結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年05月05日(木曜日)

「元気がある」の決定力とトランプ共和党候補指名獲得

子が育つ筍飯(たけのこめし)の大盛りよ
〈清水基吉〉
俳人は1944年の芥川賞作家でもある。
筍ご飯の大盛り。
今日にかぎらず、
育ち盛りのこどもたちには、
腹いっぱい食べさせたい。

そんな、やや無邪気な幸せこそが、
ほんとうの幸せなのかもしれない。

銀も金も玉も何せむに
まされる宝子にしかめやも
〈『万葉集』山上憶良〉

「銀」は「しろかね」、「金」は「くがね」。
「玉」は宝石、あるいは翡翠。

銀も金も宝石も、なんでもない。
こどもよりも勝る宝はない。

今日はこどもの日。

つつじの花が美しい。 DSCN8542-6

真っ白なつつじです。DSCN8541-6

もちろんマーガレットも美しい。
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今日木曜日のこどもの日と、
日曜日の母の日とセットで、
今週は母子週間。

Weekly商人舎の2週間販促企画は、
このことを強調する。

木曜日の日替わり連載は、
林廣美の今週のお惣菜。
連載はもう161回を数える。

今週末のメニューは、
「ミニ海老天丼とうどんのセット」
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「売上げが鈍い時は
海老を売り込むと効果てきめん!」

いかにも林先生らしい一言。
「思い付き」や「気づき」などを、
マーケティングと勘違いしている輩、
本当に多い。

林先生の惣菜マーケティングは、
筋金入りの最新データ主義と現場主義。
それに基づいた凄いノウハウが、
必ず入っている。

だから、ちっとも古くならない。
NHKなどからも引っ張りだこ。
そして主婦にも大受け。

さて、祭日には糸井重里。
『ほぼ日刊イトイ新聞』の巻頭言。

またまた、糸井が納得した言葉。
「じぶんには元気がなかった」

だれが、どういう時期に言ったことか、
いつものように忘れている。

しかし、その人は言った。
「じぶんには
『元気がなかった』からだめだった」

「元気のある人の言うことには、
説得力がある」

糸井は述懐する。
「悪い人でも、間違ったことを言ってる人でも、
人を説得したり味方につけようと思う人は、
とにかく『元気』であることを表現する」

「皮肉な言い方をすれば、
元気を装っている」

納得。

ただし商人は、
毎日毎日の仕事だから、
「元気を装う」ときもある。

「政治家やら、実業家の人たちなんかは、
病気であることをできるだけ隠そうとする」

逆にちょいとした病気まで売り物にする者も、
ひどくクサいけれど。

「大きくて健康で気も強い、
ということが、百万のことばより
ものを言うことがあるのだと思う」

その通り。

「胸に秘めた考えや、
言ってることの内容はともかく、
まず『元気がある』が
勝負の決定力を持ってしまう」

「考えようによっては
由々しきことではあるし、
そんなのずるいよ、
ということでもあろう」

しかし、糸井は考える。
「それでも、実際にじぶんが、
『元気のない』ものを前にしたときに、
どういうふうに感じるものだろうか」

「その考えはいいかもしれないけれど、
ついていきにくいんだよなぁ」
そう、言ってしまいそうだ。

反対に、自分がいい考えを発表するとき。
「いかにも元気のない表現をしてしまったら、
『とてもいい考え』が
伝わったような気がしないだろう」

最後にたとえ話。
「たぶん、お笑いの芸人さんたちも
元気が売り物だ」

商人も確かに、
お笑いの芸人さんと、
似たところがある。

だから元気を出そうよ。
それがあなたの仕事です。

もちろん、胸に秘めた考え、
言うことの内容。

それが良くなければいけない。

損得よりさきに善悪を考えよう。
創意を尊びつつ良いことは真似よ。

こどもたちにも、
このことは伝えたい。

最後に、アメリカ大統領予備選挙。

共和党では党候補が決まった。
ドナルド・トランプ氏(69歳)。

インディアナ州の予備選後、
対抗のテッド・クルーズ上院議員(45歳)が、
選挙戦からの撤退を表明。

アメリカの共和党は、
エイブラハム・リンカーンが第2代党首で、
セオドア・ルーズベルト、
ドワイト・アイゼンハワーや、
ドナルド・レーガン、
ジョージ・ブッシュなど、
歴代大統領を輩出。
保守主義およびキリスト教の立場をとる。

一方、リベラル派の民主党は、
第3代大統領トーマス・ジェファーソンの流れをくみ、
フランクリン・ルーズベルト、
ジョン・F・ケネディ、
ジミー・カーター、
ビル・クリントンなど輩出。

現バラク・オバマ大統領も民主党。

その民主党は、
ヒラリー・クリントン前米国務長官(68歳)が、
ほぼ確定的。

正統派クリントン女史と、
異端の不動産王トランプ氏。

政治には門外漢、
既成政治を激しく非難。

そのトランプ候補こそ、
「元気を装う」天才のようだ。

党の指名争いでも、
「いずれ失速」と予想されたが、
経済格差に苦しみ、
「元気」を欲した共和党員の、
不満の受け皿となって、
指名権を獲得。

ただし、政策は、
「非現実的な内容が多い」

内容はないけれど、
元気な大統領候補。

困ったことになってきた。
日本にとっても。

米国在住の映画評論家・町山智浩さんは、
「トランプ氏は日本と中国の違いさえ
分かっていない。米国人の典型です」

だからこそ、そんなアメリカ人の、
一部から支持されている。

指名権争いで負けたクルーズ氏。
「有権者は別の道を選んだ。
わが国の未来への無限の楽観とともに
選挙戦を停止する」

無限の楽観がなければ、
つまりほんのわずかでも悲観を挟めば、
わが国の未来はない。

こういう意味だ。

リンカーンの共和党を、
ドナルド・トランプが引き継ぐ。
それだけでも大変なことだが、
まだトランプ大統領が、
誕生したわけでもない。

アメリカ合衆国国民は、
11月にもう一度だけ、
その真の見識が問われることになる。

ただしトランプが共和党代表になるという、
そんなアメリカ合衆国と、
私たちが付き合っていかねばならないことは、
確かなのだ。

銀も金も玉も何せむに
まされる宝子にしかめやも

ドナルド・トランプは、
この憶良の歌を知る由もない。

〈結城義晴〉

2016年05月04日(水曜日)

みどりの日の英国レスター初制覇とダイエー碑文谷店

みどりの日。
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ゴールデンウィークの真ん中で、
憲法記念日とこどもの日を繋ぐ、
やや、ご都合主義的な記念日だが、
その趣旨はいい。
「自然にしたしむとともに
その恩恵に感謝し、
豊かな心をはぐくむ」
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豊かな心をはぐくみたい。

大雨の後、夏の陽気。

イギリスからうれしいニュース。
サッカーのプレミアリーグに異変。
レスターは1884年創設の弱小クラブ。
前期に2部リーグからプレミアリーグ復帰、
そして二期目の今期に初優勝。

そのリーグ初制覇が決定。

日本代表のフォワード岡崎慎司が活躍する。

英国プレミアリーグは、
金に飽かせてスターを集める4強時代。
マンチェスター・ユナイテッド、
マンチェスター・シティー、
アーセナルとチェルシー。

しかしレスターにスター選手はいない。
イタリア人のラニエリ監督は就任1年目。
その堅固なストラテジーの徹底で、
この奇跡を成し遂げた。

今期の開幕前、ブックメーカーは、
レスター優勝のオッズを5000倍とした。
100ポンド(1万5500円)買っていたら、
50万ポンド、7750万円。

世の中にはこんなことも起こる。
それがドリームだ。

昨日は、東京・碑文谷。DSCN8505-6
ダイエー碑文谷店を訪れた。

1975年4月1日に、
ショッパーズプラザ碑文谷という名称で、
ダイエーの基幹店としてオープン。

前年の74年9月29日に、
創業の第1号千林駅前店が閉店しているから、
ほんとうに新しいシンボル店舗だった。

しかし、いろいろなことがあった。

そして5月5日のこどもの日に閉店する。
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このロゴマークは、
2005年10月14日に公式発表。
当時の会長は林文子さん、現横浜市長。
社長は樋口泰行さん、
現日本マイクロソフト会長。

中内功色を払しょくする狙いで、
あのオレンジマークを全廃して、
これに転換。

しかし、私、はっきり言って、
ずっと好きではない。
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コーポレートアイデンティティは、
企業にとって極めて重要なものだ。

雑誌の編集長も、就任すると、
ロゴマークを変えたがる者がいる。

自分の個性を出そうとする。

その前に、中身を良くしなければいけない。
そして中身が改善されてきてから、
さまざまなイメージやビジュアルを変更する。

ポジショニング戦略も、
際立つ立ち位置を主張するために、
重要な外的要件が三つある。

しかしその変革は商品やサービスが、
より良くなってからのことだ。

変えねばならないこと、
変えてはならないこと。

そこに錯誤や手順前後があると、
物事はさらに悪くなる。

その典型のような2005年のダイエーだった。

それから10年後の2015年1月1日、
ダイエーはイオンの完全子会社となった。

そして碑文谷店は、
イオンスタイルとして生まれ変わるために、
閉店する。
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5月5日21時。
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現在は1階と2階だけ営業中。
1階がデリと生鮮、日配、冷食など、
2階がグロサリー、酒と、ドラッグストア。

1階入り口の花売り場が、いい。
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梅丘の美登利寿司がテナント出店して、
大繁盛。
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しかし、床は傷んでいる。
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この店の歴史を物語る。

売り場も悪くない。
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閉店SALEのPOPがズラリと掲げられる。
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長い長いファンの顧客が、
ありがたい買物をしてくれている。
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カードをWAONに切り替える窓口は、
満員御礼。
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天井もこんなに低かったかと、
感慨深い。
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2階の酒売り場は、
もう商品が減っていっている。
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ドラッグストアにも顧客が入っている。
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まだ動いているエレベーターで、
最上階の7階に上がってみた。
真下を目黒通りが走る。
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懐かしさがこみあげてきた。

私は1977年4月1日に㈱商業界に入社した。
そしてすぐにダイエー碑文谷店を訪れた。
当時は、何か発表があると、
碑文谷店がその舞台となった。

それ以来、何度、ここに来ただろうか。
いつも店舗の外側にむき出しになって、
上下するエレベーターに乗った。

イオンスタイルになっても、
このエレベーターは、
なくしてもらいたくないと思った。

ダイエー碑文谷店、
12月にイオンスタイルとして蘇る。

昨年の5月6日のこのブログ。
「勝ったチームは強くなる」と
結城義晴「一番の人気」

サッカー業界の常套句は、
「強いチームが勝つとは限らない」

良いサッカーをしたチームが敗れると、
この常套句が使われる。

しかしそれに反対するリアリズムの声は、
「勝ったチームが強いのだ」

ここで日経新聞の吉田誠一記者。
「勝ったチームはより稼ぎ、
その分で補強が可能となり、
また勝つ可能性が高くなる」

それがスペインのレアルマドリード、
FCバルセロナ、
ドイツのバイエルンミュンヘンだった。
イギリスではチェルシーやマンユー。

いまやこれが常識化している。

しかしレスターは、それをひっくり返した。
「強いチームが勝つとは限らない」

碑文谷店も、
レスターのような、
劇的な変身を見せてもらいたいものだ。

〈結城義晴〉

2016年05月03日(火曜日)

憲法記念日の日本国憲法とリンカーンとキング牧師

日本の憲法記念日。
1947年5月3日、日本国憲法施行。

それを記念した祭日。

69年間、私たちは、
この日本国憲法のもとで生きてきた。

アメリカ合衆国の憲法は、
1787年9月17日に作成され、
1788年に発行した。
起草者はジェームズ・マディソン、
第4代大統領。

そしてちょっと意外に感じられるだろうが、
世界最古の成文憲法だ。

憲法記念日は9月17日。

そのアメリカ合衆国憲法の有名な前文。
We the People of the United States,
in Order to form a more perfect Union,
establish Justice, insure domestic Tranquility,
provide for the common defense,
promote the general Welfare,
and secure the Blessings of Liberty
to ourselves and our Posterity,
do ordain and establish this Constitution
for the United States of America.
「われら合衆国の人民は、
より完全な連邦を形成し、
正義を樹立し、国内の平穏を保障し、
共同の防衛に備え、人民の福祉を増進し、
われらとわれらの子孫のうえに
自由のもたらす恵沢を確保する目的をもって、
アメリカ合衆国のために、
この憲法を制定する」

安全な連邦、正義の樹立、
国内の平穏、共同の防衛、
人民の福祉、そして自由の恵沢。

ワシントンDCのリンカーン記念堂。
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ワシントン記念塔と、
リフレクティング・プール。
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そしてまた有名な言葉。
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and that government of the people,
by the people, for the people,
shall not perish from the earth.
「そして人民の、
人民による、
人民のための統治を、
この地上から消え去さらせてはならない」

記念堂の石段には、
マーティン・ルーサー・キング牧師の言葉も、
刻まれている。
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アメリカ合衆国憲法は、
連邦の堅持を強く謳っているが、
その精神はリンカーンのフレーズにあるし、
その未来はキング牧師の言葉にある。

一方、イギリスには成文憲法がない。
だから憲法記念日もない。

しかしこの国が、
1215年のマグナ・カルタ(大憲章)以来、
世界の法や立法の骨組みを築いてきた。

また、フランスは第五共和国憲法。
基本のひとつになっているのは、
1789年のフランス人権宣言。
その第三条は、
「いかなる主権の原理も
本質的に国民に存する。
どの団体も、どの個人も
そこから明確に発しないような権威を
行使することはできない」

フランス人権宣言は、
アメリカ合衆国憲法の翌年に、
発せられている。
これも意外な気がするが、
人間の権利を憲法の骨組みにしている。

ドイツの憲法は、
ドイツ連邦共和国基本法。
1949年に制定され、
5月23日が憲法記念日。

一番最初に謳われているのが、
「第1条・人間の尊厳の不可侵」

ドイツが人間の尊厳を、
第一としていることは意義深い。

さて日本国憲法。
私は毎年、憲法記念日には、
日本の憲法のことを書く。

昨年の憲法記念日は日曜だった。
だからブログは『ジジの気分』だった。

一昨年の今日のブログは、
日本国憲法前文と第9条の短文と
「集団的自衛権の行使」
これは読んでみてほしい。

このブログでも何度か書いているが、
私は自分の著書の「はじめに」の冒頭に、
日本国憲法を使った。
『小売業界大研究』。
2010年、産学社刊。

こう、はじまる。
「私たちの日本国憲法は、
『主権が国民に存することを宣言』しています。
国の基本原理・基本原則を定める日本国憲法は、
まず、国民主権を掲げるのです」

「そのうえで、
基本的人権の尊重、
平和主義の、
三つの考え方が謳われています」

「一方、すべての小売業もまた、
この三つの考え方を基盤としています」

「国の主権者である国民に、
一人ひとりの人権を尊重して、
商品とサービスを提供する。
そして、平和の中で、
小売業は繁栄する――」

「あらゆる産業は、
国民生活に貢献するために
営まれています。
しかし、とりわけ小売業は、
国民の毎日の暮らしを
維持・向上させるために、
最も国民に近いところで
日々、活動します。
小売業はそのことに、
最大の存在意義をもつのです」

私の基本的な考え方だ。

今日の日経新聞一面に世論調査。
日本経済新聞社&テレビ東京が実施。

読売新聞は改憲論を主張している。
一方、朝日新聞・毎日新聞は護憲派。
現時点では、
立憲主義と非立憲主義という枠組みで、
改憲論を攻撃している。

日経新聞は立場を鮮明にしていない。
経済、ビジネス優先で、
その意味ではノンポリ。

だから世論調査に客観性が出てくる。
おもしろい。

その調査は日経リサーチが、
4月29日~5月1日に、
全国の18歳以上の男女を対象に、
乱数番号(RDD)方式によって電話で実施。
固定電話と携帯電話を合わせて、
2210件を対象に991件の回答を得た。
回答率は44.8%。

調査の方式も、
今回は18歳以上となったし、
固定電話と携帯電話を組み合わせた。
変化が面白い。

その調査結果、
日本国憲法に関して、
「現在のままでよい」の回答が50%。
2004年以降、同じ質問で調査して、
初めて5割に達した。

反対に「改正すべきだ」は40%。

「現在のままでよい」と答えた人の理由。
「平和主義が変質する恐れがある」が51%。
「よほどのことがない限り、
憲法改正すべきでない」が38%。

昨15年4月の1年前の調査。
「現在のままでよい」(44%)
「改正すべきだ」(42%)

護憲派がこの調査では伸びた。

年代別にみると、
改憲支持が護憲を上回ったのは、
30代、40代、50代。
逆に護憲が上回ったのは60代と70代。
18~29歳の若い世代も、
護憲が55%、改憲が39%。

さらに支持政党別の結果。
自民支持層は当然ながら改憲支持が多い。
無党派層は52%が護憲、改憲は36%。
民進支持層では77%が護憲、改憲は2割。

この論議は、安倍晋三政権のときだけでなく、
将来も続けられていくに違いない。

しかし、リンカーンとキング牧師の精神は、
世界の憲法の精神に、
通底しているものである。
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なによりも、大事なものだ。

〈結城義晴〉

2016年05月02日(月曜日)

5月の商人舎標語は「自らの成長に責任をもとう!」

Everybody! Good Monday!
[2016vol18]

2016年5月2日。
ゴールデンウィークの真ん中。

小売りサービス業は書き入れ時。

Weekly商人舎日替わり連載。
月曜朝一・2週間販促企画。
IDとパスワード保有者だけのページで恐縮。

5日(木)こどもの日から、
8日(日)母の日が、
今年の大目玉テーマ。
母と子の1週間。

そして明けた9日(月)からは、
夏夏夏夏ココナッツ!
そのくらいの劇的売り場転換が望まれる。

朝日新聞一面の『折々のことば』
編著は鷲田清一さん。

今日の言葉は、
「仕事はお芝居でしょ」(酒場にて)

たまたま隣り合わせた
“酒場の哲人”の言葉。

パスカルは『パンセ』のなかで言う。
「人が熱中する仕事も学問も遊戯もみな、
『自分』という存在の空しさに
向きあわないで済むよう、意識をたえず
他のものへと散らしておくための
『気晴らし』にすぎない」

いや、「仕事はお芝居でしょ」は、
劇的空間の店舗で、
役者を演じよ、ということだ。

このよろけ地球の自転山笑ふ  
〈朝日俳壇より 佐賀県有田町・森川清志〉
老齢の俳人。
おっと、よろけた。
転びそうになった。
地球の自転の所為?
かんしゃくのくの字をとって生きていく  
貼ってあるのにダメだな私  
〈朝日歌壇より 草加市・梶田純子〉
「癇癪」から「く」をとれば「感謝」
いい標語だ。そこで5月の商人舎標語。
月刊商人舎5月号の[Message of May]
自らの成長に責任をもとう!

責任とは、
引き受けて、
なすべき任務である。

当然、
負わなければならない義務、
となる場合もある。

しかしこの責任は、
自由があるから生まれる。
逆に自由を求めれば、責任が伴う。

そして、
責任が生まれたら、
任務や義務が明確になる。

自由、責任、義務のトライアングル。

組織においてもっとも大事なことは、
地位ではなく、責任である。
成功の鍵は、責任にある。

顧客に対して、社会に対して、
仲間や仕事に対して。
自ら責任をもつことである。

そして、一商人として、
自らの成果と成長にまで、
責任をもたせることである。
〈結城義晴〉

自分の成長にこそ、
自分で責任をもつ。

だれにも頼らない。
そうすれば、パスカルのニヒリズム、
超えることができる。

ピーター・ドラッカー先生は、
その心のあり方を言う。

ありがとうございます。

さて、ゴールデンウィークの、
『ほぼ日』糸井重里がつぶやき。

「気づいてみたら
休み中にやっておきたい宿題を含めて、
ずいぶんたくさんの仕事が溜まっていた」

まったくの、同感。

「だいたいいつごろまでにやっておこう、と、
考えかけてそのままにしておいたことが、
ひとつずつ増えていたというわけだ」

そうなんですね。
私も、あれもこれも。
溜まりまくっている。

「ぼくももう、こどもじゃないんだから、
もうちょっとやり方があったとは
思うんだけどねー。
やりかけのこと…。
やってる途中のことばかりだなぁ」

「と、どんよりと弱気になるところで、
おいおいおい、と、
気がついてしまったんだけど、
あらゆることは
『やりかけのこと』じゃありませんか」

このあたりが糸井らしい。

「ひとつなにかが終わったって、
その終わったところから
次の局面がはじまってる」

得意のたとえ話。
「こどもが生まれて、
親になったなんてときも、
やっと生まれましたね
という意味では終わりなんだけど、
そこからそのこどもを
育てていくことがはじまるわけで、
子育てが終わったねという日が来ても、
それでもまだなにかが続いているはずだ」

上手ですねぇ、相変わらず。

「人生は、
やりかけの日々の
積み重ねである」

名言?

「あらためてそう言うと、
なにか意味ありそうだけど、
ものすごく当たり前のことで、
そうに決まってるよね」

論理性とは、実は、
身も蓋もないことです。

「しかも、すべての人は、
たくさんのやりかけのことを
やりかけのまま残して、
生きることのエンディングを迎える」

「その、死という終わり方は、
目的にしてなかったのにね」

話は大げさになる。

「そして、じぶん以外の人たちが、
亡くなった人のやりかけのことを
引き継ぐわけでもなく
そのままにして忘れてしまったりもするし、
ときには続きとして、
またはじめたりもするわけだ」

パスカルも言う。
「多数の人々が鎖につながれ、
死刑を宣告されているさまを想像しよう。
幾人かが日ごとに眼前で絞め殺され、
残った者は、自分たちも
同じ運命をたどることを悟り、
悲しみと絶望の中で
互いに顔を見合わせながら、
自分の番がくるのを待っている。
これが人間の状態なのである」

パスカルほどストイックではないが、
糸井の妄想はさらに広がる。

「もともと宇宙とかいうやつだって、
目的のないどこかへと向かう
やりかけの積み重ねだ。
おれのやりかけの仕事ぐらい、
なんだっつーのだよ」

着眼大局着手小局。

「うむ。言い訳のなかにも、
幾分かの真実はあるものだよな」

のんきに見える糸井重里。
だが、いつもいつも
こういった思考回路を訓練している。

それは有益だ。

今日は一日、
横浜商人舎オフィスで、
原稿書きと責了仕事。
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今月の広告は、
エバラ食品工業㈱。

宮崎遵さん、感謝します。
近藤康弘さん、ありがとう。
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産業と業界の指針を示し、
それを動かすメディアが、
月刊商人舎です。

なぜなら主だったトップマネジメントが、
全員、熟読してくれていて、
しかも私たちの問題提起に、
真摯に取り組んでくれているからです。

私は自分の責任において、
このメディアを編集しています。

ありがとう。

では、みなさん、
今週も、Good Monday!

〈結城義晴〉

2016年05月01日(日曜日)

【日曜版・猫の目博物誌 その2】タンポポの綿毛

猫の目は、
斜め後ろも見える。
距離感を正確につかむ。
暗いなかでも見える。

そんな目で見る博物誌――。
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「博物誌」といえば、
ローマ帝国時代のプリニウスの『博物誌』。

プリニウスは、
ストア派のいわば禁欲主義者。

自然法則にしたがって、
徳の高い生き方を目指した。

プリニウスは、
夜明け前から仕事をはじめて、
勉強している時間以外は
すべて無駄な時間と考えた。

読書をやめるのは
風呂につかっている時だけだった。

紀元79年、ヴェスヴィオ山が大噴火。
ポンペイの町が壊滅した。

プリニウスは、
ローマ西部艦隊の司令長官だったが、
ポンペイの友人らを救出し、
同時に火山現象を調査しようと、
ナポリ湾をわたって上陸。

そこで死亡した。

そのプリニウスの大作が、
37巻の『博物誌』
自然と芸術についての百科全書。

プリニウスとまではいかないが、
猫の目博物誌――。
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春の川辺。
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新緑の季節。
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黄色いタンポポの花が、
一度閉じて、蕾になる。
それがふたたび開くと、
綿毛が現れる。

〈http://www.rightplants4me.co.ukより〉

右端は綿毛が開く直前の蕾。
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そしてタンポポの綿毛が開いた。
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タンポポは、
キク科タンポポ属(Taraxacum)の多年草。
生命力が強い。
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英語では、dandelion。
プリニウスが使っていたラテン語では、
Taraxacum

そう、学名はラテン語を使う。

春の花の代表だが、
猫はそれほど、
この花が好きではない。

むしろ、綿毛がいい。
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もともとは、
「フヂナ」あるいは「タナ」と呼ばれた。

江戸時代には、
鼓草と言われた。
「つづみぐさ」

鼓をたたく音が、
「タン」と「ポポ」

この擬音語が語源で、
鼓草は「タンポポ」となった。

これは通説。
正しいかどうかわからない。

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英語の「dandelion」は、
フランス語の「dent-de-lion」からきた。
lionはライオン、dentは歯。
つまりライオンの歯。

ギザギザした葉が、
ライオンの牙を連想させた。

現代フランス語では、
pissenlitという。

piss-en-lit。
ピサンリ。
tは発音しない。

pissはおしっこ、litはベッド。
「ベッドのおしっこ」
つまり「おねしょ」

タンポポには利尿作用があるから。

フランス人の観察は、
かわいい。

綿毛は英語でblowball。
「吹かれる球」か。
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しかしこの綿毛は、
タンポポの果実である。
つまり種子。

綿毛の飛行距離。
なんと約10kmとか。

秒速0.5mの風でも、
それに吹かれて、
宙に浮いている。

風によって種子を飛散させ、
種の存続を図る。
IMG_4530-6

綿毛は生命の源だ。
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「タンポポと南風の物語」

南風は怠け者だ。
いつも寝そべって野原を眺めていた。

ある春の日、南風は、
野原のなかに、
黄色い髪の美しい少女を見つけて、
恋に落ちた。

実はその少女はタンポポだった。

それに気づかない南風は、
毎日夢中になって、
少女を見つめ続けた。

しかし、いつのまにか少女は
白髪の老婆になってしまう。

南風は、悲しみのあまり、
大きなため息をついた。

すると、ため息に飛ばされて、
白髪の老婆も 、
いなくなってしまった。
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しかしタンポポの綿毛は、
白髪の老婆ではない。

未来をつくる生命の源だ。

タンポポは、
花を開かせるために
生まれてきたのではない。

宙に浮き上がって、
世界を見下ろす。
そして、生命の種を、
植えつける場所を探す。

そのために、
タンポポは生まれてきた。IMG_4523-6

それに猫は、
黄色い髪の少女に、
恋をしたりしない。

怠け者の南風よりも、
勉強家のプリニウスでいたい。
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〈『猫の目博物誌』(未刊)より by yuuki〉

2016年04月30日(土曜日)

ポッポおじさんからの手紙と二階俊博「ノコギリ関係」

2016年4月最後の日。

さよなら、三月、
よろしく、四月。

こう始まって、もう、
仕舞いの四月。

うれしいお便りと商品が届いた。
川邉哲也さん。
㈱大分からあげ代表取締役社長。

会社案内のパンフレットと、
「とりかわサクサク揚げ」が、
段ボールに入っていた。
とりかわ

開けてみると名刺と手紙。

「会社を立ち上げて
13年が終えようとしています。
現在、大分県と福岡県で
26店舗のテイクアウト専門の
からあげのチェーンストアを
展開しております」

熊本地震、お見舞いします。

「実は、15年ほど前、
事業立ち上げの際、
戦略の中心にしていた思想が
『小さく狭く濃く深く』という
結城さんの言葉でした。
確か商業界の記事の中にあったと
記憶しております」

こころから、ありがとう。

「この事業を始める前は、
親がやっておりました『パパママストア』を
後継しておりました。
しかし御多分にもれず、
時代の激流にのまれ、
いわば川の流れに
逆らい泳ぐような商売を
10年くらい経験しました」

月刊商業界では、
「パパママストアの特集」を、
繰り返していた。

「これからどうやって生きていけばよいのか?」

「そんな暗中模索の時、
巡り合った言葉こそが
『小さく狭く濃く深く』でした」

私は『販売革新』にも、『食品商業』にも、
これを書いた。

単行本『Message』にも、
「安澤英雄の生と死」の冒頭で使った。

㈱商業界社長時代には、
2月ゼミナールで、
総合テーマにも使った。

㈱ヨネザワ社長の米澤房朝さんも、
「小さく狭く濃く深く」を信条としてくれている。
メガネのヨネザワは、
九州と山口で167店を展開する。

米澤さんにも、あらためて、
地震のお見舞いを申し上げたい。

川邉さんの手紙は続く。
「おおげさに言えば、当時の私にとって、
鎌倉の世の庶民が感じたであろう
『南無阿弥陀仏』のような救いの言葉でした」

救いの言葉だなんて、
おこがましい。

「以後、運よく、また多くの方の力添えを得て、
今日まで少しずつ成長しながら
無事に商売を続けることができました。
ここにきて、社員も育ちはじめ、
社風も根付きはじめ、
業績も創業時に思い描いた領域に到達し、
来期(6月~)は、第2章のスタートであると
取り巻く状況が我々に
語りかけてきております」

「中小企業という言葉がありますが、
まさに小規模会社(小学生)から
中堅企業(中学生)の世界に入っていく感覚です」

「たとえば近所の子どもに
挨拶して返事がなかった。
小学生なら許されるが、
中学生ならそうはいきません。
お客様が我々を見る目、
社員との関係性、
地域社会からの期待感・・・。
すべてが我々を
中学生として見はじめました。
責務は急に重くなりました」

「イオンの聖母マリア様(と私は感じております)
小嶋千鶴子さんの『あしあとⅡ』に
こんな一説があるのを思い出しました。

情報というものも相対のものですから、
受信一方では入って来ません。
発信者のところへ
情報が戻ってくるのだと思います。

これまで小学校の間は、
会議所なども一切入らず、
当然交流も発信も控え、
ただひたすらお客様と
向かい合ってきました。
しかし中学に入ったら
そういうわけにもいかない」

「この1年、結城さんの文章を読む機会が増え、
弊社を発信して頂くなら
この方だと確信しました」

喜んで。

「小嶋さんの文面は次のように続きます。

情報と情報を結合すると
アイデアが沸きます。

一度ぜひお会いしたく思います。
我々大分からあげの第2章も
成長による『飛躍』です。
それも『自然な』成長です」

あんまり文章がうまいので、
全文を紹介してしまった。
小嶋千鶴子さんの言葉を引用しているが、
実はイトーヨーカ堂出身。
勉強家だ。

ありがとう。

川邉さんはブログを書いている。
いわば私とはブログ同志。
だから文章も見事。

ブログのタイトルは、
「ポッポおじさんのブログ」
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よろこんで、お会いしましょう。
よろしく。

さて今日はもうひとつ、
届いた。

明治マーケティングレビュー。IMG_8149-6
連載タイトルは、
「小売業のスーパーマーケティング」

1年に4回発行の季刊誌で、
もう連載は33回目。
9年目に入った。

今回からまた、
「米国スーパーマーケティング」を書く。

私はこの原稿を書きながら、
毎日のブログや月刊商人舎になかった、
新しい発見をした。

ありがたいことです。
さまざまなメディアに、
書きつつ、考える。
考えつつ、書く。

それが新しい知見を生み出す。

明治のお取引先向けの小冊子。
手に入れて読んでください。

最後に日経新聞の記事から。
自民党総務会長・二階俊博さんの言葉。

北京を訪問中。

何度か直接会っているが、
二階さん、こんな気の利いたことを言うか。

中国の李金早・国家観光局長と会談。
李さんの発言。
「本年は訪日中国人が600万人を超える」
昨年は約500万人だった。

二階さん。
「我々もそれなりの決意と覚悟をして、
お迎えの準備をしないと
いけないと思っている」

いつも日本国内で旅行関係者に言う。
「観光はノコギリのように
やらないといけない」

鋸のたとえ。
「ノコギリをひくのを
想像してもらえばわかるが、
押すばかりでは駄目。
ひくばかりでも駄目だ。
押したりひいたりしないといけない」

中国人にも鋸のたとえは通じるのだろう。
「日本の旅行関係のみなさんは
『来てください』という呼びかけが
ほとんどでしょ。
だけど、『来てください』というなら、
行かなきゃ駄目ですよ」

店とお客様との間にも、
ノコギリ関係がある。

安いよ、安いよ。
いいよ、いいよ。
うまいよ、うまいよ。
だから来てください。

これだけではいけない。
行かなきゃ駄目ですよ。

では、お客のもとに行くとは?

かつて、テレビCMは、
「お茶の間」に飛び込んだ。

チラシも新聞とともに、
家庭のなかに運び込まれた。

今、Eコマースは、
いつも顧客のスマホやパソコンに、
飛んで行く。

セブン-イレブンは、
鈴木敏文さんが退任しても、
顧客の一番近くに、
「行っている小売業」だ。

顧客とのノコギリ関係。
あなたは、どう築くか。

仕舞いの四月。
明日から、
ご機嫌よう五月だ。

よろしく。

〈結城義晴〉

2016年04月29日(金曜日)

昭和の日の「世界一貧しい大統領」の幸福論

2016年ゴールデンウィーク。
今日から5月8日の日曜日まで、
10日間。

その間の平日は、
5月2日と6日。

普通の勤め人が、
この2日に休暇をとれば、10連休。

私の古巣の㈱商業界には、
伝統的にそんな社員も結構いたが、
ごく普通の会社では2日か6日の、
どちらも出勤するか、
あるいはどちらかを休むか。

2日に休暇をとれば7連休。
一般に、このパターンが多いのだろう。

もちろん小売りサービス業は、
書き入れ時。

店は開けておかねばならないし、
だから休みは取れない。

しかしそれがあなたの仕事です。
それがあなたの役目です。

今日も大分で震度5強の地震。
平成28年熊本地震は、
異例の長期化と広域化を記録する。

被災地の人々は、
今も闘っている。

それを支えるのも、
私たちの仕事であり、役目だ。

その連休初日の今日は、
昭和の日。

1988年までは、
昭和天皇の誕生日だった。
1989年1月7日、昭和天皇崩御の後、
一旦、みどりの日となったが、
2007年から「昭和の日」の祭日。

趣旨は、「激動の日々を経て、
復興を遂げた昭和の時代を顧み、
国の将来に思いをいたす」
私は、このネーミングがぴったりだし、
この趣旨が今日にふさわしいと思う。

日経新聞巻頭の『春秋』
作家の関川夏央さんを持ち出す。
「昭和で数えるといまは……と
よく年号を置き換えてみる」

著書『家族の昭和』でいわく
「二〇〇八年は平成二十年ではない。
昭和八十三年だ。
あえてそういいたい昭和人である」

そうすると今年は昭和91年。

2025年が昭和100年。
その年、私は73歳。

まだ、毎日更新宣言ブログを、
書き続けていると思う。

『春秋』は書く。
終戦直後、昭和天皇が、
現平成天皇の皇太子に手紙を書いて、
敗因を率直に語った。
「精神に重きをおきすぎて
科学を忘れたことである」

ここでいう「科学」とは、
「論理」のことであり、
「論理性」のことである。

平成も28年になる現在、
この昭和の失敗の教訓が
忘れられ、薄れているかもしれない。

またまた精神に重きをおきすぎて、
論理の重要性を忘れてはいないか。

 

さて朝日新聞digitalに、
「世界一貧しい大統領と呼ばれた男」
聞き手は萩一晶さん。
ちょっと長いけれど、
抜き出しつつ引用。

南米ウルグアイ東方共和国の
ホセ・ムヒカ前大統領。
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Jose Mujica。1935年生まれの80歳。
左翼ゲリラから農牧水産大臣を経て、
2010~15年に大統領。
80歳を超えた現在も、上院議員として、
国民から「ぺぺ」の愛称で、
熱い支持を受ける。

住まいは首都モンテビデオから車で30分。
畑のわきの小さな平屋。
同じく上院議員の妻と二人暮らし。

愛車は1987年製のフォルクスワーゲン。
いわゆるビートル。

自ら家事をし、畑も耕す。

「いいところだろう。
この国は自然豊かで、とても美しい。
特にこんな小さな村は
年寄りが暮らすには、
もってこいなんだ」

「私はもともと農民の心を持って生まれた。
自然が大好きなんだ。
4階建ての豪邸で
30人からの使用人に囲まれて暮らすなんて、
まっぴらだ」
だから大統領任期中も、
公邸には住まなかった。

当時、給料の9割を慈善事業に寄付。
外遊はエコノミークラス。
どこかの東京都知事とは違う。

「世界で一番貧しい大統領」という称号。
「みんな誤解しているね。
私が思う『貧しい人』とは、
限りない欲を持ち、
いくらあっても満足しない人のことだ」

「私は少しのモノで満足して生きている。
質素なだけで、貧しくはない」

正しい、素晴らしい。
私もそう、ありたい。

「モ ノを買うとき、
人はカネで買っているように思うだろう。
でも違うんだ。
そのカネを稼ぐために働いた、
人生という時間で
買っているんだよ」

人生という時間で買物をする顧客。
私たち商人は、
その人生に応えねばならない。

「生きていくには働かないといけない。
でも働くだけの人生でもいけない。
ちゃんと生きることが大切なんだ。
たくさん買物をした引き換えに、
人生の残り時間がなくなってし まっては
元も子もないだろう」

そして、言う。
「簡素に生きていれば
人は自由なんだよ」

幸せだと感じるとき。
「自分の人生の時間を使って、
自分が好きなこと、
やりたいことをしているときさ。
いまは冬に向けて、ビニールハウスに
トマトの植え替え作業をしているときかな」

「それに幸せとは、
隣の人のことをよく知り、
地元の人々とよく話し合うこと。
会話に時間をかけることだとも思う」

「人間が犯した間違いの一つが、
巨大都市をつくりあげてしまったことだ。
人間的な暮らしには、
まったく向いていない。
人が生きるうえでは、
都市は小さいほうがいいんだよ」

日本についてもコメント。
「効率や成長一辺倒の西洋文明とは
違った別の文化、別の暮らしが
日本にはあったはずだろう。
それを突然、全部忘れてしまったような印象が
私にはある」

「簡素な生き方は、
日本人にも響くんだと思う。
子どものころ、近所に
日本からの農業移民がたくさんいてね。
みんな勤勉で、わずかな持ち物でも
満ち足りて暮らしていた」

1960~70年代、
都市ゲリラ「トゥパマロス」のメンバーとなり、
武装闘争に携わった。
投獄4回、脱獄2回。
銃撃戦で6発撃たれ、
重傷を負った。

「平等な社会を夢見て、
私はゲリラになった。
でも捕まって、14年近く収監されたんだ。
うち10年ほどは軍の独房だった。
長く本も読ませてもらえなかった。
厳しく、つらい歳月だったよ」

「独房で眠る夜、
マット1枚があるだけで私は満ち足りた。
質素に生きていけるようになったのは、
あの経験からだ」

「孤独で、何もないなかで
抵抗し、生き延びた」

「『人はより良い世界をつくることができる』
という希望がなかったら、
いまの私はないね」

「人は苦しみや敗北からこそ多くを学ぶ。
以前は見えなかったことが見えるようになるから。
人生のあらゆる場面で言えることだが、
大事なのは失敗に学び再び歩み始めることだ」

独房で見えたもの。
「生きることの奇跡だ。
人は独りでは生きていけない。
恋人や家族、友人と過ごす時間こそが、
生きるということなんだ。
人生で最大の懲罰が、孤独なんだよ」

「ファナチシズムは危ないということだ。
左であれ右であれ宗教であれ、
狂信は必ず、異質なものへの憎しみを生む。
憎しみのうえに、善きものは決して築けない。
異なるものにも寛容であって初めて、
人は幸せに生きることができるんだ」

ファナチシズムとは盲信的熱狂。
異質なものへ闘争心丸出しで挑む。
それでいて「正義」を振りかざす。
それは憎悪を生むだけだ。

ウルグアイは軍事政権から民政復帰。
85年に釈放され、
ゲリラ仲間と政治団体を創設。
89年に現与党・左派連合「拡大戦線」に参加。
日本では昭和が終わった時だった。

その後、下院・上院議員を経て、
昨年までの5年間、大統領。

「貴族社会や封建社会に抗議し、
生まれによる違いをなくした制度が
民主主義だった。その原点は、
私たち人間は基本的に平等だ、
という理念だったはずだ」

「私たち政治家は、
世の中の大半の国民と
同じ程度の暮らしを送るべきなんだ。
一部特権層のような暮らしをし、
自らの利益のために政治を動かし始めたら、
人々は政治への信頼を失ってしまう」

「それに最近の政治家は退屈な人間が多くて、
いつも経済のことばかり話している。
これでは信頼を失うはずだ」

「人生には、もっとほかに大切なことが
いろいろあるんだから。
たとえば、街角で1人の女性に
恋してしまうことに
経済が何の関係がある?」

「いまは文明の移行期なんだ。
昔の仕組みはうまく回らず、
来たるべきものはまだ熟していない。
だから不満が生まれる」

「ただ、批判ができるのも
そこに自由があるからだろう。
民主主義は欠陥だらけだが、
これまで人が考えたなかでは
いい仕組みだよ」

「それに時がたてば、
きっと新しい仕組みが生まれると思う。
デジタル技術が新しい政治参加への
扉を開くかもしれないし」

「ドイツやスイスでも
政治に不満を持つ多くの若者に出会った。
市場主義に流される人生は嫌だという、
たっぷり教育を受けた世代だった」

「米国でも、大学にはトラ ンプ氏とは正反対の
開放的で寛容な多くの学生がいる。
いま希望を感じるのは彼らだね」

「貧乏人の意地ではなく、
知性で世界を変えていこう
という若者たちだ」

素晴らしい。
私たちの世界で言えば、
世界を変えるのは知識商人だ。

「怖いのは、グローバル化が進み、
世界に残酷な競争が広がっていることだ。
すべてを市場とビジネスが決めて、
政治の知恵が及ばない。
まるで頭脳のない怪物のようなものだ。
これは、まずい」

ムカヒさん自身の政治的な立場。
「できる限り平等な社会を求めてきたから
左派だろう。
ただ、心の底では
アナキスト(無政府主義者)でもある。
実は私は、
国家をあまり信用していないんだ」

「も ちろん国家は必要だよ。
だけど、危ない。
あらゆるところに官僚が手を突っ込んでくるから。
彼らは失うものが何もない。リスクも冒さない。
なのに、いつも決定権を握っている。
だから国民は、国家というパパに
何でも指図されていてはいけない。
自治の力を身につけていかないと」

4月5日に来日。
「日本のいまを、よく知りたいんだ。
世界がこの先どうなるのか、
いま日本で起きていることのなかに
未来を知る手がかりがあるように思う。
経済も技術も大きな発展をとげた働き者の国だ。
結局、皆さんは
幸せになれたのですか、

と問うてみたいな」

ムカヒさん、ありがとう。

昭和を経て、平成28年の昭和の日。
「日本人は幸せになれたか」

それを問いながら、
ゴールデンウィークを過ごしたい。

〈結城義晴〉

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