「障害者、18歳人口から除外」と「デモクラティック」な組織・社会

組織はすべからく、
民主的であるべきだ。
小売業やサービス業は、
人間産業であるから、
とくに民主的な組織でなければいけない。
『サミットスタディ』(1993年商業界刊)。

巻頭のインタビューで、
荒井伸也さんが言った。
「スーパーマーケットは、
デモクラティックなビジネスです」
私はこの言葉を忘れない。
ピーター・ドラッカーも究極のところは、
デモクラティックな組織を説いた。
今日も1日、商人舎オフィス。
二人の来客。
鎌田真司さんと上本寛子さん。

鎌田さんは㈱BSK代表取締役社長、
㈱シジシージャパン顧問。
上本さんは有限会社BAMBI取締役、
マーケティングデザインプロデューサー。
この秋によく来ていただいて、
情報交換し、ディスカッションしている。
テーマは「女子力」
スーパーマーケットが、
デモクラティックであることを、
証明する内容だ。

毎日新聞の昨日の一面トップ記事。
スクープといっていいだろう調査。
「障害者、18歳人口から除外」

文部科学省の「学校基本調査」は、
教育政策の重要指標だ。
そのなかの「18歳人口」は、
大学の進学率の算出などに使用される。
中央教育審議会が参照する基本調査だ。
審議会は文科相の諮問機関である。
この重要な集計から、
「特別支援学校」の卒業者が除外されていた。
「特支」と略されるが、
障害のある児童や生徒が通う学校のことだ。
視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、
そして病弱などの様々な障害に対応して、
幼稚園から高等学校までに準じた教育をする。
盲学校(もうがっこう)、聾学校(ろうがっこう)、養護学校は、
特殊教育諸学校と称していたが、
2007年4月1日から同一の学校種として、
「特別支援学校」となった。
特別支援学校には、
幼稚部、小学部、中学部、高等部、
それに「高等部の専攻科」がある。
「学校基本調査」は国の「基幹統計」の一つだ。
学校数や児童・生徒数、入学者・卒業者数などを、
幼稚園や小中学校、高校、大学、
そして特別支援学校などから毎年、
聞き取って集計される。
大学進学率は1999年度の報告書から登場した。
「大学入学者」の数を「3年前の中学校卒業者」数で、
割り算して計算される。
これが一般に「進学率」と発表されるものだ。
中学卒業時点の数字を利用したのは、
義務教育段階で網羅的に集計できるからだ。
ところが1954年の初出の時点で、
「中学卒業者」の中に、
特支中学部の卒業者が含まれていなかった。
そして「特支」を除外する運用は、
今も続いている。
2024年の18歳人口は106万3451人だった。
その24年度の大学進学率は59.1%と算出された。
これは過去最高だったと説明された。
一方、学校基本調査の特支中学部の卒業者は、
24年に1万892人だった。
99年と比べると3000人以上増えている。
発達障害への理解が進んだためだ。
ここで2021年の特支卒業者9836人を、
「中学卒業者」に合算すると、
18歳人口は107万3287人になる。
そして大学進学率は58.6%に下がる。
1999年以降の特支中学部卒業者を含めて、
大学進学率を計算すると、
文科省が公表している数字のほうが、
0.17~0.54ポイント高くなるし、
その差は拡大傾向にあった。
特支中学部卒業者を合算しない理由について、
文科省の担当者は説明している。
「特支では就学猶予などによって
年齢と学年が一致しないことがあり、
特支を加えると18歳人口に18歳を超える人も
含む可能性があるため」
これも言い訳にしか聞こえない。
「特支で就学猶予を受ける人数は、
卒業者全体と比べるとごくわずか」
そのうえ通常の小中学校でも、
けがや病気で留年する仕組みがあるから、
年齢と学年が一致しなくなることはある。
教育にかかわる文科省側に、
差別意識がなかったとは言えない。
大学進学率を高く報告したいという、
そんな忖度(そんたく)があったかもしれない。
教育はデモクラティックでなければならない。
それを担当する行政府に、
わずかでも官僚化がはびこることは、
私たちの社会全体の衰退を招く。
小売業、サービス業、製造業も卸売業も、
デモクラティックな組織でなければならない。
民主的な社風でなければ、
生存も成長もできない。
忘れてはならない。
〈結城義晴〉





















