結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2023年11月11日(土曜日)

将棋竜王戦第4局の藤井聡太の[派手な手と地味な最善手]

将棋の第36期竜王戦。

七番勝負の第4局。
2日間のタイトル戦。

場所は北海道小樽市、銀鱗荘。

ここまで藤井聡太が3連勝。
その藤井聡太はご存知、八冠。810hwJSeVvL._SL1500_

竜王・名人であるだけでなく、
王位・棋王・王将・棋聖・王座・叡王をもつ。
21歳。

タイトル戦以外にも、
一般棋戦と呼ばれる全棋士参加の棋戦がある。
こちらは持ち時間が少ない。

テレビのNHK杯や銀河戦、
朝日杯、JT日本シリーズ。

この4タイトルも昨年度は、
藤井が全部獲得してしまった。

今、将棋界のすべてのタイトルは、
藤井がもっている。

その藤井に同年の伊藤匠七段が挑戦した。

今、最高位とされる竜王戦。

1988年までは十段戦と呼ばれた。
それを読売新聞が「竜王戦」と改め、
賞金を棋界最高にした。

そこで竜王位が、
将棋界最高のタイトルとなった。
棋士たちも将棋界も、
金には弱い。

しかし私は、
名人戦こそ最高だと考えている。
棋士たちもそう考えているに違いない。

何しろ名人は江戸時代から続く。
徳川時代には名人は家元制だった。
つまり「終身名人」という地位だった。

1603年(慶長8年)、
征夷大将軍となった徳川家康が、
幕府を創設し、幕藩体制を構築した。

家康は将棋や囲碁にも力を注いで、
その組織体系をつくった。

1612年(慶長17年)、
家康は初代大橋宗桂に、
将棋の名人位を授けて、
俸禄を与えた。

その後、300年以上も、
終身制が続いた。

明治、大正、昭和となって、
1937年(昭和12年)、
十三世名人の関根金次郎が、
自ら名人位を退位し、
実力名人制が始まった。
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関根は阪田三吉をライバルとした。

第1期名人戦は、
木村義雄が初代名人となった。

藤井聡太は第十八世名人である。

竜王戦とは歴史が違う。
重みが違う。

ただし現在は、
賞金トップの竜王と歴史ある名人は、
ほぼ同格であると見ていい。

藤井聡太はその竜王戦の防衛戦に臨んだ。

そして見事に挑戦者の伊藤匠七段を破った。

2日制タイトル戦としては、
驚くほどの早指しで、
初日が終わった。

そして伊藤が封じ手を行った。

そのまえに、
やや不利な形勢にあった藤井は、
飛車で角をとるという、
2四飛の勝負手を指した。

飛車のほうが角よりも価値は高い。

その次は、
誰が見ても同歩と飛車をとるしかない。

その、誰が指してもこれしかないという手を、
伊藤は封じ手にした。

巧みだ。

伊藤は100%、同歩しか指さない。
そうすると藤井もまた100%、
次の手は3二角成りしか指さない。

そうすれば一晩、伊藤は、
3二角成りの次の展開を、
自分だけが考えることができる。

夜が明けて9時、
やはり伊藤は2四同歩を指し、
藤井は3二角成りを指した。

ここでAIによる評価で、
伊藤が6割ほどの優位に立った。

しかし一晩考えに考えたその次の手が、
なんと敗着となってしまった。

6七銀打ちである。

藤井聡太は、
不利な体勢にも拘わらす、
その後のすべての手を読み切っていた。

最後の最後は37手詰め。
芸術的な詰将棋のごとき手順で、
勝ち切った。
IMG_90703

ヒヤリとする手を連発して、
最後は自分の持ち駒がゼロになった。
完璧な詰将棋の如き終幕。

間違いなく今年度の「名局賞」になる棋譜である。

藤井は美しい棋譜を残したいと考えている。
それを竜王戦最終局で創り上げてしまった。

終局後の藤井のコメント。
「本局は中盤で苦しくしてしまったいましが、
その後は受けに回って、
チャンスを待つ展開にできました」
IMG_90823
これでタイトル戦は19戦無敗。

故大山康晴十五世名人が、
タイトル戦連勝記録をもつが、
それに並んだ。

伊藤匠。
現在、永瀬拓也と並んで、
最高のAIによる研究者だ。IMG_90803

対局が終わって感想戦。
立会人は渡辺明九段と広瀬章人八段。
渡辺は前名人・元竜王、広瀬も元竜王。

4人は実に楽しそうだった。IMG_90873

藤井聡汰の言葉。
「将棋を指す限り勝敗はついてまわるので、
一喜一憂してもしょうがない」

成功や失敗に一喜一憂してもしかたない。
一喜一憂は無駄である。

仕事も商売も同じだ。

「“派手な手“と“地味だけど最善手”の兼ね合いは、
とても難しいと思います」

商売にも派手な手がある。
地味な最善手もある。

ともすると派手な手を打ちたがる。
それも不要ではないが、
地味な最善手が何より求められる。

「手順には芸術的な美しさがあります」
この芸術的な美しさは、
売場づくりにも店づくりにも当てはまる。

ちなみに第4局の会場は、
北海道小樽市の料亭・温泉旅館「銀鱗荘」。
所有者は(株)ニトリパブリック。

銀鱗荘は1939年の創業。
もとは積丹半島の大網元の屋敷「鰊(ニシン)御殿」
現在の小樽・地平磯岬へ移築して、
高級旅館になった。
北海道文化財百選。

(株)ニトリホールディングスが、
2018年8月に取得した。

それもあって、
似鳥昭雄会長の長男の似鳥靖季総支配人が、
藤井竜王に記念品を手渡した。

派手な手と、
地味な最善手。

将棋にも商売にも両方必要だが、
私は地味な最善手が好きだ。

〈結城義晴〉

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