日曜日から軽井沢。

逝く夏の浅間は雲を重ね着て
〈平成浅間千句より 新宿・柳瀬亜湖〉
本当に珍しく、
浅間山の頂が見えた。

松尾芭蕉は詠んだ。
吹き飛ばす石も浅間の野分かな
長野県の山や草原もすばらしい。

モンゴルの大平原を思い出しつつ、
日本も美しい国であることを思った。

そこで、ウランバートルの小売業、写真紹介。
8月6日から12日まで、
ワンアジアクラブ・ウランバートル交流会に参加したので、
特別に小売業・流通業を視察する予定はなかったし、
情報も整理していたわけではない。
だから見たまんまの印象記。
モンゴル一番の産業は何か。
遊牧民の国だけに、
農畜産業と思われがちだが、
そうではない。
モンゴルのGDPの構成比は、
第1が鉱業、つまり採鉱・採石で23%、
第2が農林・漁業16%、
そして第3に卸売業・小売業が15%で入ってくる。
製造業は8%、運輸業も8%、
不動産業6%、通信4%となる。
鉱業成金はモンゴルには多い。
モンゴル経済の成長は顕著だ。
実質GDPの成長率は2011年に17.3%。
1人当たりGDPは、
2011年現在で3070ドル。
これが2013年に5649ドル、
2016年には1万1290ドルとの予測がある。
よく言われることだが、
1人当たりGDPが2000ドルを超えると、
スーパーマーケットが成立し、
3000ドルを超えると、
コンビニエンスストアが成立する。
この基準からすると、
モンゴルはスーパーマーケットもコンビニも、
成立することになる。
しかし私は、この見方は、
厳密には、間違いだと思う。
2000ドルを越えたら、
ハイパーマーケットが登場する。
つまり総合スーパー。
3000ドルを越えたら、
ハイパーマーケットが繁盛する。
それ以前の段階でも、
百貨店は成立する。
どんな国にも富裕層は存在するし、
駐在の外国人がいるからだ。
一般国民の生活が徐々に向上してくると、
百貨店の代理機能としての総合スーパーが登場する。
これは業態用語でハイパーマーケットという。
総合スーパーも「スーパー」だと言えば、
GDP2000ドル以上というのは当たっているが、
それは食品スーパーマーケットではない。
ウランバートルの「ノミン」は、
そのことを証明してくれる企業だ。
ネットで調べるとウランバートルに数店舗。
その代表的な店が、
ノミン・デパート。

世界中のデパートがそうであるように、
ノミン・デパートも入り口を入ると、
化粧品売り場。

そして多層階の超大型店。

ウランバートルの目抜き通りの一番店。
旧国営百貨店を、
家電小売業のノミンが買い取って経営。
ノミンは百貨店以外にも、
ハイパーマーケット、スーパーマーケットなど、
マルチ・フォーマット展開をする総合小売業。
このノミン・デパートの1階に、
ノミン・スーパーマーケットが、
デンと構えている。
その入り口のブランドマーク。

百貨店の中に入居した食品スーパーマーケット。
私が店内に入っていくと、
ちょうど停電になった。
だからパン売り場の照明も消えている。

それでも入り口のプロモーション・コーナーから、
ベーカリーになる。

さらに対面のケーキ売り場。

そして青果部門。

モンゴル人は、野菜、果物をあまり食べない。
だから品揃えも少ない。

青果部門から乳製品へ。

牛乳売り場。

続いて惣菜コーナー。

ここには人がついて、
対面方式。

大皿盛りの調理済み惣菜も品揃えされている。

さらに精肉売り場。

チーズなどの多段ケース売り場。

最下段にトレイ陳列でチーズ。

アイスクリーム、冷凍食品は、
独自のケースで販売。

主通路沿いのゴンドラエンドで、
オーガニック食品を見つけた。

「後進の先進性」を象徴する売り場。
缶詰など加工食品のゴンドラ。

流通パンの売り場。

そして異常に発達しているように見える飲料売り場。

さらに酒売り場も全体の売り場構成比率は高い。
まず樽売りのビール。

高級酒店のよう。

全種類の酒が品揃えされている。

ウォッカ売り場。

ドラッグストア用非食品もアソートメントされている。

その非食品ゴンドラ。

レジ前へ。

レジもひどくこんでいる。

人員は豊富に配置され、
サービス感を盛り上げる。

ただしレジはパソコンを使って清算していた。

クレジットカードはこれで。

百貨店の1階のスーパーマーケット。
私は昭和28年に誕生した東京・青山の紀ノ国屋を思っていた。
超富裕層と駐在外国人、さらに観光客。
だから一番の目抜き通りの百貨店に、
食品スーパーマーケットが入っている。
しかしノミンはウランバートル市内の生活圏にも、
ハイパーマーケットを展開している。

上階は高級マンション。
NOMIN HYPERMARKETと表示されている。

高度成長しているときの生活圏の拠点では、
ハイパーマーケットが有効だ。
つまり総合スーパー。
それがNOMIN HYPERMARKET。

Hはロシア文字でN、ИはI。
OとMはアルファベットと同じ。
そこでHOMИHは、英語表記でNOMINとなる。
モンゴルは長らくソビエト連邦と深い関係にあったし、
ギリシャ正教を主たる宗教にしている。
だからロシア文字、キリル文字が使われる。
<ちなみに私、大学時代の第二外国語はロシア語だった。
文字だけは読める>
ハイパーマーケットの入り口を入ると、
非食品雑貨の売り場。

中のゴンドラには飲料。

これは他の部門と比べると、
異常なくらいの品ぞろえ。

そして酒売り場につながる。

通路上には、
ウォルマートのアクション・アレーのような島陳列。

飲料を冷やして売っている。

コカコーラやペプシコーラの営業力が、
思い知らされる。
店舗左翼のどん詰まりに冷凍冷蔵ケース。

平ケースは冷凍食品。

壁面には対面コーナーの肉売り場。

といっても生肉は見当たらない。

その隣にベーカリー。

そしてケーキ売り場。

ちなみにこの生活圏のハイパーマーケットを訪れたのは、
午前9時過ぎ。
だからまだ朝の品揃えはできていなかった。
冷凍ケースは百貨店内スーパーマーケットと同じ。

そして乳製品。

ここで、富裕層のご婦人客を見つけた。

多段ケースに、当たり前のように品切れがある。

チーズはどの店もしっかり置いてある。

青果部門では作業中。

多段ケースと平台の併用。

リンゴはクレートでばら売り。

卵売り場。

割れた商品もあった。

壁面沿いの加工食品売り場。

そして店舗の中央あたりに絨毯売り場が出現。

売れ筋はもちろん、
チンギス・ハーンの肖像入り。

ハンガー陳列の衣料品売り場もある。

そして家電売り場は充実。

ノミンはもともと家電小売業だからだ。

掃除機もご覧の品揃え。

その隣は玩具コーナー。

レジ前は、食器売り場。

コスメティックスも、ゴンドラに陳列されている。

通路内の主要なスポットには、
黄色の買い物かごがきちんと配置されている。

レジは13台。

レジの外には、化粧品売り場。

ここは対面コーナー。
そしてファストフード。

フードコートはレストランのように、
テーブルクロスがかけられていた。

生活圏のハイパーマーケットは、
百貨店のスーパーマーケットよりも、
低価格で大衆的な品ぞろえだった。
ただし高度成長中のウランバートルは今、
総合スーパーとしてのハイパーマーケットが、
登場している段階。
日本やアメリカ並みのスーパーマーケットの成立は、
まだまだ先のことである。
一方、郊外では、
ノミンは「ホールセールクラブ」を展開。

これはコストコやサムズを志向する店。
百貨店と百貨店内スーパーマーケット、
それに総合スーパーとしてのハイパーマーケット、家電店、
さらにホールセールクラブ。
ノミンはマルチフォーマットの総合小売業だ。
しかしホールセールクラブまで実験が進んでいるとは。
まったくもって「後進の先進性」を示す現象。
そして1人当たりGDP3000ドルのとき、
ハイパーマーケットが登場することは、
台湾、中国だけでなく、ここモンゴルでも示された。
本格的なスーパーマーケットは、
相当に消費の成熟化が進んだ段階で花開くことも、
ウランバートルの現状によって逆に、明らかになった。
私は、その検証ができたことが、
とりわけうれしかった。
<結城義晴>





 
             
             
             
             
             
            








 
 
 







