結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年07月24日(金曜日)

2度の「土用丑」と日経+フィナンシャルタイムズのグライダー

本日、土用の丑。
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横浜野田岩。
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商人舎オフィスの目の前の、
老舗鰻屋。

シャッターは閉まっていて、
上記の張り紙。

そこで関係ないけど、
商人舎オフィスでは、
これをいただいた。
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Sさん、ありがとう。
ごちそうさまでした。

今年は土用丑の日が2日ある。
今日7月24日と8月5日(水曜日)。

だから消費も必ず活気づくはず。

その今年のウナギ。
日経新聞の記事。

ここまで、店頭価格は、
昨年に比べて安く推移してきた。

今シーズンは流通量が多い。
中国・日本・韓国・台湾の合計の池入れ量は、
不漁で大きく落ち込んだ前年に比べて、
2014年には4倍強の約91トンに膨らんだ。

一方、輸入量も、今年1~5月は、
約2500トンで、前年同期比7割増。

流通量、輸入量が増加すれば、
価格が安くなり、消費量も増える。

しかし安かった卸値も上昇に転じた。
7月初めごろの平均的な国産卸価格は、
1kg4000円前後。
前年同時期比で1割安。

しかしこの半月間で、
卸値がほぼ毎週100円程度ずつ値上がりし、
現在は4500円程度。

例年ならば、
土用の丑が過ぎると
卸値は落ち着く。

しかし今年は上昇が続きそうだ。
もちろんもう一度8月5日にも、
土用丑がやって来るし、
消費者の国産志向が根強くて、
その国産品の品不足が顕著だからだ。

再来週の土用丑の日に向けて、
商品調達と価格設定を、
今一度、検討しておく必要がある。

さて、新聞各紙一面トップ。
日本経済新聞が、
英国フィナンシャル・タイムズを
買収。

経済メディアとして、
世界最大の存在となる。

親会社は英国のピアソン。
買収金額は8億4400万ポンド、
約1600億円。

欧米を旅行すると、
ビジネスマンが一番読んでいるのが、
フィナンシャル・タイムズであることは、
よくわかる。

米国ウォルストリート・ジャーナルと並んで、
欧米トップの経済メディアである。

現在では、
デジタル版の有料読者は約50万人。
全体の約7割を占める。
日経も電子版読者は43万人。
単純合計すると93万人。

これは米国ニューヨーク・タイムズの、
91万人を抜いて、世界第一位。

新聞発行部数は、
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の、
146万部の2倍強。

これで紙媒体のビジネスメディアは、
二強体制となる。
一つが日経+フィナンシャル・タイムズ、
ひとつがWSJのダウ・ジョーンズ。

通信社としては、
米国ブルームバーグが大きい。
グローバル市場で、
この「3つの勢力がせめぎあう構図」。

つまり経済メディアも三占。

フィナンシャル・タイムズは1888年創刊。
日本経済新聞は1876年に、
「中外物価新報」として創刊。

前者は1995年に電子版を創刊し、
早くからデジタル化を進めた。
紙と網を合わせた購読者数は約73万。

全購読者の3分の2がイギリス国外。
そして2017年には網の売上高が紙を上回る。

日経は2010年に「日経電子版」を創刊。
紙と網を合わせた有料読者数は316万。

メディアの大型再編は、
21世紀に入って加速。
まず2007年、
米国ニューズ・コーポレーションが、
WSJを発行するダウ・ジョーンズを買収。

2013年には米国ワシントン・ポストを、
アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが、
個人資産で買収。

背景には紙媒体の苦境がある。
インターネット普及で販売・広告の収入が激減。
2008年のリーマン・ショックが、
それに決定的打撃を与えた。

その一方で、デジタル専業メディアが台頭。
低コストで制作した記事を無料公開し、
デジタル広告で利益を出す経営モデル。

2005年発足のハフィントンポストは、
既存メディアとも連携して、
記事を網羅的に収集・配信。

わずか数年で、
月間2500万人を超える読者を獲得。

これは例えば、
私の[毎日更新宣言ブログ]のやり方。
わが盟友の流通ニュースも同じ。

それに対して日本の流通マスコミでも、
紙媒体は、悪いけれど凋落の一途。

しかし世界では、
インターネットサービスのAOLが、
2011年にそのハフィントンポストを、
買収してしまった。

インターネットサービスが、
メディアを傘下に入れるところまで来た。

毎日更新宣言ブログは、
月刊『商人舎』と、
商人舎magazineへと発展し、
その両者の使い勝手の良さを、
融合させようと試みている。

もちろん、ごくごくちいさくて、
極めて専門的な、
マーケット・ニッチャーでは、
あるけれど。

時代は急激に変わる。
そのスピードについていけなければ、
グライダーとなって、
スピードが出せるエンジンをもつ存在に、
引っ張ってもらうしかない。

そんなことを論じるメディア組織自体が、
実はエンジンもスピードも、
持っていないことが多い。

以って自戒とすべし、ではある。

それにしても横浜野田岩。
麻布野田岩の暖簾分けの店だが、
店主は異なる。

土用丑の当日は、
横濱高島屋内の店が大忙し。
だから本店を休業にして、
全員が高島屋に詰める。

髙島屋店がエンジンで、
本店はグライダー。

情けない。

〈結城義晴〉

2015年07月23日(木曜日)

上田昭夫さんの訃報と本田宗一郎「得手に帆をかけて生きる」

梅雨明けの大暑、
しかし夕方には爽やかな空。
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上田昭夫さんが逝った。

62歳。

慶応義塾大学のラガー時代、
スクラムハーフとして活躍。
4年次には主将。
1975年に卒業し、
社会人ではトヨタ自動車工業(当時)。
1977年度、選手として日本選手権優勝。

1974年~79年には日本代表。
テストマッチ出場回数のキャップは6。

1984年に、慶応の監督に就任し、
85年度には、大学選手権で、
明治大学と両校優勝。

勢いを駆って日本選手権を制覇。
その決勝の相手は、
上田さんが社会人で属したトヨタ自動車だった。

この1985年度は、
慶應義塾體育會蹴球部にとって、
史上最高の年だった。

上田さんは、
選手としても優秀だったが、
指導者として花を開かせた。

その後、87年、フジテレビ入社。
キャスターとして活躍。

さらに1994年、
慶応監督として復帰。
1999年度は創部100周年のシーズンだったが、
関東学院大学を破って、大学選手権優勝。

体は小さかったが、
論理明快、熱血指導。

そしてここぞという時に、
不思議な勝負強さを発揮した。

2012年10月、フジテレビを定年退職。
難病のアミロイドーシスに侵されて、
治療中だった。

1999年7月から、
フジテレビのホームページで、
「編集長のひとりごと」を、
平日に毎日書き始めた。
2000年4月から「上田昭夫のひとりごと」、
2007年8月から「スポーツひとりごと」となり、
亡くなる直前の今年6月30日が、
絶筆となった。

偶然にも「スポーツひとりごと」は、
私の「毎日更新宣言」と同じ月のスタート。
そして私と同じ年。

絶筆のタイトルは、
「ああ・・・・」

胸が熱くなる。
ご冥福を祈りたい。

さて、日経オンライン「経営者ブログ」。
高原豪久ユニ・チャーム社長。
今日のタイトルは、
「本田宗一郎さんに学ぶ 仕事の極意」

ホンダ創業者の本田宗一郎さんの言葉。
「『得手に帆をあげて』生きるのが
最上だと信じている」

「得手」は「えて」。

「最も得意な分野で働くことが、
その人の価値を最大限に発揮できる」
これが本田さんの信念。

「好きこそものの上手なれ」

「好きなことを一生懸命やることによって、
専門性が磨かれて、
それが成果を生んで自信となり、
そして更なる努力につながるという、
グッドサイクルが回り始める」

しかし高原さんは指摘する。
「我々職業人としては、
不得手なことを一切やらずに
済むことはまずあり得ません」

そこで経営者は、
「社員それぞれの適性や得手が
何かを常に正しく見極めて、
適材適所の人事を行えるよう
ベストを尽くすことが
最も重要な役割だと思います」

「さらには組織のパワーを
最大限に発揮するために、
上司は自分自身の得手・不得手と、
部下のそれとの補完関係を十二分に考えて、
うまく組み合わせることが
ますます重要になっている」

ユニ・チャームが実践しているのが、
SAPS経営モデル。

「なぜ5」をくり返し、
本質を追究していく。

ユニ・チャームでは、
『自分の専門テーマ』について、
社員一人ひとりに考えてもらう」

その専門テーマとは、
「まず何といってもそれが大好きで、
10年かけても自分自身のために
自らが主役となって成し遂げたいと
渇望するような専攻テーマを決める」

「そしてひたむきに、
そこだけに集中する『一意専心』の気持ちで
取り組み続ける」

全社員が「世界最先端の専門家」となる。

今日のブログは、
高原さんの自社への思いが強すぎて、
共感を呼ぶという書きようではないけれど、
趣旨は分かる。

ピーター・ドラッカー教授は強調する。
「自分の強みだけを見よ」

それは「ほかの誰かになろうとしない」こと。
つまりほかの誰かの真似ばかりしないこと。

本田宗一郎の「得手に帆をかけて生きる」も、
まったく同じ哲学だ。

それは高原さんの言う「仕事の極意」だけでなく、
「人生の極意」そのものである。

上田昭夫さんも誰よりも、
得手に帆をかけて、生きた。
だから不思議に勝負強かった。

心からご冥福を祈りたい。

合掌。

〈結城義晴〉

2015年07月22日(水曜日)

東芝の「魂入れる」と第36回「コンビニ調査」の「完全なる三占」

「利益に関して最も基本的な事実は、
そのようなものは
存在しないということである。

存在するのはコストだけである」
(1994年刊『すでに起こった未来』〈上田惇生訳〉より)

昨日のブログのエンディング。

東芝は「存在しない利益」という幻影を、
追い求める集団になっていた。

田中久雄現社長(64歳)、
前社長の佐々木則夫副会長(66歳)、
前々社長の西田厚聰相談役(71歳)は、
21日付けで辞任した。

室町正志会長(65歳)が社長を兼任する。

報道によると室町氏は、
佐々木前社長とのレースに負けて、
社長に就任することなく、
田中社長時代に会長職についた。

つまり西田派閥ではなかった。

こんなことを書いていると、
ドラマ「半沢直樹」を思い浮かべるが、
商人舎ミドルマネジメント研修会で、
いつも話す「悪い組織の兆候」が、
くっきりと見えている。

日経新聞の巻頭コラム『春秋』
「2003年に『委員会設置会社』として、
企業統治改革では先陣を切りながら、
文字通り、仏作って魂入れず。
器はいくらでも立派に作れるが、
結局は、使う人次第なのだ、
と改めて思う」

毎日新聞の社説。
「東芝には、経営の暴走を
監視するはずの仕組みが備わっていた。
4人の社外取締役に加え
社内に監査委員会も設けて、
経営全般に目を光らせる体制だった。
形の上では他企業のモデルになるようなものだ」

そして結論。
「魂を入れる経営陣の
姿勢こそが問われる」

どちらも、言うのは、
「魂を入れる」

問題はその「魂」だし、
その「魂」を入れるのは誰か、だ。

日経は「使う人次第」といい、
毎日は「経営陣の姿勢」と書く。

ピーター・ドラッカー教授が、
自著『すでに起こった未来』に関して、
翻訳者の上田惇生先生に送ったMessage。

そこに答えがある。
「企業の目的は、
顧客を創造し、富を創造し、
雇用を創出することにあります。
しかし、それらのことができるのは、
企業自体がコミュニティとなり、
そこに働く一人ひとりの人間に
働きがいと位置づけと役割を与え、
経済的な存在であることを超えて、
社会的な存在となりえたときだけです」

ここでいう「富」とは、
「幸せ」のようなものだ。

企業自体がコミュニティとなり、
社会的な存在となる。

そして働く一人ひとりの人間に、
働きがいと位置づけと役割を与える。

半沢直樹的な組織構成員すべてに、
それをもたらす仕事が、
そのすべての人々を待っている。

さて、スコットランドは、
あんなに寒かった。
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横浜は、こんなに暑い。
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しかし銀杏の葉は、
頼もしく茂り、強い風に揺れる。

日経新聞の「2014年度コンビニ調査」。
日経MJのタイトルは、
「コンビニ 寡占の時代」
私にはこの見出しに関して、
ちょっとして感慨がある。

㈱商業界の取締役時代、
1998年8月に経営専門誌『コンビニ』を、
季刊で創刊した。
その後、ステップを踏んで隔月刊にし、
2002年8月に『コンビニ』を月刊化。

この季刊化のときから、
私は編集長兼取締役だった。

月刊化のときに、
鈴木由紀夫編集長に委ねたが、
雑誌のタイトルで悩みに悩んだ。

当時、コンビニエンスストアは、
業界では「CVS」と略語で呼ばれたり、
ダイヤモンド社は「Cストア」と呼んだり、
「コンビ」と略したり、様々。

私はこれからの時代に向けて、
「コンビニ」という業態用語を、
定着させようと考えた。

そして雑誌タイトルを、
「コンビニ」に決定した。

いま、日経のタイトルも、
「第36回コンビニ調査」。

ああ、コンビニが業界に定着した。
些細なことだけれど、喜ばしい。

その今回の調査。

全店売上高は10兆1718億円。
13年度比3.7%の伸長。

百貨店やドラッグストアの6兆円を、
はるかにしのぐ規模。
そしてスーパーマーケットの18兆円に次ぐ存在。

国内総店舗数は5万5709店で、5.3%増。

セブン-イレブンが、
過去最高の1602店を開設、
ファミリーマートは1061店、
ローソンは1010店。

店数はセブンが1万7491店、
ローソンが1万2279店。
ファミリーマートが1万1328店。

全店売上高は、
セブン-イレブンが4兆0083億円、
ファミマがFCを加えて2兆0080億円、
ローソンが1兆9620億円。

つまり売上高では、
2位が逆転した。

さらに4番手のサークルKサンクスが、
9889億円で6353店。

そのサークルKサンクスは、
ファミリーマートと経営統合するから、
2兆9969億円、1万7681店となる。

その結果、上位3社の市場占拠率は、
9割近くに達する。

日経MJのタイトルは、
「寡占の時代」

しかし私は常々、
「寡占から三占、そして複占へ」と、
言い続けている。

「寡占」とは、少数の供給者が、
ある一定の市場のほとんどを支配し、
互いに競争している状態。

「三占」は私の造語だが、
三者によって市場のほとんどが
支配されてしまう状態。

そして「複占」とは、
二者によって市場のほとんどが
支配されてしまう状態。

日本のコンビニ産業、
いよいよ寡占から三占へと、
姿を変えてきた。

日経の「コンビニ寡占」は、
今さら指摘することではない。

「コンビニ 完全なる三占」
それが2014調査の正体だ。

この三占は比較的、長く続く。

その間、コンビニは、
最も重要な業態として、
産業界に君臨し続けるだろう。

そして三者、特に二者は、
マーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャーとして、
絶賛され続けるだろう。

何しろ小売業第2位の10兆円業態の、
圧倒的なトップ企業。

例えば百貨店における三越伊勢丹よりも、
はるかに社会的影響力は大きい。

現時点の最大問題は、
ファミリーマートとローソン、
どちらがマーケットチャレンジャーの地位を、
射止めるかだ。

そのマーケットチャレンジャーの資格は、
実はただ一つ。明白だ。

マーケットリーダーの追随模倣作戦を、
放棄する存在であること。

そう、観察し続けるだけでいい。

しかし、やがて複占に至る。
つまり二者となる。

そうなったら、
その業態自体の衰退化はもう、
はっきりしてくる。

そこで破壊的イノベーションが、
業態全体に求められる。

そこまでセブン-イレブンが、
視野に入れているか。

鈴木敏文さんに聞いてみたいところだ。
答えは分かっているけれど。

〈結城義晴〉

2015年07月21日(火曜日)

東芝「利益至上主義」とドラッカー「利益は明日のためのコスト」

利益至上主義が粉飾を招いた。
しかし本質は組織風土にある。
マネジメントの考え方にある。

株式会社東芝の事件。
その第三者委員会が、
調査報告書をまとめた。

要約版が公表されている。

利益操作は合計1562億円。
期間は6年と半年間。
2008年度から2014年度上半期まで。

「経営判断」によって、
不適切会計処理が行われ、
「経営トップらを含めた組織的な関与」が、
認められた。

この間に代表取締役を務めた三人が、
まず辞任する。

東芝の歴史は、
1875年(明治8年)に始まる。
創業者は、初代田中久重。
「からくり儀右衛門」と呼ばれた発明家。

からくり人形「弓曳童子」や、
和時計「万年自鳴鐘」などを開発し、
東京・銀座に工場を興す。

2代目久重の田中大吉が、
東京・芝浦に工場を移転し、
田中製造所を設立。

その後、大きな発展を遂げ、
重電メーカーの芝浦製作所となる。

一方、一般家庭向け白熱電球で、
市場を独占していたのが、
合資会社白熱舎から発展した東京電気。

1939年(昭和14年)、両者が合併して、
東京芝浦電気として発足。

1984年(昭和59年)に、
株式会社東芝に社名変更している。

歴代社長は歴史に残る名経営者揃い。
1949年(昭和24年)には、
石坂泰三氏が社長就任。
経団連会長を12年務め、
「財界総理」の異名を持つ。

1965年(昭和40年)には、
土光敏夫氏が社長に就任。
ご存知、「ミスター合理化」

この石坂・土光時代は、
日本の高度成長期にあたり、
飛躍的な発展。

しかし、当然ながら、
それには反動が出る。

1976年(昭和51年)に、
岩田弌夫氏が社長の座について、
リストラを開始。

企業の成熟期に入る。

1981年(昭和56年)、
佐波正一が社長就任し、
1999年(平成11年)には、
ゼネラル・エレクトリックから、
シックス・シグマ手法を導入し、
社内カンパニー制を採用。

成熟企業のマネジメントの苦心が伺われる。

そして2005年(平成17年)、
現相談役の西田厚聰氏が社長に就任、
積極経営に転ずる。

大抵の場合、この積極経営が、
功を奏することはない。

そして西田時代から、
不適切会計処理が始まる。

2009年(平成21年)、
現副会長の佐々木則夫氏が、
社長に就任。

リーマン・ショック、東日本大震災。
大きな環境変化と、
家電商品の国際的コモディティ化現象。

売上高は伸ばせない。
経営トップたちは、
歴代の名経営者を意識するはずもないのに、
目先の利益にこだわる。
その結果、不適切な処理が、
全社に広がっていった。

2013年(平成25年)には、
現任の田中久雄氏が社長に就任し、
今回の不適切会計処理露見に至る。

調査報告書は第6章「原因論まとめ」で、
直接的な原因を7つ指摘する。

1.経営トップらを含む
全組織的な関与であった。

2.「見かけ上の当期利益の嵩上げ」を、
目的としていた。
これはコーポレート経営トップ、
さらに社内カンパニーのトップらが、
その目的を有していた事実として、
明らかになった。

3.当期利益至上主義と
目標必達のプレッシャー。

「チャレンジ」と称して、
過大な収益改善の目標値が示され、
その目標達成を強く迫られる。

業績不振のカンパニーに対しては、
収益が改善しなければ、
事業からの撤退を示唆することもあった。

「チャレンジ」のほとんどは、
長期的な視点から設定されるものではなく、
当期または当四半期における利益を最大化する
という観点から設定される目標達成値であった。

4.上司の意向に逆らうことができないという
企業風土があった。

上意下達が厳しい東芝の企業体質が、
「ルールに基づく会計処理よりも、
上司の承認を得られなければ実行できない
という事実上のルールが存在した」

5.経営者における適切な会計処理に向けての
意識または知識の欠如。

信じられないことだが、事実だ。

6.東芝における会計処理基準、
またはその運用に問題があった。

これも驚くべき事実。

7.不適切な会計処理が、
外部からは発見しにくい巧妙な形で
行われていた。

第8章「最後に」で、
第三者委員会はコメントする。
「東芝の多くの役職員にヒアリングを実施したが、
おしなべて、真面目にかつ真摯に
業務に取り組んでいることが窺われた」

全員が真面目で真摯。

実はこれが恐ろしい。

「集団思考」に陥りやすい体質を示すからだ。

利益至上主義と集団思考。
これが東芝粉飾事件の本質だ。

石坂さんや、土光さんが、
生き返って建て直しに取り組むしか、
道はないのかもしれない。

さて、私は午前中、
商人舎magazineのWeb会議。
今回も充実の提案ばかり。

そしてランチは魚盛。
食後に写真。
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右からWebコンサルタント猪股信吾さん、
プラージュのSE谷ツ田一成さん、
facebookコンサルタントでもある内田憲一郎さん。
不動産仲介企業の若き社長。

いつも、ありがとう。

その後、東京・小平へ。
第一屋製パン㈱の営業部門への講義。
関東・関西からほぼ全員が参集。

私の講義は3時半から110分ほど。
その後、質疑応答などして、
6時に終了。

それから懇親会。

現場の報告や意見を、
それぞれから聞いて、
さらに質問に答えた。

考えることが多かった。

ドキドキ・ワクワクする仕事をしようよ。
そんな職場にしようよ。
そんな会社にしようよ。

ピーター・ドラッカー教授は指摘している。
「利益は目的や動機ではない。
事業を継続・発展させる
明日のためのコストである」

「企業人自身が利益について
基本的なことを知らない」
ドラッカーはまるで、
東芝の「チャレンジ」の場面に、
同席していたかのようだ。

「そのため彼らが互いに話していることや、
一般に向かって話していることが、
企業の本来とるべき行動を妨げ、
一般の理解を妨げる結果となっている」
東芝の事実上の粉飾の原因は、
ここにあった。

「利益に関して最も基本的な事実は、
そのようなものは存在しないということである。
存在するのはコストだけである」
1994年刊『すでに起こった未来』〈上田惇生訳〉より)

〈結城義晴〉

2015年07月20日(月曜日)

海の日・梅雨明け、「立地に合わせた店づくり」

Everybody! Good Monday!
[2015vol29]

今年も第30週。
7月は後半の2週間に突入。

weekly商人舎の日替わり連載。
月曜朝一・2週間販促企画。

今日は「海の日」。
国民の祝日。

全英オープンゴルフ開催中。
The Open。
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今夏の会場はセントアンドリュース。
スコットランド。

私も、一度だけ、
ここでプレーしたことがある。

今回は悪天候のため、
日程が1日順延されて、
マンデー・フィニッシュ。
つまり月曜日に最終日。
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イギリスでは日本時間の今夜。
海の日の祭日は、
ゴルフ・ファンにはとくに、
ありがたいご褒美か。

三連休の最終日の昨日は、
関東甲信地方が梅雨明け。
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今日には、中・四国、近畿、東海で、
一斉に梅雨明け宣言。

何もかも美しく見え梅雨明くる
〈朝日俳壇より 横浜市・込宮正一〉

これは昼の部の句。
夜の部はこの一句。
満天の星磨き上げ梅雨明けし
〈同 鹿児島市・青野迦葉〉

暑いあつい梅雨明けだが、
夜は涼しい。

そして、気持ちの持ちようで、
すがすがしい人生を送ることができる。

一生涯我がまま気まま冷奴
〈同 伊賀市・福沢義男〉

冷奴には、そんな、
のびやかな自由さがある。

大切な商品だ。

俳人はきっと、
木綿豆腐の冷奴が好みに違いない。
そんな想像をさせてくれる句だ。

今週の私のスケジュールは、
比較的のんびりしている。

明日は午前中に、
商人舎MagazineのWeb会議。

午後は、第一屋製パンの営業マン会議。
私はマーケティングの講義をする。

明後日からは、
月刊『商人舎』8月号の原稿書き。

これも実に楽しい仕事だ。
内容は、秘密。

楽しみにしておいてください。

さて、一昨日の日経新聞に、
気になる記事。
「Jフロント旗艦店刷新」
サブタイトルが重要で、
「立地にあわせ店づくり」

当たり前のように見えて、
それがなかなかできない。

同社は大丸心斎橋店南館を、
インバウンド向けに改装する。
「関西を訪れる訪日外国人の消費取り込みが
激化しているからだ」

一方、東京の松坂屋上野店南館。
こちらは核テナントとしてパルコを入れる。
23階建ての建物の地上1~6階。
さらにシネマコンプレックスを導入。

松坂屋銀座店は2013年6月に閉店。
この跡地には、百貨店を出店しない。
「商業施設として再出発したほうが、
収益性が高まると判断」

Jフロントは、
「マルチリテーラー」を、
標榜している。

これはマルチ・フォーマットそのもの。

そしてこのブログで何度も書いているが、
衰退業態は立地が限定される。
百貨店は典型的な衰退業態だが、
まともな百貨店を続けることができる店は限られている。

だからJフロントは、マルチに展開する。
訪日外国人をターゲティングした店、
ファッションビルへの特化とシネコンの導入、
ショッピングセンター運営。

商圏内の競争状況を冷静に判断する。
マーケット・リーダーか、
マーケット・チャレンジャーか。
それならば業態内イノベーションを目指す。

マーケット・フォロワーならば、
異なるビジネスに転換する。

あるいはマーケット・ニッチャーを狙う。

百貨店という名称ながら、
何でも売る店から脱して、
顧客をターゲティングし、
ポジショニングする。

つまりSTPマーケティング。

百貨店ではもう、
当たり前の戦略だろう。

総合スーパーも、だんだん、
同じような業態になりつつある。

やがてスーパーマーケットも、
そうなるに違いない。

アメリカのクローガー、
セーフウェイ・アルバートソン、
そしてアホールドUSA、
デレーズ・アメリカなどを、
じっくり見ていると、それがよくわかる。

今週も、
自分の目で見て、
自分の耳で聞いて、
自分で考える。

では、みなさん。
Good Monday!

〈結城義晴〉

 

2015年07月19日(日曜日)

ジジの腎臓病[日曜版2015vol29]

ジジです。
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ボクはフクロがすきです。
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せまいところ。

ハコもすきです。

でも、なんだか、
へんです。
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ドアがしめられて、
おとうさんにつかまった。

これにいれられた。
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せますぎる~。
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そしてクルマで、はこばれた。
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それからビョーインに、
あずけられて・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ちょっと、はずかしい。
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すこし、さむいし。
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しずかにしています。
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こんなふうになりました。
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なんと、いうか。
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まあ、クールビズなんですが。
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梅雨もあけたし。
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気分をかえましょう、
と、いうことで。
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からだは、かるいし。
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クビのあたりも、
すっきり。
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ほっぺたは、
ふっくら。
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いかがです?
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あたまでっかち。
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ほんとうはボク、
こんなすがたなんです。
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あ~ん。
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口のなかまで、
みせちゃった。
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あ~あ。
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そして、お医者さんから、
だいじなことをいわれた。
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ボクはビョーキです。
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だからクスリ、
のまなければならない。
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クスリはこれ。
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ジンゾウがわるい。

それから、これ。
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クスリのかけらを、
すりつぶしてもらう。
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それをシーバにまぜて、
たべます。
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味は、あんまり、
かわりません。
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でも、きちんと、
クスリをのんで、
からだをたいせつにします。
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おとうさんも、からだ、
たいせつにしてください。

ボクたち、
いっしょですね。
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よろしく。

〈『ジジの気分』(未刊)より〉

2015年07月18日(土曜日)

GEジェフ・イメルト「本業は新製造業」と小売業「オムニチャネル」

今日から三連休。
私も本当に久しぶりに休暇。

まだ時差ボケが治らないので、
朝、4時ごろまで起きていて、
そのあと、ゆっくり、
正午くらいまで寝た。

そうすると、あっという間に、
夕方がやってくる。
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夕焼けが美しい。
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さて、GEのジェフリー・イメルト。
ゼネラル・エレクトリックCEO。
日経新聞のインタビューに答えて、
『真相深層』に登場。

2014Fortune500では、
世界で27番目の規模の会社。
年商1462億3100万ドル。
1ドル120円換算で17兆5477億円。
ただし前年比マイナス0.4%。
純利益は130億5700万ドル。
1兆5668億円で、マイナス4.3%。

日経新聞もインタビューを載せるとき、
このくらいのデータは加えてほしいところ。

ちなみに今や世界最大の家電製造業は
韓国のサムソン電子。
世界13位の企業で年商2089億3800万ドル。
純利益は272億4500万ドル。
年商は17.0%、利益は32.4%の伸び。
ただしこの後の2015年度決算で、
サムソンは大打撃を受けている。

日本最大の家電を中心にした企業は、
日立製作所。
世界ランクでは78位、日本企業ランクで7位。
年商は959億8800万ドルで、
前年比マイナス11.8%。
純利益26億4500万ドル。
利益は25.3%の伸びだが、
その額はサムソンの10分の1。

日本第2位の家電企業はソニーで、
世界105位、日本8位。
年商775億3200万ドルで、マイナス5.3%、
純利益は赤字12億8100万ドルで、
前年比なんとマイナス347.3%。

その次の第3位の家電企業は、
世界106位、日本9位のパナソニック。
年商772億2600万ドルでマイナス12.2%、
純利益12億0200万ドルで前年と変わらず。

そして日本第4位が、東芝。
世界145位で日本企業として15位。
年商649億0800万ドル、マイナス7.1%、
純利益5億0700万ドルで、マイナス45.7%。
東芝は再生できるかも疑わしい。

日立がかすかに利益を確保しているが、
他は揃って国際競争力を喪失している。

ジェフ・イメルトは、
中興の祖ジャック・ウェルチの後継CEOで、
2001年9月、同社9代目トップとなった。
ちなみに初代はトーマス・エジソン。
21世紀に入ったばかりのころに、
45歳で就任して話題になった。
しかし現在、イメルトは59歳。

「コモディティ・ヘル」(コモディティ地獄)
イメルトの有名な言葉だが、
コモディティ化した家電事業を売却決定。
ピーター・ドラッカー教授に指導された、
「ドキドキ・ワクワク」できなくなった事業を止め、
ウェルチ以来の伝統「選択と集中」に邁進する。

世界の家電産業を見ると、
それは納得できる。

そのうえ今年4月には、
利益頭の金融ビジネスから撤退。
中核ビジネスの製造業分野で、
一大改革に取り組む。

金融分野からの撤退の理由は、
やはりリーマンショックや金融危機にある。
「金融事業を取り巻く環境が劇的に変化し、
適切なROIを上げる能力が急速に衰えた」

「一方、GEが強みを持つ産業分野で
投資機会が際限なく広がってきた。
金融から引き揚げ、
航空機エンジンや発電機など
産業分野に再配分すれば
GEの競争力を強化できると考えた」

ROIはReturn On Investment、

投下資本利益率。

やはり事業分野を、
「選択し集中する」のがGEの基本。

しかし過去にない大改革。
GEの金融事業の総資産は約3500億ドル。
そのうちの約2500億ドルが売却予定。
約30兆円となる。

「心情的にはつらい決断だった。
従業員にとって厳しかったと思う。
しかし、世界は変わった」

この世界観が重要だ。

「アメリカの金融当局は、
我々に銀行になってほしかったが、
我々は銀行になるつもりはない」
選択と集中の真ん中に、
自分は「何屋か」がある。

GEはエジソン以来、「製造業」なのだ。
しかし新しい製造業にならねばならない。
「過去20年間、デジタル革命は主に、
消費者向けインターネットの分野が
牽引してきた」
アマゾン・ドット・コムやグーグル、
facebook、ツイッターなどなど。

しかし今後10~20年は違う。
「産業の世界に
デジタル化による変革の波が
本格的に訪れる」

だからイメルトが目指すのは、
「デジタル化によって、
強みを発揮する産業分野の、
『能力の拡張』と『生産性の向上』」

それをGEでは、
「インダストリアル・インターネット」と呼ぶ。

つまり、
「産業機器をネットワークで結ぶことで、
資産効率を高めることができる」

同じ考え方を、
ドイツでは「インダストリー4.0」、
中国では「インターネット・プラス」と称する。

GE「インダストリアル・インターネット」は、
「スタート時点でリーダーだが、
成功は保証されていない。
スピードが重要だ」

最後に新しい製造業たるGEを定義する。
それは「接続産業企業」。
Connected Industrial Company。

「リアルとデジタルの交差点に立って
デジタル化と同時に
製造業をさらに進化させ、
新たな時代で勝利する」

そしてそれは、
「モノのインターネット化」を促進させる。
Internet of Thingsで「IoT」と略される。

日本版ハーバード・ビジネス・レビューが、
今年4月号で特集した。
「IoTの衝撃」

これまでインターネットは、
主にIT関連機器に接続されていた。
パソコン、スマホ、タブレット、
さらにサーバー、プリンターなどなど。

しかしそれ以外の様々な「モノ」を接続する。
まず、デジタル情報家電を、
イ ンターネットに接続する流れが始まった。
テレビ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、
デジタルオーディオプレーヤーなどなど。

さらに映像、音楽、音声、写真、文字情報なども、
デジタル化されインターネットを介して、
伝達されている。

その延長線上。
あらゆる「Things」が、
インターネットに接続されて、
コミュニケーションの情報伝送路に変化する。

「世界は変わった」

「産業の世界に
デジタル化による変革の波が
本格的に訪れる」

その中でGEは、
「新しい製造業」となる。
そして「接続産業企業」となる。

このジェフ・イメルトの時代観は、
小売業の「オムニチャネル化」と、
同期している。

〈結城義晴〉

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