結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年08月24日(月曜日)

商人舎主催ロピア研修会の「商売十訓」と講師陣の「熱と志」

Everybody! Good Monday!
[2020vol㉞]

2020年第35週。
8月第5週。

昨日の処暑を過ぎて、
ちょっと秋めいてきた。

先週の月曜日は、
全国で40度を超える猛暑だった。
それが1週間で変わる。

そして私たちは、
あの暑さをもう忘れている。

フィリップ・コトラーが言っている。
「マーケティングの基本となる
最も重要な概念は、
人間のニーズである」

季節が変われば人間のニーズが変わる。
気温が変われば人間のニーズが変わる。

したがって季節の変わり目には、
マーケティングも変えねばならない。

コロナ禍で人間のニーズは変わる。
だからマーケティングも変えねばならない。

黒田節子さんによれば、
「マーケティングとは、
マーケットをingすること」
すなわち、
「市場と顧客を揺さぶること」

さて今日は朝から、
商人舎主催のロピア研修会。IMG_84280

横浜駅西口の商人舎オフィスのそばの、
ビジョンセンター横浜。DSCN93220

7月に続いて二度目の研修会。
商人舎はいま、
こういった企業ごとの研修会も、
開催・実施する。DSCN01090

冒頭、今回の研修の趣旨を説明。 DSCN01080

そして高木秀雄名誉会長の特別講和。
「ロピア創業50周年に向けて」DSCN01140

ロピアの生い立ちから、
その経営哲学をゆっくりと語った。DSCN01180

今回から講師の演台には、
透明のパネルが用意されて、
より厳重にウイルス対策がとられた。
フィジカルディスタンシングを堅持し、
室内も十ニ分に換気する。DSCN01320

第一講座は結城義晴。
日本の小売業界の趨勢を分析し、
現在のロピアのポジショニングを明らかにする。

そして基幹産業化のビジョンと、
社会貢献、「世のため、人のため。」

この講義の終わりは、
倉本長治の「商売十訓」とドラッカー哲学。

その「商売十訓」は永遠に不滅です。

一 損得より先きに善悪を考えよう
二 創意を尊びつつ良い事は真似ろ
三 お客に有利な商いを毎日続けよ
四 愛と真実で適正利潤を確保せよ
五 欠損は社会の為にも不善と悟れ
六 お互いに知恵と力を合せて働け
七 店の発展を社会の幸福と信ぜよ
八 公正で公平な社会的活動を行え
九 文化のために経営を合理化せよ
十 正しく生きる商人に誇りを持て
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昼食の後は、
鈴木哲男講師。
52週マーチャンダイジングの神髄を、
実に丁寧に丹念に講義。DSCN92840

リテイルエンジニアリングを背景に、
主力商品、重点販売商品、
そして中心商品の整理をする。
理論的で、実務的で、革新的。
鈴木先生の講義は、
徹底的に実務に基づいている。DSCN92900

鈴木講師の講義が終わって、
内田貴之さんと写真。
ロピア取締役管理本部長。DSCN92970
ありがとうございました。

鈴木先生の講義に関して、
私なりのクレンリネスとクリンネスを、
解説する。
DSCN93010
そして「賢者は歴史に学ぶ」。
三井高利、マイケル・カレン、
アリステッド・プシコー、
さらにサム・ウォルトン。

これらの経営哲学も、
ロピアの理念と結びつく。

私の講義が終わって、
30分間、復習の時間を設ける。
そのあと、30分の理解度テスト。DSCN93060
ロピアの場合には、
その日のうちにテストをする。

教室の後ろは事務局のスペース。DSCN93160

今日学んだことが設問になっている。
自分の言葉で筆記するテストだ。DSCN93210
理解度テストが終わって、解散。
それぞれ自宅に戻って復習。

研修会事務局は、
講師陣と懇親を兼ねた夕食。
明日の講師の高野保男先生も、
先乗りでご参加。

こちらももちろん、
フィジカルディスタンシング。IMG_84350
ありがとうございました。
そして明日もよろしくお願いします。

オンラインでの会議や講義も増えてきた。
しかしリアル講義は断然、理解度が高い。
講師陣の「熱」も伝わる。

「志」を訴え、呼び起こすには、
リアル講義が一番だ。
いや、リアル講義しかない。

それは「店」という機能と同じだ。

今後も十分にコロナ対策を打ちつつ、
こういった研修会を展開していきたい。

もちろんオンラインセミナーも有効だ。
こちらも秋にはどんどん提案する。

「あちらも立てて、こちらも立てる」
コロナ禍はそれを教えてくれた。

では、みなさん、今週も、
志定まれば、気盛んなり。
Good Monday!

〈結城義晴〉

2020年08月23日(日曜日)

5年前の処暑、ジジと盆踊り[日曜版2015vol34]

炎天の地上花あり百日紅
〈高浜虚子〉

百日もの間、赤い花を
次々に開かせるから百日紅、
読みは「さるすべり」。

北海道新聞巻頭コラム「卓上四季」が、
虚子の句を取り上げた。

「夏はもちろん、秋風が吹き始めても
花を絶やさない」。

今日は二十四節気の「処暑」。
今年は二十四節気の15日刻みで、
ああ、ここまで来たか、と感じる。

もちろんCOVID-19の所為。

処暑は、
暑さが峠を越えて後退し始めるころ。
しかしまだまだ残暑は続く。

新型コロナウィルス感染も続く。
月刊商人舎7月号特集。
「今、いちばん大切なこと」202007_coverpage
慣れが一番怖い!!

今も、その通り。

例年ならば、8月第4日曜日の今日は、
地元の盆踊りだ。

今年はそれがない。

暦を繰ってみると、
処暑と重なる盆踊りは、
5年前の2015年だった。

2016年1月4日に死んだ、
わが愛猫、ジジ。

5年前の8月23日のブログは、
ジジと盆踊り[日曜版2015vol34]

ジジです。
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夏も、おわりに、ちかづいた。
DSCN2849-5

木々の色がふかくなって、
空もすきとおってきた。
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あつかった。
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夕方、雲がでてきた。
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ちょっと心配です。DSCN2848-5

なぜかといえば。DSCN2875-5

今日は、夜に、
たのしいことがある。DSCN2877-5

ボクはいけないけど。
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だから、うちのなかを、
ウロウロ。DSCN2881-4

みんなが、あつまってきました。DSCN2883-5

セブン-イレブンのところ。DSCN2938-5

駐車場にイスとテーブル。DSCN2907-5

そして公園まで、
チョウチン。
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ミュージックがきこえる。DSCN2860-5

盆踊り。
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ボクもおどり、すきです。
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ユカタをきて、
輪になって、おどります。
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イワシタさんも、
やぐらのうえで、おどっています。
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夜店もでてる。
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カキ氷。
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おんなの子たちも、
おいしそう。
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さいごに、「ビンゴです!」
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みんな、かけあしで、
あつまった。

盆踊り、ほんとうに、
たのしそうですね。
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でも、こうして、
夏がおわってゆく。

たのしいことは、
すぐにおわってしまう。DSCN2853-5
それが人生なのでしょう。
〈『ジジの気分』(未刊)より〉

処暑夕べ猫の企む勝手口
〈宇田篤子「京鹿子」より  2015年の句〉

処暑の夕べに、
ジジの最後の夏を思い出した。

合掌。

〈結城義晴〉

2020年08月22日(土曜日)

コロナ禍にも強い「ポツンと」系小売業の「辺境からの革新」

世界保健機関テドロス・アダノム事務局長。
WHO
COVID-19パンデミックに対して、
「2年未満で終わる見込みがある」

朝日新聞が報じたが、
変な日本語なので勝手に直した。

1918年に出現したスペイン風邪は、
世界を巡って2年以上続いた。

「世界が力を合わせて最大限の対策をすれば
より短い期間で流行を終わらせることができる」

スペイン風邪の時代と比べると、
現在はグローバル化によって、
世界がより密接につながっている。
だから国際的に感染が拡大しやすい。

一方で、
「感染を止める技術や知識は進んだ」
だから「ワクチンが実用化されれば、
流行は短縮される」

まあ、当たり前のことを発言したのだが、
2点は強調された。

第1に「2年未満」と期間を明確にした。

予想や予測の域を出たわけではないが、
再来年の2022年の夏までには、
「終息」するという希望的観測だ。

ということは、
来年の東京オリンピックは、
開催できないだろう、
との見込みが示されたことになる。

第2は「世界が力を合わせて」という点だ。
なかでも米中の協力がカギを握る。
そしてアメリカの大統領選挙の結果も、
COVID-19パンデミックに影響を与える。

何かと問題のあるテドロス事務局長。
それでも「2年未満で終息」の発言は、
希望の灯をともす役には立つか。
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さて、日経新聞電子版のNikkei Views。
編集委員の田中陽さんの執筆。
「”ポツンと”系小売業の強さ」

実に面白い。
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「日本各地の人里離れた場所に、
なぜだかポツンと存在する一軒家。
衛星写真だけを手がかりに……」
日曜夜の人気番組『ポツンと一軒家』。

それと同じような小売店舗。

「さすがにテレビ番組のような
極端な”ポツンと”感ではないが、
郊外のロードサイドに
ポツンと建っている店がある」

ワークマン、ケーズデンキ、
西松屋チェーン、カインズ、
コメリ、コスモス薬品など。

「共通しているのが、
コロナ禍でもしっかりとした業績を
上げている点だ」

この第1四半期の成績。
ワークマンの4~6月期の売上高は、
256億円で前年同期比25%増。
ケーズは1880億円で14%増、
西松屋は同年3~5月期で、
407億円の9%増など。

田中さんは考察する。
「ポツンと」系小売業が、
コロナウイルス禍に強い理由。

「密にならないから、
安心して買い物ができる」

「理由の一つかもしれないが、
もっと大きな理由がある」と田中さん。

それは、
「人口が少なく、
所得水準も都心に比べて低い地域でも
商売をやっていける経営力を
身につけたからだ」

「その源泉は、
“ポツンと”系小売業が持っている
魅力的な商品やサービスだ」

「たとえ不便な立地でも、
“買いたい商品”があれば
その店に消費者は向かう」

同感。

まず、ワークマンの分析。
「20年3月期に初めて、
売上高に対するPB比率が、
5割を超えて51.4%となり、
ワークマンでしか買えない商品を増やしている」

同社の土屋哲雄専務。
「頑張らなくても今後10年はやっていける。
競合はいませんから」

子供服の西松屋チェーン。
こちらもPB比率は5割近い。
今月、会長に就いた大村禎史氏。
「店は忙しくないほうがいい」

田中編集委員。
「売上高が低くてもやっていける
ビジネスモデルをつくりあげた。
1店舗当たりの従業員は約4人で切り盛りする」

ワークマンも西松屋も、
故渥美俊一先生の教え子で、
その優等生だ。

一方、ファーストリテイリング。
「1990年代までは、
ロードサイド型の”ポツンと”系小売業だった」

94年、広島証券取引所に上場。
この時の目論見書の文言。
「当社はカジュアルウエアを
郊外型店舗で販売する小売専門店であります」

柳井さんは地方の小売業の特徴を語る。
「弱者の立場からスタートしたので
工夫や試行錯誤を繰り返し続ける」

ニトリの似鳥昭雄会長。
日本経済新聞「私の履歴書」で語っている。
「資金は乏しく、土地を借り、
安い費用で店を作るしかない」

そして、しまむらも、
「ロードサイドで鍛えられた」

田中さん。
「ここ数年、業績低迷が続いたが、
コロナ禍でロードサイド型店舗が見直され
息を吹き返した」

さらに、ヤオコー。
同社の20年4~6月期は、
売上高前年同期比17%増の1299億円、
営業利益は同60%増の83億円。

法政大学大学院の小川孔輔教授。
「田舎、人が少ないところに生息地を見つける。
巨大資本がそこには入ってこられないから
生き延びていける」

最後にウォルマート。
「創業時は誰も見向きもしなかった郊外の
ロードサイド店を生息地にした。
そこで生き延びるために激安を実現。
顧客を誘引することに成功し、
成長の基盤を築いた」

私、結城義晴は、
1978年に初めてウォルマートを訪れた。
郊外の安普請の簡素な店だった。

ウォルマートの出店立地戦略の大原則は、
サバブとルーラルの境目である。

最後に田中編集委員。
「強い小売業は田舎、辺境からやってくる」

毛沢東の有名な言葉を引く。
「革命は常に辺境から始まる」

「マックス・ウェーバーも、
辺境革命論を唱える」

そして結語。
「厳しい環境が
流通革命を引き起こす企業を育てる」

今の大手新聞を見渡しても、
田中さんほどの分析家はいない。

この「ポツンと系小売業」を読んでいると、
マイケル・カレンを思い浮かべる。

アメリカの1930年、世界恐慌の翌年に、
マイケル・カレンがつくった店が、
「キングカレン」。
世界初のスーパーマーケットだった。
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地価の安い街の外側の大型倉庫を借りて、
大きな駐車場をもつ大型の店をつくった。
そしてそれまでのグロサリーストアに、
青果と肉と乳製品を加えた。

300 品目は仕入原価、200 品目は5%、
300品目は15%、300 品目は20%を、
それぞれ仕入れ原価にかけた値で売った。
マージンミックスの技術である。

300 品目の原価販売商品は、
爆発的な廉価を実現させ、
“世の人達は、わが店の入口を破って
乱入するでありましょう”という
カレンの予言の通りの状況となった。

これがスーパーマーケットの第一次革命だった。

私も言い続けている。
「革新は僻地から生まれる」

コロナは「ポツンと系小売業」の存在を、
クローズアップしてくれた。
だから地方企業こそ、
イノベーションに挑戦してほしいものだ。

〈結城義晴〉

2020年08月21日(金曜日)

劇作家・山崎正和さん、逝去/ヤオコーの27期連続最高益見込み

今日は二宮護さんが、
横浜まで来てくれた。
敏腕の編集者。
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大学の後輩で、
誕生日も9月2日と同じ。

学生時代には、
2人でバンドを組んでいた。

2011年12月2日には、
そのデュオ復活。
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今日は新しい単行本の打ち合わせ。
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私の単行本発刊は、
ほとんど二宮さんの編集。

昨年の鈴木哲男著『流通RE戦略』も、
編集は二宮護。
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私の本も楽しみにしてください。

さて、
山崎正和さん、ご逝去。
劇作家、評論家。

悪性中皮腫という癌。
まだ86歳。

もっともっと、
山崎さんの鋭い切り口や、
明快な文章を堪能したかった。

今の時代、これからの時代に必要な、
文明批評や社会評論は、
山崎さんにしかないものだった。
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1934年3月26日、京都市生まれ。
5歳から戦時中の旧満州へ。
私の父と同じ時期に、
同じ中国東北部の空気を吸っていた。
終戦後、14歳で帰国して、
それから京都大学文学部・同大学院と、
哲学科美学美術史を専攻し、
それが専門となった。

1963年、29歳の時、
「世阿弥」で岸田戯曲賞を受賞。
若くして劇作家としての地歩を築いた。

その後、関西大学、大阪大学の教授、
山口県の東亜大学学長など歴任。

サントリー文化財団副理事長、
中央教育審議会会長。
2018年には文化勲章を受章。

私もときどき、このブログで、
引用させてもらった。

2001年の論文「ポピュリズム」の分析が秀逸。

「ポピュリストに共通した政治手法」

「第1に、
彼らは民衆の感情を刺激し、
理性よりも情念に訴えるという形をとり、
しかも、その情念は反感、
あるいは嫉妬という点に絞られ、
その対象として敵を必要とする」

ポピュリズムは、
反感、嫉妬の対象としての、
敵を必要とする。

「第2に、
ポピュリストが勝利をおさめていくと
ナンバーツーたたきという形をとる。
そして、ポピュリズムが
勝利をおさめたうえで、
法的、制度的な改編を行って、
勝利の結果を永久化すると
ファシズムになる」

ポピュリズムはファシズムにつながる。

「第3に、
ポピュリズムはその形成過程において、
その目的を実現するための
手続き、過程、制度というものを
無視するやり方をとり、
あらゆる制度、手続きというものを、
むしろ目的の敵として攻撃する」

ポピュリズムは、
制度や手続きを攻撃する。

ポピュリズムは政治だけでなく、
産業にも企業にも現れる。
それらの手法はこの3つに集約できる。

こういった鋭い分析、
やってみたいものだ。

心からご冥福を祈りつつ、合掌。

さて日経新聞の連載「決算ランキング」
その第4回。
「逆風下でも連続最高益」

新型コロナウイルスの逆風。
にもかかわらず来2021年3月期に、
最高の純利益を更新する企業を探る。

第1四半期までに、
最終損益の見通しを開示している企業は、
1100社で、上場企業全体の65%。

通期の業績予想を発表した企業の、
純利益合計は前期比で30%減。

しかし最高益更新を見込むのは、
132社もある。

前期は378社が最高益だった。

そこで連続更新年数をランキング。
輝かしき1位に、
㈱ヤオコー。

連続記録は27期。
2位のセリアの12期を大きく引き離す。

日経記事の表現。
「ヤオコーは時代の変化を取り込み、
成長を続けている」

「総菜やプライベートブランドを充実させ、
少子高齢化による”個食対応”を進めてきた」

「コロナ下で”巣ごもり”が広がる中で
高単価の総菜が伸び、
感染が広がった2月から7月までの
毎月の既存店売上高は
前年同月を10%以上上回っている」

2位は100円ショップのセリア。
「マスクやアルコール消毒製品のほか、
巣ごもりで自宅を快適に過ごしたい
という来店客が多く
清掃や収納用品などが売れている」

「5~7月の既存店売上高は
前年を上回って推移し、
12期連続で最高益を見込む」

一方、前期まで14期連続で
最高益を記録したカカクコム
予想を開示していない。

2020年第1四半期の4~6月期は、
純利益67%減。
記録更新が危ぶまれる。

この記事は3月期決算企業の分析だが、
2月期決算企業では、
ニトリが34期連続最高益を見込む。

2月期決算企業でトップはニトリ。
3月期決算企業ではヤオコー。

どちらも樹木の年輪のように、
必ず外側に成長の輪を記してきた。

なんだか誇らしい気分になる。
ありがとう。

実績によって、
内外にその力量を示し続けるのは、
ポピュリズムとかけ離れた手法だ。

〈結城義晴〉

2020年08月20日(木曜日)

王位タイトルを獲得した藤井聡太の「強さの本質はIntegrity」

将棋の第61期王位戦。
木村一基王位に、
藤井聡太棋聖が挑戦する七番勝負。
藤井が三連勝のあとの第4局。
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互いに8時間の持ち時間で、
長考に次ぐ長考。

2日間指し継いで、
今日の午後4時59分、
後手番の藤井の80手目を受けて、
木村が投了。

そして終わった。
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王位のタイトルは藤井に移った。
18歳1カ月の史上最年少で、
二つ目のタイトルを獲得。
「二冠」と称する。

これに併せて藤井は八段に昇段した。
八段の昇段規定は4つある。
⑴竜王位1期獲得
⑵順位戦A級昇級
⑶タイトル2期獲得
⑷七段昇段後公式戦190勝

藤井は棋聖と王位。
「⑶タイトル2期獲得」の規定を満たし、
プロ八段が与えられる。

八段への昇段も史上最年少。

プロ棋士は四段から始まる。

奨励会というプロ養成機関に属して、
三段まで上がっていく。

その三段リーグの優勝・準優勝、
あるいは三段リーグ次点2回で、
天才たちが集まる奨励会を抜けて、
晴れて、プロになれる。

それが四段。

藤井聡太は2002年7月19日生まれ。
2012年9月、奨励会入会。
この時、小学校4年の10歳。
2015年10月18日、
史上最年少で奨励会三段に昇段。
中学1年で、13歳2カ月。

翌2016年9月3日、
三段リーグ最終局に勝利して、
10月1日、史上最年少で四段昇段。
14歳2カ月。

プロになってからは、
そのまま無敗で公式戦29連勝。
史上最多連勝記録を樹立。

その後、2018年2月1日、五段昇段、
同年2月17日、六段昇段、
さらに同年5月18日、七段昇段。
1年間に3段も登った。
これも史上初。

そしてこの王位戦タイトル奪取で、
藤井はあっという間に八段になった。
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残るは最高段位の九段。

その昇段規定は4つある。
⑴竜王位2期獲得
⑵名人位1期獲得
⑶タイトル3期獲得
⑷八段昇段後公式戦250勝

藤井二冠はもう一つタイトルを取れば、
多分1年以内に九段に上がる。

今回の王位戦に関して、
藤井は昨年の予選トーナメントから、
挑戦者決定戦まで10戦無敗。
さらに王位戦4連勝で、
ここまで全勝で頂点に立った。

何から何まで記録づくめ。

しかし藤井は奢らない。
今回のタイトル戦に関しても、
「4連勝は実力以上の結果です」IMG_84000
一方の木村前王位。
「もう一度、一から出直します」

木村一基も、まったく、
素晴らしい。

将棋のプロフェッショナル、
例外なく、人柄がいい。

藤井の語録。
日本将棋連盟刊『藤井聡太 強さの本質』から。
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タイトルの「強さの本質」を問われて、
藤井は答える。

「どんな局面でも
正しく指せるというのが、
強さというのかなと思います」

「状況がどうであっても、
そのなかで最善を尽くせることが
大切だと思います」

正しいこと、最善を尽くすこと。
それが「強さの本質」だと言う。

これは商いと全く同じだ。
いわばIntegrityである。

伝説の升田幸三は、
実力制第四代名人。
1918年生まれで、1991年に没した。
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あの大阪の坂田三吉の孫弟子。
木村義雄、塚田正夫、
そして大山康晴という名人たちと、
死闘を繰り返した。

「新手一生」の四文字熟語が、
升田幸三そのものを言い表している。

その升田幸三の言葉。
「時代は変わっても、人間を磨くのは、
目的に挑戦する苦労だということは
変わりません。
いまの人も苦労はしてるが、
それは物欲を満たす苦労で、
自分独特、独創の苦労ではない。
どんな世界でも同じだと思う」

「プロとアマの違いは、
アマは真似でも通用するが、
プロの道は独創。
またそうでなきゃ通用しない。
だから苦しいが喜びも計り知れない」

考えて、考えて、考え抜く。
そして「独創」の新手一生。

升田幸三はInnovationである。

昨日のブログでも引用したが、
ギルバート・K・チェスタトン。
「偏狭なのはむしろ、
よく考えない人だ」

よく考える棋士は、
偏狭にならない。

これも商売と一緒である。

だから私は将棋が大好きだし、
商売も仕事も大好きだ。

〈結城義晴〉

2020年08月19日(水曜日)

コロナ特需の四半期決算企業と「信念を持たぬ人の偏屈」

今日は朝からオンライン会議。
㈱True Dataの取締役会。
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いつも刺激的なディスカッション。

㈱プラネット会長の玉生弘昌さんが、
今年度から非常勤取締役となって、
いつも高い視野から教授してくださる。

だからTrue Dataは偏狭に陥らない。

ありがたい。

オンライン会議が終わって、
外に出たら、ヒマワリ。
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そしてコスモス・オレンジフレア。
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夏真っ盛りだが、
今週末はちょっと涼しくなる。

そして暑い夏もすぐに終わる。

わが安倍晋三首相が3日間の夏休み。
いつもならば大好きなゴルフをするだろうが、
慶応大学病院で7時間も検査した。
このCOVID-19禍で、
首相の健康は日本全体の問題だ。

私より2歳年下の65歳。
しっかり養生してほしいものだ。

一方、今日と明日の2日間にわたって、
将棋の第61期王位戦七番勝負第4局。

木村一基王位に、
藤井聡太棋聖が挑戦している。
木村は47歳の働き盛り。
藤井は17歳の高校生。
二人とも健康には問題はない。

藤井棋聖がここまで3連勝。
今日の木村の気迫はすごかった。

会場は福岡市中央区の大濠公園能楽堂。
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「おーい」戦だけに協賛の筆頭は「お~いお茶」。
駄洒落だけれど、面白い。

勝負は明日の2日目。

さて[商人舎流通SuperNews]

第1四半期・第3四半期の決算ニュースが3本。
いずれもコロナ特需で絶好調。

ワークマンnews|
売上高364億円26.3%・経常利益28.9%の大増収増益

ワークマンはベイシアグループで、
その期待の星だ。

ベイシアはかつての㈱いせや。
群馬県のローカルチェーンだったが、
徹底的にウォルマートに学んだ。

いまやカインズなどを合計した、
グループ売上高は1兆円に迫る。

そのワークマンは、
作業着、作業用品の小型専門店チェーン。
こちらもウォルマートの思想を体現して、
コロナ禍でも絶好調。

第1四半期の売上高は364億円、
前年同期比26.3%増。
営業利益は61億6300万円で30.5%増、
経常利益は65億3500万円で28.9%増。

利益率がすごい。
営業利益率22.9%、経常利益率24.6%。
PB商品は1170アイテムで、
売上高構成比は56.2%。
前年同期比10.3ポイントの上昇。
つまり半分以上がPB。
それが収益性の高さを支える。

ヨーロッパのプライマークのようだ。

一方、
オイシックスnews|
コロナ禍で売上高231億円42%・営業利益282%増

オイシックス・ラ・大地㈱。
第1四半期は売上高231億円で、
前年同期比42.2%増。
ヒュー!
営業利益20億7600万円、
282.3%。
ヒューヒュー!!!
純利益11億8400万円で、
337.9%増。
ヒューヒューヒュー!!!

そして営業利益率は9.0%。

オイシックスは、
大地を守る会、らでぃっしゅぼーやを、
傘下に収め、とくし丸も子会社にした。
しかしこれは同志的な経営統合だ。

だからこそ、
ラストワンマイルビジネスの寵児である。

そして、
マミーマートnews|
コロナ特需で売上高919億円12.5%増・利益倍増

㈱マミーマートは、
2020年9月期第3四半期連結決算。

㈱ヤオコーと㈱ベルクに挟まれた、
埼玉県のローカルチェーン。

しかし、第3四半期までの売上高は、
918億9300万円で前年同期比12.5%増。
営業利益39億4900万円、131.2%増、
経常利益42億4400万円、108.6%増。

営業利益率4.3%、経常利益率4.6%。

3月に「生鮮市場TOP東松山店」を開発。
いわゆるロピアを模倣したモデルで、
今のところ好調だとか。

米国のウォルマートも、
ドイツのアルディやリドルも、
ドン・キホーテもオーケーも、
ディスカウント型の店舗は、
企業ぐるみで徹頭徹尾、
エブリデーローコストでなければならぬ。

一つのプロジェクト、一つの事業だけ、
ディスカウントするケースは、
例外なく失敗している。

これは小売業の歴史が証明している。

最後に朝日新聞「折々のことば」
今日の第1909回もいい。

実生活で
いちばん偏屈なのは、
ぜんぜん信念を
持っていない人である。
(G・K・チェスタトン評論集『異端者の群れ』)
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高校の英語の先生は、
チェスタトンが大好きで、
いつもその文章を引用して、
授業をしてくれた。

1874年生まれ、1936年没。
イギリスの作家、批評家、詩人、随筆家。
探偵小説「ブラウン神父」シリーズも著名だ。
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そのチェスタトンの言葉。
「怒声とともに批判する人たちは、
批判を向けるその対象のことを
よく知らない」

「対象たる人々やその考えに”無関心な”人、
しかも自身の”意見を持たない”人に限って、
相手を頭から詰(なじ)り、迫害する」

チェスタトンの観察力、素晴らしい。
ヘイトスピーチなど、
この手の輩がするものだ。

「明確な思想を持つ人は
色んな思想に習熟していて
狂信に陥らない」

経営者も実務家も、
これは大切なことだ。

「偏狭なのはむしろ、
よく考えない人だ」

チェスタトン先生、ありがとう。

〈結城義晴〉

2020年08月18日(火曜日)

6月決算で日本第5位躍進のPPIHと「企業の神話的な身体」

大阪の最高気温は36.7℃。
横浜は33.8℃。

その大阪から横浜に来客。IMG_73460
私の隣から前田仁さん、小阪裕介さん、
稲越大樹さん、森川泰弘さん。
前田さんは万代ドライデイリー会事務局長。
小阪さんは㈱JTB大阪第三事業部営業四課長。
森川さんは同グループリーダー。
そして稲越さんは、
㈱万代総務部付業務サポートチームシニアリーダー。

今年から来年、再来年までの、
さまざまな事業やイベントのご提案。

私と商人舎にとっては、
このコロナ禍で懸案だった問題が、
どんどんクリアになって方向性が見えた。

前田さんの力量を思い知らされたし、
「前田チーム」の仕事のスピード感も実感した。

コロナは時間を早める。

心から感謝したい。

ランチは野田岩横浜店で、
天然鰻を堪能した。
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さて[商人舎流通SuperNews]
PPIHnews|
年商1兆6819億円26.6%増・経常10.2%増/ヤマダ抜いて第5位

PPIHは旧ドンキホーテホールディングス。
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス。
その2020年6月期本決算。

売上高は1兆6819億円、
前年同期比26.6%増。

これでヤマダ電機を抜いて第5位。

ヤマダの2020年3月期決算は、
売上高が1兆6115億円、
前年同期比0.7%増。

1位イオンが8兆6042億円(1.0%増)、
2位セブン&アイが6兆4436億円(2.2%減)
3位ファーストリテイリング2兆2905億円。
昨年8月期決算で前年比7.5%増。
4位アマゾン・ジャパンで1兆7444億円。
年平均為替レート換算で前年比14.3%増。

以上は月刊商人舎8月号より。
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このアマゾン・ジャパンの次に、
PPIHが食い込んだ。

ユニーが昨2019年1月から、
PPIHの連結子会社となった。
だから総合スーパー事業の売上高は、
84.8%増の4916億円となった。

PPIHの営業利益は760億円(20.4%増)、
経常利益が752億円(10.2%増)、
そして当期純利益が503億円(6.9%)。

ヤマダの営業利益は383億円(37.5%増)、
経常利益461億円(24.9%増)、
当期純利益246億円(67.5%増)。

どちらも大幅増益だが、
営業利益はPPIHがヤマダのほぼ2倍。

PPIHは営業利益率、経常利益率ともに4.5%、
ヤマダは営業利益率2.4%、経常利益率2.9%。

業態は全く違うが、
2兆円に近い会社の利益率の2倍差は、
なかなか追いつけるものではない。

一方、3位のファーストリテイリングは、
2020年8月期通期見込みだが、
売上収益が1兆9900億円、
コロナ禍の影響で前期比13.1%減、
営業利益は1300億円で49.5%減、
当期利益は850億円で47.7%減。

4位のアマゾン・ジャパンが、
コロナ禍の影響で絶好調だから、
2021年度はまた地殻変動が起こるだろう。

6位ヤマダの次は百貨店が続く。
7位の三越伊勢丹ホールディングスは、
1兆1192億円。
8位は高島屋の9191億円。
9位はエイチ・ツー・オーリテイリングで、
8973億円。

Jフロントリテイリングは、
国際会計基準に変えたため、
売上高は4806億円で30位だが、
従来の営業収益換算で1兆1337億円、
日本の百貨店第一となる。

これは月刊商人舎6月号で指摘している。
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来年の決算では、
コロナ禍の大打撃を受けて、
百貨店はすべて1兆円を割るだろう。

ランキングの変動だけでなく、
営業や組織、財務においても、
大きな変革を求められるに違いない。

最後に日経新聞電子版、
「経営者ブログ」
㈱IIJ会長の鈴木幸一さん。
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この電子版が創刊されて10年が過ぎる。
その発足以来毎週連載ブログを書いて、
一度も休んだことがなかった。

それが先週の火曜日、お盆休みで休載。
心配したメールがどっと寄せられた。

私の[毎日更新宣言ブログ]は、
おかげさまで13年間、
1日も休んでいない。

ほんとうに「おかげさまで」。

その鈴木さん、
暑い中、エリック・ヴュイヤールを読む。
1968年、フランス・リヨン生まれの、
ハンサムな52歳の作家、映画監督。

この6月発刊のその著『その日の予定』
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本の宣伝文句。
「第二次大戦前夜、
オーストリア併合に至る舞台裏を、
事実の断片から描き出す。
大企業家とナチ高官との秘密会合、
オーストリア首相を恫喝するヒトラー、
チェンバレンを煙に巻くリッベントロープ…。
彼らの卑小で時に荒唐無稽な行動・決断が
世界を破局に引き込んでゆく。
事実に基づく物語。
仏ゴンクール賞(2017)受賞作」

私も早速、購入した。

鈴木さんの引用部分。
「けれども、企業は
男たちと一緒に死ぬわけではない」

「企業とは決して死滅することのない
神話的な身体なのだ」

「オペル・ブランドは、
自転車を売り続け、
次に自動車を販売した。
創業者が死んだ時、
会社の従業員はすでに1500人を数え、
その数も増え続けた」
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1862年に創業したオペルは、
1929年に米国GMの100%子会社となり、
2017年には仏グループPSAに買収される。

「企業は
一つの人格であり、

その身体の
すべての血液は

頭に上がっていく」

「それは法人と呼ばれ、
その生命は私たちの生命より、
はるかに永続する」

PPIH、ヤマダ電機、
そしてファーストリテイリング。
イオンとセブン&アイ。
さらにトップの百貨店群。

「企業は一つの人格であり、
その体のすべての血液は、
頭に上がっていく」

これは事実だ。

しかし企業が、
神話的な身体かどうか、
そうなれるかどうかは、
わからない。

多分、創業者の、
Will(意志)とIntegrity(真摯さ)が、
大きな比重を占めるのだろう。

〈結城義晴〉

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結城義晴・著


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