9時30分から午後4時まで。
NASDAQはこの時間帯以外に、
プレマーケット(通常取引前)と、
アフターマーケット(通常取引後)もある。

この延長取引の時間帯に、
迅速な投資活動が進む。

ウォルマートのNASDAQへの移行は、
当然の流れであると考えられるし、
新しい企業への転換であるとも判断できる。

ダグ・マクミロンは、
サム・ウォルトンのつけた社名から、
「ストアーズ」を削除し、
サム・ウォルトンが果たした上場市場も、
NASDAQに変えた。

ウォルマートの新しい「章」が始まる。

〈結城義晴〉


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年12月
« 11月  
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.