結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年01月29日(金曜日)

池上彰「マスコミのななめ読み」としまむらの「柔らかな商人」

「今夜は雪になりそうだね」

なんだか昔話のような言い回し。
これもまたいい。

甘利明経済財政・再生相の辞任から1日。
まだまだ解明されねばならないことも多いが、
想像したほどに騒がしくはない。

石原伸晃衆議院議員が、
素早く後任に決まったからでもあろう。

あっさり認めたから、もう、
突っ込みようがないということもあろう。

新聞やテレビなどマスコミ各社の、
取り上げ方もまちまちだ。

朝日新聞の連載、
「池上彰の新聞ななめ読み」

おもしろい。実に。

今朝のタイトルは、
「安倍氏は誰と食事した?」

安倍首相の前日の行動が、
各紙の朝刊政治面に掲載される。

1月22日の日本経済新聞のタイトルは、
「首相官邸ログイン前の続き」

18時55分
「大手町の読売新聞東京本社ビルで
渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長ら」

20時52分
「富ケ谷の私邸着」

日経の記事を見ると、
安倍さんとナベツネさんらの
夜の会食のように見える。

同じ趣旨の毎日新聞の「首相日々」

ナベツネさんのほかに、
「今井環NHKエンタープライズ社長、
評論家の屋山太郎氏らと会食」
名前が付け加えられる。

さらにその当事者のナベツネさんの
読売新聞「安倍首相の一日」

「東京・大手町の読売新聞東京本社ビル。
渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長・主筆、
清原武彦産経新聞社相談役、
芹川洋一日本経済新聞社論説委員長らと会食」

あれれ。
産経の相談役と日経の論説委員もいたのか。
しかも読売新聞本社ビルでの会食。

日経に、そのことは記されてない。

最後に朝日新聞の「首相動静」

「渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長、
橋本五郎・読売新聞東京本社特別編集委員、
今井環NHKエンタープライズ社長、
清原武彦・産経新聞相談役、
ジャーナリスト・後藤謙次氏、
芹川洋一・日本経済新聞論説委員長、
早野透・桜美林大教授、
評論家・屋山太郎氏と食事」
読売、産経、日経にNHKまで。

しかし朝日のこの記事は、
一カ所間違いがあって、翌日の紙面で、
「早野氏は同席していなかった」と訂正。

つまり朝日、毎日は、
この会食から外されて、
だから間違い記事となった。

池上さんのこの「新聞ななめ読み」

マスコミのトップやジャーナリスト、評論家、
そして学者たちの派閥、グループが、
よく描き出されていて、実に有益だ。

新聞や雑誌を読んだり、
テレビを見たりするときに、
わかりやすく言えば、
安倍さんや自民党と仲良しなのか、
その反対なのか。

知っておくと、
読み方も客観性を帯びてくる。

甘利明事件をすっぱ抜いた『週刊文春』が、
この会食に呼ばれることは、
もちろん、絶対にない。

朝日や毎日の記者と、
居酒屋で飲んでいるかもしれないけれど。

私のブログでは、
圧倒的に日経新聞の情報が多い。
それは小売流通サービス業の情報量は、
圧倒的に日経に軍配が上がるからだ。

しかしその日経新聞も、
読売・産経・日経とつながる路線にいる。

それは認識したうえで、
日経記事を引用し、評論する。

さて一昨日のその日経新聞に、
しまむら、「デフレの申し子」が
迫られた決断

「しまむらが復活を遂げつつある」

2014年2月期決算では5期ぶりの減益。
15年2月期も1988年の上場来初の2期連続減益。
さらに今年度第2四半期までも減益。

ところが、第3四半期までの連結純利益は、
一転、前年同期比で3%増の194億円。

12月の既存店売上高も、
前年同月比8.5%増。

劇的な回復だ。

その理由の第1は、
プライベートブランド「裏地あったかパンツ」

「社長、2300円以上するデニムパンツは
しまむらでは売れません」

「品質とコストを考えたら
2900円でも安いくらいだ。
思い切ってやれ」――。

しまむらのパンツ類は従来、
1900円前後がプライスポイント。

野中正人社長と商品担当幹部の、
激しい議論の末、
野中さんが押し切って投入。

フタを開ければ初年度で、
50万本以上を売る大ヒット。
関連品を含めると80万本となる。

野中さん。
「消費者の目は肥えている。
品質さえ伴えば、しまむらでも
高価格商品で戦える」

つまり、安さを前面に打ち出すだけでは、
顧客のニーズをとらえきれない。

だから「価格とともに商品政策の見直しに着手」

それが「裏地あったかパンツ」や、
「長期企画商品」と称するコア商品となった。

これらの高付加価値商品の投入で、
今年第3四半期までの既存店客単価は、
前年同期比で6.3%増。

「しまむらでは売れません」の、
固定観念は恐ろしい。

そしてどんな場合にも、
攻撃作戦があれば、
防衛作戦もなければいけない。

第2は防衛の「在庫管理の見直し」

「従来は商品部長が
仕入れと在庫管理の両方を管轄していた」

従って「商品の仕入れに目が行き
店頭に在庫が積み上がってしまっていた」

よくある話だ。

そこで「売場管理部」を新設。
商品部でキャリアを積んだベテラン社員を、
この売場管理部の責任者に据えて、
シーズンごとの店頭在庫管理を徹底。

すると商品の売れ残りが激減。

ただし、この二つの作戦を採用したからといって、
しまむらの第三四半期のような劇的転換は、
そう簡単に起こるものではない。

記事にはそれが書かれていない。

ところで、先々週、上海を訪れた際、
多くのショッピングセンターを視察した。DSCN9604-6

そのひとつの商業施設に、
「Shi ma la」が入っていた。DSCN9608-6

日本のしまむらの中国進出店舗。DSCN9609-6
中国語では「飾夢楽」、
英語表記はShimala。

会社は飾夢楽商貿有限公司。

2012年4月に中国大陸進出第1号店を、
上海にオープン。

店舗面積は標準化された約1000m²で、
日本のファッションセンターしまむらと同じコンセプト。DSCN9610-6
現在14店舗まで店舗数は増えたし、
中国のGDPの成長率と、
同じくらいの売上げの伸びを示す。

ただし、不動産費比率が日本に比べて高い。

総経理の小板橋哲也さんが、
店内を回りながら丁寧に説明してくれた。DSCN9615-6
㈱万代社長の加藤徹さんと一緒に写真。

ここで私が感じたのは、
しまむらの社員のひとたちのマインド。

なんというか、
とても素直で柔らかい商人。
極めて原則に忠実で、
フェアな精神を持っている。

なにより、言うこととやることが一致している。

これがしまむらのDNAなのだと思う。

それは実質的な創業者だった藤原秀次郎さんから、
昨年、退任した福間昭彦さんに引き継がれ、
さらに野中正人さんへと継承されたものである。

中国・上海の地で、
小板橋さんからそれが感じられて、
私はちょっと驚いた。

そしてこのしまむらのDNAが、
今期の第3四半期の劇的回復を、
実現させた原動力だと思う。

「デフレの申し子」――
さまざまなマスコミが、
しまむらにつけたキャッチフレーズ。

しかし他者から名づけられたコンセプトでは、
「しまむらでは売れません」となってしまう。

もともと組織体質となっているものを、
しっかりと刺激すると、
それは思わぬ潜在力を生み出す。

ユニクロが、
ハードでファストな、
リテイラーだとすると、
しまむらは、
やわらかくてゆったりとした、
商人だ。

第3四半期の攻撃策と防御策は、
表の作戦である。
裏側にあるものが、
表の作戦を数字にするのだと思う。

〈結城義晴〉

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