結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2018年03月24日(土曜日)

トイザらス創業者チャールズ・ラザラス氏の訃報に思う

糸井重里さんの愛犬ブイヨンが、
3月21日に死んで、
ほぼ日の巻頭言「今日のダーリン」。

「一日経って、二日経って、
変わったことと
変わらないことが
あるのでしょうね。
じぶんには、まだよくわかりません」

いい写真です。〈「ほぼ日」より〉
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「こころのダメージのはずなのに、
からだのほうがつらいね」

すごく、よくわかる。

チャールズ・ラザラスさんも逝去。
「トイザらス」創業者。
一昨日の3月22日、
地元ニューヨーク州で永眠。
94歳だった。〈写真はCNNJapanより〉
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第二次世界大戦後の1948年、
今から70年前になるが、
まず子供用家具店を開業。
このころは業種店だった。

その後、1957年に、
玩具に特化した専門店業態を開発。

スーパーマーケットをはじめ、
多くのチェーンストアから学んで、
子どものライフスタイルストアに転換。

「スーパーストア化」と呼ばれるが、
同業のおもちゃ屋の3倍以上の売場面積に、
3倍以上の幅広い品ぞろえをして、
商品をラックに高々と積み上げる。

圧倒的に迫力のあるフォーマットである。

バナーは「トイザらス」
Toys “R”(= are) Us。
直訳すると「おもちゃ屋は私たちだ」

語尾はLazarus氏の名前と共通している。
英語表記のロゴ「Я」は、
「R」をロシア文字のように裏返しにした。

これは幼児特有の鏡文字を模倣したもの。
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大チェーンストアにするためには、
バナーやロゴにも特徴やセンスが必要だ。
それが強烈なポジショニングとなる。

創業から30年後、
トイザらス開発から22年後の1978年、
株式を公開して絶頂期。

以来、その調達資金をもとに、
店舗網を全米に広げて、
カテゴリーキラーの代表となった。

しかしそのカテゴリーキラーの典型として、
ウォルマート、ターゲット、
そしてコストコの逆襲にあって、
少しずつ業績を落とした。

専門店はその領域において、
どこよりも深く広い品揃えを持たねばならない。
さらに感動的なインパクトが必要だ。

実際に、
マンハッタンのブロードウェイの店は、
店内に巨大な観覧車が回る。
DSCN3259-1

恐竜が鎮座して、
強いインパクトを持っていた。
DSCN3251-1

チェーン展開を進めるうちに、
そういった子どもたちが熱狂するものが、
喪失されていった。

金太郎飴型のチェーンストアとなり、
少しずつ普通の店になってくると飽きられる。

チェーンストアの宿命である。

ラザラス氏も1998年にCEOを退任。

2005年には、投資会社に買収された。
コールスバーグ・クラビス・ロバーツ。

さらに2006年には、87店舗を閉鎖。
12店舗以上を二番手のフォーマットに転換。
このベビーに絞り込んだ「Babies”R”Us」は、
比較的好調だ。
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2009年のホリデーシーズンには、
“Holiday Express”という小型店舗を開発。
ショッピングセンターの空き店舗などに、
一挙に90店オープン。

これは「Toys“R”Us Express」と、
フォーマット名をつけて、
新展開を構想したが、
画期的な業績回復には至らなかった。

商人舎流通スーパーニュース。
昨2017年9月19日版。
トイザらスnews|
米国・カナダ事業が連邦破産法11章適用して倒産

2017年9月18日に、
「チャプター11(米国連邦破産法11章)適用を、
バージニア州裁判所に申請」

「2017年1月期決算で、
年商115億4000万ドルの大型倒産である。
1ドル100円換算で1兆1540億円。
売上高は前年比マイナス2.2%、
純利益は2900万ドル(29億円)の赤字」

「店舗数は1691店だが、
米国内店舗数879店、
海外店舗数は812店で、
世界18カ国に展開する」

「ただし今回は、
アメリカとカナダの北米事業が倒産の対象で、
日本など北米以外の国は含まれない」

倒産の理由は、
アマゾンなどのオンラインリテーラーと、
ウォルマートやターゲット、コストコなど、
総合リアル店舗業態との板挟みで、
売上げ低迷が続いたこと。

これが米国カテゴリーキラーの末路である。

アマゾンはもともと在庫を持たない商売で、
低経費運営を価格に反映させる。
ウォルマートは売場のアコーディオン化で、
ホリデーシーズンに玩具の売場を広げ、
その他のシーズンは縮小するという作戦。
これがトイザらスの年がら年中在庫過多商売の、
弱点を突いた。

ラザラス氏の逝去に関して、
トイザらスは声明を発した。
「この数週間、トイザらスにとって、
悲しい出来事が続いていたが、
当社の愛すべき創業者が亡くなったという
今日のニュースほどつらいものはない」

マイケル・ゴールドスタインCEO。
「ラザラスはおもちゃ業界の父だった」

「おもちゃを愛し、
おもちゃを買いに来る
子どもたちを愛していた。
おもちゃで遊んでいる子どもを見ると、
パッと顔を輝かせていた」

この創業者のDNAを受け継ぎ、
引継ぎ、発展させられなかった。

それがトイザらス倒産の真因である。

ラザラス氏の逝去とトイザらスの倒産。
ひとつの時代が終わったことを示している。

合掌。

〈結城義晴〉

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