東急ストア店長の「2週間連続休暇義務づけ」の狙いと本当の効用
Everybody! Good Monday!
[vol23]
2011年第23週、6月第2週。
梅雨の合間のすがすがしい朝。
今日は朝から横浜の商人舎オフィス。
商人舎に来て、夜、立教の講義で終わるのが、
月曜日の日課となりつつある。
出社するとき、偶然、
横浜市西区楠木町の「島田畳店」の店頭看板を見て、
懐かしさがこみ上げてきた。
宮谷小学校の同級生が、
その島田畳店の息子だった。
その店がまだ存在する。
きっとあのくりくり坊主だった島田君が、
店主をやっているんだろう。
中に入って挨拶しようかとも思ったが、やめた。
島田畳店が存続し、継続していることだけに満足して、
今日のいい日が始まった。
日本の政局は、
菅直人首相の退陣が決まって、
後継者選びが喧しい。
さらに昨日のテレビ討論会で、
「大連立」 構想が出たものだから、
それに向かっても盛んに論議が交わされ、
マスコミに政治家のコメントなどが躍る。
政治も、考えてみると、
社会のインフラそのもので、
何事も起らず機能しているうちがいい。
何か起こって、騒ぎになると、
それはそれで面白いが、
政治自体は機能していないことになる。
インフラとは「正常で当たり前の機能」である。
なんだかんだ騒がずに、
さっさと仕事しろ。
そう言いたくなるのが、
東日本大震災後の復興を目指す現在の心持ち。
日経新聞『働く』のコーナーで、
東急ストアが取り上げられている。
「店長に連続2週間休暇義務づけ」のタイトル。
昨年5月、同社は、
「全店長を対象に連続2週間の休暇取得を義務付け」した。
「休暇の義務付け」というのも変な感じだが、
1週間の有給休暇に、
1週間のリフレッシュ期間を組み合わせて、
2週間にする。
これを2012年2月期中に、
「全店長に取得させる試み」。
この記事は新しい制度導入後1年の成果を探る。
東急ストア綾瀬店店長の小川知美氏(52歳)は、
「昨年5月末から6月にかけて同社の新休暇制度を利用」。
小川氏は正直に語る。
「30年以上勤めているが、2週間もの休暇は初めて。
取得する前は、何をしていいかわからなかった」
1週間の「リフレッシュ期間」は、
労務上の休暇扱いにはならない。
ただし出勤することはなく、
「店舗周辺の食文化や地域住民の生活実態の自由研究」に、
充てられるという。
この自由研究の結果は、
リポートなどにまとめられ、
木下雄治社長に提出される。
店長の有給休暇は年間20日間。
「半期に最低1日の取得を義務付けている」そうだが、
現実的に「長期休暇を取得する店長」は少なかった。
マクドナルド店長裁判の例もあるが、
フードサービス業も小売業も、
店長の有給休暇消化率は際立って低い。
そこでこの新制度が導入されたが、
狙いとする「幅広い視野を持つ人材育成」は、
果たされるのか。
私自身、㈱商業界時代、
2週間以上の連続休暇を2回、
とったことがある。
最初は29歳の時、
冬期休暇に絡めて、
2週間のソビエト連邦への旅行をした。
二度目は、編集長に就任する半年前の35歳の頃、
夏休みに2週間休暇をとって、リフレッシュした。
どちらも冬期休暇、夏季休暇と有給休暇を絡めて、
自分で長期休暇とした。
その時には全く仕事はしなかった。
自分の意志だったからかもしれない。
しかしそれが本当のリフレッシュになるとは思う。。
休暇の後は馬車馬のごとく働いた。
それが現在まで続いている。
取締役になる前だったと思うが、
会社に提案して、「リフレッシュ休暇」の制度を導入した。
10年間勤務したら5日間のリフレッシュ休暇、
20年ならば7日間だっただろうか。
私自身は、まことにタイミングが悪く、
10年段階ではこの制度がなかったし、
20年目のリフレッシュ休暇の資格が与えられる寸前に、
取締役に就任してそれを取得することはなかった。
しかし振り返ると、
あの長期休暇は自分にとって、
本当によかったのだと思う。
東急ストアのこの新制度、
高く評価したいが、
会社や店に出ないだけで、
社外で自由研修するのが、
本当にリフレッシュになるのか。
そしてそれが本当に、
「広い視野を持つ人材育成」につながるのか。
外国に行ったり、
自然に触れたり、
家族と楽しんだり、
趣味や芸術と親しんだり、
読書や音楽鑑賞に時間を費やしたり、
「仕事」がらみから脱する時間こそが、
「人間としての幅」を形成することに、
役立つのではないか。
私にはそう思えるのだが、
いかがだろう。
しかしそれでも現在の業界をかんがみると、
東急ストアの「2週間連続休暇取得制度」そのものは、
高く高く評価したい。
梅雨が終われば真夏。
今年の夏休みの過ごし方、
はては人生の楽しみ方など考えつつ、
仕事に邁進したい。
ちなみにピーター・ドラッカー先生は、
その「時間管理」の方法論のなかで、
「時間をまとめる」効用を強く説いている。
長期休暇は自分にとって、
「時間をまとめる」作業であることは確かだ。
ドラッカー先生は時間をまとめておいて、
ひたすら勉強したのだが。
さて、『店長のためのやさしい《ドラッカー講座》』
今日また、書店を通して800部の一括注文がきた。
本当にありがたいことだ。
印税を東日本大震災の義捐金にすることに、
共感をいただいたからだろうか。
もう3刷になりそうだ。
その《ドラッカー講座》は、
膨大なドラッカーの体系の中から、
小売業・サービス業の店長に絞って構成した。
上田惇生先生が、
ドラッカーの名言を整理する仕事をされているが、
7000にもなるそうだ。
私は、そこから店長に役立つものを順に集めた。
そして柱を立てた。
第1章が「お客」に関すること。
ドラッカーは「企業の目的は顧客の創造である」という。
ならばその「顧客」とはななにか、
どうしたら「創造」できるのか。
第2章は「お店」に関すること。
ドラッカーは「お店」についてはコメントしていないので、
ここは「事業」に関することによって、
「お店」とはなにかを明らかにした。
第3章は「店長のマネジメント」。
これも店長に限った「マネジメント」を書いてはいない。
だから「ミドルマネジメント」の「マネジメント」とは何かを、
ドラッカーの考え方から導き出した。
第4章は「組織」に関すること。
店長はいかに組織を運営し、
一つの方向に持っていくか。
その組織についての考え方を記した。
組織に関して、ドラッカーの考えは、
日本のチェーンストア理論や古典的マネジメント理論とは異なる。
これは重大な問題なのだが、
それをわかりやすく表現した。
そして第5章は「マーケティングとイノベーション」。
ドラッカーは企業の目的を果たすために必要なことは、
二つしかないとさえ言いきっている。
それがマーケティングとイノベーションである。
その「さわり」の部分を店長のために、まとめた。
そして最後の第6章は、「店長の条件」。
これは故川崎進一先生の考え方に私の考察を加えたもの。
エピローグは故倉本長治の『商売十訓』と、
ドラッカー思想の共通点をまとめた。
わかりやすく、やさしく。
これを、いつも念頭に置いて、解説を加えた。
ドラッカーの真髄を、
読者諸氏が極めることの一助になれば幸いである。
この本を読むのに、
2週間はまったく必要ない。
早い人なら2時間。
ゆっくり読んでも2日。
この梅雨が終われば真夏。
今年の自分の夏休みの過ごし方、
お客様の夏の過ごし方など、
いろいろ考えつつ、
今週も仕事に邁進したい。
今月の商人舎標語。
「顧客からのスタート」
もちろんドラッカー先生の考え方。
お忘れなく。
では、Everybody! Good Monday!
<結城義晴>