結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2009年01月05日(月曜日)

パラダイム転換年の臨場感と高揚感

Everybody Good Monday!

正月三が日と4日の日曜日が終わって、
いよいよ2009年、普通のお客様は、
平常生活に戻ります。
だから商業・ホスピタリティビジネスも、
今日から平常営業。

 

年末から正月は、書き入れ時だった。
忙しかった。
不思議なことに商売は、
たとえ売れなくとも忙しい。
売れればもっと忙しいが。

本当にご苦労様でした。
まず、そのご苦労をねぎらいたいと思います。

多くのお客様を代表して、お礼を申し上げましょう。

ありがとうございました。

 

3が日を休業日にしている会社やお店は、
さあ頑張ろう、という気になっているでしょう。

それはそれで、とてもよいサイクルだと、
私、思います。

 

今年一年は、大きな転換期。
まさしくパラダイム・シフトが起こっている。
世の中の価値観が変わる。
同じものを見ていても、
その見方が変わる。
、根岸
その中に身をおく臨場感、高揚感。
このスリルをしっかりと実感する年。

そんな年度が始まり、
そんな1月が始まり、
その最初の1週間が始まった。

やりがいのある時間が私たちを待っている。

 

さて、そんな1月の始めの5日。
Good Mondayの月曜日。

商人舎ホームページをプレ・リニューアル・オープンします。
新商人舎ホームページです。

グランドオープンは、1月9日。
金曜日に、正式にアドレスも変わります。
http://www.shoninsha.co.jp

実は現在も、アドレスだけは、
両方、アクセスできるようになっています。

これまでは、私の個人的なアドレスを使ってきました。

yuukiyoshiharu.com

思い入れの深いアドレスで、
これまでは個人ブログに㈱商人舎のホームページが、
乗っかっている形だったのですが、
これからは㈱商人舎のホームページ。

目指すのは、
商業・ホスピタリティビジネスにおけるユニークなサイト

昨年秋からずっと計画し、
年末から再構築作業を続けてきました。

まだまだ完成してはいません。
だから今週は、突貫工事で、最終仕上げ。

しかし、ロイヤルカスタマーの皆さんには、
その最後の内幕を、ご覧いただこうとの意図で、
プレ・オープンといたします。

ご自由に探索し、楽しんでください。

もちろん、結城義晴の[毎日更新宣言]は、
これまで通り、続きます。

かつての㈱商業界の『食品商業』や『販売革新』の巻頭言。
あの「メッセージ」を[毎日更新宣言]が引き継いでいきます。

そして、様々なブログや研究会報告が、
特集記事のように、独立して展開されます。

私は、雑誌のようなサイトにしたいのです。

かつて㈱商業界の月刊雑誌を『使う雑誌』と位置づけました。
『読む雑誌』でなく、『使う雑誌』。

商人舎ホームページは、『使うサイト』です。

商業・ホスピタリティビジネスに携わる人々のための、
知識商人を目指す人々のための、
毎日更新の『使われるサイト』

それが新商人舎ホームページです。

よろしくお願いします。
グランドオープンをご期待ください。

 

さて、1月をざっとおさらい。2月決算の会社は、あと2カ月。
3月決算の会社は、第4四半期が残っている。

その意味で、1月の初めに1月をおさらいしておくことは、
極めて重要。

今週末は、3連休。
10日土曜日、11日日曜日、12日成人の日。

昨年から続いている営業のリズム。
ウィークデーは「節約、倹約。もったいない」
ウィークエンドは「失敗を恐れない」

2008年の家計消費支出統計では、
特に食料費が1年間で最低の月。

その上で2009年は、
「節約モード」から「不況モード」に、
ランクアップしている。

このことは忘れてはならない。

冷蔵庫に確保しておくべき必需の品。
様々な料理に使い回しできる素材・材料。
必ず必要になる消耗品。

まさにコモディティとベーシックが、
焦点となる。

これは衣食住薬の全分野にいえること。

1月は、従って、ベーシック月間となる。

ただし、ベーシックやコモディティは、
一見、だれでも、どこでも、変わらない。

今年一番陥りやすい落とし穴、そして危険なことは、
同質化競争です。
これは断言しておきましょう。

だから「無理」をしなければ、
違いを出せない。
差がつかない。

「無茶」はあかんけれど。

今月の商人舎標語
「無茶はせず、無理をする」

いかが。

パラダイム転換の年の臨場感、高揚感。

前向きに感じつつ、いざ、スタート。

Everybody Good Monday!

<結城義晴>

 

2009年01月04日(日曜日)

新春特別ジジ対談[日曜版]

新年 おめでとうございます。

ユウキヨシハルの[毎日更新宣言]日曜版は、
ボクの出番です。

ボクの名は、ジジ。

ユウキ家の家族。

今日は、ボクがコーディネーターとなって、
新春特別ジジ対談。

対談のお相手は、もちろん、
ユウキヨシハルさん。

ところは、床の間のまえ。
床の間

対談者が集まって、準備。
ジジ「よろしいですか」
ユウキ「はい、どーぞ」
よーい

まず、ごあいさつ。
「新年、あけまして」
せーの。
yorosiku
「おめでとうございます」
礼
ユウキ「あわせてよ」
ジジ「ごめんなさい」

ジジ「さて、ことしのホーフは?」
ユウキ「無茶はせず、無理をする」

ジジ「ムチャってなに?」
ユウキ「危ないことやできそうもないことをする態度」

ジジ「じゃあ、ムリってなに?」
ユウキ「ちょっと背伸びして、目標を立てること」

ジジ「ムチャとムリの仕分け方、むつかしいね」
ユウキ「その通りです」
礼2
ジジ「それだけ?もっとのりだすようなものは、ないの?」
ユウキ「あと30年、現役で仕事するための体づくり」

ジジ「なぜ30年なの?」
ユウキ「これまで30年働いてきたから、折り返し点なんだよ」

ジジ「ゲンエキってなに?」
ユウキ「人のお役に立つ仕事を続けるってこと」

ジジ「体づくりって、ゴルフすること?」
ユウキ「それもあるけど、基礎体力をつけようと思ってる」

ジジ「去年は、目の手術、したもんね」
ユウキ「そう、今年は健康第一だね」

ジジ「ボクは、シンプル・ライフ」
ユウキ「変わらないんだ」

ジジ「そう、変えません。変える必要のないものは」
ユウキ「変える理由がないものは」

ジジ「ボク、ガンコです」
ユウキ「見習います」
おめでとう
ジジ「いずれにしてもユウキヨシハルさん、元気でね」
ユウキ「元気を売ろうよ、って言ってるくらいだからね」

ジジ・ユウキ「今年も、よろしくお願いします」

<『ジジの気分』(未刊)より>

2009年01月03日(土曜日)

初売り低調現象と一番の人気

正月3日、再び、謹賀新年。
2009年賀状
郵政民営化のお陰もあって、
3が日ともに年賀状が配達される。
ありがたいことです。
賀状をくださった皆様、
ありがとうございます。
この場をお借りして、お礼申し上げます。
上記の年賀状、できる限りお送りしております。

 


さて、元旦からの初売り。

前年対比売上高を割り込み、低調との声。

世界最高峰の百貨店・新宿伊勢丹も。
1日、2日の売上高は25億5000万円で、
前年比マイナス5%。

日本橋の三越本店は9%減。

しかし、これはいわば想定内のこと。

経済不況と消費不振は、消費者に、
節約志向を促している。

だから実用品や特別の値下げ品にしか、
購買は向かわない。

全体の傾向だからしかたない。

しかし、ここで重要なのは、客数

お買上げくださるお客様の数。

 

お店に信頼を置いているから、
買い物に来る。
そして今、必要なものを、
懐具合と相談して、買う。

こんなお客様が多い。

だから売上高や買上げ点数は減少しても、
客数が上がっていれば、
「よい循環にある」と評価すべきだ。

今日の朝日新聞で、
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正さんが語っている。
「これまでの好景気は、
金融の信用膨張や資源高などに支えられたバブル。
いまはバブルを正常化していく過程にある

消費は冷え込んでいるが、
ゼロになることはない

新しい需要をつくりだし、
自分たちで努力して開発することだ」

日本人の最大の欠点は、
安心、安全、安定志向。

当然、プロフィットは生まれない」

「『あったらいいな』をつくり出すこと。
それが大事だ」

今が正常化へのプロセスならば、
私たちは、この正常化への過程を、
真摯に受け止めねばならない。

消費は冷え込んでいるが、
ゼロになることは絶対にない。
だから、客数が大事な指標となる。

その上で、「安定志向」を排さなければならない。

さて、ここで、私の著書『メッセージ』から引用。

一番の人気

あなたの店が、
繁盛しているとする。

売上高の半分は実力なのだろう。
しかし、あとの半分は、
人気によるものだ。

人気とは、一番の者に与えられる特権である。

あなたの店が、
不振だとしよう。

不振の半分は、店の実力による。
しかしあとの半分は、
人気がないからだ。

二番手、三番手、四番手だからである。

では一番の人気は、
なぜ獲得できたのか。
そして一番の人気は、
どんなときに逆転するものなのか。

何も競争がない時代。
すばやく時流をとらえた者が、
まず人気を博する。
人気は実力に決定的な影響を与え、
実力はどんどん向上する。
追いかける者がいくら努力しても、
この実力差は詰まらない。

どんなに消費が冷え込んだときにも
どんなに営業不振のときにも
一番人気の店は密かに客の支持を伸ばしている。
二番手以下は急激に落ち込む。

ただし、追う者の強みというものもある。
紙一重の差までは、
努力しだいで到達することができる。

しかし、この紙一重の差が大きい。
だから、そこから先は、
運にめぐまれるしかないのかもしれない。

たいていの場合、幸運とは、
神から与えられるものでも、
自分で勝ちとるものでもない。

相手に恵んでもらうものである。

人気も、敵の過失によって、
ころがり込んでくるものなのだ。

人気を維持すること。
逆転すること。
それができるのは、謙虚に、
実力と人気の力関係を知る者だけである。
<第4章『戦略と政策』より>

 

横浜の三が日は、いい天気。

今年一年、人気が上がるのはどこか。
人気とは、客数のバロメーターによってのみ、
推し量ることができるものだ。

「三が日休業」という政策は、
その意味で、実力と人気の力関係を知るものにしか、
採用できない戦略かもしれない。

<結城義晴>

2009年01月02日(金曜日)

「購買心理」の五つの「発展段階説」

2009年正月2日。
今日明日と、第85回箱根駅伝。

その箱根路を見降ろし続ける富士の山。
huji1
もう恒例となりつつあるが、
㈱セルバ社長の桑原孝正さんからお送りいただいた、
元旦の富士山の写真。

[毎日更新宣言]愛読者の皆さんに、
2年連続でお裾分け。
富士吉田の街を抱え込むように、悠然と聳え立つ。

この富士の裾野に、生きる喜び。
桑原さんがうらやましい。
桑原さんのお客さんたちが、うらやましい。

しかし、私の住む横浜からも、
意外に近く富士が見える。

「富士山のような店」になってほしい。
セルバの皆さんにも、
日本中の商業・ホスピタリティビジネスの皆さんにも、
そう言いたい。

富士の写真、もう一点。
こちらは、雲海の上にそそり立つ富士。
huji2

こちらも素晴らしい。
私、元旦から感動した。

今年も、感動の心を失いたくない。

日本でも、アメリカでも。

富士山のような店になるための、
購買心理の発展段階説。

第1段階は、「衝動」。
衝動買いは、たいていの場合、
「価格」によって誘発される。
経済不況と消費不振の今年。
今年「価格」はとりわけ大切な要素となる。
だからこの第1段階が、軽いわけではない。
むしろ重い重い第1段階。

第2段階は、「吟味」。
吟味の購買は、「品質」を見極めるために行われる。
お客様に、品質を吟味していただく。
コツコツとこの第2段階の仕事を続ける。
それが第3段階につながる。

第3段階は、「信頼」。
信頼の購買は、「お値打ち」によって成し遂げられる。
お値打ちは、英語でバリュー(value)。
この店にしかないお値打ち、
この商品のお値打ち。
それが信頼の購買を、形づくる。

しかし、まだまだ上がある。
第4段階は、「安心」。
安心の購買は、「満足」によって生み出される。
「値札を見ずに購買する」状態。
スチュー・レオナード1世が言い残している。
「覚えておきなさい。
満足したお客様だけが、再び、
店を訪れてくれることを」
「満足」が安心をもたらす。
顧客は、安心しきって、
店に心を委ねて、商品やサービスを購買する。

最後に、第5段階は、「感動」。
感動の購買は、
[価格・品質・お値打ち・満足・プラスα]によって創造される。
プラスαとは、サプライズであったり、
パーソナリティであったり、
芸術性であったり、
無私の心であったり。

しかし、毎度毎度、
感動を提供することも、
感動を提供されることも、
あまり意味はない。

例えばサプライズは、
擦り切れてしまうものだから。

日常の暮らしは、淡々としたものなのである。

したがって、店は、
いつもいつも「感動」を演出しようと、
欲張ってはいけない。

ひたすら「安心の購買」を目指す。
その真摯さが、時に、
感動を呼び起こす。

「購買心理の五つの発展段階説」
今年は特に、これで行きたいものだ。

私も、感動を求めて、
生きていきたい。

箱根駅伝にも、感動があるに違いない。

<結城義晴>

2009年01月01日(木曜日)

謹賀新年「無茶はせず、無理をする」

2009年賀状

新年 おめでとうございます。

2009年のスローガンは、
「無茶はせず、無理をする」

昨年、西端春枝先生から、
温かいご指導、ご忠告をいただきました。
「無茶はアカン、無理はええけど」
このお言葉を、今年一年の私の標語といたします。

同時に、商人舎1月の標語も、
「無茶はせず、無理をする」といたします。

例えば予算を立てるとき、
「ちょっと背伸びの予算」が望ましい。

普通にやっていれば達成できる予算は、
「無理しないレベル」。
ジャンプしなければ届かない予算は、
「無茶するレベル」。

「ちょっと背伸び」が、
「無理するレベル」。

今年は、間違いなく、不況の中にある。
だから「無茶はせず、無理をする」

 

昨年の漢字一文字は「変」でした。
ならば今年は「化」でなければならない。

昨年が「変わった」ならば、
今年は「化ける」

この心意気。

「化ける」ことを「蛻変」といいます。
蝉が、脱皮する様。

今年こそ、「蛻変の年」。
だから「化ける」。

そして、
2008年と2009年合わせて、
「変化」を遂げる。

そのように昨年を認識し、
今年を位置づける。

「化ける」ためには、
多少の無理が必要。

だから今年は「無茶はせず、無理をする」
今年もよろしく願います。

<結城義晴>

[追伸]
今年も、12月31日まで、
[毎日更新宣言]を発します。
毎日、ご期待下さい。

 

2008年12月31日(水曜日)

最悪を想定して、最善を尽くす

2008年師走の大晦日。
今年最後の日。

最悪を想定して、
最善を尽くす。

今年1年がそうであったように、
来年も、そうありたい。

2008年の日本の株価は、42%も下がった。
それによって、日本中の時価総額は200兆円分、目減りした。

貨幣経済は、2兆ドル減少。

それが実体経済に、深刻な影響を与える。

だから貨幣経済の中で目減りしない預貯金高が、
俄然、大きな存在となってきた。

しかし預貯金高には、特徴がある。

「人間というものは、
現にもっているものに加え、
さらに新たに得られるという保証がないと、
現にもっているものすら、
保有している気分になれないものである」

<『マキアヴェッリ語録』(塩野七生)より>

その預貯金高として眠っている金を、
還流させ、実体経済に貢献させる。

そんな声が、来年はますます高まるに違いない。

商業やホスピタリティ・ビジネスの出番である。

今年、4月17日の商人舎発足の会。
4時間に及ぶ結城義晴の講演テーマは、
「小売流通業・サービス業が、
21世紀の日本を救う」

実体経済が、経済立国としての日本の基盤である。

それが私たちの子や孫、
さらにその子供たちの時代のインフラとなる。

実業と実体経済とに目を向けつつ、
次代の社会を考えることは、
健全な生き方に違いない。

 

しかし、商業やホスピタリティ・ビジネスが、
日本の基幹産業となるといっても、
厳しい年になることは、間違いない。

だから、
最悪を想定して、
最善を尽くす。

故中部銀次郎さんの言葉。
孤高のアマチュアゴルファー。
私が最も尊敬する人のひとり。

再び、マキアヴェッリ。
「なにかを為したいと思う者は、
まずなによりも先に準備に専念することである。
機会の訪れを待っての準備開始では、もう遅い。
好運に微笑まれるより前に、
準備は整えておかねばならない」

来年は、準備の年。
みんなにとって。

といっても、来年とは明日から始まる日々のことで、
特別に大きく変わるものではない。

淡々と、明日を迎えたい。

落ち着いた心持ちで、準備を。

 

最後に、今年1年の結城義晴のブログ[毎日更新宣言]
ご愛読、感謝したします。

お約束通り、365日+1日、続けることができました。
今年1年、毎日、ブログを書けたことに、
心から、感謝したいと思います。

事故もなく、
怪我や病気も乗り越え、
泥酔も少なく、
意識不明にも陥らず。

ありがとうございました。

ここで、いったん、
気持ちに区切りをつけたいと思います。

右、左、上、下。
どっちを向いても感謝
(水口健次)。

 

<結城義晴>

 

2008年12月30日(火曜日)

羽生善治将棋名人に投影させた天才たちの言葉

1965年11月から70年7月までを[いざなぎ景気]といいます。
戦後最長の好況の山で、57カ月間だった。

それを超えたのが、昨年までの平成景気。
戦後最長の景気の波となった。

その戦後最長の景気拡大が途切れ、
後退局面が始まった時期が、
昨年11月と認定される。

それによって69カ月の最長の景気。

だからその余波も最長になる。

そして、もう13カ月、景気後退が続いている。

米国の景気後退も昨年12月に始まった。
日米経済は、ほぼ同時期に失速したことになります。

今年がその最初の13カ月。
そして来年は次の循環の12カ月。

いよいよ、不況本番というところです。

その想定の中で、
日々の仕事を充実させねばなりません。

さて、今年12月18日に決着がついた将棋竜王戦は、
世紀の対決といわれました。

私の隠れた趣味を明かしますと、実は、将棋なのです。

父は、碁が趣味で、
82歳の現在も毎日、碁会所に皆勤しています。
ボケ防止などというレベルではなく、
真剣勝負の、生きるエネルギーというほどに、
囲碁に打ち込んでいます。

私のほうは、なまくらですが、
㈱商業界の頃、今から25年以上も前、
一度だけ社内将棋トーナメントが開催され、
それに参戦したことがあります。

私は、その時、決勝まで勝ち残り、
その決勝で、勝利を収めたものです。

だから私は㈱商業界史上唯一の将棋名人ということになります。
今も、押入れの奥に、その時の名人のトロフィーがあります。

さてプロの将棋は、ご存知のとおり、
羽生善治名人が第一人者。37歳。

この羽生世代と呼ばれる将棋指しには、
不思議なことに、天才が目白押しの状態です。

昨年まで名人位を守っていた森内俊之九段。
「緻密流」と呼ばれる佐藤康光棋王
私の好きな「激辛流」「ニコニコ流」の丸山忠久九段。
オーソドックスな棋風の居飛車一辺倒の郷田真隆九段。
「藤井システム」という定石を発明した振り飛車の専門家藤井猛九段。
エッセイも書く多芸多才の「無頼流」先崎学九段。

少し前の世代の天才には、
「高速の寄せ」という閃き型の谷川浩司がいます。
さらにその前の世代には、
永世名人の称号を持つ中原誠と、
現将棋連盟会長の米長邦雄

しかし現時点で、竜王というタイトルを4期連続で獲得していたのは、
渡辺明という24歳の天才。

竜王は、読売新聞が主催する将棋タイトルで、
七冠という位のうち最も新しいタイトル戦ですが、
賞金が最大で、
だから将棋界最高位と、
読売新聞は呼んでいます。

しかしなんといっても、名人位が最高位であることに、
間違いはありません。
現在は、紆余曲折の末、
朝日新聞と毎日新聞が共同主催しています。

その名人と竜王の対決。
しかも、羽生世代の代表と次の世代の旗手との対決。

羽生は、残念ながらこの竜王戦で、
三連勝したあと、四連敗。
「世紀の逆転」となりました。

三連勝した後の第四局。
渡辺の角番。

羽生が勝勢の中で、
水をごくごくと飲みます。
そのごくごくの瞬間に、
渡辺が「打ち歩詰め」という禁じ手の絡んだ逃れ筋を発見して、
大逆転を収めます。

この対決の模様が、「情熱大陸」という番組で報道されていたのですが、
そこで面白かったコメント。

両者の対決に対するコメントではありません。

他の棋士たちの、羽生への評価。

羽生善治の特長は、何か。

森内「総合力」
谷川「好奇心」
佐藤「正確性」

ただこれだけの、短いコメントの場面なのですが、
私には、たいへん興味深いものでした。

羽生は、まさに天才中の天才。

だから総合力はもちろん、あります。
居飛車・振り飛車の両刀使い。
どんな戦法にも通じたオールラウンド・プレイヤー。

好奇心も旺盛です。
チェスの国際大会に参加したりしています。

そして読みの深さと終盤の正確無比なことに、異論を挟む者なし。

面白いのは、回答した三人の棋士たちの棋風です。

森内は、守りを固めたうえで攻めに専念する総合力の将棋。
谷川は、好奇心旺盛で、終盤の閃きに美学があり、
しかし最近は勝負師としての甘さが見られる。
佐藤は、抜群の正確さを誇る「緻密流」で、
それを武器に縦横な戦略を打ち立てる。

羽生という巨大な鏡を評価する時に、
誰もが、自分を投影させている。
恐ろしいことに、自分が写り込んでしまう。

私には、それが、ことのほか、興味深い発言と聞こえました。

 

たとえば、私たちの世界では、
「ウォルマートに対する評価」を聞きます。
すると、ファーストリテイリングの柳井正さんは答えてくれます。
「週末に米国民の3人に2人が来店する。
ウォルマートはなくてはならない存在なのです」
これは、柳井さん自身が、
きわめて社会貢献意識が強いことを示しています。

「ウォルマートは、サービス残業が当たり前で、賃金が低すぎる」
こう批判する人は、労務問題を、自分の経営の根幹においています。

「ウォルマートの商品は面白いし、売り場づくりは他を圧している」
こういう人は、マーチャンダイジングを優先する。

多くの場合、コンサルタントは、
ウォルマートに自説を投影させる。

ウォルマートに投影できないテーマを得意とする人は、
ほとんどといってよいほど、ウォルマートを否定する。

ウォルマートを非難する人は、時に、
自分自身がその批判の矛先にいたりすることがある。
自己矛盾ですが、これもよくあること。

 

さて、2008年が終わろうとするとき、
私は、毎日、ブログを書いてきて、
どんな会社やどんな人物に、
どのように自分を投影させてきたのか。

私は、ジャーナリストとして、
できるだけ客観的にものを見、ものを書く訓練をしてきました。

しかし、その上で、書く能力を高めると、逆に、
どうしても自分が写り込んでしまう。

考えると、ぞっとすることではありますが、
羽生善治に対する天才たちの率直な自己投影を聞いていて、
すがすがしいものを感じたものです。

こうして、私は、来年も、
観察し、体験し、発言していくのでしょう。

 

その羽生善治自身の発言。
「現状に満足してしまうと、進歩はない」
「大局観と事前研究があるからこそ、最善の戦略も生まれる」
「山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、
なにを『選ぶ』かより、
いかに『捨てる』かのほうが重要です」

この言葉を選んだこと自体、
結城ヨシハル自身、羽生ヨシハルに、
考え方を投影させているのです。

<結城義晴>

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