ワールドシリーズ最終戦の「野球少年に戻ったような感じでした」

2025Major League Baseball。
Game 7 of the World Series。
ロサンゼルス・ドジャース、
トロント・ブルージェイズ。
感動した。
ここまで3勝3敗。
ブルージェイズが押しているように見えた。
何よりも第3戦の18回延長ゲーム。
大谷翔平は2本塁打、2二塁打。
5四球で9打席連続出塁。
全打席で出塁して、
ランナーに出て走った。
メジャーリーグ史上新記録。
その直後の第4戦で先発投手となった。
もう疲れ切っていた。
第6戦で山本由伸が先発して勝利した試合も、
大谷は試合に出続けた。
ブルージェイズはサイヤング賞3度獲得の、
41歳マックス・シャーザーが先発。
こちらも背水の陣。
そしてブルージェイズは全員がよく守った。
3回、大谷は安打と犠打で1死二塁。
さらにワイルドピッチで走者は三塁へ。
デーブ・ロバーツ監督はゲレーロ・ジュニアを、
申告敬遠させた。
これが裏目に出て、
ボビー・ビシェットが3点本塁打。
大谷は両手を膝に置いて落胆した。
第4戦で93球を投げ、中3日で登板。
大谷は51球を投げて、5安打、3失点、2四球。
それでも3三振をとってマウンドを降りた。
ドジャースは直後に反撃。
連打と四球で1死満塁のチャンス。
5番テオスカー・ヘルナンデスが、
センターへ鋭いライナー。
ドールトン・バーショがダイビングキャッチ。
抜けていれば3点を返すことができたが、
犠牲フライで1点止まり。
主砲ゲレーロ・ジュニアはその後、
一塁ゴロをダイビングキャッチ。
身を挺したファインプレー。
一方、シャーザーも4回1アウトを取ると、
1失点で降板。
6回のドジャースは、
ブルージェイズ3番手投手のクリス・バシットから、
四球と安打で1死一、三塁のチャンス。
エドマンが手堅く犠牲フライを打って、
1点差に迫った。
直後の6回裏の攻撃で、
ブルージェイズは8番アーニー・クレメントが、
安打で出塁し盗塁で無死二塁。
9番のアンドレス・ヒメネスがタイムリー二塁打。
これで4対2と突き放した。
私はもう負けるかと思った。
8番アーニー・クレメントは9回にも、
左中間に二塁打。
MLB史上トップの記録を更新。
ポストシーズンで30安打。
ブルージェイズの打線はドジャースを圧倒していた。
ドジャース投手陣はまさに総力戦。
先発の四本柱が全員登板。
先発の大谷翔平とタイラー・グラスナウ、
ブレイク・スネル。
最後に9回1死一、二塁で山本由伸。
昨日の第6戦で96球を投げていたが、
中0日での登板。

今季で引退を表明しているクレイトン・カーショウ。
「今夜のヨシがやったことは、
たぶん野球の歴史でも前例がない。
あれは人間ができるレベルではない」
しかし山本は捕手アレハンドロ・カークに、
インコースのデッドボール。
1死満塁。
ここでも私は負けたかと思った。
胸がどきどきした。
しかし続くドールトン・バーショがセカンドゴロ。
本塁で間一髪のタイミングのアウト。
続くクレメントは左中間への打球。
この回から守備に入った中堅手のアンディ・パヘスが、
左翼手キケ・ヘルナンデスとぶつかりながら好捕。
そして延長11回。
2アウトから2番ウィル・スミス。
スミスはこのシリーズの73イニングすべてに、
マスクをかぶって投手陣を支えた。
山本は延長10回を抑えて、11回。
3イニング目となった。
この回もピンチは生まれた。
先頭打者ゲレーロ・ジュニアは二塁打。
そして1死一三塁のピンチ。
デッドボールを与えていた捕手カークは、
ショートゴロ。
これをムーキー・ベッツが自ら取って、
2塁ベースを踏むと1塁へジャンピングスロー。
そして歴史的なゲームが終わった。
打撃ではいいところが少なかったベッツは、
見事な守備を連発してチームに貢献した。
投手山本は天を仰いだ。
捕手スミスが駆け寄って、
抱き上げた。
ブルージェイズは、
昨年のヤンキースよりも強かった。
山本はワールドシリーズMVP。
2009年のヤンキース松井秀喜以来、
日本人選手として2人目。

その山本のコメント。
「野球少年に戻ったような感じでした」
本当にそんな感じだった。
心からおめでとう。

最後に勝敗を分けたもの。
2年前のオフシーズン。
ブルージェイズは大谷翔平を獲得しようとした。
この争奪戦で最後にドジャースに負けた。
10年総額7億ドルの契約。
約1064億円。
ワールドシリーズ第1戦、
ブルージェイズは大勝した。
しかし9回に大谷が打席にはいったとき、
トロントの4万4353人の観衆が大合唱した。
「We don’t need you!」
大谷はこの最終戦にも、
淡々とマウンドに上がって、
自分の力を出そうとした。

「お前はいらない」という大合唱にも負けず、
大谷も山本も堂々と、淡々と野球少年を貫いた。
野球の神様はそれを見ていたのだと思う。
今年のBaseballはすべて終わった。
けれど、ありがとう。
大谷翔平、山本由伸。
佐々木朗希も。
ムーキー・ベッツもフレディ・フリーマンも、
ウィル・スミスも。
クレイトン・カーショウの言葉。
「スーパースターたちが、
こんなに自分を犠牲にするチームはない」
経営も商売も同じだ。
ありがとう。
〈結城義晴〉






































