結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年03月08日(火曜日)

『週刊東洋経済』セブン&アイ鈴木敏文インタビューに思う

今日の横浜は20度近い気温。
もう春真っ盛り。

春告げるものみな淡く匂ひけり
〈朝日俳壇 西宮市・児山綸子〉

遊ぶ子の春の光となつてをり
〈同 姫路市・吉田光代〉

俳人たちの観察力。

親の目はいつも子にあり野に遊ぶ
〈同 八代市・山下接穂〉

いいですね。

日経新聞の経済コラム『大機小機』
私の好きなコラムニスト追分さん。
「爆買い依存症にならないために」

的確な忠告。

昨2015年、日本を訪れた中国人旅行者は
約500万人。
訪日外国人の4人に1人が中国人。
そして日本での消費額は訪日客全体の4割。

「爆買い様々」

中国人の消費対象は、
モノからコトへと広がっている。

つまり有形財から無形財へ。

これを消費の高度化という。
その高度化の先に日本がある。

だから中国人の日本への評価は高い。
リピーター顧客である。

コラムニストは指摘する。
「こうした爆買いは
いつまで続くのだろうか」

中国経済は既に大きくスローダウン。
日中関係には火ダネがある。
中国政府は資本流出に悩む。

何らかの制限の危険性。

「爆買い」の存在感が大きくなるほどに、
過度に頼ることは危険。

「依存症にならないための工夫」は必要。

この指摘には耳を傾けておきたい。

さて今週の『週刊東洋経済』
インタビュー記事。
セブン&アイホールディングス鈴木敏文会長。
メインタイトルは、
「戸井君と話したこと 病床で考えたこと」

サブタイトルは、
「ヨーカ堂社長辞任から健康問題まで」

話題集中。

又吉龍吾記者と堀川美行記者のリード文。
「セブン&アイ・ホールディングスに
衝撃が走った。
年明け早々、
傘下のイトーヨーカ堂の戸井和久社長が
就任から1年半で突如辞任し、
前任の亀井淳顧問が社長に復帰した」

「昨年は物言う株主として知られる米ファンド、
サード・ポイントが同社の株式を取得し、
ヨーカ堂の分離を主張した。
同社の行く末はどうなるのか。
自身の健康問題を含め、
鈴木敏文会長を直撃した」

最初の質問。
まず年明け早々に、
戸井社長辞任の経緯を問う。
「1月7日、戸井君は僕のところに
辞表を持ってきた」

「僕が出した方針に対して、
『それを達成できず、
会社をこんな状態にしてしまいました。
申し訳ございません』と言って、
辞表を持ってきた」

「『やれ』と言ったのにね。
彼は、『はいわかりました』と
言っていたたけれども、
実際にはわかりきれていなかった。
わかったつもりだった」

このあたりが鈴木敏文そのものだ。

鈴木さんに対しては、
「わかりました」といったら、
必ず実行しなければいけない。

同社伝統の「ました」は、
実に厳格なことなのだ。

しかし「わかりません」とも、
言いにくい。

質問はズバリ。
「CEO(最高経営責任者)として、
会長自身の責任については
どう考えていますか」

鈴木「こっちも任命した責任は当然ある。
しかし、CEOとして出した方針は
間違っていない」

質問。
「CEOの進退を議論する話では
ないということですか」

鈴木「そうだよ。
その証拠にセブン-イレブンはどうか。
同じ人間が具体的に
『この商品を作れ、この商品を』と
言っているのではなく、
『こういう方針でやれ』
ということを言っている。
要するに業態は違っても
言っていることは共通なんだよ」

「特にヨーカ堂の場合には、
脱チェーンストアという理論を言ってきたが、
脱チェーンストアになっていないのが
影響している」

「脱チェーンストア」の概念は、
実は、わかりにくい。

業態の違いを克服することも、
困難な仕事だ。

月刊『商人舎』12月号で、
「流通革命の軛を断て」と特集した。
あれだけ解説しても、
「脱チェーンストア」ですぐに、
利益向上とはなりにくい。

CEOとして出した方針は間違っていない。
だから責任を取る必要はない。
方針に「わかりました」と言って、
それができなかったから、
戸井和久は辞めた。

「CEOとしては方針を出すのが仕事で、
実務をやるのはCOOであり、社長」

これが鈴木敏文の組織論の根幹をなす。
これだけ聞いたら、それは正しい。

しかし、マネジメントとは、
人の強みを生かすこと。
ピーター・ドラッカーの考え方。

鈴木敏文は、
戸井和久の強みを生かせなかった。
それは事実だ。

まあ、1兆円の企業の社長なんだから、
生かされるではなく、自分で生きろ。
それが鈴木さんの考えなんだろう。

鈴木さんは、記者にもプレッシャーをかける。
「だから、編集の人たちも批判できないよね。
物まねのような記事を書くのではなくて、
新しい現象を見つけて、
それを記事にするのじゃなかったら、
みんな買ってくれないよ」

「今、何で雑誌の売れ行きが伸びないの?
一生懸命、書いて編集しているはずなのにね」

「僕はトーハンの経営にかかわっているから、
雑誌のことは、よくわかっている。
人のことは、みんな簡単に記事にできる。
『なぜ変わらないんだ』と書くけど、
自分でやってみたらいいよ。
それは本当に難しいこと」

変わること、
変えることは、
難しい。

鈴木さんもそれは認めている。

俺は「変われ」と言っている。
しかし「変われない」

雑誌も売れない。
だからイトーヨーカ堂が売れないことを、
批判できないぞ。

そんなニュアンス。

最後の質問は体調に関して。
「昨年末に体調を崩されたと聞いています」

鈴木。
「なんとなく体のバランスが悪くて
医者に行ったら、
すぐに手術した方がいいと」

「入院は10~12日間くらいかなあ」

質問「病床で今後のグループ経営のこと、
ご自身に万が一のことがあったら・・・・・
など考えましたか」

鈴木「自分のことは考えたってしょうがない」

「僕がいつも考えているのは、
自分がいつ倒れるかわからない、
ということだ。
よい人材がいつ出てきてくれる
かもわからない」

「だけど僕もいつまでもやっているのは
しんどいもんな。
本当は顧問でも何でもやっていたら、
そのほうが気楽なんだよね。
でも、そんなことは考えない。
だって、明日どうなるかもわからない。
人間なんて」

鈴木敏文、83歳。

CEOとしての方針は、
揺らぐことはない。

ただし、その方針の実現こそ、
至難の業だ。

又吉龍吾記者と堀川美行記者、
よくぞ、切り込んだ。

拍手。

そして、戸井さん、お疲れ様、
亀井さん、ご苦労様。

そう、言っておこう。

〈結城義晴〉

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