結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2014年05月24日(土曜日)

日経新聞『春秋』の「スーッと出てパーッと消える」に物申す

日経新聞巻頭コラム『春秋』。
今週火曜日に米国ラスベガスから帰って、
翌朝の朝刊を見たら、出てきた。
「スーッと出て、
パッと消えるのが
スーパーだ」。

この5月21日のコラムに関して、
正しておかねばならないことがある。
それをブログで取り上げようと思っていたが、
毎日、動き回ってできなかった。

「1960年代、
誕生したばかりの
スーパーマーケットは、
そう揶揄された」

スーッと出て、
パーッと消える。

しかし、それはまったく反対だ。

スーッと出てきて、
バンバン店をつくり、
ドンドン儲かっていた。

林周二先生の著書『流通革命』は、
1967年発刊。

流通革命は、
「スーパー」によって、
成し遂げられるかに見えた。

その通りの勢いで1972年(昭和47年)、
「スーパー」代表選手ダイエーが、
それまでの王者「百貨店」の三越から、
小売業売上高日本一の座を奪う。

セルフサービスの小売業をみると、
「スーパー」と呼んでしまうのが、
日経をはじめとするメディアの傾向。

「スーパー」に対して、
ちょっと襟を正して表現すると、
「スーパーマーケット」となる。

しかし、襟を正してしまうと、
異なる業態を意味する。
後者は専門的には、
「食品スーパーマーケット」で、
百貨店を追い越した前者は、
「総合スーパー」である。

一般紙の巻頭コラムに、
それを求めるのは酷だろうけれど、
まず第一にこの点を指摘しておこう。

コラムは次に「小売りの輪」説を紐解く。
ハーバード大学M・Pマクネア教授の仮説。

「勢いのある小売業は安さを武器に、
旧来の企業からシェアを奪う」

これがマクネア指摘の第一段階。

「その地位もまた、さらに
新しいやり方で安売りする
新興勢に奪われる」。

実はこれは、第三段階。

第二段階があって、
ここでは第一段階の小売業態が、
中価格化・中級化・中コスト化へ進み、
やがて高価格化・高級化・高コスト化へ、
移行する。

そこに第三段階の新しい業態が登場し、
旧業態を駆逐していく。

「百貨店からスーパーへの交代は
学説通りだ」

マクネア教授が観察したのは、
1957年までの米国小売業。

そこでは王者デパートメントストアを、
日本で言うGMSが圧倒していった。

シアーズ・ローバック、JCペニー、
そしてモンゴメリー・ワード。

しかしこのゼネラルマーチャンダイズストアの概念は、
現在の米国産業分類では、
ディスカウント・デパートメントストア。
「安売り百貨店」と訳すことができる。

実際に、普通の百貨店群が、
安売り百貨店に、
勢力を奪われていった。

しかしこの新興勢力は、
「セルフサービス」システムではない。
「セルフセレクション」と呼ばれる、
大きな売場の中央に、
アイランド型に勘定場が設けられた方式。

安売り百貨店には、
食品売り場もない。

これはほとんどの普通の百貨店と同じ。

この安売り百貨店も、
1962年に誕生したディスカウントストアに、
駆逐されていく。

原始的ディスカウントストアはコルベット。
やがて近代的なKマートが大成功を収める。
そしてウォルマートとターゲットが追随する。

ターゲットは百貨店デイトン・ハドソンが、
新しい業態に挑んだものだ。

Kマートとウォルマートは、
ワンコインストアのバラエティストアからの
業態転換。

そしてこれらは、
完全なセルフサービス方式を採用する。

そして「小売の輪」仮説は、
このKマート現象が起こる前に、
提起されている。

「小売りの輪」の「仮説」なのだから、
時代を経て、その説の通りになっているとすれば、
仮説が検証されつつあるということになる。

マクネア教授は、
言いたかったに違いない。
「輪のようにぐるりと回って、
元に戻る」

従って、その部分は、
当たらずとも遠からず。

私ははじめの業態が、
「中コスト」体質に変容するところに、
ポイントがあると考えている。
それが止まらず、
やがて「高コスト」体質となる。

コスト体質とは、
贅肉のようなものだ。

だから中コスト体質は、
中価格にならざるを得ず、
高コスト体質は、
高価格・高級化に陥る。

中コストを隠すために、
中価格であることに理屈をつける。

高コストに目を向けたくないために、
高価格のマーケティング論を展開する。

コストは収益性の裏返し。

だから「小売の輪仮説」の第一段階は、
高収益の業態の登場。
第二段階がそれが中収益性、
低収益性へと移ろっていき、
第三段階で低収益になったところに
高収益の業態が参入する。

だとすると当然ながら、
高価格品を扱うが、
低コストの高収益の店が、
あってよい。

その典型が現代のコストコだ。
例えば、トイレットペーパーも売場にあるが、
4999ドルの宝石も売っている。
1ドル100換算すると499万9000円也。

ドンペリのシャンパンも販売しているし、
牛肉はチョイスが通常グレードで、
プライムも扱う。

ちなみにウォルマーの経費率は、
18%台まで上がってきた。

かつては15%だった。

「小売りの輪」仮説の本質は、
業態の進化と
コスト体質・経費構造との関係性に、
視点を当てたところにある。

私はそう考える。

この後、コラムは、結論づける。
「日本育ちの伏兵が
米学者の説をひっくり返した」。

それが、
「必ずしも安くはない
コンビニエンスストア」。

このあたりの描き方は、
セブン-イレブンに対する「ヨイショ」。

なぜならコンビニのフランチャイズシステムは、
圧倒的な高収益の仕組みだからだ。
つまりは相対的本部低経費の組織である。

そして「コンビニに押されたスーパー業界で
経営統合や買収が相次ぐ」とつなぐ。

イオン首都圏スーパーマーケット連合。
アークスの躍進。
セブン&アイ・ホールディングスも。
これらは「スーパーマーケット」の統合。

H2Oリテイリングのイズミヤ買収は、
「スーパー」のM&Aだけれど。

「規模拡大を安売りに生かすだけでは、
消費者は呼び戻せまい」

どうやらコラムが主張したいことのひとつは、
このあたりのようだ。
識者がする、よくある発想。

しかし規模のメリットを活かし、
それを価格に反映させることは、
本当に難しい。

実務をやっていればそれはよくわかるはず。

だから規模拡大の行為はまず、
優越的地位の濫用ではなく、
相対的コスト低減システムの再構築によって、
圧倒的に価格に反映されねばならない。

米国トップのウォルマートも、
英国1位のテスコも、
それを実現させている。

そしてそれが顧客の支持を得ている。

コラムは、これまた、
よくある発想を持ち出す。
「例えば身近に食料品店がなく
困っている高齢者は
600万人以上と試算されている。
コンビニの不得手な新鮮な野菜や魚を、
足腰の弱い人たちにどう届けるか」

「挑戦のしがいがある課題ではないか」。

都市圏小型店展開を意図しているし、
ネットスーパーを意味しているのだろう。

テスコは4つのフォーマットの中で、
テスコエクスプレスを開発し、
これはコラムが言うコンビニとは異なる小型店だ。

そして4つのマルチ・フォーマットの網のなかで、
テスコドットコムやテスコダイレクトを展開する。

ウォルマートも同様に、
マルチ・フォーマットと、
ウォルマート・エクスプレスと、
Eコマースを結びつける。

いわゆるO2O。
オンライン・ツー・オフライン。

テスコにはこれらを総合的に展開し、
経費を下げていくシステムがある。
このあたりは月刊『商人舎』5月号で、
丁寧に特集した。
「TESCO顧客伝説」

昨年11月号では、
「ポスト・モダニズムVC」で、
ボランタリーチェーンの視点で、
同じことを特集した。

とすると、最後のところだけは、
『春秋』と同じような趣旨を、
展開していることになるが、
世間でよく言われている認識を、
実務に落とし込むのは、
本当に大変なことだし、
そのためには、
大新聞のコラムだからと言って、
間違った歴史的事実や言説を、
盲目的に信じてはいけない。

〈結城義晴〉

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