ダラス2日目の百貨店SCの悲惨さと有力企業のポジショニング

日本では七夕。
アメリカでは独立記念日の3日後。
海外旅行をすると、
現地に到着した当日は辛い。
睡眠不足は確実にあるし、
慣れない国での緊張感もある。
しかし初日の夜にしっかり寝ると、
翌朝は最高の気分で迎えられる。
その最高の気分のときに、
第1回目の講義をする。
みんな元気で覚醒している。
講義にも熱が入る。
昨日のクローガーの副店長リサさんの話。
3人の店長の役割がぴたりと、
マネジメントの体系に符合していた。
それを丁寧に解説してから、
ダラスフォートワースの競争、
ウォルマート、クローガー、
そしてHEBやアルディの戦略を、
これも丁寧に語った。
脱線の多い講義だったが、
あっという間に2時間が過ぎた。
講義を終えると、
すぐにリムジンバスで、
ストーンブライアセンターへ。
Stone BriarCenter。
スーパーリージョナルショッピングセンター。
掲示板にレイアウトがある。
6つの核店がある巨大商業集積。
しかしそのうちの、
シアーズは撤退した。
残るのがレイアウトの上から、
メイシーズ、JCペニー、ディックス。
ノードストローム、ディラード。
写真右下の空白のところに、
シアーズが入っていた。
写真のように入口は閉ざされて、
イラストが張り付けてある。
そのシアーズと同業のJCペニー。
2年連続赤字決算。
前期は2億2500万ドル(225億円)の赤字。
盛大にセールするも、
顧客はそれに反応しない。
シアーズもJCペニーも、
GMSではあるが、その前に、
ディスカウントデパートメントストアだ。
それらは壊滅的な業態となった。
地方百貨店のディラード。
今日は土曜日の午前中だが、
こちらも顧客はいない。
そして米国最大の百貨店、
メイシーズ。
ステージ陳列が乱れる。
これも。
こちらも。
メイシーズよ、どうした。
唯一、体裁を繕っているのは、
ノードストローム。
マネキンはかわいい。
ちょっと太めのマネキンも登場。
売場に在庫が少なくて、
見せる空間となっている。
そして出入り口では、
ビーフジャーキーのプロモーション。
1階入り口にはカフェがあって、
飲食トレンドを取り入れる。
そんなことをする百貨店は、
ほかにない。
リージョナルショッピングセンターは、
百貨店が核店舗の商業集積なのだ。
そして時代が変わって、
専門大店が核になってきた。
ディックススポーティンググッズ。
この空間は百貨店とは異次元だ。
そしてスポーツと言いながら、
主力に販売するのはアパレルや服飾。
もちろん専門性の高いスポーツグッズもある。
イオン下妻店店長の小林弘二さんは、
アメフトをやっていた。
そこでタックル。
受けてくれるのは、
イオン羽生店店長の大窪弘樹さん。
楽しんだ。
こういった楽しみ方が、
ディックスにはある。
残念ながら百貨店にはない。
シアーズはその楽しみが、
まったくなくなった店だった。
だから退場した。
JCペニーもこのままでは、危うい。
代わりにキッザニアがやってくる。
そしてフードコートは人気があるし、
専門店もそれなりに自分の顧客を持っている。
百貨店を核とした商業集積で、
その百貨店が弱体化している。
ランチは、
インナウトバーガー。
もう340店になった。
メニューは3つに絞られているが、
美味しくて手ごろな価格で、
例外なく大繁盛。
私はいつもの裏メニュー。
プロテインバーガー。
そのインナウトバーガーの入るSCに、
ベッド・バス&ビヨンド。
商人舎流通SuperNews。
ベッド・バス&ビヨンドnews|
2018通期決算は137億円の赤字/CEO退任
あのベッド・バスが137億円の赤字。
そういえば店頭に、
目立った変化がない。
変らないもの、
変らないこと。
それは下りのエスカレーターに、
黙って乗っているのと同じ。
オールドネイビー。
ギャップのロープライスフォーマット。
一丁目一番地はいつも、
マネキンで表現する。
オールドネイビーも、
ピックアップ・ヒアーのサービス。
隣のトレーダー・ジョー。
プラノ地区のイラストの下に、
花売場。
3.99ドル、5.99ドル、9.99ドル。
そして青果部門から精肉部門へ。
レジ前には大量陳列のエンドがずらりと並ぶ。
フィアレスフライヤーのエンド。
フィアレスフライヤーは同社の広告ツール。
レジはいつも満開に近い。
トレーダー・ジョーはもちろん、
宅配やネット販売はしない。
店にやってきてくれる顧客だけを相手にする。
HEBのアップスケールタイプ。
セントラルマーケット。
入り口を入ると、
アイス・オブ・ウォール。
氷の壁。
売場はワンウェイコントロールで、
迷路のようにくねくねと曲がっている。
トマト畑のような平台。
そして圧巻のリンゴ売場。
柑橘類の背景の壁面のイラストが素晴らしい。
バナナは左3分の1がオーガニック。
右3分の2は熟度順。
シーフード売場と精肉売場が、
向かい合って配置されている。
リカーショップも圧巻の品揃え。
ソムリエが在中して、
相談に乗ってくれる。
福永千尋イオンみぶ店店長(中)と、
鶴井陸太郎イオンスタイル京都桂川店長。
グロサリーは、
比較的絞り込まれているが、
世界中から集められた良い商品が、
ずらりと並ぶ。
バルク売場、乳製品売場、
チーズ売場、ベーカリーと続いて、
デリカテッセンが終点。
スープバーやセルフデリ。
グロサラントの代表的な店舗だ。
だからイートインコーナーもある。
最後にカーブサイドは、
インターネットで注文を受け、
商品をピックアップして、
それをドライブスルーで提供する。
HEBのセントラルマーケットは、
広域商圏型単独繁盛店。
アップグレードタイプの店だが、
商品部は独立していて、
HEBと兼務していない。
これが重要なところだ。
その後、
スプラウツファーマーズマーケット。
隣にTJXのホームグッズがある。
スプラウツは現在、
米国のスーパーマーケットで、
最も成長している企業だ。
入り口を入るとベーカリーとデリカテッセン。
デリカテッセンから、
ミートとシーフード売場。
一番奥にデンと広大な青果部門。
壁面の多段ケースには、
葉物などがボリューム陳列される。
青果部門のレジ側は、
ずっとバルク売場。
農産とバルクが中央を走り、
両サイドにその他の部門が、
小さく配置される。
つまりは大きな八百屋である。
隣のホームグッズは、
ハードラインのオフプライスストア。
百貨店や専門店の売れ残り品を、
1カ所に集めて雑然と売る。
ブランド物が安く手に入る。
その隣はドレスバーン。
ディスカウントアパレル。
このショッピングセンターが全体に、
パワーセンターとなっている。
それからもう一度、
昨日に続いてクローガー。
そのフレッシュフェア。
やや小型の生鮮重視のスーパーマーケット。
入口にはスキャン・バッグ・ゴー。
このハンディターミナルをもって、
顧客は購買商品をスキャンしながら、
売場を回る。
最後にクレジット決済などすれば、
チェックスタンド時間は短縮される。
小さくて古い店なので、
青果部門はコンパクトに構成されている。
シーフードは対面販売。
精肉はクローガーの強みを発揮。
特にヘリテージのブランドは、
驚くほどの安さだ。
クローガーの異なるフォーマットを、
二つ視察してある程度満足。
時間をつくって最後に、
予定外の視察。
結城義晴、得意のパターン。
ネブラスカファーニチャーマート。
まさしく世界最大の家具店。
2015年5月7日オープン。
敷地面積11万坪で総工費4億ドル。
2層の店舗は56万平方フィート、
5万2000㎡、1万5758坪。
サッカー場9つ分に相当する。
駐車場は4800台。
店舗裏に併殺された倉庫は、
130万平方フィートで、
サッカー場22面相当。
50万点の商品を保管している。
1階が白物家電や家電製品、
キッチン用品、家具、フローリング、
2階は寝室やリビング、ダイニングと、
高級ショールーム。
従業員数は2000人。
アマゾンをはじめ、
ベストバイ、ホームデポなど、
18社の競合店の価格調査を行って、
電子タグで最安値に変更する。
客数は年間1000万人を見込んで、
年商は10億ドルを目指すという。
100円換算で1000億円。
それが納得できる店だ。
ほんのちょっとだけの視察だったが、
朝訪れたスーパーリージョナルSCに、
顧客が集まらなくなった理由がわかる。
アマゾンやウォルマートに、
取られているだけではない。
こういったイノベーティブな店に、
顧客の足が向いて、
旧態依然とした百貨店は、
見向きもされなくなっているのだ。
以て自戒とすべし。
(つづきます)
〈結城義晴〉