結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年12月12日(水曜日)

鈴木敏文の「人民を、人民によって、 人民のために統治すること」

昨日の夕方の東京・芝増上寺。
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後ろに、東京タワー。
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空気が透き通っている。
それがよくわかる。

朝日新聞の経済欄コラム『経済気象台』。
1863年11月19日、
リンカーンのゲティスバーグ演説を取り上げる。
“government of the people, by the people, for the people”
「人民の人民による人民のための政治」と訳される。

コラムニストは「人民の」の「の」に関心を持つ。
英語の“of”である。

故丸谷才一さんは、解釈する。
「人民を、人民によって、
人民のために統治すること」

こちらは「を」と「統治」するにこだわって、
governmentは「政府」ではなく、
「統治すること」と理解する。

丸谷説が「正しい」というのが、
コラムニストの意見。

「政治家は選挙民には嬉々として媚を売る。
与党や省庁は、好景気には利権拡大のため、
経済効果も疑わしい箱モノに税金をつぎ込み、
不景気にも需要拡大と称してばらまきを重ねてきた」

「国民が政治の所有権を取り戻し、
自らが自らを統治する本来の民主主義を
樹立すべき時に来ている」

まったくその通り。

毎日新聞の『水説』。
水曜日の社説コラム。
先週12月5日は専門編集委員の潮田道夫さん。
「物価上昇は困る?」がタイトル。

現時点で、毎日新聞の記事のなかで、
3番目にアクセスが多い。
「総選挙にむけ、どの党もデフレ退治を公約している。
物価をあげることが国民の期待に応えることだと、
政治家は考えているわけだ」

「そうなのだろうか。
国民は物価上昇を望んでいるのか」

日本銀行の生活意識に関するアンケート調査を引く。
第51回目の9月の調査。

「1年前と比べて物価が『上がった』と答えた人にその感想を聞くと
8割台後半の人が『どちらかと言えば、困ったことだ』と回答した。
明らかに人々は物価の上昇を歓迎していないのである」

この調査結果について、
白川方明(まさあき)日銀総裁は指摘する。
「今の日本においては
『物価は上がらないのが普通だ』という感覚にとどまらず
『物価の上昇は許容できない』という感覚が
広く定着している可能性を示唆している」

「物価に関するある種の常識的な感覚、
すなわち『物価観』こそが経済理論では
『インフレ予想』という用語で抽象化されているものの実像」

その結果、企業は値上げができず
賃金などコスト削減に走っている。
デフレからの脱却がますます遠のく。

「経済の成長力を強化し、
賃金の引き上げを実現していく、

という実体的な変化を起こすことが不可欠」

ここで「初めて、インフレ予想が上昇し、
デフレ脱却が見えてくる」。

「大事なのは企業のチャレンジ精神を高め
新規需要の開拓力をつけること
だというのが結論」
これにも私は賛同したい。

今週末の日曜日には、
衆議院総選挙。

正当なことを正当に主張し、考察し、
国民が政治の所有権を取り戻したい。

日経新聞に鈴木敏文さん登場。
セブン&アイ・ホールディングス会長。

政治に望むこと。
「第1は景気を浮揚させることができるかだ。
脱デフレを果たすために大胆な取り組みが必要。
国内総生産の6割を占める個人消費が落ち込めば、経済成長は難しい。
不安が先に立ち将来への見通しが立たないのが日本の現状。
消費者は景気が上向いたと感じるようにならないとお金は使わない。
今はそんなムードは全くない」

消費者の景気が上向いたと感じさせること。

そのために必要なこと。
「2%程度の経済成長を目指し、
様々な手をうつことが必要だ。

議論になっているインフレターゲットは1つの方法だと思う。
明日の生活に困るという人たちへきちんとケアしたうえで、
脱デフレを急ぐべきだ。
公共事業も従来型のハコモノ投資ではなく、
例えば、中央自動車道の事故を受けた道路など
インフラの保守点検・整備を行うべきだ。
雇用創出にもつながるだろう」

鈴木さんはインフレターゲット論に賛成する。

消費税増税に関して。
「消費税を上げればすべてが解決するような言い方はおかしい。
多額の財政赤字は
消費税を上げたからといって埋まるものではない」

「増税時期は相当慎重にやらないといけない。
経済が停滞している時の増税は
相当消費を落ち込ませることになる。
税収が増えるどころか逆に減る懸念がある。
付帯条項にあるように経済成長を見極めるべきだ。
経済成長で税収を上げる方が日本には合っている」

1997年の「消費税分還元セール」は、
前年比約2倍を売り上げた。

「今回は消費者は動かないだろう。
税率が1年後には8%からさらに10%まで上がるからだ。
2回も上がることを消費者は嫌がるはず。
どうしても上げるなら一気に10%に上げた方がショックは大きいが、
消費者心理の回復も早いのでは」

あくまで消費者心理を優先的に考えるのが鈴木さん。

12月の衆議院選挙は売業に影響を与えるか。
「選挙時は経済は停滞することが多い。
ただ選挙後に政局が安定するとみれば、
消費が盛り上がってくるのでは。
株価も上がり、少しはお金を使おうかなという心理になるかもしれない」

鈴木さんの主張は、
「消費者が安心してお金を使えるように
将来の設計図とそのプロセスが見える政治」

国民心理を前向きにする政治。
そのためにはインフレターゲット論も必要とする。

ただしインフレは歯磨きのチューブのごとし。
出し過ぎると戻しにくい。

ポール・クルーグマン教授の提唱する2%のインフレ・ターゲット。
鈴木さんも必要だとする。

日銀白川総裁の考え方。
「企業のチャレンジ精神を高め、
新規需要の開拓力をつけること」

政治が企業に望むこと、
企業が政治に望むこと。

その両者の先に消費者がある。

つまり消費者の望むことを実現させる。
それが「人民を、人民によって、
人民のために統治すること」
の本質である。

〈結城義晴〉


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