結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年03月15日(金曜日)

イトーヨーカドー東大和店の「FOUND GOOD」と「ムラブリ語」

イトーヨーカドー東大和店。IMG_31774

すでに発表されているのが、
「(仮称)ヒューリック東大和SC計画」である。
ヒューリック㈱は東証一部上場の不動産会社だ。

コロナ禍中の2021年9月、
イトーヨーカドー鶴見店を譲受して、
「リコパ鶴見」をオープンさせている。

そのリコパ東大和のオープンは2025年春。

イトーヨーカドーは、
食品スーパーマーケットになる。
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ただし衣料品売場は、
先駆けて専門店実験を始めた。

「ファウンドグッド」
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緊急の記者発表があって、
山本恭広商人舎編集長が取材に行った。

商人舎流通SuperNews。

イトーヨーカ堂news|
3/15「FOUND GOOD」東大和に開設/250坪最大規模

㈱アダストリアとイトーヨーカ堂がコラボして、
平場のアパレルショップを開発した。

月刊商人舎3月号。
特集「アパレル改革」
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お陰様で大好評。
各社の衣料品部隊が読んでくれて、
研究に余念がない。

この特集でレポートした。
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小島健輔さんの分析。
「イトーヨーカ堂FOUND GOOD検分」

簡潔に言えば平場型SPA。

東大和はそのファウンドグッドの250坪タイプだ。

これで100坪型、150坪型、200坪型に加えて、
250坪型がそろった。

4タイプのフォーマットとなって、
これを専門店展開するプランだ。IMG_31784

今回はビジネスシャツ、子供服、
そして雑貨の品ぞろえを増やした。IMG_31794

執行役員の梅津尚宏専門店事業部長が、
丁寧に解説してくれた。IMG_31804

ファウンドグッドカフェも併設された。
セルフサービス型喫茶。IMG_31814

道路を挟んだ向かいには、
ヤオコーマーケットプレイス。

1998年の狭山店リニューアル、
2003年の川越南古谷店、
2012年の川越的場店、
そして2013年の東大和店。

ヤオコーの歴史に残る旗艦店。
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ダブルコンコースのエントランス売場。
20台のチェックスタンドのうち、
14台が稼働して大盛況。IMG_3185

ヤオコーのショッピングセンターには、
ユニクロ、デコホーム、ABCマートがそろう。

イトーヨーカドー側には、
新たにGUが入る。
ファウンドグッドと連携を組むことになる。

さてその出来栄えは。

成果があがったらまた報告しよう。

イトーヨーカドー東大和が、
ヤオコー東大和店に、
ショッピングセンターとしても敗北した。

そう考えられるが、
それだけではないのかもしれない。

朝日新聞「折々のことば」
第3028回。

人間は意味のないことを
やりとりするときにこそ、
仲がよくなる。
(伊藤雄馬)

タイの少数民族・ムラブリの言語の研究者。
タイやラオスの山岳地帯に暮らす少数民族。
人口は推定500名前後。

ムラブリ語には文字がない。

話者数が減少し続ける。
だから消滅の危機の「危機言語」に指定されている。

伊藤さんはその危機言語を研究する。
1986年、島根県生まれ。
2010年、富山大学人文学部卒業。
横浜市立大学客員研究員。

「ムラ」は「人)、「ブリ」は「森」。
ムラブリは「森の人」。

森のなかで狩猟採集をしながら、
遊動生活をしていた。

現在は定住化が進んでいる。

ムラブリの人たち。

「『どこ行くの?』という挨拶一つとっても、
声をかけあうこと自体に意味があって、
正確な情報を求めているのではない」

「むしろ返答は『テキトー』なほうがいいのだ」

「ごはん食べた?」
これは朝の挨拶語。

『ムラブリ』より。
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編著者の鷲田誠一さん。
「そういえば私も若い頃、
近所の一世代上の人と
毎朝こんな挨拶をしていた」

「どちらへ?」
「ちょっとそこまで」
「早(はよ)うお帰りやす」

考えてみるとお店も、
こんなやり取りで成り立っているのがいい。

人間の交流の基礎にあるもの。
それがお店である。

イトーヨーカドーもヤオコーも、
この人間の交流の場である。

無理に競争を意識する必要はない。
人間の交流の場として、
人々に選ばれることが、
店として大切なのだ。

消滅の危機にあるムラブリ語。
教えられることばかりだ。

〈結城義晴〉

2024年03月14日(木曜日)

OICグループ方針発表会で激励講演の「自ら、変われ!」

㈱OICグループの経営方針発表会。
「おいしいグループ」は、
主にロピアを展開するホールディングカンパニー。

スーパーバリューやアキダイ、
さらに外食のイートピア、
食品製造業や卸売業を傘下にもつ。

食品産業をバーチカルに統合する。
そして「おいしい日本の食」を世界に発信する。

2月末決算はすぐに集計されて、
そのうえで新年度方針が出される。

だから毎年3月前半に開催される。

このスピード感がロピアとOICの真骨頂だ。

ロピア全店のチーフと店長が参加する。
ロピアのチーフと店長は経営者だからである。
今回はグループ企業からも参加があって、
1000人規模となった。

横浜みなとみらいのパシフィコ会議センター。
1階のメインホールを使って、
楽しむ発表会となった。

はじめに髙木勇輔代表取締役社長が、
基本的な考え方を、
わかりやすく説明した。

それから浜野仁志取締役が、
経営数値の報告をした。

それから、
子会社のとんがり社員たちの座談会など、
様々なイベント。

堅苦しい経営方針を発表するわけではない。

ハイライトの一つは、
23年度のMVPの発表。
モスト・バリュアブル・プレーヤー。
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関東・東北、中部、関西、九州の各営業本部、
OIC本部、グループ企業から、
優れた実績を上げた40数名。

最後に全員が立ち上がって、
盛大な拍手を受けた。

そのあと、結城義晴の激励講演。
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タイトルは、
「革新せよ、成長せよ。」

革新せずに企業規模が大きくなることを、
「膨張」という。

経営や現場の革新が、
スケールの拡大につながる。
それが「成長」であるIMG_44004

1月と2月に4つの班が米国研修をした。
私がコーディネーター。
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2015年から4班ずつ180人が研修を受けた。
2021年と2022年はコロナ禍で中止したが、
8年間にわたって研修は継続された。

これまで延べ1400人以上が私とともに、
アメリカで学び、私の講義を聞いてくれた。

まず、そのニューヨーク研修の報告をした。IMG_44024

それからアメリカの大変化。
研修に参加していない人たちにも、
アメリカの先進性を学んでもらう。
そのうえでロピアの経営戦略の本質を知ってもらう。IMG_44054

商人には「本籍地と現住所」がある。
中途入社やスカウト組が多いロピアにとって、
本籍地と現住所は重要な考え方だ。

ファーストリテイリングは今、
第4創業期にある。
そのエピソードは、
これもロピアにとって有益だ。

そして最後はトレードオンのススメ。
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ロピアは「ロープライス・ユートピア」を標榜する。

ロープライスとユートピアは、
トレードオンの関係にある。

そのトレードオンを成し遂げるには、
組織で学習することだ。
みんなで、学ぶことだ。

個人の学習なしに、
組織の学習はない。

私の激励はそこに帰結する。

最後の最後は、
「自ら、変われ!」

自分が変わらねば、
仲間を変えることはできない。

自分が変わらねば、
会社を変えることはできない。

方針発表会の最後は、
髙木秀雄名誉会長の挨拶。

みんなに感謝しつつ、
膨張ではなく成長が必要だと呼びかけた。

その後、3階の広間で、
懇親会。

私は高木勇輔さんと長々と話し込んだ。

それから多くの人と交流した。

私の右隣が内田貴之さん、
そして相川博史さん。
内田さんは㈱スーパーバリュー社長、
相川さんは㈱ロピア東北・北海道営業本部長・FC事業部長。
私の左が菊池孝利さん。
OICホールディングス組織管理本部長。
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佐藤博和さんは今、
スーパーバリュー営業統括。
顔つきが変わってきた。IMG_44074

商人ねっとの工藤恵理佳さんと東恩納歩さん。
ニューヨークではお世話になった。IMG_44124

そして水元仁志さん。
3月から台湾支社長。
「今はコンサルじゃないんで」と言いつつ、
久しぶりのツーショット。IMG_44204

懇親会の合間に2024年US研修団の、
報告会優秀チームの表彰。
相川団長から商品が手渡された。IMG_31604

そして4班4チームの表彰者たち。IMG_31614
その本当の成果を出す時は、
これからだ。

膨張ではなく、
真の成長をしてほしい。

革新によって、
成長してほしい。

それがOICグループに結城義晴が望むことだ。

〈結城義晴〉

2024年03月13日(水曜日)

コストコ・ジャパンの「下請法違反」としまむらの「仕入れの憲法」

雑誌を買ったら、
あるいは届いたら、
編集後記から見る。

そんな人が意外に多い。

月刊商人舎3月号の「編集後記」を紹介しよう。
ウェブ版には掲載されていないですよ。
吉本さん!
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[編集後記]
特集「アパレル改革」の切り口は、衣料品を食品のように考えること。食品は衣料品のように思うこと。ファッションを特別のものとは見ないこと。それでも人間が人間であることに「アパレル」は少なからず影響を与える。人と人とが寄りかかって、人ができている。人間とは人と人との間に成り立つものだ。「アパレル改革」を編集しながら、なぜか哲学的な思考に陥った。(義)

「意外といいじゃん」。総合スーパーの衣料品改革を体感すべく、「FOUND GOOD」で試買したボーダーシャツを見た友人の感想。数年前、「そんなの着るなよ」と某ファストファッションで買ったボーダーに対する感想から一変。前向きに評価したい。(恭)

百貨店の棒人間のようなマネキンは、かっこよさはあるものの、親近感は湧かない。その点、ターゲットのふくよかなマネキンは、アメリカ人顧客に寄り添っていると思う。個人的には低身長女性用のマネキンが欲しいなぁ。(綾)

花巻東高校の「目標達成シート」は、目の前の小さな目標をクリアすることによって将来の目標に少しずつ近づく仕組みになっている。だが、このことが実は日々自分を見つめ直すことにもつながっている。深い。(磯)

ファッションブランドに関心の薄い私がターゲットのアパレルブランド戦略!?  何とか形にしたが、いかがだったろうか。ターゲットの衣料品は品質も良くてリーズナブル。だからときどき購入する。ベビー服や子ども服は可愛くて安くてお勧めだ。一方のウォルマートもターゲットに追いつこうとアパレル売場はずいぶん洗練されてきた。両者が刺激しあっている。(亀)

雑誌をはじめたころは、
2行くらいの短い後記だったが、
最近はみんな文章が長くなってきた。

それぞれ勝手に書いているものの、
やっぱり編集後記は面白い。

さて、悪い話。

新聞各紙に載ったし、
商人舎流通SuperNewsにも。

コストコnews|
公取委から下請法違反で勧告
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下請代金支払遅延等防止法(下請法)。

食品やその原材料製造委託の下請事業者に対して、
正当な理由もなく下請代金を減額していた。

値引き販売や新店での試食の原資として、
下請代金から差し引いたり、
支払わせたりした。

公正取引委員会が再発防止を勧告。

2021年11月から23年10月まで、
下請け企業20社に値引き分の一部を負担させて、
支払代金を約3350万円減額していた。

ほかには新規出店の際、
初回発注分の全額を負担要請した。

さらに納品時に品質検査を行わず、
瑕疵があったという理由で、
約200万円分の商品を、
下請け企業11社に返品していた。

違反認定された約3550万円分は、
下請け企業に相当分が支払われた。

同社からの返答。
「下請け企業との間で、
合意の上で減額や返品をしていた」

ただし下請法では、
合意があっても、
下請け企業に責任がないのに
発注時に決めた代金を後から減額したり、
商品を返品したりすることを禁止している。

「合意があっても」というところが大事だ。

一方、日産自動車も、
公正取引委員会から、
下請法違反の勧告を受けた。

下請け企業との取引で、
発注時に決めた金額から「割戻金」として、
一部を差し引いた代金を支払っていた。

内田誠社長兼最高経営責任者。
「法令順守の状況について改めて点検をし、
再発防止を徹底していく。
サプライヤーとの信頼関係を再構築するため、
当社が誠意を示していく」

発刊したばかりの月刊商人舎3月号で、
ちょうど私は書いていた。

[特集のまえがき]
衣料品の「Just in Time」を構築せよ!!
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しまむらの「仕入れの憲法」。
「4つの悪の追放」と呼ばれた。

第1が「返品」の悪、
第2が「赤黒伝票」の悪、
第3が「追加値引」の悪。
第4が「未引き取り」の悪。

「赤黒伝票」は伝票の書き換えによって
見かけの売上げを計上する手立て。

「追加値引き」は納品された後に
ベンダーに対してさらに
追加の値引きを要求すること。

そして「未引き取り」は、
発注したにもかかわらず
商品を引き取らないこと。

――衣料品業界では、
そんなことがまかり通っていた。
しまむらはこれらを徹底的に排除して、
ベンダーとの信頼関係を構築していった。
しまむらが全面的にリスクを負って、
値下げ分をしまむら負担で売り切った。

その結果、返品や売れ残りが
当たり前だった衣料品取り引きを
「ジャスト・イン・タイム」に変えていった。

総合スーパーの衣料品は、
このしまむらにも市場を略奪された――。

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イトーヨーカ堂には、
故伊藤雅俊名誉会長が残した、
取引先との「四つのルール」がある。

第1、対等の立場。
第2、約束は必ず守る。
第3、接待は受けない。
第4、返品しない。

これは鉄の掟だった。
しまむらの「4つの悪の追放」に通じるルールである。

そしてこれはコストコにも日産にも通じる、
商売の鉄則だ。

〈結城義晴〉

2024年03月12日(火曜日)

MEGAドンキ成増店の内覧会はハンドマイクリレー!!

月刊商人舎3月号の表紙。
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雑誌を手渡すと表紙を見て、
たいていの人がギョッとした顔をする。
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それだけインパクトを込めた特集だということ。

よろしくお願いします。
3月号の目次。
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特集以外にも「特別企画」
セブンとアイの「食」の共同作戦

Peace Deli千葉キッチン 
スーパーマーケット200店舗を支える最重要拠点
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このレポートは、
ウェブ版商人舎を見てください。
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センターの内部にカメラが入って、
写真レポートもしています。

それから、
「SIPストア」
SEJとIYの協働実験店の本当の目的
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こちらもウェブ版商人舎を見てください。
棚割がわかるようになっています。

ご愛読のほど、
お願いします。

さて東京・小平。
第一屋製パン㈱の取締役会。
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活発な質問と論議。
あるべき形です。

そのあと成増へ。
MEGAドン・キホーテ成増店。
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オープンは明日の3月13日。
今日はマスコミ内覧会。
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元はダイエー成増店。
1988年6月オープン。
バブルの真っただ中の開業で繁盛した。
その後、ダイエー本部もここに置かれた。

そのダイエーの象徴のような店が、
2019年12月31日、
コロナ感染拡大の直前の大晦日に閉店。

そして一部建て替えをして今、
MEGAドンキとしてオープンする。

ダイエーは地下1階から地上6階まで使っていたが、
ドンキは1階から4階までの4フロアを活用。

店長の中村敏彦さんが、
店内ツアーをやってくれた。
肩書はMEGA関東第3支社店長。
ppih01_IMG_9181  (2)

ハンドマイクを片手に、
1階から4階までの主だった売場を、
案内してくれた。
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要所要所には商品部や店の担当者が待っていて、
プライベートブランドを中心に説明してくれた。

1階は頻度の高い日常品。IMG_31024

生鮮食品と惣菜、グロサリーは、
2階にもってきた。
ハンドマイクリレーが続く。IMG_31104

精肉売場は「山さんの店」と名づけられて、
担当の山口さんが設計した。IMG_31134

ピザもショップ化して、
「トロリスタ」というネーミングがついた。IMG_31154

惣菜はカネ美食品㈱が担当。
愛知県の惣菜専門企業。
2022年の夏にPPIHがTOB(株式公開買付け)で、
ファミリーマートから買収した。IMG_31174

店内は中村店長によれば「魔境」。IMG_31214

4個買えば1個無料。
店長がハンドマイクで説明する。
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インナーのプライベートブランドの説明。IMG_31284

ドンキオリジナルのバックパックの売込み?IMG_31443

中村さんは49歳。
大役を任されて意欲満々。ppih02__IMG_9181
総合スーパー業態のチェーンのなかで、
もっともポジショニングを鮮明にするドン・キホーテ。

商人舎4月号で、
成増店の全貌を明らかにしよう。

帰りに駅の反対側の西友に寄った。
こちらも地下1階から地上3階までの4フロア。
食品から衣料品・住関連まで、
一応、フルラインの総合スーパー。IMG_31464
淡々と営業していた。

東武東上線沿線は、
かつて西友の牙城だった。

そこにダイエーが進出して、
激しい競争を展開した。

あの頃を思い出した。

その後、ダイエーが衰退して、
今度はドン・キホーテ対西友。

ドン・キホーテ都内最大店舗。
人口は密集している。

大きな成果を上げることだろう。
広報体制を見ても力の入れ方が違う。

競争の中身は変わる。
けれど競争することは変わらない。

かつては、
どちらが大きいか、
どちらが安いか、の競争だった。

今はどちらが自分らしいか、の競争だ。
レース型競争からコンテスト型競争へ。

もちろんいつも言うけれど、
レース型競争がなくなったわけではない。

レース型で拮抗して入れば、
好き嫌いは別にして、
コンテスト型の競争となる。
ポジショニング競争である。

そしてポジショニングで勝負は決まる。

それでもこの商圏は、
駅を挟んで分散している。
棲み分けが続くだろう。

ダイエーからドンキに変わって、
売上げは倍増、あるいは3倍になるだろう。

その新しい売上げはどこからくるのか。
強いポジショニングは商圏を広げる。
そのうえに客層まで広げるのだ。

〈結城義晴〉

2024年03月11日(月曜日)

商人舎3月号「アパレル改革」と黒田マーケティング健在!

Everyone, Good Monday!
[2024vol⑪]

2024年第11週。
3月に入って第3週。

2011年3月11日、
東日本大震災。
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忘れられない。
忘れてはいけない。

ご冥福を祈ります。

今年ニューヨークに行ったとき。
現地在住のガイド富澤由紀子さんが、
9・11のことを話し始めたら、
もう、止まらなくなった。

2001年の同時多発テロ。

彼女たちは忘れられない。
忘れてはいない。

私たちも同じだ。

忘れられない。
忘れない。

そんな日だけれど、
月刊商人舎3月号発刊。
特集は、
アパレル改革
総合スーパーが「総合」でいられる条件202403_coverpage

[Cover Message]
イトーヨーカ堂がアパレルからの撤退を発表してから、逆に日本の総合スーパーの「衣料品改革」が露出してきた。イオンリテールは井出武美社長が「総合を捨てない!」と力説して、船橋店でオリジナルブランドの全面展開を試みた。イズミはアダストリアと組んで衣料品平場の刷新を図り、平和堂はアルプラザの増床刷新において衣料品改革を進めた。中型総合スーパーを展開するライフコーポレーションもファッション売場のリニューアルを始めた。一方、アメリカで総合スーパーを展開するターゲットは、日本のチェーンストアがベンチマークするに足る展開の歴史を有する。ターゲットの最新アパレル戦略の本質を明らかにしつつ、日本の「アパレル改革」の焦点に迫る。「総合スーパー」が「総合」でいられるための条件をフクロウのごとく深く考察し、提案する。

[Contents]
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[第一人者・小島健輔の渾身提案]
量販チェーンストアの「衣料品改革」体系

それから、
イトーヨーカ堂木場店「FOUND GOOD」検分

ターゲットの「アパレル戦略」発展史に学ぶ
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いずれもアパレル担当者、必読の記事です。

私の「特集のまえがき」は例によって、
この問題の総整理。

そして[Message of March]
衣料品は食品のように扱え。

あなたが立っている。
私が立っている。
彼、彼女が立っている。

それらの印象は、
体格、身長、顔つき、髪型。
そして身に付けているもので決まる。

アパレルは、
その人の印象を直接的に表現する。
人間の価値まで決定づけるときさえある。

フードは、
人間の骨肉をつくる。
健康や喜びを生み出す。

その衣と食を売る。
衣料と食料を調達する。
アパレルとフードを商う。

食品と衣料品は実は親和性が高い。
このときアパレルはフードのように扱う。
フードはアパレルのように考える。

重要な概念をクロスさせる。
二つの考え方をぶつけ合い、融合させる。
それが総合の強みである。

感性は思考なしにはありえない。
なのに考えぬことが感じることだと勘違いする。
アパレル改革には深い思索が求められる。

思考に気をつけなさい。
それはいつか言葉になるから。
行動と習慣に、性格と運命になるから。

衣料品は食品のように扱え。
食品は衣料品のように考えよ。
このトレードオンをやめるな。
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食品や住関連の担当の人たちも、
スーパーマーケットやドラッグストアの人たちも、
ぜひ、丁寧に読んでください。

「ターゲット・キャンペーン」のようなこと、
今、必要です。

この雑誌の責了日直後の、
商人舎流通SuperNews。
イオンリテールnews|
衣料品SPAブランド刷新、「TVC」始動、289店に展開拡大
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ターゲット・キャンペーンほどでなくとも、
TVCキャンペーンをぶち上げるべきだ。

特集を読んでほしい。
そして考えてほしい。

さて今日は神奈川県の藤沢。IMG_3075 (002)4

黒田節子先生とデート。IMG_3078 (002)4
20年ぶりくらいか。

依然としてお美しい。
頭もシャープな89歳。

今でも黒田マーケティングは健在だ。

お昼に待ち合わせして、
うな重をペロリ。

それからコーヒーを飲みつつ、
2時間半も語り続けた。

最後には凄い提案をいただいた。
「シルバー・マーケティング」

このマーケティングは、
当事者からニーズを聞き出すことが、
いちばん難しい。

高齢者は自分のニーズを語っても、
それをすぐに忘れてしまう。

マーケッターたちは今、
ご当人たちから情報収集する手段をもたない。

介護する人たちから又聞きの情報で、
勝手に推測している。

だから大外れの施策がまかり通っている。
そこに黒田マーケティングの視点が出てくる。

実に素晴らしい。

別れ難かったが、
再会をお約束して別れた。

ありがとうございました。

小田急百貨店ふじさわ。
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その2階にビオセボン。IMG_3086 (002)4

百貨店との相性は良さそうだ。IMG_3088 (002)4

「オーガニック」だけでなく、
米国流の「ローカル」がもっと欲しい。IMG_3085 (002)4
それでも手厳しいことは言わない。

楽しいデートのあとは、
いい日はいいな!

では、みなさん、今週も、
トレードオンをやめるな。

合掌しつつ、
Good Monday!

〈結城義晴〉

2024年03月10日(日曜日)

「死と生は一本の線でつながっている」

3・11。
あれからもう13年が過ぎる。

今年の新年には、
能登半島地震が起こった。
その救済もできてはいない。

人々から集めている税金は、
こんなことにこそ、
素早く効果的に使ってほしい。

政党助成金のために、
税金を払っているのではない。

それにしても、
人間の命が軽くなっている。

いや、人間の命を軽く扱うことは、
ずっと続けられてきた。

それが1000年前も100年前も今も、
あまり変わっていないのだろう。

私たちは進歩しているのか。

日経新聞夕刊のエッセイ「明日への話題」

「老いて心は千々に乱れる」
小池真理子が書いている。
私と同年の女流作家。

「生きることは老いることであり、
老いることこそ生きることだった」

……三島由紀夫の最後の作品、
「天人五衰」の一節。
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「三島は老いを恐れ、
拒絶していた作家だった」

「40代の若さで自ら幕引きをしたのも
頷(うなず)ける」

「老いとは何なのか」

「どれほど魅力的だった人でも、
例外なく皺(しわ)ができ、皮膚がたるみ、
見た目が著しく変貌する」

「身体のあちこちに不具合が起こる。
物忘れが増える。動作が鈍くなる」

「そして、その先に厳然と控えているのは
“死”なのである」

「若いころは、公園のベンチで、
高齢者が背を丸め、
ぼーっとしているのを見かけても、
老人が眠たそうにしているな、
としか思わなかった」

「生命体である以上、誰もが老いる。
どうすることもできない哀しみや諦め、
虚しさを抱えこんで、なお生きる」

「だからこそ、
ぼーっとするしかなくなるのだが、
当時はそんなことは想像できなかった」

「だが、自分が老いの道に入ってみると、
“高齢者”として社会的に漫然と
一括りにされることへの抵抗は
もちろんのこと、
感傷や千々(ちぢ)に乱れる想いの数々に、
日々、圧倒されていることがわかる」

「まるで思春期である」

「死と生は一本の線でつながっている」

「若かったころは活き活きとした命の
真っ只中から死を見つめていたが、
今は終末の側に立って
生を眺めているような気がする」

作家の文章は、
間に言葉を挟むことを拒絶している。

だからそのまま引用せざるを得ない。

「死と生は一本の線でつながっている」
なのに、命が軽く扱われる。
理不尽この上ない。

同じ日経の「明日への話題」
料理研究家・土井善晴さん。
「季節と暮らし循環する」 

「春待ち。
季節を先取りした“はしりもの”とは、
幸福な未来の気配(吉祥)だ」

「このこころ栄えする一瞬は、
日常のハレ」

「日常にもケハレは循環し、
知っていればかなり楽しめる」

土井さんの料理、
簡素にして滋味深い。

文章も滋味深い。
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「喜びとは自然と人の間に生まれる情緒である」

「おいしさは二つ」

「人間が作る(油脂に担保される)快楽と、
もう一つは、美を捉えた精神の喜び」

二つ、というところがいい。
トレードオンだ。

「西洋の美学は感性の構造に無関心できたから、
後者は言うまでもなく和食だ」

「ラグジュアリー(上質)な和食の美は
味つけや数ではない」

「人工的な味つけや工夫は情緒を殺す」

「和食は、低級感覚とされる味覚・嗅覚に
依存しない無限大の豊かさ。
本能的なおいしさはゴールではない」

最近の美食ブームに注文を付ける。

「そうは言っても、
しっかり味付けしないとおかずにはならないし、
育ち盛りの子供と大人は満足しない」

「日常は、さかりものを、
豚バラとピリ辛に炒めたり、
チーズを焼いた魚のグラタンを入れたりする」

「酸味の出た白菜漬けを食べよくするのに
炒(い)り胡麻(ごま)をたっぷりかけて
豆ご飯に添えた」

「なごりとはしり、ケとハレは絶えず交差し
循環するヘリテージ(伝統)は複雑にして難解だ」

「一汁一菜を基本に、
貧と贅(ぜい)のおかずが
バランスよく自然循環する暮らしは理想」

貧と贅、そのバランス。

これは食品小売業の品揃えに通じる。

日常と非日常。
ケの禁欲円、ハレの享楽円。
日常のハレ。

生きるために、
どちらも身近にある。

それがこころ栄えの一瞬なのだ。

合掌。

〈結城義晴〉

2024年03月09日(土曜日)

日経社説「ドラッグストア統合が問う流通変革」を論評する

寒くなったり温かくなったり。
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三寒四温(さんかんしおん)。
寒い日が3日ほど続くと、
そのあと4日ほど温暖な日が続く。
そしてまた寒さが3日続く。

もともとの意味は、
冬季に7日周期で寒暖が繰り返される現象。
寒い日は晴れ、暖かい日は曇天や雨。

そしてこれは、
朝鮮半島や中国東北部で見られる。

原因はシベリア高気圧。
この高気圧が7日の周期で、
強まったり弱まったりする。

シベリア高気圧は正確なのだ。

日本でいわれる三寒四温は、
明確な3日と4日にはならない。

太平洋の高気圧の影響を受けるからだ。

そして本来、冬の現象なのに、
最近は春先に現れる。

さて、日経新聞の社説。
いつも書くけれど、
日経の社説に、
商業や小売業を取り上げていただいて、
とても感謝している。

「ドラッグストア統合が問う流通変革」

夕方の5時に電子版で公開された。

ウエルシアホールディングスと、
ツルハホールディングスの経営統合。
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売上高2兆円を超える巨大チェーンの誕生。
ドラッグストア市場の4分の1を占める。

「イオンはこれまでドラッグストア以外にも
スーパーの再編を進めてきた」

総合スーパーでは、
ダイエー、マイカル、さらにフジ。
食品スーパーマーケットでは、
全国のマックスバリュ。
さらに、
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス。
そこにいなげやも加わる。

「価格の支配権をメーカーから奪い、
消費者に値下げで還元することを訴えてきた」

ん~。

この認識、ちょっと古くはないか。

今は製造業と卸売業、そして小売業は、
ウィンウィンの関係を目指している。
そうあらねばいけないと三者は了解している。

「イオンが傘下に置いたダイエー型経営の踏襲だ」

これにもちょっと賛成しかねる。
ダイエーの歴史的貢献を評価しつつ、
イオンはその発展形を追求している。
「踏襲」ではない。

平和産業、地域産業、人間産業。
これがイオンの目指すものだ。

平和産業、人間産業に関しては、
ダイエーも同じだったと思う。
しかしイオンの地域産業主義は、
ダイエーの中央集権主義とは異なる。

「デフレ経済が本格化する2000年代ごろまでは
有効な考えだったが、
価格競争力に頼るだけでは
今後の日本経済の方向にそぐわない面がある」

イオンは価格競争力にだけ頼っているか。

中核業態のイオンリテールは、
そのバナーを「イオンスタイル」としている。

「イオンが提供するライフスタイル」の意味である。
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これはイオンが価格一辺倒ではないことを、
自ら表明しようという意思の表れである。

「いまやドラッグストアは
売上げで食品の構成比率を高め、
スーパーなどとの価格競争を展開している。
節約志向の強い消費者にはプラスになる一方、
価格の下押し圧力になっているのも事実だ」

「価格の下押し」「デフレの元凶」は、
ずっとユニクロやしまむらが、
攻撃された言い回しだ。
いわば常套句。

「人口減が進む中、過度な価格競争は
取引先を含めた消耗戦を招くだけだ」

「過度な価格競争」は、
今やばかばかしいこととして、
産業全体では否定されている。

かつては「1円戦争」などと呼ばれて、
恥ずかしい競争もあった。

しかし今、そんなことをするのは、
マーケットゲリラだけで、
ゲリラはすぐに消えてなくなる。

今、日経が「格安」などと報じる企業企業は、
「コストパフォーマンス」の競争を展開している。

〈価格競争=悪〉
マスコミ全般に、
そんな思い込みがある。

しかしすべての企業は、
正当な価格競争を日々、
繰り返している。

日経の流通担当の記者や論者たちには、
そんな思い込みがないと信じたい。

さらに「人口減」が進めば、
消費者は高い商品を、
買わされなければならないのか。

「多くの雇用を抱える小売業でも
賃上げは欠かせない」

イオンは今年もすでに、
7%の賃上げを発表している。
グループ企業もそれに倣っている。

「統合後は規模の利益を生かした
デジタル化などで経営効率を高め、
高付加価値の品ぞろえやサービスの提供を
より重視すべきだ」

これは経営戦略への介入だ。
余計なお節介だ。

たとえばアメリカのチェーンストア。
ウォルマートやターゲット、
コストコやクローガー、
CVSヘルスやウォルグリーンブーツアライアンス。
彼らは価格戦略を採用しているが、
それが「価格の下押し」などと、
揶揄されることはない。

それぞれの企業が自分のカスタマーに対して、
必死の思いで商品やサービスを提供している。

それぞれでいいし、
それぞれがいい。

トップ企業となる新生ツルハホールディングスは、
マーケットリーダーである。

そしてマーケットリーダーは、
すべからく全方位作戦をとる。
だから価格志向とサービス志向を、
両利きの経営で実現しようとする。

心配することはない。
この経営統合によって、
マーケットリーダーらしい戦略が生まれる。

コモディティ商品は価格志向、
ノンコモディティ商品はライフスタイル志向。

トレードオフを排除して、
トレードオンを追究する。

最後の一言は、
「流通業の変革につながることを期待したい」

日経で小売業を取り上げてくれることは、
本当にありがたい。

しかし社説だからこそ、
専門性を担保しつつ、
正当なロジックを伝えてほしいと思う。

ありがとう。
お願いします。

〈結城義晴〉

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