台風14号の極端気象と日本学術会議の「Conflict」
台風14号。
それでも本土に上陸しなかったのは、
全体としては助かった。
被害を受けたのは、
紀伊半島から東海地方、
伊豆諸島や伊豆半島、
神奈川県南部、千葉県南部。
伊豆諸島の三宅島や御蔵島では、
「50年に一度」の豪雨・突風で、
大雨特別警報。
三宅島にも、
せんだい、スーパーTsuchiyaなど、
スーパーマーケットがある。
昨年の台風15号や19号はすごかった。
だから想定される地域は、
早めの警戒態勢を敷いた。
木本昌秀東京大学教授の警告通り。
[極端気象]
月刊商人舎1月号特集。
木本先生は大気海洋研究所教授で、
日本の気象の最高権威。
その提言は、
地球温暖化による「極端気象」に備えよ!
地球温暖化は確かに進んでいる。
そのため環境というピンボールの台が、
傾いてしまった。
だから降る雨の全体量は同じでも、
集中豪雨が発生する。
今回の台風の豪雨の原因もこれだ。
木本先生との対談の[結城義晴の述懐]。
「真理を探究する科学者の識見においても
“地球温暖化”は明白で、
深刻な状況に追い込まれている」
「全人類にとって、
“ゼロエミッション”は必須の要件である」
「エミッション」は「排出」。
炭素の排出を「ゼロ」にすることが、
「ゼロエミッション」である。
結城義晴の述懐。
「企業を経営し、
店舗を運営する者としては
“リスクマネジメント”が
これも必須の課題である」
「そのことを強く強く認識させられた」
木本教授に対しては、
「東京大学教授のエリート感はまったくない。
反骨の研究の徒である。
それは京都大学やUCLAの土壌が
生み出したものだろう」
いま、反骨の研究者の存在は重要だ。
体制側に立った研究者は、
体制に迎合する。忖度する。
そこからは真理が見えてこない。
日本学術会議の問題。
新会員候補6人の任命を、
菅義偉新首相が拒んだ。
火曜日の10月6日に、
政府が公開した文書には、
各領域で実績のある新会員が列記され、
任命を拒否された6人の学者は、
黒く塗りつぶされている。
1949年に日本学術会議が発足した。
その式典での吉田茂総理の祝辞。
朝日新聞の天声人語にある。
「日本学術会議は、
もちろん国の機関ではありますが、
時々の政治的便宜のための
“掣肘”を受けることのないよう、
高度の自主性が
与えられておるのであります」
「掣肘」は「せいちゅう」と読んで、
あれこれと干渉して、
自由に行動させないこと。
この吉田茂発言は、
学者に対しても自立性を求めているし、
時々の政治に対しても暴走を戒めている。
吉田茂という腹の座った政治家は、
「金は出すが口は出さない」を貫徹した。
それが結局は、政治のため、
国民のためになる。
ただし今回、
学術会議候補者の任命に際して、
拒否理由は説明されなければならない。
「総合的・俯瞰的」ではわからない。
菅首相がちょっと、
孤立してきたらしいところも、
気にかかる。
私のマネジメント講義を聞いた人は、
わかるだろう。
ピーター・ドラッカーも、
ケン・ブランチャードも、
「対立(Conflict)」こそが、
マネジメントには必須であるとする。
ドラッカー。
「マネジメントの意思決定は、
全会一致でなされるようなものではない」
そしてこうも言う。
「意見の”対立”を見ない時には
決定を行ってはならない」
「ある案だけが正しく、
その他の案はすべて間違っていると
考えてはならない」
「自分は正しく、
他の人は間違っていると
考えてもならない」
対立を排除してはならないし、
反骨の研究者の存在は貴重である。
会社組織にも、
自分の意見をまっすぐに言う人間は、
必ず必要である。
その対立した意見や知見を、
正しく評価するリーダーを、
組織は求めている。
〈結城義晴〉