結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2013年05月18日(土曜日)

ラス4日目はSCのフォーマット転換を体験、シアーズに愕然

ネバダ州ラスベガスは、
18日の土曜日に入ったばかりだが、
昨日のニューヨーク外国為替市場で、
円相場が1ドル103円12銭まで下落。

2008年9月15日に、
投資銀行のリーマンブラザーズが破綻し、
世界的経済危機が訪れた。

そのリーマン・ショック直後の10月7日に、
円ドル相場は103円をつけていたが、
それ以来の水準で約4年7カ月ぶり。

毎日、アメリカでお金を使っているが、
実感として「円高も悪くなかったなぁ」と、
思ってしまう。

しかし私は、
100円から120円までの間あたりが、
1ドルの生活価値だとは心得ていて、
これが当たり前となるだろうとは思う。

さて、日本では、昨日、
日本チェーンストア協会通常総会開催。
清水信次さんが、会長に再任された。
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総会後の記者会見。
消費税増税に関する清水会長の見解。
「日本は世界最高レベルの生活水準で、
世界一の長寿国家。
社会保障も医療も世界的に見れば高レベル」

「世界で消費税を導入している国は、
193カ国中147カ国。
その中で最低消費税の5%は4か国、
10%が13カ国、
それ以外の国は15~27%」

「日本は生活水準は最高レベルなのに
消費税は最低レベル。
これでは国がもたない。
日本の国のレベルからして、
10%でも高いとは言えない」

「日本は狭い国土で、
多くの人口を支えなければならない。
国民は納税を誇りに思うべきだ。
経済情勢のためではなく、
弱者・高齢者のために、
喜んで税金を払うべきだ」

「そして政府はこの税制を、
国民が明るく、前向き、上向きな感情になるように
仕向けていかねばならない」
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昨日午前中、つまりウィークエンドぎりぎりで、
消費税転嫁対策特別措置法案が
衆院経済産業委員会を通った。

これに関する清水さんのコメント。
「消費税還元セール禁止に関しては
企業の良識にまかせるべきだ。
大企業は中小をいたわり、
中小企業は自分の立場を考えつつ、
業者同士で妥協点を見つけるべきだ。
今後もそのように働きかけていく」

消費税増税に関しては、
月刊『商人舎』創刊準備号で、
清水さんに、存分に語ってもらった。

この対談がきっかけで、
外税が決まったと言ってよいほど。

しかし清水さんは、
消費税還元セールは、
企業の良識に任せるべきだとした。

私もまったく同感。

そしてその良識とは、
国民に税金を払っているという自覚を、
強く持ってもらうこと。

だから還元セールはやるべきではない。
もちろん還元セールとは関係なしのプロモーションは、
大いによろしい。

お上が商売に口出しするのは、
まだ士農工商の序列意識が残っている証拠。

商業の現代化は、
まだまだ先のことになりそうだ。

さてさてそんな序列意識がないアメリカ小売業。
昨日は、ラスベガス4日目。
朝8時半にいつものように会議室に集合。
そして、「理解度テスト」を実施。
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商人舎ミドルマネジメント研修会では、
二日目三日目の朝、恒例のように行われるテストだが、
海外視察研修会では、今回が初めてとなる。

会議室が緊張感に包まれる。
この何とも言えない静寂がいい。

参加者全員が真剣に向き合う。
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何を学び、何を理解したのか、
はたまた理解していないのか。
自らの強みと弱みを知ることが、
このテスト実施の目的。

だから、本人にのみ、
その結果を知らせる予定だ。
アメリカに来て、視察をして、講義を聞いて、
へとへとの上に理解度テストまで受けさせられる。

それに耐えて、全力で立ち向かってくれた。
答案用紙にその熱意がにじみ出ていた。

全員の奮闘を、
心からたたえたい。

派遣してくれたトップ、幹部の皆さん、
全員がほんとうに良く学んでいますよ。

素晴らしいことです。

理解度テストのあと、
毎日続けられる私の講義。
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この日の講義内容は、
アメリカ小売業の核となるウォルマートの経営戦略、
コモディティとノンコモディティの経営戦略の相違、
プライベートブランドの整理と最新動向などなど。
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1時間45分ほど語った。

毎日の講義も、
丁寧に伝えようとすると、
まだまだ時間が足りない。
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明日が最後の講義。
伝えられるすべてを訴えたい。

講義の後は、商品調査チームごとに、
1時間のミーティング。
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初日、2日目の両日にわたって、
10チームに分かれて店頭調査を行った。
その視察店舗のPFグラフの作成。
ディスカッションしつつ、まとめ上げていく。
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今回は4~5人のチームに分かれて、
計10チームで10のカテゴリーを調べている。
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最終日には、
各チームの発表が行われる。
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PFグラフを作成したうえで
代表企業の商品戦略を分析してもらう。
だから、ミーティングにも熱が入る。
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私自身も、
各チームのプレゼンテーションを楽しみにしている。

昼前には専用バスで視察を開始。
もちろん、車中でもずっと講義。
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最初に向かったのは、
タウンスクエア・ラスベガス。
新しいコンセプトのショッピングセンター。
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オープンエアー型のライフスタイル・センター。
2007年に開発された。

中央部分には噴水や広場がある。
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広場では、木陰で親子がくつろぐ。
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核テナントは、
リージョナルセンターの百貨店ではない。
スーパーマーケットのホールフーズとコンテナストア、
それに家電専門店フライズ。
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ホールフーズでは、
皆、意欲的に視察。
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現地コーディネーターの浅野秀二先生も、
ANDIスコアについて、現場解説をしてくれた。
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地元の顧客に支持されている。
そして新たな取り組みも始めている。
この店には、ほんとうにイノベーションの積み重ねがある。
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最近のそのイノベーションのひとつが、
NON-GMOアイテムの表示。
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徹底している。
その徹底ぶりは、
これもWeekly商人舎に。

ホールフーズで昼食をとるメンバー。
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店舗中央に配されたイートインコーナーは、
明るめの木製のテーブルとベンチ。
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こちらは店舗入り口近くのイートインコーナー。
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私もセンター内を散策。
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専門店は人気のブランドショップが多数、
リーシングされている。
北の端にH&M。
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アバクロンビーのキッズ・ショップ。
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「収納」をコンセプトにするコンテナストア。
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レストランやコーヒーショップなどのフードサービスも充実。
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次に向かったのはターゲット。
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食品を持たないターゲット。
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ところが店頭に、この掲示。
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生鮮とグロサリーの取り扱いを始める。
つまりスーパーターゲットへのフォーマット転換。

ごらんのとおり、店内では改装が始まっていた。
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アメリカでは部分改装の場合、
営業したまま行うことが多い。
冷凍リーチインも、一部は使用され、
商品が販売される。
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入り口付近に設けられたクリアランスセール催事。
掘り出しものを探す面々。
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こちらは仮面をかぶった人。
誰だろう。
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レジに並ぶメンバー。
ターゲットのエコバックを大量に買った人も。
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とはいえ、連日の猛暑の中、
4日目ともなると、疲れ気味。
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午後の日差しはこたえる。
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ダラージェネラル・マーケット。
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ダラージェネラルの新しいフォーマット。
生鮮食品をラインロビングして、
スーパーマーケットに切り込んだ。

しかも、安い。

この店は、コンビニエンスセンターの中にある。
詳細は商人舎magazine』のWeeklySpecialにて。

それなりの品質と超低価格、
しかも今後、ドミナントを築いていく小型店。
ウォルマートにとっても、
アルディに続いて、
実に厄介な存在になる気配。
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チャレンジャブルなフォーマットが、
次々に登場してくる。

そして、クローガーのスミス。
ネイバーフッドセンターの核店舗。
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古い店舗だが、地域に密着した品ぞろえで、
お客はよく入っている。
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青果の値下げ販売のプロモーションが、
大々的に実施されていた。
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このショッピングセンターには、
ファミリーダラーが入っている。
バラエティストア第2位。
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アメリカのネイバーフッドショッピングセンターには、
核店舗が二つ。
スーパーマーケットとダラーストア。

ドラッグストアは入っていないことが多い。

なぜなら1980年代以降、
ほとんどのスーパーマーケットが、
フード&ドラッグになってしまったから。

スミスを後に、
CVSファーマーシーへ。
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ドラッグストア最大手のCVSケアマークが展開。
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主通路は奥壁面のファーマーシーへと顧客を導入する。
競合のウォルグリーンが欧州のブーツを買収したため、
現時点では1位の座を譲りわたしている。
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そしてリージョナルショッピングセンターへ。
核店舗の一つはかつての王者シアーズ。
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シアーズの店舗は、
1、2階のツーフロア構成。
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ゼネラルマーチャンダイズストア(GMS)最大手。
しかしウォルマート、ターゲットと、
メイシーなど百貨店に挟撃されて、
業態としての特徴を著しく喪失し、
年々売上げも利益も大幅に落ち込む。
いまや手の施しようがない。

どんなセンスなのか。
コーディネートもひどすぎる。
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白物家電売り場には、
店員しかいない状況。
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アメリカでは、GMSや百貨店は、
衰退業態となって久しい。

事実、百貨店は合併統合が進んで、
ほとんどがメイシーズに買収されてしまった。
ジュニアデパートのコールズ、
ローコスト・ローカル百貨店のディラード、
この三社にノードストローム、ニーマンマーカス、
サックスフィフスアベニューが絡んで、
寡占状態。

日本のチェーンストア業界でGMSと名づけられた業態は、
シアーズとJCペニーの「複占」。
どちらも驚くほどひどい店。
それに、復活の妙策はない。

昨日のアルバートソン、
一昨日のスーパーKマート、
そしてシアーズ。

20年前、30年前には、
絶好調だった企業群が、
見るも無残な姿をさらけ出す。

そして最後の視察は、
プレミアムアウトレットセンター。
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(撮影: 日穀製粉㈱石山直由氏)

ラスベガス中心部からわずか15分で行くことができる。
立地に恵まれ、大人気。
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買い物袋を引きるようにして買い物をする人、人。
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こちらは大盛況。

私たちも随分買い物した。

最後にアメリカのショッピングセンター。
いまや、「ショッピング」という言葉を除いて表記される。

さらに店舗は業態からフォーマットへと転換しているが、
同様にショッピングセンターにもフォーマットの変質が見られる。

モールは、
Regional Center
Super regional Center

そしてOPEN-AIR CENTERSは、
Neighborhood Center
Community Center
Convenience Center
Life style Center
Power Center
Theme/Festival Center
Outlet Center

今日はライフスタイルセンターに始まり、
コンビニエンスセンター、
ネイバーフッドセンター、
コミュニティセンター、
リージョナルセンター、
そしてアウトレットセンターで終わった。

昨日、一昨日は、
パワーセンターをずいぶん回ったし、
ギャラリアのスーパーリージョナルセンターを訪れた。

その違いを体験する日だった。
いい勉強ができた。

ショッピングセンターに関しては、
月刊『商人舎』で特集を組むことになるだろう。
帰国したらこのテーマも、
Weekly Specialで紹介整理しよう。

朝の理解度テストと講義、
それからショッピングセンターめぐり。

団員の奮闘を祝福賛美したい。

〈結城義晴〉


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