結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年02月25日(金曜日)

「大相撲興業論」とイトーヨーカ堂「キャッシュバックセール中止」

ニュージーランド地震、
次々に報道される。

しかし何よりも、
可能な限りの人命救助を優先することだ。
世界中の力と技術を総動員しても、
人命救助に全力を挙げたい。

国会は、ねじれているし、
審議は進まない。

その打開策は、
政策丸のみ?
解散総選挙?

それとも大連立?

なんとも苦しい状況。

民主党にとってだけではない。
自民党にとっても、
他の野党にとっても、
そして国民にとっても。

私はずっと、
長期にわたる強い政府が、
今の日本には必要だと思っている。

やることは決まっている。
極めて難しいけれど。

難しいということは、
ねじれているから、
様々な意見の対立があるから。

しかしやるべきことははっきりしている。

まず国家財政の立て直しだ。

そのために長期的に強いリーダーシップをもった政府が誕生して、
粘り強く、丁寧に、それでいて堂々と、淡々と、
政策を実行していく。

これは企業経営にも、当てはまる。

組織が硬直化してくるとき、
強い力をもった者たちが、
粘り強く、丁寧に、堂々と、淡々と、
組織をリードしていく必要がある。

力をもつ者たちが、
自分の意見でねじ伏せるのではなく、
説得し、納得させ、
総意をつくっていく。

いま、そんな局面が、
政治にも経営にも現れている。

さて、今朝の朝日新聞「オピニオン」欄。
私の信頼する二人の人物が、
「大相撲のない日本」と題して語っている。

劇作家の山崎正和さんと、
東大教授の松原隆一郎さん。

論点は相撲はパフォーマンスかスポーツか。
山崎さんは「両者は対立する概念ではなく、
なだらかな関係性をもっている」
という。

まさに大相撲がそれだ。

「賭博と結びついていない限りは、
面白ければそれでいいんです」

「あまり露骨に八百長をやれば、
真剣勝負を楽しんでいた人は去っていき、
それでも好きだという人は残る」

「市場原理に委ねればいい」
この点、私も大賛成。

「お客を楽しませるのがプロスポーツですから、
相撲協会が真剣勝負が魅力だというのなら、
そうすればいい。
一方で、八百長があったとしても、
お客が楽しんでいるなら、
またそれでいいのです」
これにも賛成。

「相撲は今も生きている興業営業なのです」

山崎さんの「市場原理」で相撲をみるところ、
私は大好きだ。

一方、松原隆一郎さん。
「スポーツの要素を取り込みながら
興業でも成功しているものとしては、
大相撲はかなり究極の形なのです」

松原さんもスポーツと興業という視点。
「純粋なスポーツとしての格闘技を
興業として成り立たせるのは難しいことです。
見ていて、面白い試合になるとは限らないからです」
これも本当に当を射た発言。

「ボクシングで勝てる選手は、
パンチを受けない高度な技術を身につけます。
しかし、見る側には防御よりも攻撃のほうが面白い」

結果、
「興業として広く愛されるためには、
スポーツを貫くことは難しい」

「大相撲の魅力は真剣勝負ということだけではない複合的なもので、
変ないじり方をすると壊れてしまいかねない」

「つまらない相撲はつまらないと、
バッサリ認定するくらいのことをすればいい」

「八百長よりも、
見ていてつまらない相撲をなくす方が
建設的だと思います」

ごもっとも。

山崎正和さん、松原隆一郎さん。
ありがとう。

小売業、サービス業の店も、
見ていてつまらないものは、
バッサリと認定されてしまう。

そのためにこちらには、
「市場原理」が働いている。

商売も大相撲も、
同じ原理で動いている。

なぜか。
商売も大相撲も、
興業の一種だから。

大相撲だけが、
「権威化、神格化」したことが、
禍根を残した。
これも山崎さんの究極の指摘。

さて、イトーヨーカ堂の2011期2月決算が、
日経新聞によっていち早く報じられた。

取材に応じたのは、
セブン&アイ・ホールディングス社長の村田紀敏さん。
「イトーヨーカ堂は営業黒字を確保できそう」
同社は、2010年3月から11月までの3四半期で、
74億円の営業赤字を計上していた。

それを第4四半期で取り戻し、
なおかつ黒字化した。

その理由。
まず「キャッシュバックセールの取りやめ」。
3~11月に数十億円を投じていたが、
それを止めることで、損益が改善した。
つまりキャッシュバックしなくても、
売上げはさほど変わらなかったということ。

これは重大な問題を投げかけている。

「書き入れ時の12月にキャッシュバックを止めるのは
恐怖感もあったが、吉と出た」

この記事に、そのほかには、
これといった理由が書かれているわけではない。

だとすると、これまでの不振の元凶は、
「キャッシュバックっセール」
だったということか。

まさかイトーヨーカ堂にかぎって、
数字をつくることはないだろうが、
12月1月の商戦で、
現場が相当、頑張ったのだと思う。

私はこのブログで、「膿を出し切れ」と言ったが、
その「膿」とは、
『キャッシュバックセールに象徴されるもの』
だったのかもしれない。

大相撲も商売も、
その意味で、
目先、小手先の「しのぎ」ではなく、
長い目で見て、
顧客にどう映るかに、
襟を正さねばならない。

私は、今、成田空港に向かっている。
今日、17時のユナイテッド航空838便でサンフランシスコへ。

今回は今までよりも、さらに充実の旅。
どんどん中身が尖鋭化されているように思う。
小売業の「ポジショニングの正体」を明らかにする。

乞う! ご期待。

<結城義晴>


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