結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年04月30日(火曜日)

平成最後の日の「複雑さに耐えて生きること」とオクシモロン

平成最後の日。

さようなら。
ありがとう。

令和へのカウントダウン。
日本だけ大晦日で、
新年を迎えるようだ。

今日の午後5時すぎ、
「退位礼正殿の儀」が行われた。
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皇居・宮殿「松の間」。
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東京新聞巻頭コラム「筆洗」

女性飛行家の草分け。
アン・モロー・リンドバーグ。
あのチャールズ・リンドバーグの奥さん。

リンドバーグは大西洋単独飛行の英雄。
「翼よあれがパリの灯だ」

その妻アン・モローが、
日本の「サヨナラ」について書いている。
「このようにうつくしい別れの言葉を、
わたしは知らない」

アン・モローが来日したとき、
横浜港で数多の「サヨナラ」を耳にした。

そこで「サヨナラ」は、
「さやうならば」と知った。

英語の「GOOD BYE」は、
「神があなたとともにありたもうように」

「”サヨナラ”はいわば接続の言葉であり、
それ自体、何も語っていない」

その半面、別れることを
あるがままに受け入れている。

「多くを語らずとも
すべての感情が込められている。
だからこそ”うつくしい”」

平成よ、さようなら。

毎日新聞巻頭コラム「余録」

江戸時代後期の光格(こうかく)天皇。
将軍徳川家斉(いえなり)に和歌を贈った。

民草(たみくさ)
露の情けをかけよかし

代々の守りの
国の司(つかさ)

代々、国をつかさどる者は、
国民に情けをかけてほしい。

安倍晋三首相にも届くか。

「今上天皇は光格天皇の事績を、
強い関心をもって調べられた」

わかる。

熊本地震の被災地を訪ねた折の、
その平成天皇の歌。

幼子の静かに持ち来(こ)
折り紙の
ゆりの花手に
避難所を出づ

幼子の折り紙を大切にする心。
この陛下の思いを美智子さまが詠んだ。

ためらひつつ
さあれども行く傍(かたは)らに
立たむと君の
ひたに思(おぼ)せば

「被災者の迷惑を気遣いつつも、
その傍らに身を運ぼうとする思い」

いい歌だ。

この天皇・皇后両陛下は、
我々日本国民の誇りである。

同じく、昨日の「余録」

ライフネット生命創業者の出口治明さん、
一冊の本を推薦する。
「おそらく世界最高の読書論だと
僕は思っている」

それが『橋をかける』
サブタイトルは「子供時代の読書の思い出」
著者名は「美智子」とだけ記されている。
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1998年、国際児童図書評議会世界大会が、
インドで開かれた。

皇后美智子さまはビデオで、
基調講演をされた。
それを丁寧に収録した本だ。

「読書は、人生の全てが、
決して単純でないことを教えてくれました」

「私たちは、複雑さに耐えて
生きていかなければならないということ。
人と人との関係においても。
国と国との関係においても」

令和の時代への言葉である。
人と人との関係でも、
国と国との関係でも、
複雑さに耐えて、
生きていかなければならない。

その通りだと思う。

私がよく使う言葉でいえば、
Oxymoron。

江崎玲於奈さんの「私の履歴書」に出た。
2008年の1月のこと。
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それ以来私は、本当によく、
「オクシモロン」の概念を使っている。

「萌芽的業績は個人の創造力に負う。
そこで優れた研究者を多数、
集めたとしよう」

「彼らが個性的、独創的であればあるだけ、
独立を求め干渉されることを好まない」

「一方、研究所長は、
マネジメントの立場から
重点課題に焦点を合わせた、
秩序ある体制を求める」

「ここにはちょっとした、
二律背反がおこる」

この二律背反をオクシモロンという。

「そこで最も好ましい研究環境を、
一口でいえば、
“組織化された混沌”
とでも表現せねばならない」

「部分的に見れば、研究者は、
自由奔放に仕事を進めているので
混沌としているが、
研究所全体としては
バランスがとれ、秩序がある状態をいう」

強いプロ野球チームやサッカーチーム、
素晴らしいオーケストラやロックバンド。
成果を上げる会社組織も。

oxymoronはギリシャ語で、
日本語にすると「撞着語法」という。
パラドックス(逆説)の一形態。
「対立する語句を並べて
新しい意味を主張する語法」

oxy〈鋭い、賢い〉と、
moron〈鈍い、愚かだ〉の合成語。

ヨーゼフ・シュンペーターの言葉だが、
「創造的破壊」は、
歴史に残るオクシモロンの概念だ。

オーストリア人の後輩、
ピーター・ドラッカーは、
このオクシモロンをわかりやすく、
解き明かす仕事に終始した。

私が標榜する「日本商業の現代化」も、
オクシモロンにヒントが求められる。

美智子さまの「複雑さに耐えて」は、
オクシモロンのことだ。

明治生まれで、
もちろん大正を生き抜き、
「昭和の石田梅岩」といわれたのが、
商業界創始者の倉本長治主幹。
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石田梅岩は江戸時代の思想家。
「石門心学」といわれる考え方の開祖。
貞享2年(1685年)~延享元年(1744年)

私は平成の石田梅岩でもないし、
令和の倉本長治にもなれないが、
その志は継いでいきたいと思う。

平成最後の日に、あらためてそう思う。

長治の言葉はオクシモロンばかりだ。
店は客のためにあり、
店員とともに栄える。

この言葉は「CSとES」である。
私の本にも何度も書いた。
CSは顧客満足、
Customer Satisfaction。
ESは従業員満足、
Employee Satisfaction。

これらを両立させることは、
人と人との関係において、
きわめて複雑なことだ。
それに耐えて生きていかねばならない。

倉本長治の『商売十訓』も、
オクシモロンが多い。
「損得より先に善悪を考えよう」

善悪と損得は、複雑な関係である。

「創意を尊びつつ良いことは真似よ」
「創意と模倣」も、
二律背反のオクシモロンだ。

「文化のために経営をせよ」
これもオクシモロンである。

民間人から皇室に入った美智子妃殿下。
その一生が2000年の皇室の歴史の中の、
オクシモロンだった。

令和の時代は、
ますますオクシモロンの時代となる。

その複雑さに耐えて、
シンプルに時代を切り拓いていきたい。

さようなら、
ありがとう。

〈結城義晴〉


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