結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年11月26日(土曜日)

イオン・マルナカ統合で藤本昭さん会長に就任、私はオール小売り市場連合会AKRで講演

小売り流通業界話題の企業統合&トップ人事。
マックスバリュ西日本会長の藤本昭さんが、
25日付で退任し、マルナカの代表取締役会長に就任。

マックスバリュ西日本は、
イオン・グループ最大にして、
最高利益を上げるスーパーマーケット企業。

藤本さんはそのマックスバリュ西日本の社長・会長を歴任し、
中国地方と四国瀬戸内海方面に明るい。

10月にイオン傘下に入ったマルナカと山陽マルナカの会長として、
これ以上ないといううってつけの人物。

私は昨年10月にヨーロッパで、藤本さんとご一緒した。
スーパーマーケット経営の専門家であり、
見識の高さ、経営力は定評のあるところ。

イオンの強みは、
藤本さんのような経営者群の存在にある。

マルナカの現社長・中山明憲さんは在任、
山陽マルナカは中山さんが代表権のない会長に就き、
新社長にはイオン琉球社長の栗本建三さんを迎える。

藤本、栗本両氏は常駐して、
イオン本体やマックスバリュ西日本と、
マルナカ・山陽マルナカとの連携に目を配る。

藤本さんを頂点に、
イオン傘下にある現在のマルナカは、
今後も店名や雇用体制に変化はない。

中国新聞によると、
イオン側は「両社の強みを生かし、
より満足していただける売り場づくりに励んでいく」とコメント。
マルナカは「イオングループの一員となり、
新生マルナカとして地域により貢献したい」と発言。

この件によって、イオンの売上高は、
セブン&アイ・ホールディングスを超えた。

すなわち現在の日本小売業界最大売上高企業はイオンとなった。

今朝の日経新聞『大機小機』。
「人口減少・高齢化と需給のミスマッチ」と題して、
コラムニスト希氏が書く。

「人口減少が既存産業での需要減退につながることは間違いない」

しかし、コラムニストの指摘はマイナスばかりではないという点にある。
「高齢化は新たな需要も生み出すはずである」

「現状は、その需要を生かし切れていない」

そして2つの問題点を挙げる。

第1は、「高齢化に伴い、顕著に需要が増加する分野が
公的コントロール下に置かれていることだ」

「病院の混雑ぶりや介護施設の不足をみれば、
莫大な未充足需要は明白だが、
自然に価格が上がったり、
供給が増えたりする仕組みにはなっていない」
つまり高齢化で需要が拡大する分野に、
市場原理が働いていないという指摘。

第2は「民間の努力不足」。

従来から「団塊世代の退職で巨大なシルバー市場が生まれる」との期待があった。
しかし現状は「シルバー市場は難しい」との嘆きばかり。

なぜか。
「若者は人数が減ってもマスである」
対して高齢者は、
「所得・資産・嗜好のあらゆる面で細分化されている」

「高度成長期のマス市場に慣れた企業には、
若者狙いの方が楽なのだ」

この指摘、実に鋭い。

その証拠となる現象を明らかにする。
「高齢化が進むこの国で、
街にはファストフード、ファストファッションが花盛りという奇妙な光景」

「円高などで産業空洞化を懸念する声が強いが、
人口減少社会で企業がグローバル市場に活路を求めるのは当然だ」
この見解にも私は同感。

「今求められるのは、
官民双方の工夫で内需=シルバー市場を活性化し、
空洞化を埋めていくことだろう」

まったくもって、賛成。

産業の空洞化を埋めるのが民間の仕事であるし、
小売りサービス業の役目だ。

さて昨日は、大阪。

AKR共栄会主催の第六回AKR協力会で講演。
AKR共栄会は、平成9年、
大阪市旭区小売市場連合会からスタート。
いわゆる「公設市場」の連合会。
AKRのAは旭区のA、
Kは小売り市場(Kouri-ichiba)のK、
Rは連合会(Rengokai)のK。

現在は、名称を変更し、
オール小売市場連合会(All Kouri-ichiba Rengokai)。

「共同仕入れ」「共同配送」事業によって、
市場活性化を目指す事業組織として活動している。

加盟小売り市場は、
大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県にまたがる。

AKR共栄会本部は、
店舗支援として企画提案、店舗運営の経営アドバイス、
さらに店舗視察や研修、勉強会の支援を行うが、
今回の講演はその勉強会のひとつ。
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私のタイトルは「製配販協業のマーケティング・マネジメント」
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中小の小売業連合会に、
製造業や卸売業が協力する。
すなわち製配販の協業。

そのためのマーケティング・マネジメント論。
フィリップ・コトラーは言う。
「マーケティングは個人によっても行われるが、
交換には相当量の業務と技術が必要であり、
組織体がこれを行うのが普通である。
その意味でマーケティングとは組織体のマーケティングを指しており、
そこでマーケティング・マネジメントを論じることになる」

私は製配販の協業体全体で、
「マーケティング・マネジメントを展開せよ」と訴えた。

そのためにマーケティングの定義を確認し、サービス産業化を提案し、
そのうえで、コモディティとノンコモディティの持論を展開。
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アメリカから持ち帰った「パワーレード」を掲げて、
コモディティ化現象を解説。
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最後は、ドラッカーとクリステンセンのイノベーションのすすめ。

小売業には大動脈・大静脈もあるが、
毛細血管もなければならない。

両方が必要なのだと思う。
これは私の確信。

AKR幹部の皆さんと記念写真。
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コープこうべから転籍し、
AKRの事務方を支える島本博史さん。
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イオン・マルナカの統合で、
寡占化はますます進む。

一方で、かつての公設市場も、
毛細血管としてしっかり機能している。

私が考える「自然界の森」のような小売業界になってきた。
大木も雑草も、
環境に適応できる者が生き残る。
それが産業の空洞化を埋め、
新しい産業構造を構築するに違いない。

<結城義晴>

2011年11月25日(金曜日)

[2011帰国後の米欧報告記②]英国テスコの米国版超小型店フレッシュ&イージー・エクスプレスの巻

今日の横浜は快晴。

11月下旬だというのに、
晴れやかな日が続く。

その横浜を後に、
大阪に向かう。

最近、私自身は気分爽快。
申し訳ないくらい。

4大新聞の一面コラムすべてで、
「談志が死んだ」を取り上げた。
どこかがこの回文を使うかと思ったが、
不謹慎だとの批判を恐れたか、
どこも「ダンシガシンダ」とは書かなかった。

ちなみに『談志が死んだ』は、
2003年12月に講談社から単行本として発刊されている。

それにしても一面コラム。
志の輔、談春、志らくなどなど、
弟子たちを養成したという評価をしているが、
談志自身そんなことは二の次だったと思う。

「勝手にしな!」
あの世があるなら、
そう言い放っているに違いない。

私は、談志、志ん朝、枝雀の次は、
まだ出てきていないと感じている。

こういった名人たちは、
団子状態で登場してくるのかもしれない。
団子状態で凡人が出てくるのが常だが。

さみしいことだ。
ほんとうに。

さてクリスマスまで1カ月に迫った。
私も今年、やり残したことをやり遂げねばならない。

その一つが、このブログでの、
アメリカ・ヨーロッパ報告のつづき。

今年は2月の終わりから3月にかけて、
サクラメントとサンフランシスコを訪れた。

その後、3月11日の東日本大震災
私は今でも、東北関東大震災と呼んだ方がいいと考えている。

震災のあと、5月の下旬に、
商人舎ベーシック・チーム90人とラスベガスに居座り、
そのまま次のチームを迎えて、
ラスベガスからサンフランシスコ・サクラメント。

6月はダラス、サンフランシスコ。

7月はコーネル大学ジャパンの卒業研修で、
ニューヨーク州のイサカとマンハッタン。

9月下旬から、再びダラスとサンフランシスコ。

10月中旬は、ドイツ・ケルンとフランス・パリ。

そして10月下旬に、
商人舎スペシャル編&マーチャンダイジング編で、
ダラス、ワシントンDC、ニューヨーク、
ロサンゼルス。

あ~あ、思い出しても、
疲れる。

その最後の10月のレポートが、
完結していない。

これからクリスマスまで、
[2011帰国後の米欧報告記]と題して、
とびとび連載でお届けしよう。

それが私からの皆さんへのクリスマス・プレゼント。

その第2回目となるが、今日は、
フレッシュ&イージー・エクスプレスの巻

私たちがロサンゼルス滞在中の11月2日、
ラシエネガにオープンした超小型店。
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〝Fresh&Easy Express″
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テスコがイギリスからアメリカに進出を遂げたのは、
2007年11月。
店名は「フレッシュ&イージー・ネイバーフッドマーケット」

私はちょうど㈱商業界の社長を辞したばかりで、
この時も西海岸に滞在中だった。

テスコのアメリカ進出とは妙に縁がある。

11月8日にロサンゼルスで5店舗がオープン。

私はノブ・ミゾグチさんとともに、
翌日の11月9日に3店舗を視察した。

この時、ロサンゼルス・タイムズのビジネス欄は、
「ラルフとトレーダージョーをブレンドした店」
と紹介した。

私はそれに反論。
「いや、アルディとトレーダージョーを
足して2で割った店だ」

トレーダージョーもアルディも1万スクエアフィート。約280坪。
そして品揃え限定型。いわゆるリミテッド・アソートメント。
そのうえプライベートブランド主力のフォーマット。

アルディはノンフリルの店で、
ウォルマートをしのぐハード・ディスカウンター。
レーダージョーは安全・安心、健康、環境のマーチャンダイジングを志向し、
さらにホスピタリティあふれる店になっている。

両者はドイツのアルブレヒト・ファミリー傘下の兄弟企業。

テスコのフレッシュ&イージーは、
両社の「良いとこどり」を狙ったものだった。

この時の店舗面積はいずれも、
ちょうど1万スクエアフィート(約280坪)。
品揃えは、3500SKUのリミテッドアソートメント型。
このあたりアルディ、トレーダージョーと同じ。

当初のプライベートブランド(PB)比率は、商品構成の5割。
初年度に91億ドル(9100億円)の初期投資でスタートし、
最新決算の2010年度は164店舗で
年商4億9500万ドル(495億円)

まだまだ大きな赤字。

しかし米国CEOティム・メイスンは、
「400店体制になれば損益分岐点をクリアできる」と発言。

テスコは、イギリス第1位の小売業にしてスーパーマーケット企業。
年商675億7300万ポンド(1ポンド120円で8兆1087億円)、5380店。

本国では、マーケットシェア30%の圧倒的支持をもつ。
その理由のひとつはマルチ・フォーマット戦略

テスコはイギリス本国で主に4つのフォーマットを展開している。
第一に最大のフォーマットがテスコ・エクストラ
これはハイパーマーケット(いわゆる総合スーパー)で、
平均6625㎡(2000坪)、212店。

第二がテスコ・スーパーストアで、
これが標準的なスーパーマーケット。
2780㎡(842坪)で470店。

第三がテスコ・メトロで、1081㎡(326坪)、186店。

そして第四にテスコ・エクスプレス
205㎡(62坪)で1285店。

米国のフレッシュ&イージーは、
英国におけるテスコ・メトロのサイズで、
しかもニューコンセプトが取り込まれていた。

そのメトロ規模の米国フレッシュ&イージーに今回、
エクスプレスを加えて、ダブル・フォーマット戦略となった。

そのフレッシュ&イージー・エクスプレス。
店舗面積は3000スクエアフィート(約85坪)。
2500SKU。

コンビニエンスストア型のスーパーレット(ミニスーパー)。
面積を3分の1に小型化し、品揃えを7割程度に絞り込んだ。

店舗の外側はガラス張りで見通せる。
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店外入り口のところにカート置場。
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チェックアウトは、ネイバーフッドマーケット同様にセルフレジ。
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店舗入り口から右手に青果部門がある。
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クレート陳列で、これは標準店と同じ。
日本のコンビニよりも断然品ぞろえは豊富。
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右手はパック野菜などが並ぶ。
単身者向けの品ぞろえというよりも、
オールラウンドなアソートメントで、
スーパーマーケットの代位機能を果たす。
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青果部門からリーチインケースの精肉部門へ。
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このリーチインケースが、いい。
可視率が高くて、もちろん省エネでもある。
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肉は必需アイテムが品揃えされて、
しかも鮮度が良い。
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そのつき当たり奥壁面が
「Authentic Italian」をコンセプトにしたインストアベーカリー売場。
小型店でも1日3回、インストアでパンを焼く。
右手にジャム類の関連販売。
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その左手には、パッケージド・ベーカリー。
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反対側から見たところ。その奥が駐車場になる。
フレッシュ&イージー・カラーのグリーンの什器が目立つ。
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そして奥壁面はデアリー(乳製品)売場につづく。
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ヨーグルトなどのデザート製品、卵、果汁飲料が並ぶ。
冷蔵リーチインケースの中に絞り込まれた品揃えが、
それでも主力商品は多フェーシングで陳列されていて、
見やすくて買いやすい。
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奥壁面からさらに壁面にそって続く冷蔵ケース。
牛乳コーナーからアイスクリームコーナーへ。
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これはコンビニコンセプトだが、
冷蔵販売するビールやワインの酒コーナー。
1本売りから箱売りまで充実している。
オランダビールを集めた「ダッチコーナー」など輸入ビールも豊富。
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その冷蔵ケースに続いて冷凍ケース。
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冷凍ケースでは冷凍食品、アイスクリーム、氷が売られている。
日本のコンビニよりも圧倒的にスーパーマーケットの品ぞろえ。
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レンジ対応の簡便ミール商品「eat well」 。
これもプライベートブランド。
フレッシュ&イージーはミールソリューション・アイテムの開発を、
活発に展開している。
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オーブンで焼くだけのぺペロニ。
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手羽など冷凍生肉も扱っている。

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壁面の最後は常温で販売する箱売りのビールや水。
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その横には、カフェ・コーナー。
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ホットとアイスのディスペンサーが置かれ、
右横にあるセルフ・レジで、すぐに購入できる。
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冷凍・冷蔵ケースの対面はクッキー・チョコ類の品ぞろえ。
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そのゴンドラエンドには、チョコバーやガムなどの菓子。
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そしてセルフレジがならぶ。
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セルフレジの裏側は雑誌コーナーと切り花コーナー。
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その前にある湾曲した冷蔵ケースが目を引く。
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カット野菜や成形ハンバーグが品ぞろえされた「Fresh Deals」エンド。
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そして入り口付近にデリ・コーナー。
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電子レンジ対応の豊富なプリペアードフードは、
十分にメインディッシュになる。
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パスタ、ピザメニューも充実している。
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1人用で約5ドル、ファミリー容量で15ドルの価格帯商品。
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ゴンドラアイルはシリアル、調味料、飲料など。
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青果コーナーの裏は、スナック売場。
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雑貨類も必需品に絞り込まれている。
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小型店ながらペットフードも品揃えは必需品を欠かしていない。
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カフェコーナーからみるレジ。
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レジは対面配置で5台。
もちろん、セルフチェックアウトのため、
後方にスタッフが1人ついている。
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米国フレッシュ&イージーの品揃えの絞り込みには、
英国での4ケタを超える経験が生かされている。

だから、店内で買物しても、実になめらかに回遊できるし、
不便を感じさせない。

写真を見ていただくだけでも、
この店がコンビニではなく、
立派なスーパーマーケットであることを理解いただけるだろう。
それに重要なことは、
フレッシュ&イージーのレギュラー店とエクスプレスに、
「商品とサービスの統一」が図られていること。

これは相乗効果を生み出す。

この「統一感」に関しては、本国のテスコは、
エクストラからスーパーストア、メトロ、エクスプレスまで、一貫している。

アメリカにはコンビニはあっても、
ほとんどがガソリンスタンド併設型。
日本のコンビニのような、優れて便利な業態は、
アメリカ消費社会には存在しない。

この空白マーケットをフレッシュ&イージー・エクスプレスは狙っている。

このエクスプレスの登場によって、
テスコが日本から撤退する理由も明らかとなる。

いつも言うが、
日本は異常ともいえるコンビニ発達消費社会

これは東京大学の松原源一郎教授が指摘している。

だから、テスコ・ジャパンの小型店やエクスプレスは、
長くて立派なコンビニ・チェーンの行列の一番後ろに並ばざるを得ず、
短期間ではうまくいく目途が立たなかった。

これに対して、アメリカ小売業界は、
コンビニを発祥させたという歴史を持ちながら、
そのイノベーションはストップした。

ここに本国のイギリスで大成功しているコンビニ機能を併せ持つ小型スーパーマーケットを、
しかもダブル・フォーマットでもってくるというのが、
テスコの最初からの戦略だったわけだ。

アメリカでもマルチ・フォーマット戦略を採用し始めたテスコ。
日本からはいち早く撤退を決めたが、
かの地では「成功するまでやる」に違いない。
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「成功するまでやめない」とはいっても、
当面はフレッシュ&イージー・エクスプレスの今後にかかっている。

ウォルマートは、小型店実験の「マーケット・サイド」を閉じ、
「ウォルマート・エクスプレス」というバナーの実験店を出した。
これも簡便ニーズ対応型小型フォーマットである。

ウォルマート・エクスプレスにフレッシュ&イージー・エクスプレス。
アメリカはいま「エクスプレス」ばやりで、忙しいことだ。

<結城義晴>

2011年11月24日(木曜日)

「ダンシガシンダ・談志が死んだ」と百貨店・総合スーパー・SM・コンビニ業態別10月営業概況総まとめ

「ダンシガシンダ」
回文そのままに、
談志が死んだ。

落語家の立川 談志が、
喉頭(こうとう)癌で、逝去。
享年75。

1936年(昭和11年)1月2日、東京生まれ。

独自の理論と型破りな芸風。
理論とは1965年発刊の『現代落語論』。
落語界のタブーにも踏み込んだ。

落語を落語家自身が理論化するなど、
そもそも型破りだったが、
それが生き方にも表れていた。
しかし、芸はクラシックを端正に演じた。

そして落語にイノベーションをおこした。
談志はイノベーターだった。

1966年にスタートした人気番組「笑点」の初代司会。
その切り回しと、座布団を出したり入れたりの機知は、
いま思い出しても絶品で秀逸。

その後、前田武彦、三波伸介、三遊亭圓楽、
そして現在の桂歌丸と続くが、
断然、談志が良かった。

2001年に亡くなった3代目古今亭志ん朝は、
1938年3月10日生まれ。
こちらは型破らずの名人。
「男の色気」とは志ん朝のことだった。

関西の天才・2代目桂枝雀は、
1939年(昭和14年)8月13日生まれ。
おもろい落語に徹した枝雀は1999年の3月に自殺を図り、
そのまま意識が回復することなく、
4月19日に心不全のため死去。
「おもろい」爆笑落語と自殺。
枝雀らしかった。

1936年の談志、
1938年の志ん朝、
1939年の枝雀。

みんな早世して、談志が一番長く生きたが、
それでも75歳。

私はこの3人の名人と同じ時代に生きたことを、
日本人として誇りにするものだ。

さて、今月も各小売業態の販売統計結果が
続々と発表されている。

11月18日、日本百貨店協会から発表の
「全国百貨店売上概況」

10月の売上高総額は5109億6162万円。
前年同月と比較すると、マイナス0.5%。
マイナス幅は少ないものの、これで4カ月連続。

先月、仙台地区の対前年の売上高増減率はプラマイ0と、
落ち着きを見せたかと思いきや、
今月はプラス9.7%(全店ベース)と復調。
今後、復興需要は季節の変わり目に高まるのかもしれない。

次は11月21日に、日本フランチャイズチェーン協会から、
「コンビニエンスストア統計調査月報」が発表。

店舗売上高は全店ベースで7496億8200万円。
昨年の10月売上高はたばこ増税の影響により、
6429億9300万円にとどまっていた。
その反動で、今年はプラス16.6%と大幅アップ。

来店客数はプラス6.2%(既存店ベース)、
客単価がプラス7.5%、
店舗数でもプラス1.8%(全店ベース)。

商品構成でみると、
非食品はなんと、プラス48.8%。
すべての項目で、
たばこ増税の影響の大きさがうかがえる。

11月22日、日本チェーンストア協会による、
「チェーンストア販売統計」の発表。
こちらは総合スーパーの販売データと見てよい。
協会売上高の約半分を8社の総合スーパー企業が占める。

10月の総販売額は1兆0443億5504万円で、
前年同月比(既存店ベース)はマイナス0.9%。
前月比ではプラス5.8となっている。

部門別概況をみると、
食料品は動きが鈍く、マイナス2.2%。
衣料品は秋冬物が10月上旬に好調でプラス1.2%、
住関品はストーブや電気毛布などが売れ、
プラス0.8%だった。

同じく11月22日には、
「スーパーマーケット統計調査」も発表された。
こちらの3協会の合同発表。
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10月実績の速報結果。
総売上高7989億2323万円で、
前年同月比マイナス1.3%(既存店ベース)。
食品合計が6623億7416万円のマイナス1.8%。
非食品合計が847億9462万円でプラス0.3%。

食品の部門別売上げ。
生鮮3部門は、
青果が1020億4049万円でマイナス3.3%、
水産が664億7119万円でマイナス2.4%、
畜産が789億7275万円でマイナス2.7%。

惣菜は食品の中で唯一、プラス0.5%で、
672億8092万円。
日配が1421億3463万円でマイナス2.1%、
一般食品が2054億7418万円でマイナス0.9%。

新日本スーパーマーケット協会の増井徳太郎副会長。
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「10月は25℃を越えた日が8日間もあった。
よって寒暖の差が大きく、毎週末のように雨が降った。
そのため、売場変更が思うようにいかず、
冬物商材が伸び悩んだ。」

「東日本・北日本の青果は放射能の影響で、
相変わらず値がつかず、
生鮮の仕入れが西にシフトしている。
青果は高騰し、例えば、
京都産の小松菜に1束680円の値がつくこともあった。
結果、顧客の買い控えにつながった」

「精肉は気温が高めだったこともあり、
すき焼き肉は売れず、ステーキや焼き肉材料中心に売れた」

「エリア別にみると、
関西エリアの前年同月比が既存店ベースでマイナス2.7%、
全店ベースでプラス3.5%だった。
これは集計している関西エリアの企業で、
新店オープンの動きが加速しているから」

「競合環境がますます厳しくなっている。
ディスカウントストアなどへの業態転換も目立つ。
そのため、客数は同じでも単価が下がる。
また、増税、円高、TPP問題、ヨーロッパの金融問題など、
消費者の先行き不安感が増すような要素が多い。
このような心理状況はこれからも影響してくるだろう」

今月のゲストスピーカーは、
㈱マミーマート総合企画室長の青木繁さん。
同社は埼玉を中心に展開しているスーパーマーケット。
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青木さんは先週、コーネル・ジャパンを修了したばかりの「実行の第3期生」。

「マミーマートでは2~3年前から、
従来のハイ&ロー型店舗から、
EDLP(Every Day Low Price)型店舗への転換を行っている。
昨期は16店舗を転換した。
今期も10店舗の転換を予定している。
ただし、EDLPでも、
お客さんが目的をもって来ていただける店、
Destination Store(デスティネーション・ストア)を目指している。
“より良い商品を、より安く”する仕組みづくりを行っている」

さすがにコーネル・ジャパンで勉強しただけのことはある。
いいコメント。

「差別化をはかるため、
青果では今期から契約産地の品質管理を徹底し、
専任担当を常駐させている。
最近ではロマネスコ(カリフラワーの一種)の作付を、
契約農家に依頼し、人気が高まっている」

「販売面では、“笑顔の接客”をモットーに、
従業員教育に力を入れている。
また、外部機関に依頼をし、
店舗や従業員のチェック機能も強化している」

「低価格企業としてのブラッシュ・アップは
不可欠であると考えており、
経済産業省の『生産性向上プログラム』の研修に取り組んでいる。
6店舗で実験的な改善策に取り組んでおり、
6店舗すべてで効果があがっている。
たとえば、バックルームの定位置管理の徹底、
在庫の適正化、労働時間の削減など。
労働時間に関しては1店舗、5時間の削減に成功。
この労働力をどのように活用していくか、
どのように人員配置をシフトしていくかが重要」

コーネル・ジャパン最後の講義は、
サミットでの作業システムとマンアワー・コントロール。
ここでもコーネルがらみのコメントが出てきた。

青木さんのスピーチ。
修了論文とともに、こちらも合格をつけよう。

談志が死んだ。
しかしその後を継ぐ水準の落語家は、
いまのところ見当たらない。

小売流通業界には、
後継者が続々と登場。

その意味では、心強いことだと、
結城義晴、喜んだ。

<結城義晴>

2011年11月23日(水曜日)

「全身で働いたあとで飯を食う喜び」千家元麿と塚原千恵子の「体を動かすことで心も生き生きとしてくる」

朝に希望、
昼に努力、
夕に感謝。

今月の商人舎標語。

「勤労感謝の日」です。
祝日法に示された趣旨。
「勤労をたつとび、生産を祝い、
国民たがいに感謝しあう」

この「勤労感謝の日」は、
日本国民に最も定着した固定日の休日。

飛鳥時代の皇極天皇のときに、
「新嘗祭(にいなめさい、しんじょうさい)」の日が始まった。
皇極天皇は642年から645年に在位した女帝。

新嘗祭の目的は「収穫物に感謝する行事」。
それが第二次世界大戦の敗戦後、
GHQの占領政策で「勤労感謝の日」と改められた。

その意味で最も古い伝統を受け継ぐ祝日ともいえる。

アメリカ・カナダでは、
サンクス・ギビングデーがある。
11月第4木曜日で、今年は11月24日。
つまり明日。

日本の勤労感謝の日と趣旨は全く同じ。
それ以外にも秋の収穫に感謝する「道教」的な祭りは世界中にある。
だとすると、「勤労感謝の日」は、
人間が農業を始めてから、
人間社会の根源とつながった祭日
ということになる。

その勤労を感謝する日に勤労する。
小売業やサービス業の尊さを、
今一度、認識したい。

「勤労をたっとび、
国民たがいに感謝しあう」

おめでとう。
ありがとう。
働く人びと。
働く商人たち。

読売新聞一面コラム『編集手帳』がひとつの詩を取り上げた。
最近、読売グループは大揉めに揉めているが、
このところ『編集手帳』はいい。

組織が揺れているときの方が、
良い仕事や良い作品が生まれたりする。

君は知つてゐるか
全力で働いて頭の疲れたあとで飯を食ふ喜びを

赤ん坊が乳を呑(の)む時、涙ぐむやうに
冷たい飯を頬張ると、
余りのうまさに自(おのずか)ら笑ひが頬を崩し
目に涙が浮かぶのを知つてゐるか…

全身で働いたあとで飯を食ふ喜び
自分は心から感謝する

白樺派の詩人・千家元麿の『飯』
千家は武者小路実篤に、師事した。
私も中学性から高校生の頃か、凝っていた。

「ごく当たり前の、もっとも身近にあるべき感謝の心をうたった詩句が
これほどまぶしく、うらやましく、映る世の中ではいけない」

コラムはこう結ばれる。
「全身で働いたあとで飯を食う喜び」。
それはどんな世の中であろうとも、
変わらない「たっとい」ことだ。

揺れている読売の人々にも、
それは同じはずだ。

さて朝日新聞の社会面に面白い記事があった。
「47都道府県幸福度ランキング」
調べてみると、
法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授の仕事
研究室の社会人学生とともに仕上げた労作。

11月9日(水)、市ケ谷キャンパスで発表されていた。
既存の社会経済統計を活用して、
47都道府県の幸福度を40の指標から評価・分析、
それらを総合化したランキング。

この統計は、4つの部門を持つ。
「生活・家族」「労働・企業」「安全・安心」「医療・健康」。

朝日の記事は、
その第1位の福井県と最下位の大阪府を訪れるルポもの。

「日本一不幸せ」な大阪を訪れると、
「いや、不幸ちゃうで」 と答える人が多かった。

そこが、面白いし、
この言葉が、
幸せの本質をついている。

さてさて、昨日の日経新聞のコラム「スポートピア」
体操女子日本代表監督の塚原千恵子さん が、
「基本は正しい姿勢 」と題して書く。

私は中学高校と下手な器械体操をやっていた。
当時の女子日本チャンピオンの小田千恵子さんのファンだった。
その小田さんが「月面宙返り」の塚原光男と結婚して、
塚原千恵子と名前を変えた。

同時に指導者としても大成し、
いまや体操女子日本代表監督。

「女子体操選手に欠かせないものは何か。
それは美しい姿勢と柔らかさである

小田千恵子さん、文章も簡潔で、上手い。

「選手たちは毎日必ず、練習の前に
柔軟体操や姿勢作りにたっぷりと時間をかける。
美しい演技、高難度の技、ケガの予防。
すべてに通じる基本と言ってもいい」

塚原さんは、その効用を一般の人にも教授している。

「1時間15分のメニューをやり終えた時は、
スロートレーニングでも汗びっしょりになる。
内臓や骨に近い細かな筋肉を動かすので病気やケガの予防になるし、
美容やダイエットにも効く」

体を動かすことで心も生き生きとしてくる

今日は仕事で体を動かし、
心を生き生きとさせる日にしたい。

おめでとう。
ありがとう。
働く人びと。
働く商人たち。

<結城義晴>

2011年11月22日(火曜日)

「日本のエンゲル係数なぜ高い」と新団体「日本TCGF」とその発足の意味

少し寒くなって、
11月下旬の陽気です。

「風のように流れ去る時間があれば、
泥のごとく滞る歳月もある」
と、
朝日新聞一面コラム『天声人語』。

「オウム裁判が終結した。
語るべき人の、語るべき言葉は
最後まで聞かれぬまま」
と、
読売新聞一面コラム『編集手帳』。

「生きにくい時代には、色んな教えが『輝く未来』を競い、
悶々(もんもん)と暮らす人々を誘う」

経営コンサルタントの常とう手段の一つは、
脅し。

競争は喉を掻き切るほどになる。
売上げは激減する時代になる。
だから私の言うことを聞きなさい。
これ、常とう手段。

私は㈱商業界の時代から、
3年ごとに「コンサルタント活用講座」を特集した。
その脅しや騙しにのらないようにと。

この業界ほどコンサルタントが多い世界はない。
もちろん良心的で志高きコンサルタント諸氏もたくさんいらっしゃる。
亡くなられた渥美俊一先生や飯能の流通仙人・杉山昭次郎先生。
私の友人にもそういったコンサルタントは多い。

しかし。
「よこしまな扇動家の仮面は、
むろん宗教家とは限らない。

こんな年だからこそ、頼るに足る、
本物のきずなを見抜きたい」

今日の『天声人語』の結び。
いかがわしいコンサルタントかどうかは、
その人の足元を見ればよい。

ドラッカー先生は、
「その会社を訪れれば5分でわかる」と、
言い切ったものだ。

さて昨日の日経新聞『景気指標』。
「日本のエンゲル係数なぜ高い」と題して、
編集委員の太田泰彦さんが「エンゲル係数」について書く。

「家計の支出のうち、食費が占める割合」
小学校か中学校で習った。

「一般に途上国ではエンゲル係数が高く、
経済発展に伴って国民所得が上がるにつれて低下する」

国際労働機関(ILO)によれば、
ミャンマーは72.7%、
インドは43.6%。

「米国7.2%、ドイツ6.9%、英国11.4%など、
主要国は20%以下がほとんど」。

しかし日本は、
「ここ10年間は約23%
にピタリと張りついて動かない」

「日本も終戦直後(1946年)は66.7%と高かった」
「復興期と高度成長期は一貫して下がり続け、80年には28%になった」

それが23%で動かない。
なぜか。

「日本で買う食料品の値段が、
他の先進国より高いからだ」

原田さんは、断言する。

「昨年下期の実地調査(円換算)によると、
豚肉1キログラムは日本で2400円だが、
米国は828円、英国では798円。
牛乳1リットルは日本で216円するが、
米国では100円、英国では99円」

ただし私がいつも指摘するように、
これは為替レート換算。

購買力平価で1ドル120円とすると、
アメリカの豚肉が1200円くらい、
牛乳も150円くらいになるか。

だから格差はちょっとだけ是正される。
とはいっても、豚肉や牛乳はやはり高い。
だからエンゲル系数23%の一因にはなっている。
「日本は国内農業の生産コストが高いため、
関税を高くして食料品の市場を守っている」
これは実際の話。

「このため輸入品の値段も高くなり、
農業を支えるための負担が、
消費者全体に広く薄くのしかかっている」

決して農業従事者を責めるつもりはないが、
政治と行政、そして農業という産業が絡み合って、
その付けが消費者にきている。
「関税削減で食品の価格が下がれば、
エンゲル係数も下がり、
家計はそのお金を他の支出に回せる」

「すべての分野で物価水準が継続的に下落するデフレ現象とは異なり、
足元で不振の個人消費を押し上げる効果も期待できる」

「環太平洋経済連携協定(TPP)が、
輸出産業だけを利するという見方は誤りだ」
日経新聞の主張が出てきた。

最後の言葉、
「自由貿易の最大の受益者は消費者である」

「消費者代位機能」

つまりお客様の代わりに役目を果たすことだが、
これが小売業・流通業の仕事だとすると、
エンゲル係数問題は、
私たち自身のテーマとなる。

さてひとつ、大事なニュース。
「イオンやキリン、三菱食品などが
商品安定供給へ新団体」

「国民生活消費産業団体連合会」、すなわち「生団連」ではない。

「日本TCGF」
TCGFとはザ・コンシューマー・グッズ・フォーラムの頭文字。

大手小売業、食品・日用品のメーカー・卸売業が、
業界の枠を越えた新任意団体を発足した。
現在は、29社が参加。

来年3月11日までに総会が開かれ、
東日本大震災で支障が起きた商品の安定供給のあり方などを提言する。

発起人は、
イオン㈱の岡田元也社長、
キリンホールディングスの加藤壹康会長、
花王の尾崎元規社長ら。

この団体は3つのテーマを設定している。
①「震災対策共有化」
災害時の商品の安定供給などを議論する
②「消費者コミュニケーション」
原発事故に伴う風評被害を防ぐ情報発信の仕方などを検証する
③「サステナビリティ)」
環境対応における持続可能性などを論議する

3つの委員会が月に1~3回のペースで、
課題の整理と解決策を検討する。

報じたのは日経新聞と日本食料新聞。
朝日、読売は蚊帳の外。
グローバル・レベルでは、
国際組織「ザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム(TCGF)」がある。
ここにはウォルマートをはじめ、テスコ、ダノン、ネスレなど、
世界の小売業・食品メーカーなど大手企業がこぞって、
約650社が参画している。

日本TCGFはこの組織の日本版だが、
まだ29社で、まったくのひよっこ。

「本家」とは組織的な関係は持たない。
つまり従属関係はない。

しかし時宜を得た行動だとは思うが、
私の個人的意見は、
それこそ「生団連」との連携も必須だし、
例えば小売業を代表するイオンとセブン&アイ・ホールディングスが、
手を携えて発起人となってほしかったということ。

「士農工商」の序列の不当さを主張するためには、
こういったところでこそ「商」の一致団結がほしいものだ。

<結城義晴>

2011年11月21日(月曜日)

日本チェーンストア協会パネルディスカッション「東日本大震災からの教訓と課題」でコーディネーター

Everybody! Good Monday!
[vol47]

快晴であればなお秋惜しむかな
[朝日俳壇より 姫路市 蔭山一舟]

不明者の三八〇〇の中にいる
死者にもなれず釜石の友

[朝日歌壇より 本宮市 廣川秋男]

2011年第47週。
11月第4週。

今週は真ん中の23日水曜日が、
「勤労感謝の日」。

しかし小売業・サービス業は書き入れ時。
「勤労」が「感謝」される休日に、
小売・サービス業従事者は仕事する。

この矛盾こそ、小売サービス業の本質を示している。
人々が休んだり楽しんだりすることをサポートし、
それに奉仕する。

だから逆の意味で、私は、
「勤労感謝の日」こそ、
小売りサービス業の日だと思う。

朝に希望、
昼に努力、
夕に感謝。

毎年、11月の標語は、
変えない。

それは小売りサービス業の記念日「勤労感謝の日」があるからだ。

2008年4月17日に「商人舎発足の会」が開催された。
私は4時間の基調講演で語った。
タイトルは「小売りサービス業が日本を救う」。

国内産業の空洞化に対しても、
小売りサービス業がその穴を埋め、
新しい産業構造をつくる。

さらにそのうえで、海外進出も視野に入ってきた。

今朝の日経新聞一面トップ記事。

「海外出店数、国内を逆転
小売り・外食 加速」

コンビニエンスストアのトップ5社は、
セブン‐イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート、
それにサークルKサンクス、ミニストップ。
この「5社の2011年度の純増店舗数の合計は国内で約1600店」。
対して、サークルKサンクスを除く4社が海外進出しているが、
その純増数は、
「現地の運営企業と資本関係があるケースに限っても約2500店」。

今年度、海外が「国内の1.5倍」に及ぶ。

一方、ファーストリテイリングは、2012年8月期の決算までに、
主力フォーマットの「ユニクロ」を過去最高の108店、海外出店。

柳井正会長兼社長の弁。
「世界一のカジュアル衣料品店になるため、
成長するアジアに出なければならない」

フードサービスではワタミと吉野家
ワタミは2011年中に海外店舗数が26店増。
2016年までに海外に約200店を出店。

吉野家ホールディングスも20年2月期までに、
国内店舗約800店に対し、
海外店舗は1000店強の計画。

商業統計では、国内小売業は2010年に年商約135兆円。
ピークは1996年で、それから7%の減少。
外食は2010年には、ピークの1997年から約2割減。
これは外食産業総合調査研究センター調べ。

一方、アジアは所得中間層が急増している。
中産階級の増加こそ、消費産業の成長には良いマーケット条件である。
「日本の食文化やファッションは海外でも人気」が高い。

コンビニ、カジュアルファッション、フードサービス。
東南アジア進出が主体だが、
これも産業空洞化を埋めつつ、
輸出関連事業を伸ばしていくことに貢献する。
新しい時代に入ったことは確かだ。

日経新聞31面に「日本を始めよう。」の自社広告。
㈱セブン&アイ・ホールディングス会長の
鈴木敏文さん
が登場。

「日本は成熟社会で、
市場は飽和し成長力が乏しくなったといわれます。

そんなことはありません」
きっぱりと言い切る。

すばらしい。

私もまったく同感。

「消費者の志向は絶えず変化しています。
生活者のライフステージが変わることでも、
新しいニーズが生まれます。
人間は常に新しい物やサービスを求め続けるのです。
それに対応し続けていれば、
事業が行き詰まることはありません

なんと晴れ晴れしい言葉だろう。
なんと勇気づけられる物言いだろう

「勤労感謝の日」も、
私たちはこのことを自覚しつつ、
元気を出して仕事に邁進したい。

さて先週19日金曜は、
穏やかな秋の日差しをあびながら、
港区白金台の八芳園に向かった。
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特別セミナーのパネルディスカッションが開かれた。
主催は日本チェーンストア協会。
私はそのコーディネーター。

八芳園は、あの大久保彦左衛門の下屋敷跡。
江戸時代初期、徳川家康の側臣の一人。
見事な大楼門形式の正門。
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本館6階のチャットルームには、
小売業の通常会員、メーカー・卸の賛助会員が、
300名あまりが参集した。
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司会は、小笠原荘一常務理事
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協会長の清水信次さんが開会のあいさつ。
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東日本大震災での福島原発事故は、
初動で存分に費用投下すれば、
これほどにはならなかった。
天災と人災

現在は、武器ではなく行政と政治によって、
第3次世界大戦がはじまっているようなものだ。
日本は、その中で国力が落ちている。

だから生活者に密着した産業がモノを言い、
日本を変えなければならない。

そこで清水さんは12月2日に、
「国民生活消費者団体連合会」、いわゆる「生団連」を立ち上げる。
先週15日に㈱ライフコーポレーションは50周年を祝った。
岩崎高治社長に経営を任せ、
清水さんは食品産業、消費産業のために奔走している。

そしてパネルディスカッションがスタート。
テーマは「東日本大震災からの教訓と課題」。
製配販の代表がそれぞれの活動を報告し、
震災から得た課題を語り合い、共有化しようというのが趣旨。
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コーディネーターを務める私の隣は、
製造業を代表して日清食品㈱代表取締役社長の中川晋さん
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卸売業からは、
三菱食品㈱取締役専務執行役員の中嶋隆夫さん(左)。
小売業からは、
㈱イトーヨーカ堂取締役専務執行役員の竹田利明さん
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日清食品の中川さんからは鋭い指摘が次々に提起された。
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「どん兵衛のかまぼこを製造していたメーカーが、
原発事故で出荷停止になった。
パーツが1個足りないだけで生産できない事態が発生した。
どん兵衛のパッケージには小さくかまぼこが載っている。
緊急対応品として、かまぼこなしの製品を販売したが、
かまぼこのシズル写真を消し、
かまぼこ1グラム分の内容量減少の表示変更をした」

「買いだめ消費で店頭から商品が消えた。
その解決法? いま、解はない。
しかし東南海地震が起これば80兆円の損失予測されている。
構造を変えるためには、『緊急の特例』が必要ではないか

「東北・関東地方を最優先する商品供給を徹底させたが、
生産と仮需の発生で欠品が発生した。
各社から要請があり、出荷可能な得意先別に割り振った。
しかし、はたしてそうだったのか?
どこかに流通在庫があったのではないだろうか。
『公平性の論理』のジレンマとでもいうべき、営業課題が残った」

日清食品では震災前後のカップ麺の販売状況を緻密に分析している。
震災発生後の異常な販売数量、
しかし7月には、急速に流通在庫が滞留している。
今後、それをどのように平準化させるのか。
製造業の立場からは、そのことが課題であると締めくくった。

続いて三菱食品の中嶋さんは詳細な報告をもとに、
サプライチェーンの課題を挙げてくれた。
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三菱食品は3.11の本震と4.7の余震による強震で、
東北・関東エリアの100カ所以上のセンターや倉庫が被災した。
ラックやマテハン機器は倒壊し、
メザニン(中2階式の組み立て式棚)設備が損傷。
これにより収容能力が落ち、倉庫機能が低下した。

さらに大津波で、
宮城県岩沼臨空地区の4つのディストリビューションセンターが、
壊滅的な被害を受ける。

「4月7日の震度6強の余震で被災した時に、
それまで復旧作業に頑張ってきた現地の社員が、
『笑っちゃいますよ』といった。
心が折れてしまうのではないかと、本当に心配した。

気力でやっていこうと励ましながら一緒にやってきた」

「東北・関東エリアからの受注の増大、メーカーの欠品対応など、
在庫確保数が増えたが、一方で保管能力が低下していた。
倉庫の大切さを感じた。
物流センターと倉庫の違いを感じた」

中嶋さんは行政への要望として、
緊急車両運行許可証の優先発行、
燃油の優先供給、
食品流通DCへのライフラインの優先的復旧、
配荷タスクフォースの検討などを挙げてくれた。

食品流通関係者の誰もが感じた課題だ。
だからこそ、ライフラインを担う食品流通業が一丸となって、
その要望を、今後の改善のアクションにつなげたい。

最後はイトーヨーカ堂の竹田さんが、
被災直後の状況から商品動向までを説明。
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セブン&アイグループはイトーヨーカ堂、
ヨークベニマル、セブン‐イレブン、デニーズ、
セブン銀行(ATM)などが多大な被害を受けた。

「震度5弱以上の場合、
各店から安否・被災情報が本部に入ることになっている。
すべての店舗から連絡が入り、安心するも、
大津波の報が入ると同時に、東北ブロックからの連絡が途絶えた」

このブログでも取り上げたが、津波によって
石巻のヨークベニマル湊鹿妻店は壊滅的な被害にあう。

イトーヨーカ堂石巻あけぼの店も商品が散乱し、外周が陥没。
あけぼの店は、震災当日18時には営業を再開する。
「各店の店長が自主判断で夕方から店を開けた」

震災直後、カップラーメンや水、缶詰などの簡便食品が、
年末を上回る売れ行き数量になる。
しかし被災から時間が経つにつれ、商品動向が変わった。
2日後には、コンロや乾電池、ペーパー類の生活必需品、
1週間後には移動のための自転車、修理用品の売れた。

今回の震災では、中越地震を経験した原信やシジシーが、
被災した企業に、必要な商品を、必要な時期に送り届けたことで、
被災地域の住民生活を支えた。

こうした緊急時の商品動向は、
被災時のマーチャンダイジング情報として共有したい。

製配販パネラーの方々からの詳細な報告と課題提起。
私のまとめは堺屋太一さんの「非常時の5段階」
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8カ月を経て、第1段階の「救助」、第2段階の「救済」から、
第3段階の「復旧」へと至っている。
しかし、これから新しいグランドデザインをつくる第4段階の「復興」があり、
世界のモデルとなるべく第5段階の「振興」がある。

そのためにも小売流通業、
さらにサプライチェーン全体が手を携えて、
問題解決していかなければならない。

「生団連」はその一つの手段である。
そんなメッセージで、締めくくった。

最後にパネラーの方々と、
日本チェーンストア協会の井上淳専務理事(右)。
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清水さんともツーショット。
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セブン&アイ・ホールディングスの高羽康夫さんとも、
久々にお会いした。
執行役広報センターシニアオフィサー。
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白金台駅で別れ際に。

この日は、昼に立教大学大学院結城ゼミ1期生で、
その結城ゼミOB会会長の名古屋文彦さん来社。
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先週はいい日ばかりだった。

今週もいい日が待っている。
「勤労感謝の日」。

元気がでてくる。

では、みなさん。
Good Monday!

<結城義晴>

2011年11月20日(日曜日)

ジジと「ふたりのビッグ・ショー」[2011日曜版vol47]

ユウキ家のジジです。
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リフォームしたあとも、
ボクの定位置は、ここ。
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チェンバロのうえ。

ユウキヨシハルのおとうさん、
アメリカからかえってきてからも、
けっこう、いそがしい。
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コーネル・ジャパンの最後の講義や修了式。
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それからパネルディスカッションのコーディネーター。
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それがおわってから、いま、
熱心にやっていることがあります。
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これです。
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ギブソンJ-100といいます。

それから、こんなのも、
つかってる。
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やすみの日には、
あかるいうちから、
でかけていきます。
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ボクがみていると、
ギター・ケースをかかえて、
手をふって、でかけます。
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とても、うれしそう。
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でかけていくところは、
ちいさなスタジオ。
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ニノミヤさんとデュエット。

プロのシオザキさんと、
セミプロのアソウさん。
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それからふたりのビッグ・ショーのお相手、
オオクボさんとも練習。
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暗くなっても、もどってきません。
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どしてるんだろう?
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オオクボさんが、
うたいます。
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おとうさんは、
ボクのうたもやります。
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「あんまり ひざしが まぶしくて
あんまり せなかが やわらかくて
猫の目 猫の目 黄色にとけた♪」
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まあ、いっしょうけんめい、
練習しています。
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12月2日の「ふたりのビッグ・ショー」。
みなさんも、おいでください。

ボクはいきませんが・・・。

<『ジジの気分』 (未刊)より>

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