結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年09月21日(水曜日)

「流通BMS」の「インフラ共有/店頭競争」と瀬島龍三の「自らの強み」

台風15号「ロウキー」、ただ今、
横浜商人舎オフィスの上空付近に、
接近中(?!)。

そんな感じで、
吹き荒れています。

本当に真上を通過すると、
台風の目の中に入るのでしょうが。

みなさん、用心しましょう。
台風用品、防災用品、
台風通過地域は、
品切れなく。

さて、今日、
㈱イースト・プレス書籍1部の編集担当、中西庸さんから連絡。
『店ドラ』
(店長のためのやさしい《ドラッカー講座》)が、
めでたく5刷決定!!

ありがたいことです。

ずっとコンスタントに売れていますが、
9月に入って、またまた、
書店で大きく動き始めたらしい。

ありがたいことです。

各紙朝刊の一面看板コラムのうち、
朝日新聞『天声人語』と読売新聞『編集手帳』が取り上げた。
愛知県日進(にっしん)市の花火大会のこと。
「福島製の花火」が「放射能をまき散らす」などの苦情がでて、
それだけで打ち上げを中止された。

全くの無知蒙昧のほんのわずかな市民の苦情と、
主催者の腰砕けによる風評被害。

わが店、わが会社のイベントに、
こんな苦情が寄せられたらどうするか。

常にそれを考えて行動したい。

私なら、正式に事情を調べたうえで、
きっぱりと内容を説明して、
「復興支援花火」として、
一番目立つように打ち上げる。

しかしきっぱりと苦情を退ける「知識と情報と見識」は、
あらかじめ備えておかねばならない。

静岡県知事の川勝平太さんの言葉。
「無知は恐怖の源です」

「災害についての科学的知識と防災の技術的ノウハウを高めれば、
いざという時も風評に惑わされず、冷静に対応できます」

風評被害には、
知識と情報で対抗する。

これ以外にない。

しかし日進市、有名になった。

さて日経新聞の記事。
「スーパー業界2団体、
取引システム統一促す」

この2団体とは、
日本スーパーマーケット協会(川野幸夫会長)と、
オール日本スーパーマーケット協会(荒井伸也会長)。

統一を進めるのは「流通BMS」と呼ばれる取引システム。
これは本当に有意義なこと。

「インフラは共有、店頭で競争」
それが業界の在り方。

これならば、「近江商人の三方良し」となる。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」

BMSとはBusiness Message Standardsの略。
要は受発注のメッセージを業界標準にして、
効率を上げようという試み。

小売業の商品発注は今や、
オンライン方式が一般的。
しかし一部には、
電話回線やファックスや伝票まで残っている。

それを電子データをやりとりする新しい取引システムにする。
「新システムでは伝票類の発行が不要で、
小売業やメーカー・卸の負担が軽くなる」

さらに「発注データの送受信もインターネットで短縮でき、
各企業は天候や需要に合わせて機敏な発注が可能になる」

このブログで頻繁に登場するプラネットは、
日用品雑貨や化粧品で
このEDI(Electronic Data Interchange)のシステムを完成させ、
なくてはならない機能を果たしている。

それを食品スーパーマーケットで展開しようという試みだ。

今回の「最大のメリットは費用を抑えた点」
企業単独でシステム導入を図ると、
初期費用は最低数百万円かかる。

今回、2団体が導入するシステムは、
初期費用をほぼ無料とした。

「2団体の加盟社は155社にのぼっており、
規模のメリットを生かし普及を目指す」

まずは、日本スーパーマーケット協会副会長企業のエコスが、
採用する方向で検討を始めたという。

一歩、前進。
2協会とエコスに拍手。

さてさて、今月の日経新聞『私の履歴書』はためになる。
伊藤忠商事元会長・室伏稔さん。

伊藤忠中興の祖・瀬島龍三さんに学んだこと。
日常業務で指導されたのは、3点。
(1)報告書は必ず紙1枚にまとめる
(2)結論を先に示す
(3)要点は3点にまとめる

「どんな複雑なことでも要点は3つにまとめられる」
これが瀬島さんの口癖。

これは経営者にも実務者にも、
編集者にも、学生にも当てはまる。

瀬島さんの交渉術。
「用意周到、準備万端、先手必勝」

「とにかく徹底的に準備をしてから事を始め、
とにかく相手に先んじること」

これが「必勝の道」という教え。

身近にこういった素晴らしい先輩や上司がいる人は幸せだ。
万が一、そういった人がいなくても、
見渡せば、社外にたくさんいる。

私も、典型的な後者だった。

室伏さん自身も社長に就任した時に、
素晴らしい所信表明をした。
それが今朝のくだり。

室伏さんが社長になったのは、1990年。
バブルの崩壊と湾岸危機がやって来た年。

社長としての所信表明は、
「1つの目標、2つの信念、3つの基本姿勢」。
まず目標は、「国際総合企業の実現」。

重要なのは二つの信念。
国際派らしくどちらも英語。

第一は、
「Why not? Nothing is impossible」
「なせばなる」「不可能なことは何もない」
室伏さんは言う。
「企業同士の競争は究極的には人と人との競争である。
どこが最終的に勝つかは、
会社の規模や資金力でも知名度でも、
グループ企業の支援でもない、
社員個人の『気迫』にかかっている」

第2の信念は、「More Like CI」。
「CI(シーアイ)」はかつての伊藤忠の略号。
意味は、「より伊藤忠らしく」

これはピーター・ドラッカー教授言うところの「自らの強み」である。

「企業は建物でも、決算書でもない。人である。
人と人がつくる社風こそ企業を支える無二の資産であり、
それが企業を発展させたり、衰退させたりする」

室伏さんの信念がわかる。

企業は人であり、
社員個人の気迫。

私自身は、室伏さんに、
完全に同感するものではないが、
否定するものでもない。

むしろ瀬島龍三のクールさに魅かれる。

ただしバブル崩壊後の混沌を、
室伏さんの「人間の気迫」が、
乗り切らせたことも確かだろう。

その意味で、バブル崩壊後といっても、
いい時代だったのかもしれない。

いま、私たちの前には、
それ以上の難題が山積している。

組織全体でしか、
チームワークでしか、
乗り切ることができない難題が。

<結城義晴>


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