日経新聞「大機小機」7月23日版。
タイトルは「人間と技術」
コラムニストは一礫さん。
多分、高名な学者だ。
「ひどい戦災を受けた国々が
なぜ急速に回復できるのか」
自ら問うて自ら答えている。
日本もそうだし、ドイツも同じだ。
その答えは、
「物はこわれる。
消費されても戦争で焼かれても同じだ」
「ただ、人間と技術とが残れば
国は必ず復興する」
素晴らしい解答だ。
コラムニスト。
「いつの時代にあっても、
経済社会に活力を取り戻す基本的要件を、
指摘している」
一方、1866年、福沢諭吉は、
『西洋事情』の著述作業に取りかかる。
福沢は1961年から1年間、
幕府使節団(文久遣欧使節)に随行して、
ヨーロッパ諸国を巡った。
その際の手帳をベースに執筆した。

書き上げた項目は、
当時の日本人が知らないこと、
あるいは知っていても表面だけのことばかりだった。
政治、収税法、国債、紙幣、
商人会社にはじまり、
学校、病院、各種障害者施設など
社会事業関連が続く。
さらに蒸気機関、蒸気船、蒸気車、
伝信機、ガス灯。
技術にかかわるものが書き連ねられていた。
福沢は、社会発展の基盤が
技術にあることを肉眼で捉え、
実証的に掘り下げて考えていた。
コラムニスト。
「技術進歩によって
生産性を高めることができる」
福沢は160年以上前に、
技術がもたらす経済的意義を見抜いていた。
「高い生産性は、
国富すなわち資産が
所得を生み出す力を強め、
持続的な賃金上昇を可能にする」
80年前、日本は、
太平洋戦争の敗戦で廃虚となった。
その「日本を復興させたのは、
やはり、人間と技術だった」
その通りだ。
「今日のわが国経済を再興できるか否かも、
科学技術立国の再興いかんにかかっている」
「技術力を高めるためには教育が必須だ」
これも正しい。
「AI、それを支える半導体、
量子を巡る新展開をはじめ
テーマは盛りだくさんだ」
先進技術の人材育成について、
質の高い教育投資が急がれる。
コラムニスト。
「だが、それだけでは十分ではない。
社会の風潮によるバックアップが欠かせない」
機運をつくり上げること。
「サイエンスや技術に関する
要求と関心、評価、支援が社会的に高まり、
新しい技術を身につけた者が
相応に評価される空気が醸成されることだ」
「技術の進歩を真の意味で歓迎し、
受け入れるような社会であってほしい」
2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏。
学士会の夜講演会で力説した。
「科学技術は国家生存の条件である」
「政治を支える下部構造は経済だが、
その経済を支える土台は科学技術である」
ただし、現代では、
科学技術とともに、
アートの技術、
マーケティング技術、
さらに商売の技術なども、
経済を支える土台となる。
ピーター・ドラッカーは、
イノベーションについて書いている。

「イノベーションとは、
顧客にとっての価値の創造である。
それは科学的・技術的重要度ではなく、
顧客への貢献によって評価される」
つまり科学的技術だけでなく、
顧客への貢献技術も経済を支えるのだ。
「イノベーションの必要性を最も強調すべきは、
技術変化が劇的でない事業においてである」
「人間と技術とが残れば
国は必ず復興する」
その技術がイノベーションされ続けねばならないし、
それは科学だけではないということだ。
J・S・ミルの時代、
福沢諭吉の時代、
ドラッカーの時代、
さらにドラッカー後の現代。
技術は広がり、深まる。
もちろん教育も然り。
科学の教育、アートの教育、
マーケティングの教育、
商売の教育。
人間としての教育。
国力が低下し続ける現在の日本でも、
この考え方は必須だ。
「人間と技術とが残れば
国は必ず復興する」
〈結城義晴〉

























