結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2023年12月28日(木曜日)

「井上ひさしの作文教室」の「いきなり核心から入る」

冬季休業に入ったとはいえ、
オフィスに出てきている。

単行本の執筆だ。

そしてゴミ出しなどした。

ひとりで珈琲を淹れて、
ゆっくりと味わう。

これが年末の楽しみのひとつだ。

今年は懸案の問題を、
いくつも解決した。

その意味ですっきりした気分だ。

もちろんやり残したことは多い。
それが来年の課題となる。

『井上ひさしの作文教室』
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自宅の机のわきに、
いつも置いている。

文章の書き方は、
店のつくり方と同じだ。

痛切に感じる。

第一に、
「『いきなり核心から入る』ことが大事なんです」
これは本当に正しい。

「昨日、亭主を殴った」というふうに、
どうして殴ったかなんていうことは書かずに、
いきなり核心に入っていく。

「私はどうも亭主を殴る癖がある」
と、ポンとはじめる。

これです。

店をつくるときには、
「一丁目一番地」に、
いきなり核心の商品を並べる。

ウィンコフーズのウォール・オブ・バリュー。
両サイドに高々としたラックがそびえる。
そこにエンドの羅列のように、
飛び切りの特売品目がずらりと並ぶ。
??????????

「いきなり核心」だ。

それが店のポジショニングに貢献する。

井上。
「『雪国』の最初のところを
思い起こしながら、
書き出しを考えると、
なかなかいいと思いますよ」

「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」
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お店もこれでなければいけない。

第二に、
「優れた文章書きは、
なるべく小さく千切ったものを、
相手に次々に提供していく」

夏目漱石の『草枕』の書き出し。

「山路を登りながら、かう考へた。
知に働けば角が立つ。
情に掉させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。」
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目玉商品をひとまとまりにして、
目玉価格で次々に提供していく。

夏目漱石になった気分で、
店をつくり、売場をつくる。

第三に、
「誠実さ」「明晰さ」「わかりやすさ」
――これが文章では大事なことです。

鶴見俊輔の言葉を井上ひさしは覚えている。

「誠実さ」というのは、
「人の言葉でなくて自分の言葉で」
ということになるでしょう――。

「明晰さ」とは、
「自分のものの考え方の展開とか、
自分がいま、何をやろうとしているかを、
しっかり知っている、
という意味の明晰さです」

自分の言葉で、
自分のものの考え方で。

これもポジショニングです。

文章を書くことも、
店や売場をつくることも、
ポジショニングなのです。

井上ひさしさんの言う通り。

店づくりも売場づくりも、
三つのこと。

誠実さ・明晰さ・わかりやすさ。

川端康成、夏目漱石。

彼らに店をつくらせてみたい。

あなたの年末商戦の売場は、
どうなっているだろう。

〈結城義晴〉

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