結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2017年08月11日(金曜日)

山の日に記紀「山彦・海彦」とシュミット「海と陸と」を考える

山の日。
山に親しむ機会を得て、
山の恩恵に感謝する。

スイスやネパールならば、
本当に山の日を設けて、
感謝しなければならない。
よく理解できる。

しかし日本は海に囲まれた山の国。
まあ、許されるか。

山の日は、昨年、
お盆前の祝日として制定。
だから「帰省の日」でも、
「帰郷の日」でもよかった。

海の日は、7月第3月曜日。
海の恩恵に感謝するとともに、
海洋国日本の繁栄を願う。

こちらが先に制定されて、
海の日と山の日が並んだ。

しかしそうすると、
どうしても思い出すのが、
海彦・山彦の話だ。
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「古事記」と「日本書紀」を「記紀」という。
古事記の「記」と日本書紀の「紀」を重ねて、
「記紀」と総称する。

半ば日本の神話の時代の記録。

その記紀に、
海幸彦山幸彦の兄弟の物語がある。

短くして「海彦山彦」ともいう。

山の猟を得意とする弟の山幸彦、
海の漁が得意な兄の海幸彦。

二人はある日、
互いの道具を交換する。
弟の提案だった。

道具を交換して、
二人は山と海に出かける。

しかし兄の海彦は、
獲物をとることができなかった。
「山の幸も海の幸も、
自分の道具でなくては
得られない」

教訓的なことを言いつつ、
弟に道具を返してもらおうとする。

一方の弟も、海に魚釣りに出かけたが、
漁の成果は上がらず、
そのうえ、兄の釣り針を、
海に落として失くしてしまう。

弟が兄に釣り針を失くしたと告げると、
兄は弟を責め立てる。

困り果てた山彦を救ったのが、
海神「大綿津見神」。

海の神様。

ここから浦島太郎の話となる。

海神は山彦を歓迎し、
娘の豊玉姫と結婚させる。

竜宮城で楽しく暮らすうちに、
あっという間に3年が経過する。

山彦は地上へ帰らねばならない。
そのことを思い出して、
妻の豊玉姫に伝えると、
海神の父が失くした釣り針を探し出し、
さらに霊力のある二つの玉をくれる。

陸に戻った山彦は、
その玉を使って、
兄の海彦との知恵比べや争いを制し、
兄に忠誠を誓わせる。

ここは浦島太郎とは、
大きく異なる神話だ。

その後、妻の豊玉姫は子供を産む。
それが鵜草葺不合命となる。
神武天皇の父である。

したがって、山彦は、
神武天皇の祖父ということになり、
天皇家の血筋となる。

一方の海彦は、
隼人族の始祖となって、
被征服民、従う民となる。

記紀の神話の物語。

山の日と海の日の背景には、
そんな物語がある、と私は思う。

しかし海彦山彦は、
日本の神話だけのものではない。

古代の「カナン」。

中東のパレスチナのことだが、
ここからフェニキア人とヘブライ人が、
生まれてくる。

フェニキア人は海の民で、
地中海の交易で栄えた。
一方、ヘブライ人は、
山の民で海を恐れた。

フェニキア人が海彦で、
ヘブライ人が山彦だった。

「ある通商国家の興亡」
森本哲郎の著作に記されている。
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森本は書いている。
「海をとるか、陸をえらぶか、
海から陸をながめるか、
陸から海を遠望するか、
総じて、どちらに、
自分の存在の基盤を据えるか、
それによって、人間、民族、国民は、
”海彦”になるか、”山彦”になるかを、
決めるのである」

「それはまさしく選択である。
運命の選択であるといってよい」

ドイツの政治学者カール・シュミットは、
「海と陸と」という著作を書いた。
海から陸を捉え直した試論である。

「ある種の歴史的な瞬間にあって、
(人間は)自分の歴史的存在の全体形式として
みずからの行為と働きによって
それに賭け、それに身を任せるところの
エレメントをさえ選ぶことができる」

「エレメント」を森本は、
「資質」と訳す。

シュミットを引用したあとで、
森本の結論。
「そこに世界史の、
運命劇のモティーフを見るのだ」

陸と海。
山彦になるのか、
海彦になるのか。

運命の選択がある。

自分は山彦なのか海彦なのか。
今日、それを思う。

私が生まれたのは、
福岡県早良区大字小笠木。
生まれたときには、
早良郡早良町大字小笠木脇山村といった。
だから私は山彦なんだろう。

しかし日本国は近代、
海彦として、通称国家として発展してきた。
だから日本国民は、
総じて海彦なのかもしれない。

しかし神話の世界では、
山彦が政治を司ることになり、
海彦は従う民となった。

その海彦の言葉。
「山の幸も海の幸も、
自分の道具でなくては
得られない」

自分の道具、
自分の仕事、
自分のエレメント。

それが大事だと思う。

今日はそんなことを考える日だ。
そして日本はお盆に入っていく。

〈結城義晴〉

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