官製版「コメ流通革命」と「お上主導のコメ流通」の闘い方・あり方

1日中、横浜商人舎オフィス。
続々、来客。
千客万来、有難し。
午前中に来てくれたには、
光村印刷㈱印刷.・情報営業本部の皆さん。
右から大久保友香さんと、
佐藤俊彦さん、谷口一也さん。
この間、協力して単行本に取り組んでいる。
その終盤の打ち合わせ。
いろいろなことを互いに確認し、
よく話し合って、あるべきことを決めた。
感謝したい。
今年3月11日付で、
イオンリテール㈱人材育成部長から、
イオン本体の人材育成部長へ。
その吉田さんとは久しぶり。
この間のことで話が弾んだ。
かつての単行本の件で、
問い合わせとご相談。
人財育成部長は、
みんなが読む本のことまで考えるし、
イオンのDNAの継承にかかわる。
それがまた、イオンの社風である。
もうすでに一冊、
このサインの本を持っているそうだ。
それも有難い。
案件については、
すぐに調査をすることにした。
さて日経新聞、
昨日の「経営の視点」
編集委員の田中陽さんが、
気合を入れて書いている。
官製版「コメ流通革命」の皮肉
面白い視点なので、
是非とも日経新聞を読んでください。
「令和の米騒動」
カリスマ経営者たちが登場する。
ダイエー創業者の中内功さん。
「どこからでもええから早く、
コメをかき集めてこんかい」
檄(げき)を飛ばしたに違いない。
私も書いた。
リアリストの倉本長治も渥美俊一も、
「誰よりも早く、どんどんやれ!」と、
奨励したに違いない。
中内さんと同じだ。
田中さん。
「民の竈(かまど)の煙が上がってないと気づけば、
値下げに動いたダイエー」
「官の規制や古い商慣習と対峙する
闘う商人だった」
その通りだった。
「ダイエーだけではない。
昭和から平成前半までイオン、
イトーヨーカ堂、西友などの
大手スーパーはライバルを出し抜いてでも
耳目を集めようと策を講じ
値引きを仕掛けた」
「商人の貪欲さが
業界のダイナミクスを生んだのは間違いない」
この田中さんの認識にも同感だ。
しかし今回の米騒動。
田中さんは厳しい見方をする。
「一部では輸入米を扱い、
供給責任の使命を果たしたが
インパクトは乏しかった」
「一方、政府による備蓄米放出は
従来の約半値で店頭に並び注目された」
そこで名づけた。
「官製版コメの流通革命」
私の言い方は、
「緊急事態のお上主導の流通」
「舞台を用意された小売業は
大きく口を開けて待ち、
各社の首脳は視察に訪れた
小泉進次郎農相を笑顔で迎えた。
そこに闘う商人の姿はなかった」
硬派だなあ、田中陽。
今回は闘う時ではなかったと、
私は思う。
「気概を見せた」のがドン・キホーテのPPIH。
「コメ流通の問題点に関する意見書を
小泉農相に提出。
不透明なコメ流通を
白日の下に晒(さら)した」
これは同感。
私も吉田直樹さんを評価して、
5月29日のブログに書いた。
吉田直樹PPIH社長の
小泉進次郎農相宛て
「コメ流通意見書」
田中陽さんはもう一つ事例を出す。
1998年秋の鈴木敏文さんだ。
当時のイトーヨーカ堂社長。
消費税率3%から5%への引き上げの翌年の
「消費税分還元セール」だ。
鈴木さんは闘う姿勢というよりも、
消費者心理作戦だったと思う。
もちろん背景には消費増税に対する、
反骨もあったかもしれない。
だがそれを訴求してはいない。
そしてピーター・ドラッカー。
流通を「最後の暗黒大陸」と呼んだ。
同じように小泉農相は今、語る。
「コメ流通は極めて複雑怪奇、
ブラックボックス」
だから、
「コメ価格の異常な高騰を落ち着かせる」
ただし流通全体とコメ流通は、
ちょっと違うと思う。
コメの流通とコメの農政とは、
抜き差しならないくらい、
深く結びついている。
むしろ農業政策にこそ今、
乗り越えねばならない壁がある。
チェーンストアがそこに、
斬り込んだかと言えば、
それはなかった。
立花隆著『農協』で明らかになったが、
中内さんの時代からずっと、
いわば据え置かれた課題だ。
田中さん。
「民の知恵を信じた林氏は
官製版『コメの流通革命』を
草葉の陰で泣いているに違いない」
林周二をわずかでも知る者として、
草葉の陰で泣いているというよりも、
皮肉にほくそ笑むんだと思う。
田中陽さんのこの記事。
日経の記者たちも他のメディアの人にも、
書けない情報と切り口だ。
敬意を表したい。
振り返って考えてみると、
闘うチェーンストアの時代は、
もう終焉しているのだろう。
大手チェーンには、
とくにその傾向が見える。
それが昨今の既存大手チェーンの、
停滞につながってもいる。
ダイエーの売上高ピークは、
1995年2月期の2兆5415億円だ。
その時点の日本のGDPは、
486兆5517億円。
構成比0.52%。
2024年のGDPは609兆2887億円、
2024年度のセブン&アイは11兆9728億円、
イオンが10兆1349億円。
それぞれ1.97%と1.66%。
ダイエーの時代はまだまだ闘う時だった。
いまは闘うよりももっと、
自らのスケールを活かす時代か。
本腰を入れて商業型農業に取り組むなどの、
新しいダイナミズムが欲しい。
ちなみにトヨタは今、
48兆367億円で8.05%。
トヨタはコメを売らない。
コメ対策に関してチェーンストアは、
「お上主導の流通」に甘んじていてはならない。
〈結城義晴〉
1 件のコメント
田中さんの記事は、深く頷きながら読みました。
ただ、仰るように今は、闘争本能の時代というよりも、賢さや知性が求められる時代なのかもしれません。それが、知識商人ということでしょうか。