結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年09月23日(金曜日)

「秋分の日」と芭蕉の「無季」の句とドクターズの志

今日は秋分の日。

二十四節気(にじゅうしせっき)は、
1年を24等分する。

その大きな4つの節目が、
春の春分、夏の夏至、秋の秋分、冬の冬至。

9月23日の今日の秋分のあとは、
10月8日の寒露、
10月23日の霜降、
11月7日の立冬、
11月22日の小雪、
12月7日の大雪
となって、
12月22日の冬至、
まさに至る。

こうして二十四節季だけ辿ると、
もう冬となって、
今年も終わるかのような気分になってくる。

しかしつい最近まで、
残暑、残暑といっていた。
それが、大型の台風二過のあと、
しみじみと秋に入った感じがする。

季節の移り変わり、
本当に不思議なものだ。

だから日本が誇る短詩「俳句」には、
季語というルールがある。

江國滋さんは、
その著『俳句とあそぶ法』6章「禁忌は禁忌」で語る。

「『無季俳句』というものを、
ひとつのジャンルと考えたり、
主張とする態度を、
私は排斥する」

このきっぱりとした言い切り方、
私は大好きだ。

ただし、言い切り方が好きなのであって、
主張の完璧に賛成するわけではない。

こんな芭蕉の句がある。

無季
歩行(かち)ならば杖つき坂を落馬かな

これは季語のない句。
芭蕉は、だから、「前書き」で「無季」と断っている。

「前書き」というのは、
「一句の前にごく短い文言を添えて、
句意を補ったり背景を説明したりする」もの。

「前書きは卑怯ですぜ」
「内田百閒先生の持論」と江國さんは言う。
夏目漱石門下の小説家にして随筆家・俳人の百閒は、
「注釈つきでなければ意味をくみ取れないような俳句は、
句としての力が不足している」と「前書き」に否定的。

芭蕉の「無季」をさえ否定しているが、
百閒の師・漱石の句にこんなのがある。

女帝の葬式はハイド公園にて見物致候、立派なものに候
白金に黄金に柩寒からず

さらに漱石に句を手ほどきした正岡子規には、
素晴らしいのがある。

病中雪
いくたびも雪の深さを尋ねけり

これなど「前書き」の本当に効いている。
私は「前書き」積極支持派だ。

子規は「前書き」大好き派で、
こんなのがある。

我死にし後は
柿食(かきくひ)の俳句好みと伝ふべし
これは、
柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺
を思い出させて、なおかつ、辞世のような言い回し。

しかし季語のことなど思いめぐらし、
しみじみと秋を感じ、
秋の到来を味わうのは、
悪くない。

日本に生まれ、育ってよかった。

今日は、秋分の日あると同時に、
彼岸の中日。
私は久々の休日で、
体を休めた。

ありがたい。

昨日、一昨日は、千葉県の茂原。
オール日本スーパーマーケット協会の、
そうそうたるトップ・マネジメントが集まって会合。
事務局は㈱伊藤園と㈱あづま食品工業。

伊藤園副社長の江島祥仁さんが、ご挨拶。
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関西スーパーマーケット社長の井上保さんも、
商品論を展開して意気軒高。
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サミット㈱社長の田尻一さんも、お元気。
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この11月にコーネル大学ジャパン第3期生の最終実習を、
サミットの店舗で行う。
心から感謝。

お隣は㈱千葉薬品社長の神﨑彰道さん。

そしてスーパーアルプス社長の松本清さん。
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全員で集合写真をとろうという話になった。
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声を掛け合って、整列。
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そして写真。
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環太平洋首相会議のような光景。
荒井伸也オール日本スーパーマーケット協会会長や、
前原章宏㈱とりせん会長の顔も見える。

みなさん、ありがとうございます。

年に一度か二度集まって、
懇談し、議論し、ゴルフを楽しむ会。
場所は女子プロのトーナメントが行われる名門グレート・アイランド倶楽部。

この会の名称は「ドクターズ」
実は私の命名。

世に、「マスターズ」というゴルフの会は数多ある。
何しろ世界4大トーナメントのひとつが、
アメリカで行われる「マスターズ」。

それをもじって、
「〇〇マスターズ」は、
本当に多い。

しかし「マスター」というのは大学院で言えば「修士課程」。
その上の「博士課程」を「ドクター」という。

「ドクター」が意味するのは医者のことだけではない。

技量は別にして、
ゴルフを楽しむ姿勢と精神は「ドクター」で行こう。
それがこの会の趣旨。

私は本当にこの「ドクターズ」を楽しみにしている。
そして今回も、心から楽しんだ。

そういえば、伊藤園は毎年、
「お~いお茶新俳句大賞」というイベントを展開している。
今年第22回を迎える。

お~いお茶のパッケージに俳句が刷り込んである。
あれ。

ことしの大賞は、富山県の稲葉巧馬くん、11歳。
水切りは銀河を走る小石かな

この俳句大賞で面白いのは、
「英語俳句の部」が設けられていて、
すぐれた作品が多く寄せられること。

今年の英語俳句大賞は、
東京都の小林遥希さん、15歳。

wind
like an alley cat
enjoys a free life

(直訳)
風は
路地猫のように
自由気ままを楽しむ

これもとても、良い。

英語俳句、
内田百閒先生はどうお考えだろうか。

それでも秋の三連休。
超のつく多忙なトップが集まってのドクターズ。

いい会合だった。

9月末から10月にかけての私の激務。
ドクターズで癒された。

まさにこれから「疾走、疾駆」。

商人舎今月の標語は、
「疾走せよ、疾駆せよ」

これは私のためにある言葉。
疾走します、疾駆します。
お約束します。

<結城義晴>

2011年09月22日(木曜日)

「セブン&アイ、近商ストアと資本・業務提携」のニュースと8月の業態別売上高実績

台風15号、首都圏直撃。
それでも、なぜかみな、
落ち着いていた気がする。

日経新聞がスクープ。
「セブン&アイ、近鉄系スーパーと提携」

フライング気味のスクープもないことはないが、
それでも流通産業・食品産業のニュースに関しては、
その早さと正確さにおいて他の追随を許さない。

内容は、セブン&アイ・ホールディングスが、
近商ストア
と資本・業務提携するというもの。

近商ストアは近畿日本鉄道の子会社の食品スーパーマーケット。
平成22年度年商613億円、近畿圏に約40店舗を展開。

しかし「昨今、近商ストアの業績は悪化しており、
近鉄グループはセブン&アイに支援を求めた格好」。

セブン&アイが第三者割当増資で、
近商ストアの普通株式約502万株を引き受け、
議決権ベースで30%を取得。

現在72.4%を所有する筆頭株主の近鉄の持ち株比率は、
50.7%に下がる。
セブン&アイの経営権が高まることは確実。

セブン&アイのプライベートブランド「セブンプレミアム」の供給、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマル・ヨークマートなどとの商品共同仕入れ、
物流や情報の効率化支援などが柱になる。

セブン&アイは、
総合スーパー事業としてイトーヨーカ堂、
食品スーパーマーケット事業としてヨークベニマル、ヨークマートを持つ。

ヨーカ堂は174店展開しているが、関西以西は13店舗。
ヨークベニマルは東北、ヨークマートは関東。

日経の記事は、
「店舗網が薄い近畿圏で展開する近商ストアと提携することで、
西日本での業務拡大につなげたい考え」と読む。

ナショナルチェーンとして、
関西の大きなマーケットをターゲットにしていくことは、
分からないでもない。

しかしそれよりも、従来から、
セブン&アイの戦略転換にこそ注目すべきだろう。

同社はこれまで、
食品スーパーマーケットのM&Aに無関心だった。

それが変わったのか。

イオンは全国にマックスバリュを配置する。
関東ではカスミ、ベルク、いなげや、マルエツなども、
グループ企業である。
関西の光洋もグループ企業だし、
四国のマルナカや山陽マルナカとも業務提携をしている。

イオンは全国チェーン網の整備を鮮明にしている。

対してセブン&アイは、
その戦略を採用してこなかった。

セブン‐イレブンはM&Aをせず、
独自の開発によって、
全国チェーンとなってきた。

コンビニだからだろうか。

しかし食品スーパーは、
M&A戦略で行くのだろうか。

ローカルスーパーマーケットチェーンのなかには、
激しい競争にさらされ、苦しい経営を余儀なくされている企業も多い。
後継者難の企業もある。

そのうえ、変な言い方だが、
「イオンはいやだがセブン&アイならいい」といった企業もある。

つまり、この近商ストアの一件によって、
セブン&アイのM&Aが加速するとも考えられる。

アメリカでは、現在まで、
クローガーとセーフウェイの2強が、
全米のローカルチェーンを次々に傘下に収めてきた。

それと同じ現象が、すぐに日本で起こるとは思わないが、
それでも今回のセブン&アイの動きは、
アメリカ的なM&A現象への予感をさせるものではある。

さて業態別の8月の売上げ実績。
各協会から次々に発表されている。

まず第1に日本百貨店協会から「全国百貨店売上高概況」
百貨店86社のデータ。

8月の全国総売上高は4258億9945万円で、
前年比はマイナス1.7%となった。

8月は暑い時期と涼しい時期の気温の差が大きく、
7月まで売れていたクールビズ関連商品や涼感寝具などが
伸び悩んだため、前年の実績を割り込んだ。

東北地区の復興需要は依然、続いている。
仙台の前年比はプラス8.9%と好調。
4カ月連続でプラスとなっている。

大阪や福岡など、
新店のオープンや増床が目立つ地区では、
今月も好調な数字を維持。
大阪は全店ベースでプラス4.5%、
福岡はなんとプラス14.6%。

一方で、四国地区はマイナスが続き、
8月でとうとう50カ月連続のマイナスを記録。

第2は「コンビニエンスストア統計調査月報」
日本フランチャイズチェーン協会の発表。
調査対象はコンビニ上位10社。

8月の既存店売上高は7364億0800万円で、
前年同月比プラス7.9%。
これで、昨年11月から、10カ月連続のプラス。

店舗数(全店)は4万3985店でプラス1.7%、
既存店客数は12億1277万人でプラス0.04%と微増、
既存店客単価は607.2円のプラス7.9%と、
プラス・トレンドが続いた。

しかし、コンビニでも8月下旬の低温気候が
アイスクリームやソフトドリンクの売上げに響いた。
加工食品の売上高前年比マイナス2.6%という数字が物語っている。

非食品カテゴリーに関しては、
今月も好調を維持し、23.5%のプラス。
たばこや雑貨類の伸びが顕著である。

第3に、「スーパーマーケット販売統計調査」

こちらはオール日本スーパーマーケット協会、
日本スーパーマーケット協会、
新日本スーパーマーケット協会、
3協会からの合同発表。
集計企業数281社、総店舗数7552店。

総売上高は8444億7509万円、
既存店の前年同月比マイナス2.5%。

食品合計は7158億3958万円(マイナス2.3%)、
生鮮3部門の合計が2584億7641万円(マイナス3.2%)、
そのうち青果が1077億1866万円(マイナス4.2%)、
水産が727億4870万円(マイナス2.3%)、
畜産が780億0905万円(マイナス2.5%)。

惣菜は762億5578万円(マイナス0.3%)、
日配は1505億0143万円(マイナス2.3%)、
一般食品は2306億0596万円(マイナス2.0%)。

そして最後に、非食品が784億7148万円(マイナス3.6)、
その他が501億6403万円(マイナス1.3%)。

軒並みマイナスを記録。
昨年に比べ、猛暑にならなかったことと、
下旬の気温の低下。
天候による夏物商材への影響が、
ここでも露呈している。

また今年は輪番休業により、
週末に出勤する人が増加したため、
お盆が分散してしまった。
結果、8月は厳しい数字となった。

最後に第4に、「チェーンストア販売統計」
日本チェーンストア協会会員企業60社、
7992店舗の販売実績。
ほぼ5割が総合スーパー企業9社による。

総販売額は1兆0656億7977万円で
前年同月比(既存店)がマイナス2.2%。
7月の実績と比較すると、5.1%もマイナス。

食料品の販売額は6874億0480万円(マイナス2.7%)、
衣料品は977億0135万円(マイナス3.8%)、
住関品は2115億4712万円(マイナス0.8%)。

8月は特に紳士物の衣料が売れなかった。
クールビスの需要が7月で終わってしまったとみられる。
前月比マイナス32.8%だった。

日用雑貨に関しては、9月1日の防災の日を前に、
水タンクなどの防災関連グッズが売れた。
今年は特に消費者の防災意識が高まっているのだろう。

8月の売上げ動向を前年同月比で整理すると、
百貨店はマイナス1.7%、
総合スーパーはマイナス2.2%、
食品スーパーマーケットもマイナス2.5%、
しかしコンビニだけプラス7.9%。

セブン&アイ・ホールディングスが、
コンビニは独自に全国チェーン網構築を果たしてきて、
スーパーマーケットはM&A戦略をとるかもしれないということの背景に、
この実績数値が影を落としているかもしれない。

<結城義晴>

2011年09月21日(水曜日)

「流通BMS」の「インフラ共有/店頭競争」と瀬島龍三の「自らの強み」

台風15号「ロウキー」、ただ今、
横浜商人舎オフィスの上空付近に、
接近中(?!)。

そんな感じで、
吹き荒れています。

本当に真上を通過すると、
台風の目の中に入るのでしょうが。

みなさん、用心しましょう。
台風用品、防災用品、
台風通過地域は、
品切れなく。

さて、今日、
㈱イースト・プレス書籍1部の編集担当、中西庸さんから連絡。
『店ドラ』
(店長のためのやさしい《ドラッカー講座》)が、
めでたく5刷決定!!

ありがたいことです。

ずっとコンスタントに売れていますが、
9月に入って、またまた、
書店で大きく動き始めたらしい。

ありがたいことです。

各紙朝刊の一面看板コラムのうち、
朝日新聞『天声人語』と読売新聞『編集手帳』が取り上げた。
愛知県日進(にっしん)市の花火大会のこと。
「福島製の花火」が「放射能をまき散らす」などの苦情がでて、
それだけで打ち上げを中止された。

全くの無知蒙昧のほんのわずかな市民の苦情と、
主催者の腰砕けによる風評被害。

わが店、わが会社のイベントに、
こんな苦情が寄せられたらどうするか。

常にそれを考えて行動したい。

私なら、正式に事情を調べたうえで、
きっぱりと内容を説明して、
「復興支援花火」として、
一番目立つように打ち上げる。

しかしきっぱりと苦情を退ける「知識と情報と見識」は、
あらかじめ備えておかねばならない。

静岡県知事の川勝平太さんの言葉。
「無知は恐怖の源です」

「災害についての科学的知識と防災の技術的ノウハウを高めれば、
いざという時も風評に惑わされず、冷静に対応できます」

風評被害には、
知識と情報で対抗する。

これ以外にない。

しかし日進市、有名になった。

さて日経新聞の記事。
「スーパー業界2団体、
取引システム統一促す」

この2団体とは、
日本スーパーマーケット協会(川野幸夫会長)と、
オール日本スーパーマーケット協会(荒井伸也会長)。

統一を進めるのは「流通BMS」と呼ばれる取引システム。
これは本当に有意義なこと。

「インフラは共有、店頭で競争」
それが業界の在り方。

これならば、「近江商人の三方良し」となる。
「売り手良し、買い手良し、世間良し」

BMSとはBusiness Message Standardsの略。
要は受発注のメッセージを業界標準にして、
効率を上げようという試み。

小売業の商品発注は今や、
オンライン方式が一般的。
しかし一部には、
電話回線やファックスや伝票まで残っている。

それを電子データをやりとりする新しい取引システムにする。
「新システムでは伝票類の発行が不要で、
小売業やメーカー・卸の負担が軽くなる」

さらに「発注データの送受信もインターネットで短縮でき、
各企業は天候や需要に合わせて機敏な発注が可能になる」

このブログで頻繁に登場するプラネットは、
日用品雑貨や化粧品で
このEDI(Electronic Data Interchange)のシステムを完成させ、
なくてはならない機能を果たしている。

それを食品スーパーマーケットで展開しようという試みだ。

今回の「最大のメリットは費用を抑えた点」
企業単独でシステム導入を図ると、
初期費用は最低数百万円かかる。

今回、2団体が導入するシステムは、
初期費用をほぼ無料とした。

「2団体の加盟社は155社にのぼっており、
規模のメリットを生かし普及を目指す」

まずは、日本スーパーマーケット協会副会長企業のエコスが、
採用する方向で検討を始めたという。

一歩、前進。
2協会とエコスに拍手。

さてさて、今月の日経新聞『私の履歴書』はためになる。
伊藤忠商事元会長・室伏稔さん。

伊藤忠中興の祖・瀬島龍三さんに学んだこと。
日常業務で指導されたのは、3点。
(1)報告書は必ず紙1枚にまとめる
(2)結論を先に示す
(3)要点は3点にまとめる

「どんな複雑なことでも要点は3つにまとめられる」
これが瀬島さんの口癖。

これは経営者にも実務者にも、
編集者にも、学生にも当てはまる。

瀬島さんの交渉術。
「用意周到、準備万端、先手必勝」

「とにかく徹底的に準備をしてから事を始め、
とにかく相手に先んじること」

これが「必勝の道」という教え。

身近にこういった素晴らしい先輩や上司がいる人は幸せだ。
万が一、そういった人がいなくても、
見渡せば、社外にたくさんいる。

私も、典型的な後者だった。

室伏さん自身も社長に就任した時に、
素晴らしい所信表明をした。
それが今朝のくだり。

室伏さんが社長になったのは、1990年。
バブルの崩壊と湾岸危機がやって来た年。

社長としての所信表明は、
「1つの目標、2つの信念、3つの基本姿勢」。
まず目標は、「国際総合企業の実現」。

重要なのは二つの信念。
国際派らしくどちらも英語。

第一は、
「Why not? Nothing is impossible」
「なせばなる」「不可能なことは何もない」
室伏さんは言う。
「企業同士の競争は究極的には人と人との競争である。
どこが最終的に勝つかは、
会社の規模や資金力でも知名度でも、
グループ企業の支援でもない、
社員個人の『気迫』にかかっている」

第2の信念は、「More Like CI」。
「CI(シーアイ)」はかつての伊藤忠の略号。
意味は、「より伊藤忠らしく」

これはピーター・ドラッカー教授言うところの「自らの強み」である。

「企業は建物でも、決算書でもない。人である。
人と人がつくる社風こそ企業を支える無二の資産であり、
それが企業を発展させたり、衰退させたりする」

室伏さんの信念がわかる。

企業は人であり、
社員個人の気迫。

私自身は、室伏さんに、
完全に同感するものではないが、
否定するものでもない。

むしろ瀬島龍三のクールさに魅かれる。

ただしバブル崩壊後の混沌を、
室伏さんの「人間の気迫」が、
乗り切らせたことも確かだろう。

その意味で、バブル崩壊後といっても、
いい時代だったのかもしれない。

いま、私たちの前には、
それ以上の難題が山積している。

組織全体でしか、
チームワークでしか、
乗り切ることができない難題が。

<結城義晴>

2011年09月20日(火曜日)

災害列島「日本人の強み」とイオンの「2020年人材国際化・女性登用構想」

台風15号。
今度はなんと、
名付けようか。

またまたぐるぐる迷走した挙句、
スピードを上げて、
直進しつつ本州に上陸しそう。

名古屋では100万人以上に、
避難指示と非難勧告。
ことしの日本列島、
「水難」の相が深く刻まれた。

お見舞い申し上げ、
ゆめゆめご油断なきよう、
と喚起したい。

今日は、彼岸の入りの日。
先祖の霊も、
台風に驚いているに違いない。

今日から3日間は、平日。

私はこの間に、
溜まりに溜まった原稿執筆と、
10月の怒涛の海外視察のテキスト作り。

ご迷惑をおかけしている編集者の皆さん、
印刷所の皆さん、お詫びしつつ、
懸命に執筆。

読者の皆さんには申し訳ないけれど、
その合間に、ブログ執筆。

商人者ホームページで、
本編の[毎日更新宣言]の次にアクセス数が多いのが、
トップにある「行動予定カレンダー」

9月下旬からダラス、サンフランシスコ、
10月中旬にケルンとパリ、
10月下旬から11月にかけて、
ダラス、ワシントン、ニューヨーク、
そしてロサンゼルス。

ことしはスケジュールを入れすぎた。
しかし、頑張ります。

何というか、私の人生のピークのひとつが、
東日本大震災の今年に重なった。

考えてみると日本列島は、
地震、台風をはじめ、災害列島ともいえる。

それに1945年のヒロシマとナガサキの原爆、
そして2011年のフクシマの原発。

だから日本人は辛抱強くなった。
真摯で誠実な国民性を持つに至った。

これは災害列島に住む私たちの最大の「強み」でもある。

その強みを持った私たちが、
海外を訪れ、海外を知る。

それこそ「強み」を伸ばすことにつながる。

頑張ります。
人生最大のピークだと認識しつつ。

そして九州人の肝っ玉をご覧にいれます。

さて連休明けで、ニュースの少ない流通業界。
日経新聞に「イオン本社、社員の5割を外国人に」の記事。

千葉県幕張にあるイオンの本社、
その社員の外国人比率は現在、3%。

これを2020年までに5割に引き上げる計画。

まあ10年の長期計画だから、
先のこととはいえ、
いま、こういった計画を打ち出す意味は大きい。

当面はアジア展開がイオンの戦略。

それを加速するために最も大切なのが人材。
アジアの人材の戦力化を急ぐのが目的。

もちろん現地法人との人事交流も活発に進められる。

イオンはアジアでの売上高と営業利益の比率を、
2020年までに現在の数%から5割に拡大する構想を掲げる。

実際に、記事では、
「今年から中国やマレーシア、タイのほか、
米国と英国でも採用活動を始めた」とある。

そのためにアジア各国の有力大学と、
採用や教育に関する協定関係を広げる。
イオン名誉会長の岡田卓也さんは、三つの構想を掲げた。
「平和産業、人間産業、地域産業」

これが現在のイオンのテーゼでもある。

アジアの小売企業を標榜するからには、
アジアという地域産業であると同時に、
アジアの人間産業である必要がある。

このイオンのテーゼへの一歩が、
本部人員5割の外国人比率。

現在、国内外のグループ従業員数は約33万人。
すごいことになっている。
そのうち、外国人比率は約7%。

2020年ごろにはもう、どの企業においても、
これは、特筆すべきことでもなくなっているだろう。

しかし2011年のいま、
この構想を打ち上げることに意味がある。

私は、そう思う。

記事では同時に、
「女性取締役の比率」にも、
触れられている。

現在のイオングループ企業の女性取締役は、
連結会社のなかで社長4人を含め計25人、

約5%。

それを30%に高める計画。

日本の大手百貨店の取締役・執行役の比率は、
130名超のうち、3名だと聞いた。

日経の記事では、
「国内の主要企業の女性取締役比率は1%弱」と書かれていて、
イオンは現在でもその平均を大きく上回る。

イオンは、グループの現地法人からの出向や転籍を活発化させ、
人材の行き来を頻繁にし、
アジア人の女性社員をも、
経営層に積極的に登用する。

かつてイオンには、
岡田名誉会長の姉上の小島千鶴子さんという方が、
常務取締役で活躍した。

小島さんを超える女性取締役の登場を期待したい。
そのために、今後、
「優秀な人材は、幹部候補の研修」に参加させる。

私もイオンビジネススクールの講師を務めているが、
やがて外国人社員に、
『商売十訓』を教える日が来るに違いない。

ワクワクしてくる。

日本人の「強み」を生かしたうえでの国際化。
これはイオンに限らないことだ。

<結城義晴>

2011年09月19日(月曜日)

日本アクセス田中茂治の「なくてはならない卸」

Everybody! Good Monday!
[vol38]

Good MorningやGood Nightがあるのだから、
Good Mondayがあってもよいはず。

そんなことで始めた月曜日のご挨拶。
“Good Monday!”

今年1月第1週から数えて、
38回目になります。

9月第4週。
先週末の土曜・日曜から続いて、
今日は祝日の「敬老の日」で、
三連休。

新聞朝刊の一面看板コラム。

朝日新聞『天声人語』は、
「暑さ寒さも彼岸まで」で秋分の日の話、
読売新聞『編集手帳』は、
ジェットコースターと内閣支持率の話。
毎日新聞『余禄』は、
「東京・両国国技館」の栃東の優勝額の話。
<しかしなぜこの『余禄』の今日のコラムは、大相撲まで到達しながら、
そこにある「年寄り」という役職に気がついて、それに言及しないのだろう>

その中で、日本経済新聞『春秋』。
アメリカの女優ベティ・デイビスの言葉を引いた。
「年をとるのは、弱虫にはできない」

「一癖も二癖もある悪女を演じてずぬけた女優」と評する。
「新藤兼人・私の十本」(立花珠樹著)に紹介されていた逸話。

このコラムは「弱虫にはできない……」から、
話が「作家・吉村昭のささいなこだわり」に移っていくが、
私は「年をとる」が大事だと思う。

「年をとるのは、弱虫にはできない」とすれば、
「弱虫は年をとれない」となる。

年をとっていくと、
いろいろなものを見、
いろいろなことを知る。
いろいろなことを経験し、
体験する。

それらに耐えなければならない。

辛いことばかりで、
だから弱虫は年をとれない、となる。

もちろんベティ・デービスは女優だったから、
年をとる醜さをさらすことができる女優は、
「弱虫ではない」といいたかったのか。

いや、この発言をすること自体そうだが、
年をとるとは、自分の矜持を確かにすることなのだろう。

ベティ・デービスは自分の女優としての「かわいさ」を知っていて、
あえてそれを誇示して見せたとも考えられる。

年をとると、「かわいらしさ」を取り戻す。
それは人間の本質に戻っていくからだと思う。

かわいい年寄り、
うつくしい年寄り。

するどい年寄り、
かしこい年寄り。

私の父母は、85歳。
私は59歳になった。

「年をとるのは、弱虫にはできない」
この言葉を父母に贈ろう。

第38週の今週は、
「敬老の日」から始まって、
火曜、水曜、木曜が平日。

そして金曜日の23日が祝日の「秋分の日」。
秋分の日は「彼岸の中日」で、
前後3日間が彼岸会。

だから明日の20日からお彼岸に入り、
来週月曜日に彼岸が明ける。

今週は一連の彼岸週間でもある。

こういった大きな風習やイベントがあるときの商売は、
たいてい、やることが決まっていて、
全力を挙げて、仕事に打ち込めばいい。

まさに「疾走せよ、疾駆せよ」
今月の商人舎標語。

さて、日経新聞の『私の課長時代』に、
日本水産社長の垣添直也さんが登場。

東京水産大学を出てから、日本水産に入社し、
13年間、捕鯨船勤務だった。

その時に経営のすべてを学んだ。

「駕籠かきの教訓」ではないが、
鯨を捕って、鯨油をつくる仕事をしながら、
経営の意思決定やマネジメントを学んでいた。

シケが迫る南極海で、
鯨を捕ることそのものの意思決定に関して、
船団長と論争していた。

「ここで究極の状況下での判断に直面」。
船団長から「極限での判断力の大切さ、
決断するリーダーの責任の重さを教わりました」

日本水産という会社の良さ、すごさが、
この言葉に出ている。

日経MJの『底流を読む』。

このブログではお馴染みの白鳥和生さんが書く。
白鳥さんは現在、日本経済新聞社消費産業部次長。

タイトルは「50年迎える問屋無用論」。
林周二著『流通革命』発刊から50年。
「現在問屋を通過している消費財中の相当部分は、
メーカーから巨大小売り連合の倉庫などへの直卸形態へ移行する」

その結果、「問屋機能は大幅に排除されるだろう」
これが林の指摘。

しかし私は、思う。
そうなったともいえるが、
そうではなかったともいえる。

白鳥さんは「問屋」に対して二つの提案。
第一は、「ROIを考えた販促策を提案できる力」
そのために「顧客ID付きなどのPOSデータを活用・分析し
クロスMDなどを推進できる人材の育成が求められる」

第二は、「物流・情報システムを活用したローコストオペレーション」。

中小卸の生き残りには「ラックジョバー」への道も提案。

最後に日本アクセス社長田中茂治さんの言葉、
「なくてもいい卸、あってもいい卸から、
なくてはならない卸を目指す」

しかしこの田中さんの言葉、
「卸」や「問屋」に限ったことではない。
「会社」や「店」そのものに当てはまる

「なくてもいい小売り、
あってもいい小売りから、
なくてはならない小売り」

「なくてもいい店、
あってもいい店から、
なくてはならない店」

「なくてもいいメーカー、
あってもいいメーカーから、
なくてはならないメーカー」

「なくてもいいメディア、
あってもいいメディアから、
なくてはならないメディア」

問屋無用論は、
どうも卸売業界全体に、
「被害妄想」というトラウマを与えてしまったようだ。

三菱食品最高顧問の廣田正さんは、
入社と同時に『流通革命』が発刊され、
地獄に突き落とされた気分だったが、
直後に米国から帰国した先輩が、叫んだ。
「廣田君、あのアメリカでも問屋が生き残る道があったよ」

廣田さんはここから出発して、
2兆円を超える「菱食」を作り上げた。

林周二の『流通革命」とは、
製造業、卸売業、小売業の社会的機能が、
転換を遂げ、新しい流通が生まれることを、
示唆したものだった。

その新しい流通を成し遂げた者だけが、残った。
残ったものは、巨大な「残存者利益」を享受した。

いまも、そうだ。

こんなに大きなイノベーションは今後、ないかもしれない。
しかし持続的なイノベーションを成し遂げる者だけが、
今後も生き残る。

そして、こうなるに違いない。

かわいい会社、
うつくしい会社。

するどい会社、
かしこい会社。

企業も店も、
問屋もメーカーも、
メディアも。

「敬老の日」
そんな思いが強い。

では、みなさん。
そして、父母へ。

Good Monday!

<結城義晴>

2011年09月18日(日曜日)

ジジと秋の結婚式[2011日曜版vol38]

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ジジです。

秋なのに、
あつい。

「残暑」です。

それでも、
ずいぶんと、
秋がやってきている。
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たとえば、
寝やすい。
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キモチよく、
寝ることができる。
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これは、
秋がやってきている証拠です。

ダンボールのおうちのなかは、
ひるまでも、カイテキ。
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これも秋がやってきている証拠。

ユウキヨシハルのおとうさん、
昨日は、結婚式に参列した。
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むかしの教え子。
ツカサくんの結婚式。
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結婚式があるというのも、
秋がやってきた証拠です。

「実りの秋」というくらいです。
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ウェディング・パーティも、
シンプルでよかった。

おとうさんは、
いつものように、
ひとこと、ごあいさつ。

「インテグリティ」というコトバを、
ツカサくんにおくった。

ふたりのかわいいケーキカット。
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そして
さいごにお礼のコトバ。
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ツカサくんは、
おまわりさん。

制服が、とても、
よく、にあっていて、
りりしい。

ふたりのしあわせを、
いのりました。
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秋になると、
いろいろなことが、
実をむすびます。

秋をつかさどるひとがいたとしたら、
それが、かれのシゴトです。

ツカサくんも、
いいシゴトをしてほしい。

おとうさんは、
そう、おもいました。
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そしておとうさんも、
いいシゴトをしようと、
おもいました。

秋は、
そんなときです。

<『ジジの気分』(未刊)より>

2011年09月17日(土曜日)

『私の履歴書』室伏稔さんが語る伊藤忠・中興の祖「瀬島龍三の心得」

尾崎放哉。
自由律俳人。
人をそしる心をすて豆の皮むく

うつろの心に眼が二つあいてゐる

私は、渥美清の風天もいいし、
もちろん種田山頭火も好きだ。
自由律俳句の先駆者・河東碧梧桐の勇敢さは、
すごいと思う。

しかし江國滋さんは、
『俳句とあそぶ法』の中でこき下ろしている。
江國さんは演芸評論家、エッセイストで、
滋酔郎という俳号を持つ俳人。

分け入れば水音
 山頭火

「これを俳句と呼ぶ気に、
私はどうしてもなれない」

「同じく放浪俳人――というより、
『物乞いアル中俳人」といったほうが
実像に近いと思われる尾崎放哉の句にいたっては、
もっとひどい」

咳をしても一人

肉がやせて来る太い骨である

「これが俳句といえるだろうか。
咳をしても一人。
甘ったれるのもいい加減にしろ。
肉がやせて来る。
不摂生の報いじゃないか」

江國さんはまとめる。
「俳句は、五七五がよろしく」

「憲法にさえ五七五はある。
日本国憲法第二十三条。
学問の自由はこれを保障する」

江國さんからいただいた私の蔵書には、
ご自身のサインがある。

エラそうなことばっかりぞ日記果つ

私は、是々非々派。

必ずしも五七五にはこだわらない。
よいものは、よい。

今週は、ふと、風天に巡り合い、
そこから自由律俳句の間を、
ちょっとだけ漂った。

そんな気分だった。
そう思ってください。

台風去り
残暑残りて
秋に入る

そんな季節の変わり目の私の心に、
自由律俳句が入ってきた。
それだけのこと。

さて日経新聞最終面の『私の履歴書』
元伊藤忠商事会長の室伏稔さんの連載は好調。
今朝は「瀬島龍三さん 短い間だが謦咳に接す」

今日の冒頭は、
「室(室伏)さん、ありがとう。
伊藤忠を頼むよ。日本を頼むよ」

瀬島龍三さんとの最後のお別れ。
「小さな声で私にこう言うと、
ほっとしたように目を閉じられた。2007年夏」

瀬島龍三は戦前、帝国陸軍参謀本部の作戦参謀。
敗戦、シベリア抑留、帰国、そして伊藤忠入社。
繊維専門商社を総合商社に業態転換させた「伊藤忠の中興の祖」。

「瀬島学校」と呼ばれた業務本部のスタッフ集団は、
参謀本部の組織モデルを採用したともいわれるが、
瀬島の考えは「重要な部署ほど少数精鋭」
これ、本当に大切です。

ただし、
少数であっても、
精鋭でなければならぬ。

室伏さんが瀬島さんから「耳が痛くなるほど強調された」のが、
縦割り組織に対する横ぐし。

「総合商社にとって強さと弊害の両面性を持つ『部門縦割り』に
部門横断的な総合調整機能という『横ぐし』を通すことの重要性」

そのうえで、瀬島龍三がつくった「心得」。
これがいい。

(1)「着眼大局 着手小局」
――目標は高く、広く、長期的に。実行は着実、綿密に

面白いことに、
着眼大局・着手小局は、オクシモロンで、
シンク・グローバル、アクト・ローカルに通ずる。

(2)戦略は戦術をカバーするが、
戦術は戦略をカバーできない

これは「組織は戦略に従う」
アルフレッド・チャンドラー・ジュニア。

だから「縦割り」に対する「横ぐし」の発想が出てくる。
こちらはチェーンストアの作演システムに通ずる。
こちらは安土敏。

(3)心得メモ

・仕える上司の意図をよくつかみ、誠心誠意仕えるべし
・勉強せよ。経済情勢、業界情勢、営業・商品知識
・謙虚たれ
・営業部門とは御用聞きのつもりで接するように

私は「謙虚たれ」と「勉強せよ」が好きだ。

室伏さんが瀬島龍三のことを悪く書くはずはないが、
その瀬島への批判も、実は多い。

ここでも、是々非々で判断するのがよかろう。
「瀬島心得」は是なり。

今日から三連休。
月曜日の「敬老の日」まで。
みなさん、良い週末を。

<結城義晴>

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