結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年08月22日(土曜日)

コロナ禍にも強い「ポツンと」系小売業の「辺境からの革新」

世界保健機関テドロス・アダノム事務局長。
WHO
COVID-19パンデミックに対して、
「2年未満で終わる見込みがある」

朝日新聞が報じたが、
変な日本語なので勝手に直した。

1918年に出現したスペイン風邪は、
世界を巡って2年以上続いた。

「世界が力を合わせて最大限の対策をすれば
より短い期間で流行を終わらせることができる」

スペイン風邪の時代と比べると、
現在はグローバル化によって、
世界がより密接につながっている。
だから国際的に感染が拡大しやすい。

一方で、
「感染を止める技術や知識は進んだ」
だから「ワクチンが実用化されれば、
流行は短縮される」

まあ、当たり前のことを発言したのだが、
2点は強調された。

第1に「2年未満」と期間を明確にした。

予想や予測の域を出たわけではないが、
再来年の2022年の夏までには、
「終息」するという希望的観測だ。

ということは、
来年の東京オリンピックは、
開催できないだろう、
との見込みが示されたことになる。

第2は「世界が力を合わせて」という点だ。
なかでも米中の協力がカギを握る。
そしてアメリカの大統領選挙の結果も、
COVID-19パンデミックに影響を与える。

何かと問題のあるテドロス事務局長。
それでも「2年未満で終息」の発言は、
希望の灯をともす役には立つか。
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さて、日経新聞電子版のNikkei Views。
編集委員の田中陽さんの執筆。
「”ポツンと”系小売業の強さ」

実に面白い。
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「日本各地の人里離れた場所に、
なぜだかポツンと存在する一軒家。
衛星写真だけを手がかりに……」
日曜夜の人気番組『ポツンと一軒家』。

それと同じような小売店舗。

「さすがにテレビ番組のような
極端な”ポツンと”感ではないが、
郊外のロードサイドに
ポツンと建っている店がある」

ワークマン、ケーズデンキ、
西松屋チェーン、カインズ、
コメリ、コスモス薬品など。

「共通しているのが、
コロナ禍でもしっかりとした業績を
上げている点だ」

この第1四半期の成績。
ワークマンの4~6月期の売上高は、
256億円で前年同期比25%増。
ケーズは1880億円で14%増、
西松屋は同年3~5月期で、
407億円の9%増など。

田中さんは考察する。
「ポツンと」系小売業が、
コロナウイルス禍に強い理由。

「密にならないから、
安心して買い物ができる」

「理由の一つかもしれないが、
もっと大きな理由がある」と田中さん。

それは、
「人口が少なく、
所得水準も都心に比べて低い地域でも
商売をやっていける経営力を
身につけたからだ」

「その源泉は、
“ポツンと”系小売業が持っている
魅力的な商品やサービスだ」

「たとえ不便な立地でも、
“買いたい商品”があれば
その店に消費者は向かう」

同感。

まず、ワークマンの分析。
「20年3月期に初めて、
売上高に対するPB比率が、
5割を超えて51.4%となり、
ワークマンでしか買えない商品を増やしている」

同社の土屋哲雄専務。
「頑張らなくても今後10年はやっていける。
競合はいませんから」

子供服の西松屋チェーン。
こちらもPB比率は5割近い。
今月、会長に就いた大村禎史氏。
「店は忙しくないほうがいい」

田中編集委員。
「売上高が低くてもやっていける
ビジネスモデルをつくりあげた。
1店舗当たりの従業員は約4人で切り盛りする」

ワークマンも西松屋も、
故渥美俊一先生の教え子で、
その優等生だ。

一方、ファーストリテイリング。
「1990年代までは、
ロードサイド型の”ポツンと”系小売業だった」

94年、広島証券取引所に上場。
この時の目論見書の文言。
「当社はカジュアルウエアを
郊外型店舗で販売する小売専門店であります」

柳井さんは地方の小売業の特徴を語る。
「弱者の立場からスタートしたので
工夫や試行錯誤を繰り返し続ける」

ニトリの似鳥昭雄会長。
日本経済新聞「私の履歴書」で語っている。
「資金は乏しく、土地を借り、
安い費用で店を作るしかない」

そして、しまむらも、
「ロードサイドで鍛えられた」

田中さん。
「ここ数年、業績低迷が続いたが、
コロナ禍でロードサイド型店舗が見直され
息を吹き返した」

さらに、ヤオコー。
同社の20年4~6月期は、
売上高前年同期比17%増の1299億円、
営業利益は同60%増の83億円。

法政大学大学院の小川孔輔教授。
「田舎、人が少ないところに生息地を見つける。
巨大資本がそこには入ってこられないから
生き延びていける」

最後にウォルマート。
「創業時は誰も見向きもしなかった郊外の
ロードサイド店を生息地にした。
そこで生き延びるために激安を実現。
顧客を誘引することに成功し、
成長の基盤を築いた」

私、結城義晴は、
1978年に初めてウォルマートを訪れた。
郊外の安普請の簡素な店だった。

ウォルマートの出店立地戦略の大原則は、
サバブとルーラルの境目である。

最後に田中編集委員。
「強い小売業は田舎、辺境からやってくる」

毛沢東の有名な言葉を引く。
「革命は常に辺境から始まる」

「マックス・ウェーバーも、
辺境革命論を唱える」

そして結語。
「厳しい環境が
流通革命を引き起こす企業を育てる」

今の大手新聞を見渡しても、
田中さんほどの分析家はいない。

この「ポツンと系小売業」を読んでいると、
マイケル・カレンを思い浮かべる。

アメリカの1930年、世界恐慌の翌年に、
マイケル・カレンがつくった店が、
「キングカレン」。
世界初のスーパーマーケットだった。
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地価の安い街の外側の大型倉庫を借りて、
大きな駐車場をもつ大型の店をつくった。
そしてそれまでのグロサリーストアに、
青果と肉と乳製品を加えた。

300 品目は仕入原価、200 品目は5%、
300品目は15%、300 品目は20%を、
それぞれ仕入れ原価にかけた値で売った。
マージンミックスの技術である。

300 品目の原価販売商品は、
爆発的な廉価を実現させ、
“世の人達は、わが店の入口を破って
乱入するでありましょう”という
カレンの予言の通りの状況となった。

これがスーパーマーケットの第一次革命だった。

私も言い続けている。
「革新は僻地から生まれる」

コロナは「ポツンと系小売業」の存在を、
クローズアップしてくれた。
だから地方企業こそ、
イノベーションに挑戦してほしいものだ。

〈結城義晴〉


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