結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年08月16日(土曜日)

セブン&アイ伊藤順朗Interviewの「破壊的Innovation」

盆の明け。

夏の甲子園高校野球は真っ盛り。
連日、いい試合が展開されている。

日経新聞電子版に、
伊藤順朗さんが登場。
今、セブン&アイ・ホールディングス会長。
もちろん故伊藤雅俊さんのご次男。
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日経の単独インタビュー。

カナダのアリマンタション・クシュタールから、
ずっとM&Aを迫られていた。

そのACTが撤退を表明した。

そのATCに対してずばり、
「正直言って誠実な会社とは
思っていない」

はっきり言った。
いいと思う。

その声をセブン&アイの全従業員が聞いている。
金融関係も取引先も注目している。

「M&Aで規模を追求してきた会社」と評価し、
理由も語った。

「買収した多くの店舗が、
そのままの形で運営されている」

その通りだ。

「仮に同社がセブン&アイを買収したとしても、
店舗を成長させられなかった」

セブン-イレブン・インクのほうが、
店舗の革新性においても勝っている。

ACTは1980年にカナダ東側のケベック州で、
コンビニの「クシュタール」(Couche-Tard)として開業。

ケベック州はフランス語圏で、
Couche-Tardは「夜更かし」といった意味だ。

その後、アメリカのコンビニチェーンを買収し、
2003年にはサークルKを傘下に入れた。
サークルKは当時、全米3位だった。

ACTは現在、アメリカで第2位のコンビニチェーン。

伊藤さんが指摘するように、
コンビニ業態として目立ったイノベーションはない。

私もACTに買収されなくてよかったと思う。
なにしろセブン-イレブン・インクは、
全米トップのコンビニチェーンである。

しかし日本のセブン-イレブン・ジャパンは、
成長が鈍化している。

伊藤さん。
「ACTは今は手をおろしたが、
業績が上がらなかったらまたやってくる」

そのうえで、
「市場の変化に対応できないと生き残れない。
チャレンジ精神と失敗から学ぶ姿勢を取り戻す」

その通りだ。

「基本の徹底と変化への対応」が、
イトーヨーカ堂時代からずっと、
セブン&アイの在り方だ。

セブン-イレブン・インクは、
米国市場での新規株式公開を計画している。

伊藤さん。
「企業価値をしっかりとつけ、
一部株式の売却で得られる資金を
株主還元や新規投資に充てていく。
その意味で上場は必要だ」

上場後もセブン&アイが「過半の出資を維持する」

その意味で米国セブン-イレブン・インクは、
セブン&アイ存続のための企業と位置づけられている。

一方、24年10月に社名を変更すると発表した。
「セブン-イレブン・コーポレーション」

日米と世界のセブン-イレブンだけの会社。

伊藤さんは語る。
「私から社名変更の検討をやめようと言った」

ACTによる買収提案への対応を優先するため。
社名変更はそれに伴ってコストもかかる。

社名変更は引き続き検討しているようだが、
「優先順位は低い」

ヨーク・ホールディングスは、
イトーヨーカ堂、ヨークベニマルなど、
約30社で構成される。

9月に米国のベインキャピタルに売却される。

セブン銀行も非連結化されているから、
セブン&アイは9月からコンビニ事業に集中する。
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順朗さんは1990年に最初に入った会社が、
セブン-イレブン・ジャパンだった。

だから順朗さん自身は本業に専念することになる。
それはとてもいいことだろう。

ヨーク・ホールディングスには、
順朗さんが一部出資している。

コンビニ展開で世界を目指すセブン&アイ。
傘下にセブン-イレブン・ジャパンと、
やがて米国上場するセブン-イレブン・インクがある。

ヨーク・ホールディングスは、
他の資本のもとで再出発する。

まあ、そんなことがはっきりしたインタビューだ。

私はヨーク・ホールディングスの中の、
イトーヨーカ堂の再生は困難を極めると思う。

ヨークベニマルは順調だ。

ただしそれらは新しいオーナーのもとでの仕事となる。

問題は競争的飽和状態を迎えている、
日本のコンビニをどうするか。

鈴木敏文さんは「飽和はない」と言い切った。
この考え方を基本として、
未知なる独自の世界を切り拓いていくか。

いや、コンビニ業態の「鼎占」の中で、
どう、トップチェーンの地位を維持していくか。

今のところ後者の考え方のようだが、
それでいいのか。

世界のどんな業態でも、
歴史的に鼎占状態は長く続く。

そのあとに「複占」が訪れる。
複占は意外に長くは続かない。

日本のコンビニのその鼎占を維持していくにも、
持続的イノベーションが求められる。

鈴木流の破壊的イノベーションにも、
挑戦してもらいたいとも思う。

クレイトン・クリステンセンは教えた。
「偉大な企業は、
すべてを正しく行うが故に失敗する」
Innovationジレンマ

「イノベーションのジレンマ」とは、
業界のトップ企業が、
技術や市場構造の破壊的変化に直面した際に、
市場のリーダーシップを失ってしまう事象だ。

セブン&アイは鈴木敏文氏の辞任によって、
その優位性を失ったと思われているが、
もしかしたらこの会社は、
破壊的変化に直面していたのかもしれない。

いや、直面していたのだ。

だからこそ持続的イノベーションとともに、
今、破壊的イノベーションが必須だと思う。

やっとそれに対応する状況が生まれた。

伊藤順朗さんのインタビューが、
そのきっかけになるといいのだが。

〈結城義晴〉

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