結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年12月02日(火曜日)

「障害者、18歳人口から除外」と「デモクラティック」な組織・社会

組織はすべからく、
民主的であるべきだ。

小売業やサービス業は、
人間産業であるから、
とくに民主的な組織でなければいけない。

『サミットスタディ』(1993年商業界刊)。
サミットスタディ

巻頭のインタビューで、
荒井伸也さんが言った。

「スーパーマーケットは、
デモクラティックなビジネスです」IMG_8825 (002).jpg2

私はこの言葉を忘れない。

ピーター・ドラッカーも究極のところは、
デモクラティックな組織を説いた。

今日も1日、商人舎オフィス。

二人の来客。
鎌田真司さんと上本寛子さん。
IMG_8813 (002)
鎌田さんは㈱BSK代表取締役社長、
㈱シジシージャパン顧問。
上本さんは有限会社BAMBI取締役、
マーケティングデザインプロデューサー。

この秋によく来ていただいて、
情報交換し、ディスカッションしている。

テーマは「女子力」

スーパーマーケットが、
デモクラティックであることを、
証明する内容だ。
IMG_8815 (002)

毎日新聞の昨日の一面トップ記事。
スクープといっていいだろう調査。
「障害者、18歳人口から除外」
mainitisingu

文部科学省の「学校基本調査」は、
教育政策の重要指標だ。

そのなかの「18歳人口」は、
大学の進学率の算出などに使用される。
中央教育審議会が参照する基本調査だ。
審議会は文科相の諮問機関である。

この重要な集計から、
「特別支援学校」の卒業者が除外されていた。

「特支」と略されるが、
障害のある児童や生徒が通う学校のことだ。

視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、
そして病弱などの様々な障害に対応して、
幼稚園から高等学校までに準じた教育をする。

盲学校(もうがっこう)、聾学校(ろうがっこう)、養護学校は、
特殊教育諸学校と称していたが、
2007年4月1日から同一の学校種として、
「特別支援学校」となった。

特別支援学校には、
幼稚部、小学部、中学部、高等部、
それに「高等部の専攻科」がある。

「学校基本調査」は国の「基幹統計」の一つだ。

学校数や児童・生徒数、入学者・卒業者数などを、
幼稚園や小中学校、高校、大学、
そして特別支援学校などから毎年、
聞き取って集計される。

毎日新聞はこの学校基本調査報告書を、
遡って調べた。
mainiti

大学進学率は1999年度の報告書から登場した。
「大学入学者」の数を「3年前の中学校卒業者」数で、
割り算して計算される。

これが一般に「進学率」と発表されるものだ。
中学卒業時点の数字を利用したのは、
義務教育段階で網羅的に集計できるからだ。

ところが1954年の初出の時点で、
「中学卒業者」の中に、
特支中学部の卒業者が含まれていなかった。

そして「特支」を除外する運用は、
今も続いている。

2024年の18歳人口は106万3451人だった。
その24年度の大学進学率は59.1%と算出された。
これは過去最高だったと説明された。

一方、学校基本調査の特支中学部の卒業者は、
24年に1万892人だった。

99年と比べると3000人以上増えている。
発達障害への理解が進んだためだ。

ここで2021年の特支卒業者9836人を、
「中学卒業者」に合算すると、
18歳人口は107万3287人になる。
そして大学進学率は58.6%に下がる。

1999年以降の特支中学部卒業者を含めて、
大学進学率を計算すると、
文科省が公表している数字のほうが、
0.17~0.54ポイント高くなるし、
その差は拡大傾向にあった。

特支中学部卒業者を合算しない理由について、
文科省の担当者は説明している。
「特支では就学猶予などによって
年齢と学年が一致しないことがあり、
特支を加えると18歳人口に18歳を超える人も
含む可能性があるため」

これも言い訳にしか聞こえない。
「特支で就学猶予を受ける人数は、
卒業者全体と比べるとごくわずか」

そのうえ通常の小中学校でも、
けがや病気で留年する仕組みがあるから、
年齢と学年が一致しなくなることはある。

教育にかかわる文科省側に、
差別意識がなかったとは言えない。

大学進学率を高く報告したいという、
そんな忖度(そんたく)があったかもしれない。

教育はデモクラティックでなければならない。

それを担当する行政府に、
わずかでも官僚化がはびこることは、
私たちの社会全体の衰退を招く。

小売業、サービス業、製造業も卸売業も、
デモクラティックな組織でなければならない。

民主的な社風でなければ、
生存も成長もできない。

忘れてはならない。

〈結城義晴〉


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