結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2008年10月11日(土曜日)

ウェグマンズは極めてオーソドックスで高度なチェーン・オペレーションを展開している!

9日の朝、アメリカ小売業の講義で、
メイシーズが、ほとんどの米国百貨店を統合し、
従来の伝統的デパートメントストアは、
ノードストロームだけが残ったという話をしていた。
(コールズ、ディラードは新興百貨店、
ノードストローム以外に残った都市型百貨店はサックスだけ)

私は、いつものように言った。
「日本でいえば、高島屋がほとんどの百貨店を統合し、
伊勢丹だけが残ったようなもの」

その直後、高島屋とH2Oリテイリングの3年後の統合が発表された。
パルタックとアライドの合併も。
そして大和生命保険の経営破綻。

こちらの新聞にも、こんな見出しが躍った。
「Confidence Cracks」
「信頼の崩壊」

「信用にもとづいている金融システムの、
その信用が喪失した」
こんな表現も。

今、ニューヨークのパークセントラルホテル。
ホスピタリティで世界一のシンガポール航空の職員の定宿。
エキゾティックな風貌の客室添乗員が集団で出入りする。

アメリカの衝撃に、日本の企業も、動いている。

毎度のことのように言うが、
1929年の世界恐慌の翌年に、
マイケル・カレンの
スーパーマーケットは登場した。

1979年の二回目のオイルショックの翌年、
サム・ウォルトンが
エブリデー・ロープライスを始めた。

2008年の金融破綻の今、
何かが起こるに違いない。

それは、何か。

全身をアンテナにして、
この世界の中心・ニューヨークで、
感じ取ることにしよう。

しかし、そのニューヨーク、
意外なほど、活気がある。

ニュースや情報は、リアルタイムで世界を駆け巡る。
しかし、大衆は強い。
大衆の暮らしは、
そんなに劇的な変化をし続けるものではない。

実体経済は、ゆったりとしている。
貨幣経済の影響が、実体経済を直撃し、
実体経済まですぐにガタガタになることはない。

Moneyに踊り、Moneyに踊らされる者が、
「信用」を喪失し、破綻を迎える。

さて、ウェグマンズ。
予定を変更して、
ロチェスターで、4店舗を回った。
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良い店ばかり。
最新オープンの店舗。
話題の基幹店舗。
最古の大繁盛店舗。
そして、その間の店舗。

つくづく、感じた。

ウェグマンズは、
標準化の整ったチェーンストアであることを。

オーソドックスなスーパーマーケットであることを。
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(入口は全店同じ平台展開)

その大前提の上に、従業員のモチベーションがある。
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(ハロウィンの楽しい展開)

もちろん店内には、遊びの要素が満載。
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しかし、楽しい遊びがあることは、
チェーンストアのコンセプトとは反しない。

美しいプレゼンテーション。
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これもチェーンストアの原則に反するものではない。

チェーンストアは、すべて、
ディスカウントを志向しなければならないわけではない。

チェーンストアはすべて、
ローコスト・オペレーションでなければならないわけではない。

もちろん、経営の原則として、
顧客に対して、大きなご利益を提供しなければならないし、
獲得した粗利益よりも経費を大幅に削減すれば、
営業利益は大きくなる。

その有力な手段が、
ディスカウントであり、
ローコスト経営である。

ウェグマンズも、
「コンシスタント・ロープライス」を、
積極展開している。
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これは、1980年に、第二次オイルショックの直後、
サム・ウォルトンがはじめた経営革命の手法だが、
ダニエル・ウェグマンが、2000年に意を決して、断行したもの。
「コンシスタント」⇒一貫していること。
「ロープライス」⇒低価格。

なにを?

コモディティ・グッズを。

そのうえで、生鮮食品の充実。
フードサービスと呼ぶ「惣菜・デリ」の圧倒的魅力。
これは「ミールソリューション」とも表現される。
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アメリカでは、この経済危機に端を発した消費不況の中、
カジュアルレストランが、壊滅的状況となった。

その分の消費が、
ミールソリューション型のスーパーマーケットに、
ほとんどすべて流れた。

ウェグマンズは、高度なチェーンオペレーションで、
この流動した消費を、ごっそり奪い取った。

もちろん、「ごっそり」が一番得意なのは、
ウォルマートである。

ロチェスターで、「ごっそり」を実現させたのが、
この2社。

そのあおりを受けて、
「トップス」という2番手スーパーマーケットは、
クリティカルマスの基準値17%を切って、
マーケット・シェア16%に落ちてしまった。

ウェグマンズとウォルマートの、
WW、ダブル・ダブリューのサンドイッチとなった。
低価格・コモディティのウォルマートの、
さらに低価格・コモディティ&ローコストのアルディは、
同じ皿にのってはいるが、
そのサンドイッチの付け合わせのピクルスのようなものだ。

それらを、不況の中の客たちが、
喜んで食べている。

それがロチェスターの競争である。

2007年のロチェスター地区のマーケット・シェア(←2006年)
①ウェグマンズ 23店舗49.0%(←24店49.4%)
②トップス   19店舗16.0%(←21店21.7%)
③ウォルマート・スーパーセンター 8店舗13.5%(←6店8.8%)
 ……
⑦アルディ   12店舗1.8%(10店1.4%)

ウェグマンズを誤解してはいけない。
大商圏型のグルメスーパーマーケット。
日本のデパ地下のようなマーチャンダイジングを展開している。
それは、木を見て森を見ない論議である。

<結城義晴>

[追伸]
急遽、<11月28日出発⇒12月3日帰国>の、
ウェグマンズ&ニューヨーク
「米国クリスマス商戦視察研修会」

開催することにしました。
お知らせしておきます。
商人舎まで、ご予約申し込みだけでも入れてください。
少人数10名ほどで閉め切ります。
 

 


2 件のコメント

  • ■「80後」ホワイトカラーに「別荘貸し切り旅行」が流行―BRICsではさらなる経済発展を、先進国では「新たな社会」にあわせた、インフラ・システム改革を!!
    こんにちは。なかなか良い内容の記事だと思います。今日の金融危機、いずれ収束します。金融危機や、恐慌など大昔から何回も繰り返されてきたことです。現在では、信用不安を取り戻す措置などが考えられているため、いずれ収束します。しかし、その後が問題です。現在多くの人々の中は「経済・金融」というキーワードで埋め尽くされています。しかし、先進国においてはもはや「経済・金融」だけでは何も変わりません。特に先進国においては社会が変貌しています。もうすでに既存の社会とは全く違った「次の社会」とも言うべき異質な次元の社会に変貌しています。今後、こうした「異質な次の社会」に対するインフラの改革、システムの改革などを実現しないことには、健全な社会を実現することは不可能であり実体経済も健全にすることはできません。スーパーの誕生など、まさしくその当時のアメリカの社会の変化にあわせたものだったに違いありません。詳細は私のブログをご覧になってください。

  •    yutakarlsonさん、ありがとう。
       ポストインダストリアル社会は、知識社会です。
       知識社会では、Moneyは、手段の一つであって、
       すべてではないし、
       もちろん目的でもありません。
       バベルの塔に、神の審判が下った如く、
       Money本位制度は、一度、
       大反省を求められるはずです。
       それが今なのか、
       もっと根本的な改革の時が来るのか、
       私は、後者だと思っています。

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