結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2019年12月22日(日曜日)

冬至の日の「デンデンムシノ カナシミ」

冬至。

地球を中心に見ると、
太陽が1年中で最も南に寄る日。
北半球では昼が最も短くなる。
南半球では夜が最も短くなる。

北半球の人にとって、
冬至の日はなぜか悲しい。
陰鬱な冬の中にあるからか、
残り少なくなった今年を惜しむからか。

一年の悲しみを思い出す。

上田惇生先生が逝った。
堺屋太一さんも亡くなった。
岡崎雅廣さんも急逝した。
ショーケンも死んだ。
中村哲医師も凶弾に倒れた。
多くの人が亡くなった。

世界の紛争は深刻化した。
移民問題も混とん化した。
核軍縮は後退した。
日韓関係はさらに悪化した。

地球温暖化は進んだ。
アマゾンで森林火災が多発した。
日本には大型台風が被害をもたらした。
紅葉が少なかった。
京都アニメーションが放火された。
ノートルダム大聖堂が焼けた。
沖縄・首里城も焼失した。

消費増税関連問題で敗北感を味わった。
産業としての一体感は生まれなかった。

イチローが引退した。
羽生善治が無冠となった。

血糖値が上がって病気になった。
今年も本が書けなかった。
私自身の残りの時間も減った。
別れもあった。
父と母のことを思った。
ジジのことも思い浮かべた。

今年だけのことではない。
悲しいことは少しずつ、
積み重なっていく――。

新美南吉。
児童文学者、童話作家。
大正2年の1913年に生まれ、
太平洋戦争中の1943年に、
29歳で没した。

その新見南吉が悲しみを描いた。

青空文庫のネット上で、
誰でも全文を読める。

カタカナの旧仮名遣い。
面倒そうに見えるかもしれないが、
そのたどたどしさこそ、
この短い文学における、
新見南吉の意図である。
味わってほしい。

デンデンムシノ カナシミ
51WJQ3EXZ8L._SX450_BO1,204,203,200_ 

イツピキノ デンデンムシガ
アリマシタ。
アル ヒ ソノ デンデンムシハ
タイヘンナ コトニ キガ ツキマシタ。
「ワタシハ イママデ
ウツカリシテ ヰタケレド、
ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ
カナシミガ イツパイ
ツマツテ ヰルデハ ナイカ」
コノ カナシミハ
ドウ シタラ ヨイデセウ。

デンデンムシハ
オトモダチノ デンデンムシノ トコロニ
ヤツテ イキマシタ。
「ワタシハ モウ
イキテ ヰラレマセン」
ト ソノ デンデンムシハ
オトモダチニ イヒマシタ。

「ナンデスカ」
ト オトモダチノ デンデンムシハ
キキマシタ。
「ワタシハ ナント イフ
フシアハセナ モノデセウ。
ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ
カナシミガ イツパイ
ツマツテ ヰルノデス」
ト ハジメノ デンデンムシガ
ハナシマシタ。

スルト オトモダチノ デンデンムシハ
イヒマシタ。
「アナタバカリデハ アリマセン。
ワタシノ セナカニモ
カナシミハ イツパイデス。」

ソレヂヤ シカタナイト オモツテ、
ハジメノ デンデンムシハ、
ベツノ オトモダチノ トコロヘ
イキマシタ。

スルト ソノ オトモダチモ
イヒマシタ。
「アナタバカリヂヤ アリマセン。
ワタシノ セナカニモ
カナシミハ イツパイデス」

ソコデ、ハジメノ デンデンムシハ
マタ ベツノ オトモダチノ トコロヘ
イキマシタ。

カウシテ、オトモダチヲ ジユンジユンニ
タヅネテ イキマシタガ、
ドノ トモダチモ オナジ コトヲ
イフノデ アリマシタ。

トウトウ ハジメノ デンデンムシハ
キガ ツキマシタ。
「カナシミハ ダレデモ
モツテ ヰルノダ。
ワタシバカリデハ ナイノダ。
ワタシハ ワタシノ カナシミヲ
コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」

ソシテ、コノ デンデンムシハ モウ、
ナゲクノヲ ヤメタノデ アリマス。
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悲しみはだれでも持っている。
自分ばかりではないのだ。

中原中也も悲しみを語る。
明治40年(1907年)に生まれ、
昭和12年(1937年)に逝った。
30歳だった。
詩集『山羊の歌』より。
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汚れつちまつた悲しみに

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘(かはごろも)
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気(おじけ)づき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……

――誰でも持っている悲しみを、
中也は「汚れっちまった」と表現する。

谷川俊太郎も、
何度も悲しみを書く。
現在、88歳。
第五詩集『あなたに』の中の「悲しみは」、
28歳のときの作品。

悲しみは
むきかけのりんご
比喩ではなく
詩ではなく
ただそこに在る
むきかけのりんご
悲しみは
ただそこに在る
昨日の夕刊
ただそこに在る
熱い乳房
ただそこに在る
夕暮
悲しみは
心を離れ
ただそこに在る
今日のものたち
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悲しみはただそこにある。
2019年の冬至の今日という日にも。

〈結城義晴〉


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