結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年06月07日(日曜日)

谷新(たにあらた)こと現代美術評論家の小口牧通さん逝去

残念ながら続けて訃報です。

谷新さん。
「たに・あらた」と読む。
TANI_Arata2018

美術評論家。
前宇都宮美術館長。

私にとっては友人で、
本名の小口牧通(おぐちまきみち)さん。

先週火曜日の6月2日、
直腸がんで逝去。
73歳。

朝日新聞や日本経済新聞に訃報が載った。
私はそれで知った。

1947年、長野県岡谷市生まれ。
千葉大学卒業。

流通専門紙を経て、
㈱商業界入社。
広告部から「販売革新」編集部へ。

私はこの商業界で同僚だった。

その後、退社して、
美術評論家の道へ。

1972年、25歳の時に、
美術雑誌『みづゑ』が800号記念で、
芸術評論募集を企画した。
小口さんはここで一席を獲得した。

『みづゑ』は明治38年(1905年)創刊。
水彩画家の大下藤次郎が主宰。
日本を代表する月刊美術専門誌で、
ほぼ1世紀にわたって刊行されてきた。
この雑誌は、近代日本の美術界に、
多大な影響を与えた。

小口さんは大学を卒業すると間もなく、
この権威ある雑誌の論文募集に応じて、
大賞に値する一席を取った。

その後、流通ジャーナリストと、
現代美術評論家の二足の草鞋。

私は駆け出しの編集記者のころ、
「販売革新」誌の執筆者の一人として、
小口牧通さんを知った。

スーパーマーケットの記事が多かったが、
依頼すると、すぐに書き上げて、
送ってくれた。

その後、スカウトされて、
㈱商業界の広告部に入社して、
私は同僚となった。

一緒に酒も飲んだし、議論もした。
最初のゴルフ仲間だった。
商業界野球に入ってもらって、
出版健康保険大会に参加した。
ともに組合運動もやった。

私は商業界という会社にのめり込んだが、
小口さんは一歩引いた感じで、
チェーンストアや小売業を見ていたし、
会社に対してもクールだった。

美術評論と言う天職をもっていたからだ。

それでも私は小口さんと気が合った。
互いに信頼し合っていた。

私が「販売革新」誌から、
「食品商業」誌に異動した入れ替わりに、
小口さんは広告部から、
「販売革新」編集部に来た。

当時の販売革新は、
故人となった高橋栄松編集長のもとで、
「関西スーパースタディ」を製作中だった。

今でも覚えているが、
私は小口さんに途中から、
こまかく引継ぎしてその仕事を譲り、
異動した。

もちろん発刊までは大きくかかわった。

その後、私は1989年、
食品商業編集長に就任したが、
小口さんは美術評論家の道を志して、
独立した。

『美術手帖』では常連執筆者。

商業界という会社は、
インキュベーションの機能を持っていた。
人材孵化器の役割である。

創業者の倉本長治主幹が、
そういった人材を育てようとしていたからだ。

故外益三さん、故今西武さん、
故緒方知行さん、故高橋栄松さん、
結城義晴もその一人だ。

皆、流通の世界で仕事をしたが、
唯一といっていい例外が、
谷新こと小口牧通さんだった。

谷新となった小口さんは、
1992年10月、大作の評論集を出版する。
「回転する表象」
現代美術/脱ポストモダンの視角

デビューの『みづゑ』の評論から、
1992年の評論記事まで、
350ページにわたる分厚い単行本だ。
現代美術はなぜ動き、どう展開したか?
〈もの派〉以降、ポスト・ミニマリズム、
ニューウェーヴ、ポスト・ニューウェーヴ、
そして1990年代までの表現状況を、
インサイダーの目で追った。

実に深い考察が入った高尚な単行本で、
この本は美術界における谷新の評価を高めた。
IMG_70940

1982年、84年のヴェネチア・ビエンナーレでは、
日本館のコミッショナーとなって、
企画を手がけた。

ビエンナーレとは「2年に1度」という意味で、
毎偶数年に開催される国際美術展覧会のこと。
イタリアのヴェネツィアでは、
1895年から現代美術展が開催されている。
Giappone_Pavillon
この展覧会は、万国博覧会のように、
国が出展単位となっている。
参加各国はヴェネツィア市内の会場に、
自分のパビリオンを構えて、
国家代表アーティストの展示を行う。
国同士が威信をかけて展示を競い、
賞レースをする。

「美術のオリンピック」とも称される。

谷新は意欲的に、
その日本館の企画を担当した。

そのほかにも多くの展覧会に携わった。

1997年から2017年まで、
栃木県の宇都宮美術館館長となって、
ここでもユニークな美術館運営をした。
Utsunomiya_museum

宇都宮美術館は3つのテーマをもつ。
「地域と美術」「生活と美術」「環境と美術」。
近現代美術をはじめ、
ポスター、デザイン家具などを中心に、
国内外の作品を収蔵する。

宇都宮市にゆかりの美術作品も収集公開。
建物は宇都宮市郊外にあって、
「うつのみや文化の森公園」内にある。
広さは26ヘクタール。
index-01
岡田新一設計事務所のデザインで、
付近の自然の景観に配慮した低層構成。

小口さんはこの自然に囲まれた美術館で、
大好きなアートの世界に思いを巡らせ、
きっと幸せな人生を送ったに違いない。

でも、スーパーマーケットをはじめ、
チェーンストアの店舗を訪れると、
つぶさに観察して、
その評価もしたのだろう。

心からご冥福を祈りたい。
合掌。

〈結城義晴〉

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