B.スプリングスティーンの「Streets of Minneapolis」に拍手

2月に入った。
ブルース・スプリングスティーン。
Bruce Springsteen。
ロック界の重鎮。
1975年のサードアルバム「明日への暴走」
「Born to Run」

私はまだ大学生だった。
このジャケットも本当に懐かしい。
このアルバムの主題曲「の最後のフレーズ。
Oh honey, tramps like us
Baby, we were born to run
Come on with me, tramps like us
Baby, we were born to run
おー、ハニー、俺達みたいな流れ者は
ベイビー、突っ走るために生まれてきたんだ
さあ一緒に行こう、俺達みたいな流れ者は
ベイビー、突っ走るために生まれてきたんだ
実に面白いことに、
スプリングスティーンは「流れ者」のことを、
「tramps」という言葉を使って表現した。
スプリングスティーンは、
アメリカで6400万枚、
全世界で1億3500万枚以上の、
レコードセールスを記録。
2016年には、米国の「大統領自由勲章」を受章。
1992年にはサム・ウォルトンが、
それからピーター・ドラッカーも、
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズも、
受賞している。
ミュージシャンとしてはボブ・ディランも。
そのブルース・スプリングスティーンが、
新しいプロテストソングをリリースした。
「Streets of Minneapolis」

ドナルド・トランプと、
米国移民・税関捜査局(ICE)を非難している。
ミュージックビデオは、
ギターを弾き、ブルースハープを吹いて、
いつものがなり声で歌う。
スプリングスティーンはリリースの日に、
声明を出した。
「この曲は土曜日に書き、
昨日レコーディングし、
ミネアポリスの街で行われている
国家による暴力的な弾圧への抗議として、
今日、みなさんに届けました」
「ミネアポリスの人々、
罪なき移民の隣人たちに捧げるとともに、
(射殺された)アレックス・プレッティと、
レニー・グッドへの追悼の意を込めている」
「自由であれ」
米国ミネソタ州の首都ミネアポリスは、
極寒の都市だ。
ターゲットの本社がある。
この街で1月24日、米移民当局の職員が、
37歳のアメリカ人男性を射殺した。
死亡したのは看護師のアレックス・プレティさん。
ビデオを見たが衝撃的な光景だ。
ミネアポリスの街頭には、
凍えるような寒さの中で、
数百人の人々が繰り出して抗議した。
1月7日には同じミネアポリスで、
ICE職員が米国籍の37歳の女性を射殺した。
車の運転席に座るレネー・グッドさんに、
ICE職員が発砲した。
J・ヴァンス、この国の副大統領。
当該職員は正当防衛のために行動したと発言した。
一方、地元当局は反論した。
グッドさんはICEに危害を与えようとはしなかった。
「Streets of Minneapolis」
冬の氷と寒さを越えて
ニコレット・アヴェニューを下る
炎に包まれたこの街は
火と氷を相手に闘っていた
占領者のブーツの下で
キング・トランプの私設軍
DHS(国土安全保障省)の名を掲げ
腰に銃を下げたまま
法を執行するために来たという
――少なくともそれが奴らの言い分さ

煙とゴム弾の中
夜明け前の薄明かりで
市民たちは正義のために立ち
その声は夜を貫いて響いた
だがそこには血の足跡
慈悲が立つはずの場所に
雪に覆われた通りに
二人の死が残された
アレックス・プレッティ
レネー・グッド

ああ ミネアポリス
おまえの声が聞こえる
血の霧を越えて
歌い続ける声が
この大地のために
そして
この街に生きる異邦人のために
立ちあがろう
ここは俺たちの家
それでも奴らは殺し
歩き回った
’26年の冬
俺たちは忘れない
名を奪われた者たちを
ミネアポリスの
ストリートで
トランプの連邦の
ならず者たちが
顔を殴り
胸を打ち
そして銃声が響いた
アレックス・プレッティは
雪の上に倒れ
息絶えた
奴らは言う
「正当防衛だ」と
だが目を信じるなと
それでも残るのは
俺たちの血と骨
笛の音と掲げられた電話
ミラーとノームの
汚れた嘘に抗して

ああ ミネアポリス
おまえの声が聞こえる
血の霧の中で
泣き叫ぶ声が
俺たちは忘れない
名を奪われた者たちを
ミネアポリスの
ストリートで
奴らは言う
法を守るために来たのだと
だが踏みにじられるのは
俺たちの権利
肌の色が黒でも
茶色でも
その場で問い詰められ
追い出される
「ICEは出て行け」
その叫びの中で
この街の心と魂は
まだ生きている
割れたガラス
血の涙の向こう側
ミネアポリスの
ストリートで

ああ ミネアポリス
おまえの声が聞こえる
血の霧を越えて
歌い続ける声が
ここは俺たちの家
それでも奴らは殺し
歩き回った
’26年の冬
この大地のために
この街に生きる異邦人のために
立ち上がろう
俺たちは忘れない
名を奪われた者たちを
ミネアポリスのストリートで
俺たちは忘れない
俺たちは忘れない――。

この歌では使ったフレーズは、
「King Trump’s private army」と、
「Trump’s federal thugs」
51年前の歌詞の流れ者「tramps」は今、
キングの「Trump」に変わった。
しかしスプリングスティーンの精神は変わらない。
良い歳のとり方をした。
そして間違った権力に抗戦する。
心から拍手を贈ろう。
〈結城義晴〉



































