結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年07月16日(土曜日)

エンゲル係数「一定化指標」と万代知識商人大学第4講座

朝日新聞一面の『天声人語』

「エンゲル係数」を取り上げてくれた。

「生活費に占める食費の割合のこと」

1857年、エルンスト・エンゲルが、
その論文で発表した。
ドイツの社会統計学者。

エンゲル係数の数値が高いほど、
生活水準は低い。

「エンゲルの法則」

しかし「この数年で日本のエンゲル係数は
かなり高くなって25%を超えた」

「最も低かったのは11年前。
23%弱でした」
大藪千穂・岐阜大教授。
家計経済学を専門とする。

理由の第1は、
「円安や消費増税での食品の値上がり」
しかも収入は増えていない。
だからエンゲル係数の比率が上がった。

第2は、「食の営みの変化」
ズバリ「中食」の急増が、
エンゲル係数を押し上げた。

大藪教授の観察。
「いまや買い物カゴの中身は、
女性客がお総菜、
若い男性が即席麺、
高齢男性はお弁当」

つまり調理済み食品を買って、
家で食べる人が増えた。

記事には出てこないが、
「料理済み食品」のほうが、
購入して自宅で調理する「素材」より、
高額になる。

だからエンゲル係数を押し上げる。

日本のエンゲル係数の推移。
明治時代60~70%、
昭和初期は50%前後に下がった。
敗戦による窮乏で、
再び60%前後。

そして高度成長を経て、
20%台へ下がった。

ところが現在の日本。
「低い食料自給率、
円安による輸入食材の高騰、
年金頼みで収入の少ない高齢者世帯――」

エンゲル係数を引き上げる要因がそろう。

「実質賃金が上がらない限り、
この傾向は続くだろう」

バブル経済の時代には、
エンゲル係数自体が下がっていたし、
関心も低かった。

近年は経済格差、所得格差のせいで、
「再び脚光を浴びつつある」

食品小売業は必然的に、
「中食」や「惣菜」に力を入れ、
マーチャンダイジングの軸を、
加工度を上げる方向にシフトする。

160年前は困窮の尺度。
現在は便利性の尺度。
そしてスーパーマーケットやコンビニの、
収益性の尺度。

総合スーパーが苦しむはずだ。
そして総合スーパーも惣菜に力を入れる。

もうこうなったら、
エンゲルの法則は、
変更されなければならないだろう。

人々の幸せのためならば、
総収入は高まりつつ、
便利でおいしい惣菜の消費も増える。

経営数字には三つの政策がなければならない。
故渥美俊一先生のご慧眼。
上げる数値。
下げる数値。
一定に保つ数値。

バブル経済のころまでは、
エンゲル係数は下げる指標だった。
それが豊かさを意味した。

しかし今、エンゲル係数は、
一定に保つべき指標となった。

25%くらいだろうか。
30%だろうか。

惣菜や半加工品はますます、
開発行為が高度化する。

一方で、人々の賃金が上がる。
これはアベノミクスの最大課題として、
政府にも頑張ってもらわねば困る。

そしてエンゲル係数は、
一定に保たれる数値となる。

新しい時代である。

さて昨日は大阪に宿泊して、
今日は朝から東大阪市の㈱万代へ。

万代知識商人大学7月度の講義。
奥に見えるのが万代本社。DSCN7557-1

手前が2階建ての会議棟。
DSCN7555-1

2階のB会議室に総勢30名が集う。
DSCN7519-1

後ろには加藤徹会長をはじめ、
経営幹部が臨席。
DSCN7515-1

第4回講座のテーマは、
フィナンシャルマネジメント。
午前の3講座は、不破栄副社長が担当。
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コーポレーション部門を管掌する不破さんは、
三井住友銀行出身の、
財務のプロフェショナルだ。

BSとPLの経営を、
ホワイトボードに記しながら、
実にわかりやすく解説してくれた。
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会社経営の指標を示し、
万代の経営の健全さを語る。
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その語り口は柔らかく、的確。
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私、不破さんの説明のし方に、
心底、感心した。

午後は古谷潔取締役。
店舗運営担当。
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「店長のための店舗損益」をテーマに、
実務的な計数管理を指導。
DSCN7548-1

後部席には、今度は、
阿部秀行社長、下岡太市副社長が、
加わって聴講。
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最後は結城義晴の講義。
私のテキストのタイトルは、
「あなたは数字が好きですか?」
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数値データの活用の考え方、
実地棚卸しの重要性などを1時間。
ここで、
上げる数値、下げる数値、
一定に保つ数値を教えた。
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その後、知識商人として、
必ず身につけておかねばならない経営数値、
基準となる必須の指標などを解説。

質疑を繰り返して教授。

最後は、日本の主要上場小売企業、
アメリカの上場小売企業の財務数値を使って解説。
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合計3時間の講義となった。

その後、レポートの書き方を改めて伝授し、
質問への回答などをしていると、
あっという間に17時半。
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朝9時から7時間以上に及ぶ講義。
丸一日、数値と格闘した第一期生たち。
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その受講生たちには、
人事部マネジャーの東尾里江さんから
新たな課題レポートのテーマが投げられた。
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もちろん、課題レポートは、
フィナンシャルについて。
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受講生たちは、最後に、
今日の感想レポートを仕上げて、
講義を終了。
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阿部さんと下岡さんが、
見送りに来てくれた。
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阿部さんも下岡さんも
月刊商人舎7月号「万代スタディ」に、
満足してくれたようで、
最後は三人でグー。

エンゲル係数の指標は、
その意味を変える。

時代の変化に、
知識商人大学一期生たちが、
的確に答えてくれるだろう。

それを祈念したいものだ。

〈結城義晴〉


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