結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年03月21日(日曜日)

コロナ禍の「習慣」とトマス・アクィナスの「節制の喜び」

昨日の3月20日、地震があった。
夕方の6時09分。
発震源は宮城県沖。

地震の規模はマグニチュード6.9。
震源の深さは59km。

まだ1週間程度は、
最大震度5強程度の地震の恐れがある。

今日も福島県沖を震源とする地震があった。

これも東日本大震災の余震である。

地震のメカニズムは、
西北西から東南東方向に圧力軸を持つ、
逆断層型だったとみられる。

太平洋プレートが、
北米プレートに沈み込む境界付近で発生した。

東日本大震災の余震。
10年も続いているし、
まだまだ終わらない。

COVID-19の感染リスクも、
人類との「動的均衡」による共生状態となっても、
10年、15年と終わらないのだろう。

最悪を覚悟して、
最善を尽くす。

PRESIDENT Onlineで、
哲学者の山本芳久さんが、
インタビューに答えている。
東京大学大学院総合文化研究科教授。
トマス・アクィナスの研究者。
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タイトルは一般受けを狙うが、
内容は持論を展開していて、面白い。

「夜中に甘いものが食べたい」
三流は食べ、二流は我慢する、
では一流は?

山本さんが研究するトマス・アクィナスは、
ヨーロッパ中世の哲学者だ。
1225年頃~1274年。
主著『神学大全』。
日本語訳で全45巻の膨大な著作。

その日本語訳の第10巻は、
人間の感情の動きをテーマとしていて、
欲望に対してどう向き合うかが検討される。

トマスは、
古代ギリシアの哲学者を参考に考察する。
アリストテレスだ。

プラトンの弟子。
そのプラトンはソクラテスの弟子。

アリストテレスの『ニコマコス倫理学』。
4つの「枢要徳」(すうようとく)が整理される。
⑴賢慮
⑵正義
⑶勇気
⑷節制

テーマの「夜中に甘いものが食べたい」は、
第4の節制にかかわる問題。

ここでまた、
アリストテレスの4つの分類が出てくる。
⑴節制ある人
⑵抑制ある人
⑶抑制のない人
⑷放埒な人

この図表2は、
岩田靖夫著『アリストテレスの倫理思想』から、
山本さんがアレンジしてつくったものだ。
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⑵の抑制ある人は、
欲望を我慢して押さえつける。
⑴の節制ある人は、
節制のある生き方をしていることに、
喜びを感じている。

「節制」をはじめとして、
「徳」を身につけるのは、
「技術」を身につけることと似ている。
トマス・アクィナスはそう考えた。

山本さんの説明。
「たとえば子どもがピアノを習うとき、
最初はうまく弾けないから
イヤイヤ練習するけれど、
ある程度弾けるようになると、
だんだん楽しくなってくる。
技術を身につけると、
簡単に素早くできるようになるし、
それをやることに喜びが生まれてくる」

「節制」を身につけると、
欲望をコントロールすることが容易になり、
また素早くできるようになる。

夜中に甘いものを食べることに対して、
「節制を身につけた人は、
それを食べるのは自分の健康にとって
よくないことだと判断したら、
自ら進んで食べないという選択をする」

すると「今日も健康な食生活を送ることができた」
という喜びを感じることができる。

「節制」の徳を身につけることは、
何かをイヤイヤ我慢することではなくて、
むしろ自分が本当に望んでいるものを見つけ、
本当に満足するあり方へと
自分を導いていくことなのです」

「節制」の徳は、
「習慣」の積み重ねによって形成される。
トマスやアリストテレスはそう考えた。

人間が分かれ道に直面して、
どちらかの選択肢を選ぶとする。

しかしそれは、
そのときにたまたまどちらかを選んだ、
ということで終わらない。

選んだ方の選択肢を選びやすくなるような、
「習慣」が形成されてくる。

そうすると、
次に似たような状況に直面したさいにも、
そちらの選択肢を選びやすくなってくる。

これによって、
どんどんある選択肢を選びやすくなるような
性格や人柄が形成されてくる。

「習慣に気をつけなさい、
それはいつか性格になるから」
マザー・テレサだ。
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山本さん。
「私たちが毎日行っている一見些細な選択が、
実は人生全体の在り方へと
直結しているのです」

「 性格に気をつけなさい、
それはいつか運命になるから」

「習慣」は、単なる惰性ではなく、
もっと積極的な意味を持っている。

山本さん。
「人間とは”習慣のかたまり”であって、
その人が積み重ねてきた習慣が
その人らしさを形成している」

「ですから善い習慣を身につけることは、
善く生きるうえで決定的に重要なのです」

⑶の「抑制のない人」は、
「理性」が「欲望」に負けてしまう。

抑制のある人とない人には共通点がある。
どちらも「理性」と「欲望」との葛藤がある。

理性が欲望に勝つ人が、
抑制のある人。

最後に⑷の「放埒な人」。
喜ぶべきではないものに喜びを感じたり、
度を越して快楽を追求したりすることが、
生きていくうえでの基本原理になっている。

「理性」と「欲望」の葛藤もない。
「理性」が「欲望」の奴隷になり、
欲望を満たすための道具なってしまっている。

⑴の「節制ある人」は、
「理性」が健全な在り方をしているだけでなく、
「欲望」もまた徳によって整えられている。
だから葛藤がない。

しかも、この徳を身につけることによって、
「喜び」が感じられるようになる。

「節制」は「喜び」を抱いて、
真に幸福な人生を
安定的・持続的に送っていくために
不可欠な要素だということになる。

スコラ哲学の真髄だ。

マザー・テレサの考え方は、
トマス・アクィナスそのものである。

コロナ禍の「マスク」「手洗い」「三密回避」。
これらも習慣にしながら、
「節制」の「徳」のレベルにしたいものだ。
つまり「喜び」の習慣にしたいものだ。

〈結城義晴〉

2021年03月20日(土曜日)

「記憶がないと言え」と”情けは他人の為ならず”

春分の日だ。

ほぼ半月ずつ、だいたい15日間ずつ、
二十四節気は移っていく。

春分のあとは、
清明、穀雨、
そして立夏となる。

立夏といっても今年は、5月5日。
子どもの日と重なる。

それまでにファイザーのワクチン、
接種することができるのか。
私は65歳以上の高齢者だ。

今日は1日、自宅で、
単行本の校正。

朝日新聞「天声人語」
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武田良太総務相のひと声。
「記憶がないと言え」

「国会で答弁席へ向かう電波部長に命じる
何者かの声が中継映像に残っていた。
追及された武田氏がきのう、
“記憶がない”の部分は自分の声だと認めた」
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「無意識で出た」と。

「ドスのきいた早口の低音。
部下が矢継ぎ早の質問に
ぐらつくのを警戒したか。
大臣じきじきの念押しが飛ぶ中、
電波部長は改めて
“記憶はございません”」

コラムはつぶやく。
「痛ましくも忠実な官僚答弁だった」

武田良太総務相は、
福岡県出身で名門小倉高校から、
早稲田大学文学部へ。
亀井静香衆議院議員の秘書を経て、
伯父の田中六助代議士の地盤を継いで立候補。
しかし三度、落選して、
四度目に35歳で初当選。
以後、当選6回、現在52歳。

一方、鈴木信也総務省電波部長。
千葉県船橋市出身。
超名門の開成高校から東京大学法学部。
郵政省に入省後、外務省、海外留学、
官民交流派遣で野村證券にもいた。
典型的なエリート官僚。
54歳。

ああ。

武田良太から、
「記憶がないと言え」とささやかれたか。

「記憶はございません!!」
やけっぱち気味に、
ここだけ強く言った。

大きなマスクをしているから、
幼くも見える。

大臣も高級官僚も、
ずいぶん質が落ちた気がする。
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大平正芳の伝記『茜色の空』では、
秘書官も大臣も官僚も、
もちろん総理大臣も、
天下国家を考え、論じている。
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終戦直後に大平は、
池田勇人大臣の秘書官だった。
宮澤喜一と同僚だった。
いずれも内閣総理大臣となった。

この戦後の秘書官時代。
吉田茂総理からの直接の質問にも、
大平は即座に自分の意見を言う。
そしてそれは吉田茂と一致していた。

自分の見解を言う。
忖度ではない。

それが内閣総理大臣と一致している。
そんな人間がやがて、
内閣総理大臣となる。

忖度でない、自分の判断。
それが重要だ。

さて、「ほぼ日」の糸井重里さん。
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「新型コロナウイルスのこと。
一年以上、ずうっっっと
考えてきましたよね」

「”一般の人”として、
一年前とどこが進歩したか」

「考えた”量”は積算されているから、
ずいぶん増えたけど、
考えていることの”質”は、
あんまり変わってないです」

同感だ。

「ワクチンさえできたらいいのに」が、
「ワクチンはできたけど」になっただけ。

「マスク、手洗い、三密回避」
これはずっと基本であり厳守事項であり、
それ以上のことは、
どうにもやりようがない。

その基本が”不朽の名作”のようになって
ちょっと”飽きた”みたいなって、
いまでは、問題になっている。
糸井流の言い回し。

そこで、あらためて、
「マスク・手洗い・三密回避」を考える。

(1)コロナウイルスは、粘膜から入り込む。
だから目や鼻、そして主に口に、
入れないことが大事。
手についたかもしれないウイルスは、
石鹸やアルコールでやっつけられるので、
手を洗う。

(2)じぶんが仮に、
コロナウイルスに感染していても、
それを他の人に感染させないこと。
人に会うことや、
人混みに出ることをしなければ、
他の人に感染させる可能性を減らせる。

(3)コロナウイルスは、
主に口から、唾液などの水分に
混じって飛び出して他の人にくっつく。
マスクをすることで、
その可能性を減らせる。
もっといいのは、黙っていること。
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(4)つまり、だれもが
「感染させない」努力をすることが、
感染の連鎖を断つ効果的な方法である。
じぶんが感染しているかどうか知らなくても、
感染させない対策をちゃんとやろう。

「そういうことだったと思うのです」

感染しないための努力でなく、
させないための対策が、回り回って、
「コロナ感染の輪を止める」

「”情けは他人の為ならず”と、
同じ考え方だと気づきました」

「情をかけることは、
その人のためにならない」
これは間違い。

「人に情をかけていれば、
巡り巡って自分によい報いが来る」

商人の仕事こそ、これだ。
「情けは人の為ならず」

大臣も官僚も秘書官も、
それを先頭に立って実践する立場だ。
それが公僕というものだ。

保身ばかり考えていてはいけない。

春分の日なのだから。

〈結城義晴〉

2021年03月19日(金曜日)

緊急事態宣言解除とオークショットの「合理性と知性」

単行本の最後の校正。

また一つの章をカットした。

編集者の二宮護さん。
「いいんですか?」

そのくらいドラスティックに変える。
最後まで粘って、
より良いものにする。

校正しながら本も見直す。
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20世紀に戻ったり、
2030年の先に行ったり、
ときには14世紀をうろついたり。
そして人類の全史を駆け巡ったり。

今回の本はそんなことをしながら書いている。

さて、パリは、
みたび外出制限。

新型コロナウイルス感染の第三波。
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厳密に言えば、パリをはじめ16地域。
仏北部と東部の一部。
パリはフランスの北に位置するが、
そのさらに北のノルマンディなどだろう。
20日午前0時から少なくとも4週間。

感染力が強い変異ウイルスが広がっている。
ジャン・カステックス首相。
「感染は急拡大している。
この感染第三波は、
英国型変異ウイルスが原因」

食料品店や薬店などを除いて、
原則的に商店は休業する。

スーパーマーケットとドラッグストア。
ライフラインはこの二つの業態である。
日本ならばこれに、
コンビニエンスストアが加わる。

散歩などで外に出る場合には、
制限時間は定められていない。

しかし距離に関しては、
自宅から半径10㎞の範囲のみ許可される。
時速60キロで走れば10分圏内。

ああ。

私なら横浜市港北区の妙蓮寺の自宅から、
西区北幸の商人舎オフィスまでも、
移動することはできない。

地域外に出るとしても、
必須の理由がなければ認められない。
外出理由を自己申告した紙などを、
携帯する必要がある。

夜間外出禁止令は仏全土で続く。
夜間と言っても午後6時からだったが、
それは午後7時からと緩められる。

フランスのワクチン接種は、
約570万人が少なくとも1回している。
今後は6月半ばまでに、
3000万人が摂取する計画だ。
これは18歳以上の約3分の2に当たる。

日本でも第四波を、
想定しておかねばならない。

最悪を覚悟して、
最善を尽くす。

これがリスクマネジメントだ。

しかしテレビで見ていると、
フランス人もマスクをしていない。

これではいけない。

日本では
1都3県の緊急事態が解除された。
これは日本全体に心理的影響を及ぼす。

しかし首都圏1都3県は、
宣言解除後も3月末まで、
飲食店への時短要請を続ける。

これじゃあ、緊急事態宣言の解除は、
「意味ないじゃん!」

そこで小池百合子東京都知事。
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時短要請に応じていない27店舗に対して、
特別措置法に基づく時短営業の「命令」を発出。
昨日の3月18日のこと。
効力の期限は21日まで。

全国初のこと。

命令を拒否すれば30万円以下の過料。
つまり罰則。

東京都の職員が繁華街を回ったりして、
時短要請に応じていない店を調査した。

そして飲食店やカラオケ店など129店に、
「要請」を出した。

そのうえで「命令」に踏み切った。
ある種の「見せしめ」。

ただし店名、企業名は公表していない。

「集客の助長や誹謗中傷につながる恐れがある」

一方、㈱グローバルダイニング。
長谷川耕造社長。
硬骨漢の経営者。
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「都内の26店舗が命令を受けた」と明言。
21日までは午後8時までの営業とする。

千葉県の森田健作知事。
「4月上旬までかと思ったが、
区切りをつけるのは難しい」
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神奈川県の黒岩祐治知事。
3月末まで全県を時短要請の対象とする。
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緊急事態宣言を先行解除した府県でも、
飲食店などの時短要請は続く。

大阪府の吉村洋文知事。
飲食店などへの営業時間短縮の要請を、
31日まで継続することを決めた。
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栃木県の福田富一知事。
無症状の人を対象に唾液によるPCR検査を実施。
繁華街や事業所、学校などに、
検査キットを配布。
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宣言解除が最も早かった栃木だが、
PCR検査を2月下旬にスタートした。
追加解除となった6府県でも、
3月から始めている。

政府の緊急事態宣言解除効果は、
逆説的に地方自治体の自主を促したか。

そこまで深く考えていたとしたら、
菅義偉首相も大したものだが、
そんなことはないだろう。
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政府と地方自治体、
ちぐはぐなのが気になる。

フランスの第三波のような第四派が、
来ないとも限らない。

マイケル・オークショット。
イギリスの政治哲学者。
保守主義の重鎮。
1901年~1990年。

先ほどの写真で掲げていたのが、
『政治における合理主義』という本だ。
その本のなかの「合理的行動」という一章。
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「”合理的”に行為するとは、
“知的”に行為することである」

「合理的」は、イコール、「知的」。

政府の解除と自治体の継続は、
その意思決定において合理的ではない。
つまり知的ではない。

この章の最後の一文は、
「人間活動は、それが
当該活動のイディオムにふさわしい
“知性”を示すときに、
“合理的”だと言うことができよう」

翻訳は大阪学院大学の玉木秀敏教授だが、
「イディオム」(idiom)に苦労したのか、
そのままカタカナ語にした。

「イディオム」は、
高校の英語の授業に出てきたか。
「慣用句」のことだ。

オークショットの一文を、
私なりに解釈すると、
「人間活動は、
その活動の自然の流れに沿った、
論理性を示すときに、
合理的だと言うことができよう」

緊急事態宣言解除が、
自然の流れに沿って、
論理的か否か。

それが合理性を示すことになる。

〈結城義晴〉

2021年03月18日(木曜日)

単行本、脱稿しました。ありがとう。

暖かくなった。

年をとって、
両脚の足首に近い、
ふくらはぎの下あたりが、
ひどく冷える。

1日の終わりなど、
触ってみると冷たくなっている。

そこで両ふくらはぎに、
サポーターを巻き着けている。

そうするとちょっと、
冷えはおさまるように感じる。

だから、暖かくなると、助かる。

明後日の3月20日は、
もう春分の日。

土曜日と重なって、
ちょっと残念だけれど。

でも三連休になると、
消費者の気分は晴れて、
商売もよくなる。

日曜日の3月21日で、
1都3県の緊急事態宣言は解除され、
全国的に「緊急事態」ではなくなる。

1月7日から10週間と4日。
74日間。

菅義偉首相が、
官邸で記者会見をして、
政府の決定を発表した。

緊急事態宣言にも、
それほどの強制力がなかった。

そのうえ解除してからも、
「リバウンドが懸念されている」

そこで菅首相は注意を喚起した。
「大人数の会食は控えてほしい」

飲食店の時間短縮は、
午後9時までとする。
これも要請。

協力店舗には1日4万円の補助金が出る。

自宅の書斎の机のわきに、
このところ本が積み上げられている。
本棚に収まりきらないからだ。

なぜかその一番上にあるのが、
辻井喬(つじいたかし)著『茜色の空』。
哲人政治家・大平正芳の生涯。
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辻井は故堤清二さん。
そう、セゾングループ元総帥。
作家でもあり、詩人でもあった。
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すごい取材量、読書量で、
この大平正芳の伝記を、
ノンフィクションタッチで描き上げた。

2010年3月の発刊。
文庫化は2013年1月。

堤さんは、
1927年3月30日の生まれだったから、
このとき83歳。

1927年は昭和2年で、
したがって堤さんは、
清水信次さんの一つ下、
岡田卓也さんの二つ下、
伊藤雅俊さんの三つ下。

83歳での執筆は、凄い。

単行本として発刊した3年後、
2013年11月25日に亡くなっている。

この大平正芳の伝記の最終章に出てくる。
「昭和五十三年十二月七日、
六十八歳で首相に指名された大平正芳は、
政権維持に汲々として政策を曲げたり、
人気取りに走ったりするようなことは
決してしない、と自分に言いきかせた」

「自分に言いきかせた」というところは、
もちろん、作家・辻井喬の想像である。
首相の胸の内が記録に残っていることはない。

大平正芳は、
実に素晴らしい政治家だった。

大平はこの1年半後、
首相の激務の中、70歳で急逝する。

亡くなる半年くらい前の冬、
キリスト者だった大平を、
旧知の司教が訪ねて語る。

「普通の人ばかりのところへ、
未来が見える人が入ると、
そのことによって緊張が生まれます。
そこで未来が見える人を
排除しようとする動きが出るんです」

司教は、
イエスキリストを引き合いに出しつつ、
大平のことを言っている。

大平正芳のような政治家が、
今、求められている。

さて、私は今日も、
横浜商人舎オフィス。

夕方まで原稿を書き続け、
やっと脱稿した。

単行本。

書き上げた1万6982字の章は、
デザインが終わってゲラになっていたが、
それをボツにした。

これは別の1冊にしようと考えている。

つまり章自体はとてもいい内容。

さらに資料と素原稿を用意していた章も、
残念ながらカットして、
最後の章を書き上げた。

1冊にするときに、
中身はいいけれど、
章をカットすることもある。

これ、店や売場の品揃えと同じ。
良いものなら何でも並べると、
買いにくい店や売場になる。

だからとてもいい商品でも、
品揃えから外すことがある。

まあ、商売の場合は、
飛び切りいい商品ならば、
「シーゾナルアイテム」として、
店舗コンセプトとはずれても、
販売することもある。

雑誌もそれが可能だ。
しかし単行本はそうはいかない。

その意味では映画と似ている。

本文を書き終わってから、
参考文献や献辞なども書いて、
やっと終わった。

それから休まずに校正。IMG_22001

本など見返したりする。IMG_21971

それでも満足感一杯。IMG_21981
ご協力の皆さん、
もうあとひと踏ん張りです。
発刊を待っていてくださるみなさん、
もう少しです。

堤清二さんは83歳で、
『茜色の空』を書いた。
私もまだまだ負けられない。

書き続ける。

〈結城義晴〉

2021年03月17日(水曜日)

惣菜のわかる八百屋塾の「スーパーマーケットのソコヂカラ」

惣菜のわかる八百屋塾。Frux_kouen_0415
第77回は4月15日、13時~16時。

今回のテーマは、
「スーパーマーケットのソコヂカラ」

第1部の基調講演は、結城義晴。

第2部はパネルディスカッション。
阿部秀行×結城義晴×黒田久一。

阿部さんは㈱万代社長。
黒田さんは㈱フルックスホールディングス社長。
この「塾」を主催する、
フルックスグループ代表。
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昨年の10月23日に、
横浜商人舎オフィスで打ち合わせをした。

当初は2月開催の予定だったが、
11都府県への緊急事態宣言で延期。

そして4月15日と決まった。

誰でも無料で参加できる。
会場参加方式ならば、
奈良県のやまと郡山城ホール。
Web参加方式ならば、
どこからでも可能だ。

定員300名。

申し込みは、
申し込みフォーム。

フルックスグループは、
青果物流通事業の㈱フルックス、
青果物加工事業の㈱フルックス東海、
そして惣菜事業の㈱味の大和路。
それらをマネジメントするのが、
㈱フルックスホールディングス。

先代の故黒田一郎氏が、
青果物仲卸として創業。
黒田久一さんが継いで、
いま青果と惣菜における、
バーティカルインテグレーターを目指す。

グループのミッションは、
「食と農のかけ橋になる」
そして、
「余すところなく使い切る、売り切る」

私はこの考え方に賛同している。

もともとは青果卸の会社。
そのままだったら成長はなかった。

しかし黒田さんは、
惣菜のわかる八百屋を志向した。

そして2007年から、
「惣菜のわかる八百屋塾」を主催。
毎年数回、奈良の本社で、
講演とパネルディスカッションが行われ、
取引先や地域の人々が参集して、学ぶ。

私は2012年1月に一度、講演した。

そして第77回にも。

是非、ご参加ください。

さて今日は朝から、
オンライン会議。
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㈱True Dataの取締役会。

3カ年の中期計画と来年度計画を審議。
コロナ禍の「キャズム」のときに、
疾走しながら考えに考え、
ポストコロナ時代に飛躍します。

ご期待ください。

さて1都3県に縮小され、延期されていた、
懸案の「緊急事態宣言」
3月21日(日)に解除される。

菅義偉政権になってから、
こういった決定は、
あらかじめリークされ、
先行報道される。

だから菅首相が自ら発表しても、
何のインパクトもない。

「どうなる? どうなる??」
と、期待しているときに、
「こうだ!!」
と、やると、
「ああ、そうか」
となる。

みんなの顔色見ながら、
「こうなるぞ」
と、出しておいて、
「こうなった」
と、発表しても、
「あ、そっ」
てな、程度。

人の心に響かない。
人は動かない。

火曜日3月16日の朝日新聞、
「天声人語」

「菅義偉首相の朝は早い」

「首相動静」の記事をさかのぼると、
官邸入りの時間帯は6時台がざっと6割。

つまり朝が早い。
コラムニストが、
過去40年の首相たちと比べた。
「菅さんの早起き鳥ぶりは群を抜く」

それ自体は悪いことではない。
むしろいいことだ。
「早起きは三文の徳」
「朝起きの家に福来る」

菅さんは「昼食も手早い」

「5分か10分でササッと済ませて執務に戻る」

コラムニスト。
「とびきり勤勉な人なのだろうが、
気になるのは言葉の足りなさの方だ」

そこでハロルド・ウィルソン元英国首相。
冷戦下のイギリスを率いた。

ウィルソンは名宰相の条件を述べている。
「首相の成功の主要な条件は、
夜の熟眠と歴史のセンスである」
(内田満著『政治の品位』)

「疲れをため込まず明朗に語れ、
歴史的な洞察も深めよ」

これが政治家のソコヂカラである。

コラムニスト。
「この半年間、菅さんの語りには
“そこは”が頻出した」

「そこは極めて重い」
「そこは適切に対応します」
「そこは検証する必要がある」

菅さんの口からよく出るフレーズだ。

コラムニスト。
「この話法はいかにも射程が短い。
単なる口癖ではなく、
長期的な視座を欠くことの象徴ではないか」

そして最後に注文。
「ときには大局的かつ明朗に
ご自身の哲学を語っていただきたい」

政治家は〈いつも〉
大局的かつ明朗に、
自身の哲学を語る必要がある。

〈ときには〉では、いけない。

経営者やリーダーも、
大局的かつ明朗に、
自身の哲学や経営方針を語る必要がある。

決して雄弁である必要はない。
明朗であれ。

そして経営者にはむしろ、
歴史的洞察のほうが大事だ。

〈結城義晴〉

2021年03月16日(火曜日)

ブルーとTDのコラボ・ミーティングのスピード感

武蔵野線という路線がある。
良い名前だ。

その支線の駅のひとつが、
新小平駅。

その新小平駅にあるのが、
JリーグFC東京の選手・監督の等身大の写真。IMG_21721
左から4人目のスーツ姿が、
監督の長谷川健太。

ああ、なつかしい。
清水東の三羽烏。

「小平ピッチ」と呼ばれるが、
この駅の近くに練習グランドがある。

2人の外国人選手も、
自筆でコメント。
「小平ヨイトコロ」と書くのは、
ブラジル人のディエゴ・オリベイラ。
「イイネ! 小平」は、
こちらもブラジル人のレアンドロ。IMG_21741
FC東京は現時点で、
1勝1敗2引き分けで10位。
頑張れ。

今日は第一屋製パン㈱の取締役会。
久しぶりにリアル参加。IMG_21701

それから移動して、
お台場の国際展示場。IMG_21791

コロナ禍でイベントが自粛され、
ガランとしている。IMG_21801

そのTFTビルにブルーチップ㈱を訪問。
ミーティング。

右側が㈱True Dataの面々(TD)。
左側がブルーチップの皆さん(ブルー)。IMG_21851
2時間半も情報交換やディスカッション。
いい意味でコラボレーションをしていく。

ご期待ください。

最後に写真。

いつもの癖でラインを合わせる。IMG_21861

そしてポーズ。
IMG_21881
私の右が宮本洋一ブルーチップ社長。
左は米倉裕之True Data社長。
その左がブルーの土橋和人、中野茂両常務。
右はTDの越尾由紀さんと外山敬晃さん。

米倉さんと越尾さんは、
月刊商人舎3月号に登場してもらった。
特集はRetail「DX」
202103_coverpage-448x633
りがとうございました。

結構、忙しい1日だった。

さて朝日新聞コラム「経済気象台」
改革派たちの沈黙?

コラムニストは硬派の呉田さん。

「世の中は危機を乗り越える時
大きく変化し、進歩は加速する」

私の言う「コロナは時間を早める」

有名外食チェーンの創業者の話。
誰だろう。

「今も自前のチェーンを展開中のベテラン経営者」

横川竟さん
か?

その発言。
「環境が激変する厳しい時代は淘汰の時代だ。
真に価値を創造できる企業だけが生き残る」

「ピンチはチャンス。
現にこの環境でも
業績を伸ばしている会社もある」

よく言われることだが、
実績のある創業者が発すると、
真実である。

浅薄なコンサルなどが言うと、
それは嘘に聞こえる。

「もともと飲食業は、
変化や参入撤退の激しい業界だ」

そう、日本に50万軒の店があり、
毎年5万軒が閉店する。
そして5万軒が開店する。

この話は私、
ぐるなび創業者の滝久雄さんから聞いた。

この、多分、横川さんであろう経営者の予想。
「ファミレスという業態自体が
時代についていけなくなった。
もう元の市場規模には戻らないだろう。
さらに淘汰が進み、
新しい価値を生み出す企業が生き残って
シェアを伸ばす」

同感だ。

「あらゆる業界で、
今まで予兆があったことが
一気に現実化した」

これも私が言い続けている。

「飲食業では”テイクアウト・宅配”という
新しい業態が伸びる」

「百貨店・量販店は
ネット通販に市場を奪われ、
その波は実店舗小売り全体に広がる」

正しく言えば、
ネットとリアルの融合が進む。

「変化に合わせたイノベーションであり、
新陳代謝だ」

その通り。

「市場での競争とはそういうものではないか」

「上場企業の約4割は減益だが、
他方で増益の企業も4割あるのだ」

そしてコラムニスト。
「こんな時に”旧に復する”
“一律救済”の産業政策を行うのは、
極言すれば”ゾンビ企業”を
生きながらえさせるだけだ」

厳しい発言だが、
実は私も同感だ。

「政治的には厳しい判断だが、
時代の変化を先取りして今こそ
一気に構造改革を進めるべきではないか」

そう、今進んでいるのは「構造改革」だ。
小売業、外食業でいえば「業態地殻変動」。

政治はそれを利用して、
日本全体の生産性を考えたほうがいい。

もちろん救済も必要な時と場合がある。
ただし特定業界へのバラマキは、
全く意味がない。

「この正念場で、これまで散々
“規制緩和””選択と集中””既得権益打破”
“しがらみ打破”と言ってきた
自称改革派の経済学者たちは
なぜ沈黙しているのか」

「ぜひ意見を聞いてみたい」

同感。

変化に合わせたイノベーション。
企業と産業の新陳代謝。

COVID-19パンデミックの陰で、
着実にそれが進んでいる。

そしてムーアの法則のレベルで、
スピードが早まっている。

ブルーとTDのミーティングは、
そのスピード感にあふれていた、か?

〈結城義晴〉

2021年03月15日(月曜日)

参院予算委員会の「大臣規範」と矢沢永吉の「本気で生きる」

Everybody! Good Monday!
[2021vol⑪]

2021年第11週。
そして3月第3週。

毎年、何度も繰り返す。

一月、往ぬる。
二月、逃げる。
三月、去る。

五木ひろしではないが、
三月は行って行ってしまう。

もう半月が経過した。

私のオフィスの窓から見える桜。
もう満開だ。
IMG_21651

商人舎事務所の裏の遊歩道。
IMG_21661

ランチのついでにスナップ写真。IMG_21671

マスクを外してスマイル。
IMG_21691

通常国会では、参議院予算委員会。

集中審議には、参考人が出席。
日本電信電話㈱の澤田純社長、
㈱東北新社の中島信也社長。

澤田社長は、
菅義偉首相や武田良太総務相との
会食の有無について、
「控えさせていただく」

首相や武田総務相は、
「国民から疑念を招くような
会食に応じることはない」

こういう場合、通常は、
「会食はあった」

別に会食が悪いわけではない。
ただし、大臣規範がある。

「大臣規範」は2001年、
小泉純一郎首相のときに閣議決定された。

やっぱり小泉さんですな。

その中に、
「倫理の保持に万全を期するため」とある。

「関係業者との接触に当たっては、
供応接待を受けること、
職務に関連して
贈物や便宜供与を受けること等であって
国民の疑惑を招くような
行為をしてはならない」

大臣として、
これに違反してはならない。

この件に関して、
加藤勝信官房長官の発言は、
明らかにまやかしだ。

春うらら。

こんなやり取りを続けていては、
いけないと思う。

さて、商人舎流通スーパーニュース。
U.S.M.Hnews|
2月既存店1.2%減/カスミ3.2%増もマルエツ・MV関東減収

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱。
2月の既存店の成績が怪しくなってきた。
客数8.0%減、客単価7.4%増。
売上高は1.2%減。
今期初めてのマイナスとなった。

昨年はコロナ特需があった。
その反動が出た。

それにユナイテッドの商勢圏は、
1都3県に完全にかぶっている。
緊急事態宣言のために、
客足は伸びなかった。

総売上高も前年比1.4%減。

U.S.M.Hは、
㈱マルエツ、㈱カスミ、マックスバリュ関東㈱、
3社で構成される。

マルエツの既存店売上高は4.2%減。
客数11.1%減、客単価7.8%増。

カスミの既存店売上高は3.2%増。
客数3.8%増、客単価は7.2%増。

マックスバリュ関東の既存店売上高は3.4%減。
客数8.8%減、客単価は5.9%増。

カスミだけよかった。
茨城県は緊急事態宣言の枠外だからか、
カスミの頑張りか。

両方だろう。

しかし風向きが少し変わってきた。
心せねばならない。

さて久しぶりに、
ほぼ日の糸井重里さん。
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「ま、だいたいなにかの
トップに立っている人というのは、
まちがいなく”頭のいい人だなぁ”と
思わせてくれる」

糸井さん、こういう話題のときは、
いつもちょっと照れる。

頭がいいということの定義は、
あいまいなのだけれど、
“考えに非凡さとキレがある”
という感じだろうか」

「そして、
“なにも考えてない”ということが
絶対にない」

「ご本人は”なにも考えてない”と
言ったりもするが、
考えてなかったつもりで、
実は考え終えてもいそうだ」

「人と同じような道筋で
考えてないだけなのだろうと思う」

「そういう人の代表みたいな
矢沢永吉というスターがいて、
ずっと長い間、
“すげぇなぁ”と思わせてもらってる」

言いたかったのは、
矢沢のことだ。
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「どういう時代になっても、
どういう状況になっても、
“頭のいい人だなぁ”と
感心してしまうのだが、
ほんとうは”頭のいい人”である部分は、
おまけである」

言いたかったのは、
この「おまけ」のことだ。

「本筋のところでもっとも大事なのは、
“本気になれる”という
こころのありようだろう」

堺屋太一さんも、
震災の時に言っていた。
「必要なのは、
本気のプロデューサー」

「若い時分のことを、
“そのときどう考えていたの?”と
質問すると、よく、
“なにも考えてなかったんじゃない?”
と、じぶんのことなのに、
本人が笑ったりする」

矢沢。
「考えるもなにも、とにかく必死だったのよ」

糸井。
「”とにかく必死”な人には、
“現在”が見えているのだ」

「いま、ここで、すぐに、
なにをするべきなのか?
それを、若いときばかりでなく
続けられた人が、
長いことトップにいる人に
なるのではないだろうか」

これ、矢沢のことだけれど、
糸井自身に言い聞かせている。

このあと糸井はYouTubeで、
CAROL時代の矢沢の映像を観る。
「とにかく必死」だった若い矢沢。

「どんな動きで、どんな声で、どんな表情で、
どんなことばで、彼が生きていたのかが、
鮮明でない録画からくっきり見えてくるのだ」

「過酷なジャングルを突っ走る
猛獣のようだった」
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「これだけ本気で”現在”を生きていたら、
頭の回転も速くなるし、
判断力も研ぎ澄まされてくるよ」

本気で、現在を生きる。

糸井はそれが言いたい。
私もそれは言いたい。

しかし残念だが、
今の国会の菅さんには、
それが感じられない。

2001年の小泉には、
それがあったと記憶している。

コロナ禍の今、
私たちにも必要なのは、
本気で生きることだ。

では、みなさん、今週も、
「本気で生きる」

Good Monday!

〈結城義晴〉

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