結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年08月12日(火曜日)

「経営学者と経営者の関係」と「鳥類学者と鳥の関係」

Everyone, Good Tuesday!
[2025vol㉜]

月曜日が祝日の週は、
火曜日にご挨拶。

2025年第33週。
8月第3週は全国的にお盆週間。

それにしても熊本の豪雨。
線状降水帯が相次いで発生し、
記録的な大雨となった。

お見舞い申し上げたい。

そんな中で、
明日の8月13日(水)が「迎え盆」、
16日(土)が「送り盆」。

盆の中日は14日。
15日は終戦記念日。

毎年の8月は、
重い課題が続く。

私は午後から商人舎オフィスに出社。
車で10分ほどの距離だから、
それほど負担にはならない。

単行本1冊分のゲラが出てきた。
それをチェックして、
結局は持ち帰った。

日経新聞夕刊のエッセイ「プロムナード」
日経はこういったコラムやエッセイが、
意外にいい。

岩尾俊兵さん。
まだ38歳と若い。
新進気鋭の経営学者。
慶應義塾大学商学部准教授。
en_book_230623_08_02

佐賀県有田町生まれ。
岩尾磁器工業は有田焼の最大企業で、
江戸時代中期から続く。

その創業者一族の家系。

しかし岩尾は家庭の事情で中学を卒業すると、
陸上自衛隊少年工科学校に入り自衛官となる。
一等陸士昇進と同時に陸上自衛隊を退職し、
アルバイトをしながら高校卒業程度認定試験に合格、
慶應義塾大学商学部に入学。
その後、東京大学大学院に進み、
史上初の「経営学博士」となった。

「経営学の埋め込み」をこのブログでも紹介した。

7月2日版は、
「経営学者という職業」

「そんなに経営を勉強していて、
どうして経営者になって儲(もう)けないの‽」

岩尾さんは「色んな場面」で尋ねられる。

私に対しても面と向かって聞く人はいないが、
そんな目で見られていることはひしひしと感じる。
「何で商売をやっても受けないのか?」

岩尾さんは謙遜して言う。
「ちょっとだけ自慢話が過ぎると思うけれど、
私に関して言えば未上場・上場どちらも、
社長経験があって時価総額を
約10倍にしたこともある」

「でも、個人としては、
1円も儲からなかったところが、
やっぱり経営学者だ」

「経営学者が儲けている例は
皆無といっていいほどきかない」

「儲け始めた経営学者がいたら、
『あいつは学者を辞めたか』と言われるほどだ」

「ほとんどすべての経営学者が
経営者にならないのは当然だろう。
そもそも人間は自分にできないことや
自分にない能力に憧れて
研究者になるフシがあるだからだ」

これは経営学者に限らない。
ジャーナリストも同じだ。

コンサルタントは儲けている人も多い。atsumi_1
たとえば渥美俊一先生は、
コンサルとしては儲けたが、
伊藤雅俊さんや岡田卓也さんほどには、
絶対に儲けられない。

倉本長治も同じだ。

中内功さんは一番儲けたが、
流通科学大学を残してすべて失った。

経営者は儲ける額も半端ではないが、
それがゼロになるリスクも大きい。

「考えてみれば、
経済合理性で考える人ならば、
経済的に報われない経済学者になんか
なるわけがない」

経済学者の自己矛盾。

「政治家に対抗できるくらいの、
政治力がある政治学者の話も聞いたこともない」

「社会性がなさそうな人が社会学者になっている」
私の大学の恩師壽里茂先生もそうだった。

「だとすれば、当然ながら、
損得勘定に明るくない、
自己管理が苦手な人が経営学者になるわけだ」

「かくいう筆者だって
自動車産業の研究者だったが、
自動車の普通免許さえ持っていないし、
これから取れる気配もない」

学者は変わり者‽

「経営学者と経営者とは互いに役割が違いすぎる。
両方を兼ねる必要もない」

私は㈱商業界という中堅出版社の経営者だった。
出版業界の上位1割くらいに入る会社だった。
IMG_09972

立教大学大学院から招かれて、
経営学者の真似事をしたが、
そのときは経営者であることを強みにした。

ここでアナロジー。
「経営学者と経営者の関係は、
鳥類学者と鳥の関係に似ている」

これが秀逸だ。

「鳥類学者は誰よりも鳥に詳しい。
そう、驚くべきことに、
鳥よりも鳥に詳しいのが鳥類学者なのだ」

「もし鳥が日本語を話せたとしても、
『あなたはどうしてそんなに高く、遠く、
飛ぶことができるのですか?』
という問いには答えられないだろう」

「『なんかね、バンッとやって、
バタバタッからの、フワッからの、
ビューンですね』といった説明が
せいぜいだろう」

長嶋茂雄だ。

「でも、鳥類学者は違う。
鳥が空を飛べる理由について、
羽根の役割から始まって、
体重がどれくらいまでであれば飛べるのか、
どの部分に怪我をしたら飛べなくなるのか、
気候が変わればどうなるか、
どんな風が来たらより遠くに飛べるのか、
説明できる」

「鳥類学者に
『でも、君は空を飛べないじゃないか』
と言っても、きっと鳥類学者は
悲しい顔をするだろうが、同時に
『そういうことじゃないんだよなあ』
と言うしかない」

「誰もが安全に空を飛ぶために、
より楽により高く遠く飛ぶために、
鳥類学者の知識は役に立つ」

「それどころか、こうした知識体系が
航空工学の革新につながって、
鳥じゃない生き物も空を自由に
飛べるようになるかもしれない」

「実際に、今では鳥類学者は
飛行機で空を飛べるのだから」

鳥と鳥類学者のアナロジー。

経営者と経営学者の関係は、
これに非常に似ている。

経営者は経営者になるべくしてなった。
経営学者はそれになるべくしてなった。

ジャーナリストも、
コンサルタントも、
それになるべくしてなった。

商人もなるべくしてなった。

何を自分の人生の目的にするか。
それによって鳥にもなるし、
鳥類学者にもなる。

それでいい。

では、みなさん、今週も、
自分らしく仕事しよう。

Good Tuesday!

〈結城義晴〉


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

国内研修会
ミドルマネジメント研修会
商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年8月
« 7月  
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.