結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年08月16日(土曜日)

セブン&アイ伊藤順朗Interviewの「破壊的Innovation」

盆の明け。

夏の甲子園高校野球は真っ盛り。
連日、いい試合が展開されている。

日経新聞電子版に、
伊藤順朗さんが登場。
今、セブン&アイ・ホールディングス会長。
もちろん故伊藤雅俊さんのご次男。
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日経の単独インタビュー。

カナダのアリマンタション・クシュタールから、
ずっとM&Aを迫られていた。

そのACTが撤退を表明した。

そのATCに対してずばり、
「正直言って誠実な会社とは
思っていない」

はっきり言った。
いいと思う。

その声をセブン&アイの全従業員が聞いている。
金融関係も取引先も注目している。

「M&Aで規模を追求してきた会社」と評価し、
理由も語った。

「買収した多くの店舗が、
そのままの形で運営されている」

その通りだ。

「仮に同社がセブン&アイを買収したとしても、
店舗を成長させられなかった」

セブン-イレブン・インクのほうが、
店舗の革新性においても勝っている。

ACTは1980年にカナダ東側のケベック州で、
コンビニの「クシュタール」(Couche-Tard)として開業。

ケベック州はフランス語圏で、
Couche-Tardは「夜更かし」といった意味だ。

その後、アメリカのコンビニチェーンを買収し、
2003年にはサークルKを傘下に入れた。
サークルKは当時、全米3位だった。

ACTは現在、アメリカで第2位のコンビニチェーン。

伊藤さんが指摘するように、
コンビニ業態として目立ったイノベーションはない。

私もACTに買収されなくてよかったと思う。
なにしろセブン-イレブン・インクは、
全米トップのコンビニチェーンである。

しかし日本のセブン-イレブン・ジャパンは、
成長が鈍化している。

伊藤さん。
「ACTは今は手をおろしたが、
業績が上がらなかったらまたやってくる」

そのうえで、
「市場の変化に対応できないと生き残れない。
チャレンジ精神と失敗から学ぶ姿勢を取り戻す」

その通りだ。

「基本の徹底と変化への対応」が、
イトーヨーカ堂時代からずっと、
セブン&アイの在り方だ。

セブン-イレブン・インクは、
米国市場での新規株式公開を計画している。

伊藤さん。
「企業価値をしっかりとつけ、
一部株式の売却で得られる資金を
株主還元や新規投資に充てていく。
その意味で上場は必要だ」

上場後もセブン&アイが「過半の出資を維持する」

その意味で米国セブン-イレブン・インクは、
セブン&アイ存続のための企業と位置づけられている。

一方、24年10月に社名を変更すると発表した。
「セブン-イレブン・コーポレーション」

日米と世界のセブン-イレブンだけの会社。

伊藤さんは語る。
「私から社名変更の検討をやめようと言った」

ACTによる買収提案への対応を優先するため。
社名変更はそれに伴ってコストもかかる。

社名変更は引き続き検討しているようだが、
「優先順位は低い」

ヨーク・ホールディングスは、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマルなど、
約30社で構成される。

9月に米国のベインキャピタルに売却される。

セブン銀行も非連結化されているから、
セブン&アイは9月からコンビニ事業に集中する。
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順朗さんは1990年に最初に入った会社が、
セブン-イレブン・ジャパンだった。

だから順朗さん自身は本業に専念することになる。
それはとてもいいことだろう。

ヨーク・ホールディングスには、
順朗さんが一部出資している。

コンビニ展開で世界を目指すセブン&アイ。
傘下にセブン-イレブン・ジャパンと、
やがて米国上場するセブン-イレブン・インクがある。

ヨーク・ホールディングスは、
他の資本のもとで再出発する。

まあ、そんなことがはっきりしたインタビューだ。

私はヨーク・ホールディングスの中の、
イトーヨーカ堂の再生は困難を極めると思う。

ヨークベニマルは順調だ。

ただしそれらは新しいオーナーのもとでの仕事となる。

問題は競争的飽和状態を迎えている、
日本のコンビニをどうするか。

鈴木敏文さんは「飽和はない」と言い切った。
この考え方を基本として、
未知なる独自の世界を切り拓いていくか。

いや、コンビニ業態の「鼎占」の中で、
どう、トップチェーンの地位を維持していくか。

今のところ後者の考え方のようだが、
それでいいのか。

世界のどんな業態でも、
歴史的に鼎占状態は長く続く。

そのあとに「複占」が訪れる。
複占は意外に長くは続かない。

日本のコンビニのその鼎占を維持していくにも、
持続的イノベーションが求められる。

鈴木流の破壊的イノベーションにも、
挑戦してもらいたいとも思う。

クレイトン・クリステンセンは教えた。
「偉大な企業は、
すべてを正しく行うが故に失敗する」
Innovationジレンマ

「イノベーションのジレンマ」とは、
業界のトップ企業が、
技術や市場構造の破壊的変化に直面した際に、
市場のリーダーシップを失ってしまう事象だ。

セブン&アイは鈴木敏文氏の辞任によって、
その優位性を失ったと思われているが、
もしかしたらこの会社は、
破壊的変化に直面していたのかもしれない。

いや、直面していたのだ。

だからこそ持続的イノベーションとともに、
今、破壊的イノベーションが必須だと思う。

やっとそれに対応する状況が生まれた。

伊藤順朗さんのインタビューが、
そのきっかけになるといいのだが。

〈結城義晴〉

2025年08月15日(金曜日)

半藤一利「40年周期説」と「暮しの手帖」の「一銭五厘の旗」

80回目の終戦の日。

天皇陛下も三代代わって、
今上天皇がMessage。
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「戦後の長きにわたる
平和な歳月に思いを致しつつ、
過去を顧み、深い反省の上に立って
再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い
戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、
全国民と共に、心から追悼の意を表し、
世界の平和我が国の一層の発展を祈ります」

「深い反省の上に立って」は初めての表現だ。
「世界の平和」と「一層の発展」を、
ともに祈りたい。

いつまでもいつも八月十五日  
〈綾部仁喜〉

綾部は1929年生まれで、2015年に没した。
東京・八王子生まれの俳人。

毎日新聞一面コラム「余録」。

「維新から終戦までを上回る時が過ぎた」

明治維新から太平洋戦争終戦までが80年。
それからまた80年。

「日本のいちばん長い日」を書いたのが、
作家の半藤一利(はんどうかずとし)さん。
1965年。
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維新以降の日本の浮沈について、
「40年周期説」を唱えた。

1865年(慶応元年)、近代日本の勃興。
幕末の動乱期、江戸幕府が終焉を迎える、
その準備が着々と整いつつあった。

志士たちは世界の植民地化を知っていた。
それから逃れようと考えた。

1905年、日露戦争勝利。
日本が初めて西洋列強と互角に戦った年。
国際的に認められた瞬間。

日本の国威は大きく高まった。

1945年、第二次世界大戦の敗北。
日本は焦土と化し、
新しい国家体制を模索する。

近代日本の勃興から、
わずか80年で敗戦を迎えた。
半藤40年周期はその後も続く。

敗戦から7年後の1952年。
サンフランシスコ講和条約発効。
私が生まれた年。

日本は独立を回復。
半藤40年周期説では、
さらに40年が経過して、
1992年、バブル経済が崩壊。

日本経済は「失われた30年」に入る。

それから40年後の2032年には、
果たして何が起きるか。

半藤 一利は、1930年(昭和5年)に生まれ、
コロナ禍の2021年(令和3年)1月12日に没した。

2032年を見ることはなかった。

余録。
「継承すべきは日露戦争後40年の下り坂の記憶だ」

「攘夷から開国に転じ近代化に成功しながら、
『アジアの盟主』と過信して、
国際協調に背を向けた」

「満州事変以降は孤立を深め、
米英との衝突コースを歩んだ」

「戦後は独立後40年にわたって発展を続けたものの、
バブル崩壊で局面が変わった」

それからまた40年。

終戦の日はそんなことを、
深く考える。

朝日新聞「折々のことば」
第3464回。

戦争は、その姿を現す随分前から
始まっているものです。
おそらくは人々が口をつぐみ、
物申すことをやめたときから。
〈「暮しの手帖」編集部〉

「暮しの手帖」の初代編集長・花森安治。
1911年生まれ、1978年逝去。
花森安治

戦地で上官に、
「貴様らの代わりは一銭五厘で来る」と、
葉書一枚の値に喩(たと)えられた。
戦後そんな時代への憤りを、
端切れを縫い合わせた旗に込め、
社の屋上に掲げた。

現編集部は、崩壊に瀕(ひん)する社会に、
今必要なのは各自の旗だと、
新たな「一せん五厘の旗」を立てる。

「暮しの手帖」8・9月号から。
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花森は豪放な性格と反骨精神の持ち主だった。
おかっぱ頭でスカートをはくこともあった。

あの老舗名門雑誌も、
隔月刊になってしまった。

それでも花森譲りの反骨の旗は降ろさない。

「今、必要なのは各自の旗だ」
私もそれには賛同したい。

そしてそれを私は、
ポジショニングと呼ぶ。

チェーンストア戦略だけでなく、
それぞれの人生の戦略にも、
そして日本の国家戦略にも、
求められるのは、
独自のユニークなポジショニングである。

〈結城義晴〉

2025年08月14日(木曜日)

味の素・イオンなどの「商品情報統一」と手順前後

盆の中日。

日経新聞の記事。
「味の素やイオン、商品情報を統一」

日経新聞のスクープ。
と言ってもこの取り組みは、
何度も繰り返されている。

製配販の代表的企業約30社が、
統一した商品情報を取得できるシステムを導入する。

小売業はイオンやイトーヨーカ堂。
製造業は味の素やキユーピー、
キリングループ、日清食品、
ニチレイフーズ、ミツカン、
ユニ・チャーム、ユニリーバ、
ライオンなど。

卸売業は三菱食品やPALTACなど。

時期は2026年度。

「これまでメーカー、卸、小売りごとに、
管理する情報の項目や形式が異なっていた。

そこで『流通側』は手作業で、
自社システムに登録し直していた。

店頭に並ぶ食品や日用品には、
製造国やメーカーなどを識別するため、
メーカーが13桁のJANコードを発行する」

JANは「日本の統一商品コード」だ。

「メーカーは新商品が出るたびに、
JANコードに商品の情報をひもづけ、
自社システム上に登録し管理する。

メーカーが新商品を出すと、
小売りは主に卸を通じて入荷する。
『流通側』は店舗や電子商取引などで売る際、
店舗の棚札やECサイトに
表示したり在庫管理したりするために
商品情報が必要になる。

ただ、商品情報の項目や属性、表記ルール、
字体や文字サイズなどが、
メーカー、卸、小売りごとに異なる。

そこで流通側は自社のフォーマットに合わせて、
手作業でデータを打ち直す必要がある」

こうした非効率なプロセスによって、
膨大な手間と時間がかかっている。

政府はこの労働量を「年間約30万人月」と試算する。
誤入力によるミスも誘発している。

「新設するシステムでは、
卸や小売りはJANコードで検索すれば
必要な商品情報を取得できるようになる。

食品や日用品など業界別に
複数ある商品データベースと連携させ、
新システムから一括して商品情報を取得する」

システム開発は経済産業省が支援し、
費用は民間が負担する見通し。

25年度からスタートする。

システムの管理運営はいつものように、
一般財団法人流通システム開発センター。

商品情報に含める範囲は今後、
詰めていくことになる。

「小売り側は顧客への訴求のために、
1商品あたり200~300項目もの情報を求める。

一方、メーカー側は開示範囲を、
最小限にとどめたい思惑がある」

26年度は品名や重量など、
基本的な約50項目の商品情報の入力を開始。

その後は小売りから要望の多い
高画質画像やアレルゲン情報なども
順次追加していく予定だ。

新システムが導入されれば
流通全体での業務を20年比で35年までに15%、
50年までに35%それぞれ削減できる見込みだ。

何度も紹介しているが、
月刊商人舎は2017年3月号で特集した。201703_coverpage

ケーススタディ特集
商品情報Platform
「商品Master/商品Contents」の共有と競争

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欧米ではワン・ワールド・シンク(1WorldSync)。
日本では非食品のプラネット(Planet)と、
食品のジャパン・インフォレックス(JII)。

商品マスター(Product Master)が整備され、
商品情報の交換と交流によって、
数多の商品がつつがなく流通・供給される。
そこでは情報をベースとした
社会システムの標準化と効率化、
合理化、最適化が推進される。
製配販のサプライチェーン・マネジメントが貫徹される。

さらに商品デジタルコンテンツが充実して
実店舗とElectronic Commerceが
融合する時代がやってくる。
結果として豊かで、多様で、低価で、
オムニチャネルの、
ライフスタイルが保障される。
そのためのさまざまな
社会インフラが構築される。
それが近未来型の
「商品情報プラットフォーム」である。

この動きを推し進める者、阻む者、
そして傍観する者。

鍵を握るのは、
Platform概念の産業レベルでの社会化と、
その共有と競争の共通認識に他ならない。
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この特集の中の記事では、
GTIN(JANコード)の歴史を示した。
日本と欧米の比較だ。
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第二世代段階で、
欧米は業界全体で標準化し、
商品の基本情報を共有化していた。

日本は個別にばらばらの対応だった。

根本の問題はここにある。

この特集に対して、読者からの質問があった。
毎日投稿してくれる吉本一夫さん。

「2017年3月号は、繰り返し読みましたが、
正直、難しかったです。
JANもGTINの一タイプと理解していて、
その意味で日本も対応はしていると思っていたからです」

「もしかすると、メーカーも卸も小売りも、
会社ごとにJANとは別に
独自の商品コードを作っていますが、
それをやめてGTIN一本でいこうということでしょうか。
そうだとすると、現状、企画商品などで、
同じJANを複数の商品に使い回しているので、
なかなか難儀ではあります」

今回の取り組みはその難儀なことを、
統一しようということだ。

日本スーパーマーケット協会は、
まず商品マスターの統一から始める。

イオンなどの取り組みは、
それとはまた別の動きだと思う。

詳細は商人舎2017年3月号の記事を読んでほしい。
朴水石(パク スーソク)の提案
日本市場の特性と欧米亜の商品情報戦略

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朴さんの指摘。
「日本の産業の特徴は、
製配販の3層構造があることです。
その3層構造の中で、これまでは、
データの標準化、共有化が
主に製造業と卸売業の間で行われてきました」

「さらに日本の消費産業の特徴は、
小売規模が欧米に比べて、
上位企業の寡占化が低くて、
小さな規模の企業が多いということです」

そこで味の素とイオンなど、
大手企業で実験をスタートさせる。

月刊商人舎ではこの秋に、
「商品Master」に絞った特集を組むつもりだ。

一歩、一歩。

そのあと「商品Contents」

2017年はそれらをすべて広げて、
「商品情報Platform」を展望した。

少し早すぎたし、
わかりにくかった。

その反省だ。

第1に「商品Master」
第2に「商品Contents」

そして「商品情報Platform」

手順前後はよろしくない。

そこんとこ、よろしく。

〈結城義晴〉

2025年08月13日(水曜日)

盆の入りの「阿波踊り」とダライ・ラマ14世の「日常生活の行動」

盆の入り。

徳島では阿波踊り。
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とくし丸の人たちも、
キョーエイ連に入って、
踊る阿呆に見る阿呆。
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住友達也さんがFacebookに書いている。
うらやましいかぎり。

2011年8月15日に、
私も阿波踊りに招かれた。
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紺屋町演舞場は、
市内でも一番の大舞台。
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キョーエイ連で踊った。
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この写真を翌年の年賀状に使った。
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故埴渕一夫さんには大変にお世話になった。
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東日本大震災の年だったが、
その苦しみ、悲しみを吹き飛ばすような、
阿波踊りだった。

朝日新聞「折々のことば」
第3462回。

「思いやりの真価が
問われるのは、

抽象的な議論で
何を言うかではなく、

日常生活で
どのように行動するかです」

〈ダライ・ラマ14世〉
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「他者の苦しみに苦しみ、その痛みを
取り除こうと動くのが『思いやり』。
それは『愛』とともに、
誰かに世話をしてもらわなければ
人は生きていけないという
『深い相互依存』の事実に根を下ろす」

「他者に手を差し伸べるこの行動の中で、
人は『内なる平穏』を得る」
〈『ダライ・ラマの智慧(ちえ)』から〉

ダライ・ラマ14世。
テンジン・ギャツォ。
1935年7月6日生まれの90歳。

3歳の時に真正ダライ・ラマの化身、
第13世ダライ・ラマの転生と認定され、
1940年にダライ・ラマ14世に即位した。

1951年までチベットの君主の座に就いていた。
1959年にはインドに亡命して、
インドのダラムサラに中央チベット行政府を樹立。
亡命チベットの国家元首となった。

世界中の在外チベット民族600万人に対して、
政教両面から指導的立場にある。

1989年、ノーベル平和賞を受賞した。

ダライ・ラマ法王は、
地球上に住む一人ひとりのユニークさ、
つまり、個々のニーズ、背景、視点を認識し、
多様性を称賛している。

これが他の宗教家と異なる。

ダライ・ラマは、
いかなる師や教えに対しても、
最も厳格な精査を奨励し、
誰かに身を委ねる前に
細心の注意を払うよう促す。

他宗教との真の対話、
科学者、政治家、学者、実業家、
活動家たちとの対話など、
さまざまな人々や団体に手を差し伸べる。

それによって「多様性の中の統一」を求める。

ダライ・ラマ14世は言う。

「私は、自らの限られた経験から、
最も深い内なる平穏は、
愛と思いやりを育むことによって
もたらされるということに気づきました」

愛と思いやり。

「他者の幸せを大切にすればするほど、
私たち自身の幸福感が高まります。
他者に対して親密で温かな気持ちを育むことは、
自然に心を安らかにします」

「これが、私たちが抱えている恐れや不安を
取り除く手助けとなり、
私たちが遭遇するいかなる障害にも
対処する力を与えてくれます」

「これこそが、
人生における究極の成功の源なのです」

お盆の時期にはとくに、
ダライ・ラマの知恵に触れるのがいい。

日常生活において、
どのように行動するか。

〈結城義晴〉

2025年08月12日(火曜日)

「経営学者と経営者の関係」と「鳥類学者と鳥の関係」

Everyone, Good Tuesday!
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月曜日が祝日の週は、
火曜日にご挨拶。

2025年第33週。
8月第3週は全国的にお盆週間。

それにしても熊本の豪雨。
線状降水帯が相次いで発生し、
記録的な大雨となった。

お見舞い申し上げたい。

そんな中で、
明日の8月13日(水)が「迎え盆」、
16日(土)が「送り盆」。

盆の中日は14日。
15日は終戦記念日。

毎年の8月は、
重い課題が続く。

私は午後から商人舎オフィスに出社。
車で10分ほどの距離だから、
それほど負担にはならない。

単行本1冊分のゲラが出てきた。
それをチェックして、
結局は持ち帰った。

日経新聞夕刊のエッセイ「プロムナード」
日経はこういったコラムやエッセイが、
意外にいい。

岩尾俊兵さん。
まだ38歳と若い。
新進気鋭の経営学者。
慶應義塾大学商学部准教授。
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佐賀県有田町生まれ。
岩尾磁器工業は有田焼の最大企業で、
江戸時代中期から続く。

その創業者一族の家系。

しかし岩尾は家庭の事情で中学を卒業すると、
陸上自衛隊少年工科学校に入り自衛官となる。
一等陸士昇進と同時に陸上自衛隊を退職し、
アルバイトをしながら高校卒業程度認定試験に合格、
慶應義塾大学商学部に入学。
その後、東京大学大学院に進み、
史上初の「経営学博士」となった。

「経営学の埋め込み」をこのブログでも紹介した。

7月2日版は、
「経営学者という職業」

「そんなに経営を勉強していて、
どうして経営者になって儲(もう)けないの?」

岩尾さんは「色んな場面」で尋ねられる。

私に対しても面と向かって聞く人はいないが、
そんな目で見られていることはひしひしと感じる。
「何で商売をやっても受けないのか?」

岩尾さんは謙遜して言う。
「ちょっとだけ自慢話が過ぎると思うけれど、
私に関して言えば未上場・上場どちらも、
社長経験があって時価総額を
約10倍にしたこともある」

「でも、個人としては、
1円も儲からなかったところが、
やっぱり経営学者だ」

「経営学者が儲けている例は
皆無といっていいほどきかない」

「儲け始めた経営学者がいたら、
『あいつは学者を辞めたか』と言われるほどだ」

「ほとんどすべての経営学者が
経営者にならないのは当然だろう。
そもそも人間は自分にできないことや
自分にない能力に憧れて
研究者になるフシがあるだからだ」

これは経営学者に限らない。
ジャーナリストも同じだ。

コンサルタントは儲けている人も多い。atsumi_1
たとえば渥美俊一先生は、
コンサルとしては儲けたが、
伊藤雅俊さんや岡田卓也さんほどには、
絶対に儲けられない。

倉本長治も同じだ。

中内功さんは一番儲けたが、
流通科学大学を残してすべて失った。

経営者は儲ける額も半端ではないが、
それがゼロになるリスクも大きい。

「考えてみれば、
経済合理性で考える人ならば、
経済的に報われない経済学者になんか
なるわけがない」

経済学者の自己矛盾。

「政治家に対抗できるくらいの、
政治力がある政治学者の話も聞いたこともない」

「社会性がなさそうな人が社会学者になっている」
私の大学の恩師壽里茂先生もそうだった。

「だとすれば、当然ながら、
損得勘定に明るくない、
自己管理が苦手な人が経営学者になるわけだ」

「かくいう筆者だって
自動車産業の研究者だったが、
自動車の普通免許さえ持っていないし、
これから取れる気配もない」

学者は変わり者?

「経営学者と経営者とは互いに役割が違いすぎる。
両方を兼ねる必要もない」

私は㈱商業界という中堅出版社の経営者だった。
出版業界の上位1割くらいに入る会社だった。
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立教大学大学院から招かれて、
経営学者の真似事をしたが、
そのときは経営者であることを強みにした。

ここでアナロジー。
「経営学者と経営者の関係は、
鳥類学者と鳥の関係に似ている」

これが秀逸だ。
〈野鳥図鑑〉より。
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「鳥類学者は誰よりも鳥に詳しい。
そう、驚くべきことに、
鳥よりも鳥に詳しいのが鳥類学者なのだ」

「もし鳥が日本語を話せたとしても、
『あなたはどうしてそんなに高く、遠く、
飛ぶことができるのですか?』
という問いには答えられないだろう」

「『なんかね、バンッとやって、
バタバタッからの、フワッからの、
ビューンですね』といった説明が
せいぜいだろう」

長嶋茂雄だ。

「でも、鳥類学者は違う。
鳥が空を飛べる理由について、
羽根の役割から始まって、
体重がどれくらいまでであれば飛べるのか、
どの部分に怪我をしたら飛べなくなるのか、
気候が変わればどうなるか、
どんな風が来たらより遠くに飛べるのか、
説明できる」

「鳥類学者に
『でも、君は空を飛べないじゃないか』
と言っても、きっと鳥類学者は
悲しい顔をするだろうが、同時に
『そういうことじゃないんだよなあ』
と言うしかない」

「誰もが安全に空を飛ぶために、
より楽により高く遠く飛ぶために、
鳥類学者の知識は役に立つ」

「それどころか、こうした知識体系が
航空工学の革新につながって、
鳥じゃない生き物も空を自由に
飛べるようになるかもしれない」

「実際に、今では鳥類学者は
飛行機で空を飛べるのだから」

鳥と鳥類学者のアナロジー。

経営者と経営学者の関係は、
これに非常に似ている。

経営者は経営者になるべくしてなった。
経営学者はそれになるべくしてなった。

ジャーナリストも、
コンサルタントも、
それになるべくしてなった。

商人もなるべくしてなった。

何を自分の人生の目的にするか。
それによって鳥にもなるし、
鳥類学者にもなる。

それでいい。

では、みなさん、今週も、
自分らしく仕事しよう。

Good Tuesday!

〈結城義晴〉

2025年08月11日(月曜日)

山の日の「一度も登らぬ馬鹿に二度登る馬鹿」

7月第3月曜日が海の日の祝日で、
8月11日が山の日だ。

中学・高校と一貫教育の学校だった。
夏休みにはいつも山に登った。

学校がそれを奨励した。

卒業してからも仲間と登った。
それが文学同人誌「孼」とつながっていた。

社会人になってからは遠のいた。
忙しかったからかもしれない。

エコス会長の平富郎さんとは、
2009年の夏に富士に登った。

みなとみらいのスポーツオーソリティで、
山登りの道具や服装を一式そろえた。
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そのころはわが家にジジがいた。

登山靴も買った。

帽子、シャツ、ズボン。
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リュックサック。
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カッパ。

手袋。
手袋

そしてトレッキングポール。

平さんにアドバイスをいただいて、
予行演習のために高尾山に行った。
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それも良かった。
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ジジはショッピングバッグで遊んでいた。
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そして8月7日、
五合目から登り始めた。
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激しい雨に打たれつつ六合目。
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そして八合目。
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八合五勺の宿泊所・御来光館到着。
標高3450メートル。

ゆっくりゆっくり歩いた。
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ここで仮眠して、
暗い中を頂上を目指した。

浅間大社奥宮鳥居の下。
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そして山頂。
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平さんは数えで71歳だった。

私はもうその歳を超えた。

雲海は夢の世界のようだった。
17

一度しか登っていないのに、
何度もこのブログで紹介した。

そろそろまた山に登ろうか。
そんなことを考える。

かたつむりそろそろ登れ富士の山
〈小林一茶〉

一茶は登ったことがあるのだろうか。

「一度も登らぬ馬鹿に
二度登る馬鹿」

馬鹿になってもいいかな‽

〈結城義晴〉

2025年08月10日(日曜日)

怒ったり魂を売ったりしても自分のものを書きたい。

8月の三連休。

真ん中の日曜日。

私は自宅で単行本の全体構成を考え直し、
少しだけ原稿を書いた。

構想を練るのは充実して楽しい。
しかし書くのは苦しい時間だ。

『天才たちの日課』
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この本は面白い。

続編の「女性編」は、
さらに過激で壮絶ですらある。
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ウィリアム・ギャス。
1924年~2017年。
アメリカの小説家、評論家。

「いちばんよく書けるのは、
怒っているときだ」

不思議な言い方だが、
わかる気もする。

「だから、長期にわたる執筆の仕事は体に悪い」

1995年刊行の小説『トンネル』は、
25年をかけて執筆した。

「仕事中は神経が張りつめてくるので、
しょっちゅう立ちあがって、
家のなかを歩きまわらないといけない」

「とくに胃に悪い。
いずれにせよ、
怒らないとうまく書けないし、
紙の上で話が展開していくと、
それに対しても怒ってしまう」

「胃潰瘍がぐんぐん成長して、
薬をたくさんのまなくちゃいけない」

「仕事がうまくいってるときは
たいてい半病人だねのを書く仕事は体を痛める。

代表作は『アメリカの果ての果て』
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イサク・ディーネンセン。
1885年、デンマーク生まれの女流作家。
1914年にアフリカに渡って17年間農園を経営する。

映画「愛と哀しみの果て」の原作、
『アフリカの日々』はその体験的エッセイ。
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コーヒー農園経営に失敗して帰国。
作家として売れ始めたころから、
ディーネンセンの健康状態は悪化していった。

そして頑張りを支えるために、
覚醒剤アンフェタミンを使い始めた。

晩年、体力が必要となる重要な局面の執筆のとき、
いつも服用していた。

「私は自分の経験のすべてを
物語にすることと引き換えに、
悪魔に魂を売ったの」

ものを書くというのは、
そのくらい厳しい仕事だ。

さて商人舎流通SuperNews。

6月商業統計|
販売額52兆円1.7%増、うち小売業13兆円2.0%増

経済産業省大臣官房調査統計グループの報告。
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6月までのトレンドを、
「一進一退の小売業販売」と表現する。

6月の卸売業販売額は39兆690億円、前期比1.7%増。
小売業は12兆9660億円、同2.0%増。

業種別卸売業動向は、
食料・飲料卸売業が6.8%増、
農畜産物・水産物卸売業が4.8%増。
医薬品・化粧品卸売業が6.8%増。

繊維品卸売業が▲5.9%、
衣服・身の回り品卸売業が▲2.3%。

業態別小売業。
百貨店は5054億円、▲8.0%、
スーパーは1兆3766億円、4.8%増。

この統計には食品スーパーマーケットの分類がない。
すべて「スーパー」に含まれている。

コンビニは1兆1211億円、5.1%増。

ドラッグストア販売額は7984億円、
6.5%の増加。

家電大型専門店販売額は4261億円5.6%増。

6月のホームセンターは2955億円、2.3%増。

商人舎流通SuperNewsは、
丁寧に全体を書いている。

しかし業態別の1カ月間の売上高を比較すると、
全体像を表してはいないことがわかる。

ただしそのトレンドを知ることはできる。
だから「前年同月比」は役に立つ。

百貨店は悪かったが、
あとの業態はよかった。
それを彼らは「一進一退」と表現した。

総合スーパーと食品スーパーの「スーパー」は、
4.8%増だった。

コンビニが5.1%増、
ドラッグストアが6.5%増。

家電チェーンが5.6%増、
ホームセンターが2.3%増。

企業別の6月統計を調べると、
マミーマート既存店8.8%増、全店21.1%増。
ベルクが既存店7.3%増、全店12.6%増。
ヤオコー既存店4.9%増・全店9.3%増。

好調な埼玉県本拠の3スーパーマーケットだ。

イズミ既存店が0.2%減。
サンエー既存店3.4%増、
こちらは46カ月連続で前年プラス。

6月も暑かった。
家電チェーンはエアコンがけん引したが、
もっと暑かった7月はなぜか、
エアコンが低調になる。

暑さ寒さも彼岸まで。
しかし商売においては、
先取りが必須なのだ。

二十四節気は15日ずつの暦だが、
中国で生まれたので、
日本に適用すると少しだけ早い。

それが商売の先取りとぴったりしていると思う。

商業動態統計のような文章は、
生成AIなどでも書けるだろう。
実際に経産省などでも使っているかもしれない。

しかしギャスのように、
「怒っているとき」に一番よく書けたり、
ディーネンセンのように、
「悪魔に魂を」売ってまで書いたりするほうが、
本当の文章になると思う。

私はときには怒ったり、
場合によっては魂を売ったりしても、
自分のものを書きたい。

〈結城義晴〉

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