結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
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2019年10月08日(火曜日)

金田正一400勝298敗4490奪三振の「勝者にはなにもやるな」

金田正一が逝った。
日本野球の投手として、
間違いなく史上最高の人。
享年86。
〈BBM LEGEND SERIES3 金田正一〉
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金田の前に金田無く、
金田の後に金田無し。

前人未到の通算400勝、
14年連続20勝以上、
そして通算4490奪三振。

名球会というプロ野球のレジェンドは、
200勝を記録して入会できる。
金田はその2倍の勝利をした。

金田は万年最下位の国鉄スワローズで、
これら数々の最高記録を残した。
今の東京ヤクルトスワローズ。

あの江川卓は通算135勝、
桑田真澄も173勝。
どちらも最強の巨人軍に属して、
そのうえでの記録だ。

金田の凄さがわかる。

今、大谷翔平が登場して、
金田以来の逸材かもしれないが、
金田の貪欲さは持ち合わせていない。

作家で元東京都知事の石原慎太郎。
金田よりも一つ年上で親しい間柄だった。
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日刊スポーツに寄稿している。

金田は国鉄スワローズで大活躍した。
しかし国鉄の解体とともに、
スワローズを去る。
そして1965年、
読売ジャイアンツに移籍。

石原は大反対した。

「なんで今更、一番強いチームに
行かなきゃいけないんだ。
負け続ける国鉄スワローズを
君一人が支えている、
そこに金田正一の男があるんじゃないか」

ヘミングウェイの有名な言葉。
「勝者には何もやるな」

「この言葉こそ君にふさわしい。
それほどの大投手なんだ」

「当時の周囲は、
ジャイアンツファンばかりで、
野球中継が始まると、
みんな仕事どころじゃない。
そこに立ちふさがっていたのが、
孤軍奮闘する金田正一だった」

「鳴り物入りで巨人入りした
黄金ルーキー長嶋を迎え撃った
4打席連続三振」

「周りのジャイアンツファンたちが
“これでいいんだ”と言うんだ。
“これで、長嶋は一流の選手になる”と。
その言葉に、金田正一という男が
いかなる存在であったかが分かる」

「実際、長嶋はその翌年の開幕戦で
金田からホームランを打ち返す」

ドラマチックな話だ。

ジャイアンツに移籍してから5年、
1969年(昭和44年)。
巨人軍は川上哲治監督時代。

リーグ5連覇を決めた翌日、
金田はユニホームを脱いだ。

その直後に、
野球通の詩人サトウハチローが、
金田に詩を贈った。
「つくりあげた大記録
大声でほめたたえても
なおほめたりない大記録」

桑田真澄が不振に陥ったときに嘆いた。
「こんな苦しい野球人生は初めて」

金田正一が一喝。

「俺は400勝しているが、300敗している。
おまえの負けなんてたかが知れている」

それが桑田投手を立ち直らせた。

正しくは298敗。
これが金田の金字塔だ。

将棋の加藤一二三。
元名人、ヒフミン。
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将棋史上唯一無二の記録を持つ。
それが1100敗。

通算成績は1324勝1180敗。

あの大山康晴15世名人は、
1433勝781敗だったから、
加藤一二三の負け数はすごい。

金田はその後、
ロッテオリオンズの監督となった。

私は一度、父と川崎スタジアムに、
応援観戦に行ったことがある。

強い者を倒そうと、
立ち向かう側に身を置いた。
それが金田正一の本質だった。

だからジャイアンツにいた5年間。
金田にはちょっと精彩がなかった。
私はそう感じた。

石原慎太郎と同じ思いだ。

全盛期の心境を書き残している。
「ワシの上にはもう誰もおらんのや…
充実した感慨……
限りない淋しさも感じましたよ」

しかし中日新聞「中日春秋」
「だれも達したことのないような境地に
達したプロ野球史上最高の左腕がいて、
巨人には若きONがいて。
二度と訪れない輝かしい時代を残した」

同感しつつ、ご冥福を祈りたい。

朝日新聞「折々のことば」
昨日の第1603回。

Were all the year
One constant sunshine,
We should have no flowers.
(宮城県のコンビニエンスストアで)

編著者の鷲田清一さん。
コンビニのトイレに入ると、壁に、
100円ショップで売っている、
英文のステッカーが貼ってあった。

「年中、快晴の日ばかりだと
花は咲かない」

調べると17世紀英国の詩人の詩の一節。
ヘンリー・ヴォーンの「Affliction(苦悩)」

鷲田さん。
「湿りや陰りは、
多すぎても少なすぎても
人生をだめにする。
用足しついでにしばし、
こうしたふり返りへと誘う個室、
なかなかに素敵だ」
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良い店だ。

プロ野球界も、
巨人ばかりでは花は咲かない。

日陰のスワローズで輝いた金田正一。

そういえば、
金田監督時代のロッテオリオンズは、
ジプシー球団と呼ばれて、
仙台宮城球場を本拠地にしていた。

東京・大阪ばかりが野球じゃない。

ロッテはいま千葉マリーンズ。
仙台には楽天イーグルスがある。

金田正一や長嶋茂雄・王貞治はいないが、
日本のプロ野球は、結構、
いい方向に来ているのかもしれない。

ローカルやリージョナルが輝き、
機能するところは、
日米欧の流通業と同じだ。

そして「勝者にはなにもやるな」
勝者は負け数も圧倒的に多い。

イオンやセブン&アイ、
そしてファーストリテイリングには、
この言葉が贈られる。

それも金田が残した前例だ。
金田の功績の一つだろう。

合掌。

〈結城義晴〉


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