結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2021年03月14日(日曜日)

渋沢栄一「青天を衝け」の「士農工商」の体験と融合

NHK大河ドラマ。
「青天を衝け」
seitennwotuke
大正15年生まれの父が大好きで、
毎週、毎年、飽きることなく観ていた。

2014年11月4日に逝った。

私はテキサス州ダラスにいた。
20日間のアメリカ滞在。
帰国はかなわず、
通夜や葬式にも出られなかった。

2014年の大河ドラマは、
第53作の「軍師官兵衛」だった。

父は第1回からずっと観ていたから、
53年間、歴史ドラマを楽しんだことになる。

今年の「青天を衝く」は、
渋沢栄一の物語。

今夜の第5回は、
「栄一、揺れる」
無題

吉沢亮演じる栄一が、
本を読んで清のアヘン戦争を知る。
開国した日本の未来を危惧し、
心が揺れる。

このドラマは栄一の個人的な成長と、
幕末から維新にかけての日本の動向とが、
二次元中継で進められる。

やがてそれが一体化していくのだが、
今日は水戸藩主の徳川斉昭が暴走し、
老中の阿部正弘、側近の藤田東湖からいさめられる。
そんなとき、大地震が江戸を襲って、
世間が揺れる。

このドラマの狂言回しとして、
毎回、徳川家康が登場する。

北大路欣也が堂々と演じるが、
今回は「士農工商」を説明する。

自分がつくった身分制度だというが、
実は中国の古典が初出。

司馬遼太郎が調べている。
司馬作の『この国のかたち』(文藝春秋)。

「74 士」の項では、
「士農工商というのは、中国のことばである。
紀元前の中国の古典『国語』にすでに見えていて、
以後、中国や朝鮮における儒教文明の
四民の分け方の慣用句になってきた」

1817年に来日した朝鮮通信使の申維翰は、
日本の国を観察して報告した。
「国に四民あり、兵農工商」

「商は富むといえども、
税法がはなはだ重く、
工はその技が巧みであるが、
製品が廉価である。
農はもっとも苦しいが、
年間の租税のほかに他の徭役はない」

「士」は武士、すなわち兵であると見立てた。

朝鮮王朝の李朝は1392年から1910年まで続く。
その間、朝鮮にも「士」が生まれた。
それは「ソンビ」と呼ばれ、
儒学者をはじめとする書を読む人だった。
中国に倣った「科挙」制度に合格した、
いわば知識人である。

朝鮮の「士」は学者で、
日本の「士」は兵士だ、
と言いたかったのだと思う。

しかしそれでも士農工商の四民を、
日本の江戸時代の特徴ととらえた。

結城義晴著『Message』から。

「士農工商」

「士農工商」の序列は、
誰がつくったのか。
徳川封建政治を支える身分制度として、
当時のお上が考え出したものなのか。
私はそうは思わない。

「士農工商」は
もっともっと前から存在した。
農業や工業や商業が、
そして軍人としての武士が、
生まれてくる過程の中にこそ、
「士農工商」の階級分化の理由があった。

春山満を知って、
私はハッと気づかされた。

「士農工商」が
人間の肉体的な強さの序列によって
機能分化してきたことに。

ずっとずっと昔、
「士農工商」は
フィジカルな能力の高い順に
位置づけられたのだ。

最も強い者が、
人間を打ち倒す軍人になった。
次に強い者が、
自然と闘い、農作物を生産する
農民となった。
三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる
工の民となった。
そして一番体の弱い者が、
商人となった。

私たちの意識の底に残っている
肉体的序列としての「士農工商」は、
21世紀にはあとかたもなく消えうせ、
頭脳と言葉によって、
社会に変革がもたらされるに違いない。

すなわち、
考える能力と訴えかける情熱によって
ビジネスが再編成されるのだ。
私は、それが新しい商業の出発だと思う。

だから商業人は見つめなければならない。
商業人は、考えつづけなければならない。
商業人は、訴えかけつづけねばならない。
春山満のように――。
51swq5I1liL._SX312_BO1,204,203,200_

故春山満さんは、
1954年、兵庫県生まれの実業家、啓蒙家。
24歳で進行性筋ジストロフィーを発症、
数年後には首から下の運動機能を失う。

1988年、「ハンディ・コープ」創設。
その後、1991年、自ら会社を設立。
㈱ハンディネットワーク インターナショナル。
介護・医療の独自商品を開発し、販売した。

つまりハンディキャップをばねに、
生涯を生き抜いた商人であり、
知識人だった。

2003年には米国「ビジネスウィーク」誌で、
アジアを代表する指導者として、
「アジアの星」25人に選出された。

2014年2月23日、呼吸不全で死去。
享年60だった。

㈱商業界の取締役編集統括のころ。
2月の商業界ゼミナールで、
春山満さんに出講してもらった。

春山さんは車椅子で壇に上がり、
静かに自分の考えを述べたが、
私は心から感動した。

そして「販売革新」誌の巻頭の、
[Editor’s Voice]に、
「士農工商」の文章を書いた。

春山さんは、
自著『僕はそれでも生き抜いた』の通りに、
命を全うして、
2014年2月に永眠した。
51MX9ZhsYtL._SX333_BO1204203200_

最も強い者が、
人間を打ち倒す軍人になった。

次に強い者が、
自然と闘い、農作物を生産する
農民となった。

三番目に強い者が、
道具を使ってモノをつくる
工の民となった。

そして一番弱い者が、
商人となった。

渋沢栄一はこの農の民としてまれ、
士になろうと志し、
結局は「商」の民となり、
「工」の民となった。

しかしその本質は、
朝鮮でいう「ソンビ」でもあったと思う。

だから「論語」を重視した。
41v2cwM6h4L._SX310_BO1204203200_

つまり渋沢は士農工商を、
すべて経験することになる。

「日本資本主義の父」と称されるが、
それは身分の序列を否定し、
士農工商の融合を図ったという意味の称賛である。

〈結城義晴〉

2021年03月13日(土曜日)

アマゾンに買収された新聞社編集主幹の退任の言葉

横浜は豪雨。

雷が鳴って、激しい雨が降った。

昨夜は完全徹夜で原稿書き。
今日は昼まで寝てしまった。

まだまだ若い時のように、
仕事はできます。

私は仕事によって、
生かされている。

その私の仕事は、
いまやよくわからない状態だ。

しかし、何かを調べ、知って、
それを伝えることを、
ジャーナリズムと呼ぶとするならば、
それは確かに私の仕事である。

このジャーナリズムに関して、
マーティン・バロンが発言。

日経新聞掲載。

マーティン・バロンは、
ワシントン・ポストの編集主幹だった。

ジャーナリズムの現場で45年。
米国フロリダ州出のユダヤ人、66歳。

大学卒業後、マイアミ・ヘラルド入社。
それからロサンゼルス・タイムズ、
ニューヨーク・タイムズを経て、
2001年にボストン・グローブ編集主幹。
2013年1月、ワシントン・ポストに移籍して、
編集局長。

ボストン時代に、
調査報道チーム「スポットライト」を率いて、
カトリック教会の児童性的虐待をスクープした。
その記事はピューリッツァー賞を取り、
映画「スポットライト」になった。

映画はアカデミー作品賞・脚本賞を受賞。
51j8yvXyevL._AC_
そのマーティン・バロン編集主幹が、
2月末にワシントン・ポストを退任した。

凋落激しい新聞業界。
アメリカでも同様だ。

国民が新聞を読まなくなった。

しかしバロンの任期中に、
ワシントン・ポストは、
電子版有料読者は約300万人に達し、
編集部員数は1000人規模と倍増した。

バロン就任のその年の10月には、
アマゾン・コムのジェフ・ベゾスが、
同新聞社を買収した。

べゾスはバロンごと、
ワシントン・ポストを買い取った。

買収後、べゾスはすぐに言った。
「ワシントン・ポストは戦略を変えるべきだ」
18Amazon-1-master768.jpgジェフベゾス

「首都圏や近隣州の住民を意識した記事作りは
今までは正しかったかもしれないが、
デジタル時代には全米、
さらには世界で読まれる媒体を
目指さなくてはいけない」

同紙は米国政治の中心を取材し、
全米で3本の指に入る知名度がある。
ウォーターゲート事件以来、
「知られざる真実を掘り起こす報道機関」
というアイデンティティーがある。

しかしベゾスは、
「全国の読者に受け入れられる下地があるし、
読んでもらえるはずだから、
迅速に戦略を変えるべきだと考えていた」

アメリカの新聞ジャーナリズムは、
小売業で言えばローカルチェーンばかリだった。

ニューヨークタイムズや、
ロサンゼルスタイムズ、
そしてワシントン・ポストは、
リージョナルチェーンにはなっていた。

それをナショナルチェーンに戦略転換する。
ジェフ・べゾスはそう考えていた。

アマゾン・コムは、
西海岸のワシントン州シアトルで、
本のローカル通信販売業者として始まった。
しかし瞬く間に、
ナショナルeコマースとなった。

それがべゾスの頭にあった。

「インターネットがもたらす
“痛み”は受けているのに、
なぜ”ギフト(贈り物)”のほうは
受け取らないのか」

「ネットは確かに
広告という収入の柱を奪った。
だが、同時に世界中に
追加費用なしで記事を配れるという
ギフトをもたらす存在でもある」

「もう紙の新聞を
物理的に届ける必要はないのだから、
ワシントン・ポストが
全国紙に転換する好機だと
気がつかせてくれた」

編集部の改革について、
バロンはどう考えたか。

「業界他紙と同様、
ワシントン・ポストの編集部も
縮小傾向にあった」

バロンは軍隊に例える。
「規模の大きな米国軍にはなれないが、
少数精鋭の特殊部隊になればいいと考えていた」

「精密に戦略を立て、
正確に実行し、全力を尽くして、
あとは結果が出てから考えればいい」

だが、結果として、
べゾスの買収によって、
縮小型の発想から脱却できた。

このマーティン・バロンの言葉、
小売業のローカルチェーンや、
リージョナルチェーンのトップにそっくり。

米国軍ではなく少数精鋭の特殊部隊。
精密な戦略、正確な実行、全力を尽くす。
あとは結果が出てから考える。

もちろん小売業は、
地場産業、装置産業、人間産業だ。
新聞ジャーナリズムとは違う。

バロンは述懐する。
「可能性はゼロではないが、
成功していなかったと思う」

そう、ローカルチェーンにも可能性がある。
リアル店舗だけの時代ならば。

「ミスター・ベゾスがいなければ、
ほかの地方紙と同じように、
人員を削減し読者も減るという
悪循環に陥っていたと思う」

「地方紙から全国紙に
カジを切るという戦略もなかったし、
デジタル化に投資する
資金力もなかったからだ」

「全国紙」にするために、
どのような変革を行ったのか。

「全国のジャーナリストをつなぐ
ネットワークを作り、
支局のない場所での
ニュースも拾える体制を作った」

ボランタリーチェーンである。

ローカル紙の弱体化によって、
多くの地方在住のジャーナリストが失業した。
早期引退を余儀なくされた。

「こうした優れた人材が、必要な時に応じて
ワシントン・ポスト紙に
記事を出稿する仕組みだ」

「過去に新聞社での勤務経験がなく、
ネット媒体で活躍してきたような人材も
雇用するようになった」

「ワシントン・ポストではなじみの薄かった
”フード”や”ネット文化”といった
トピックも扱うようにした。
ブログも始めた」

これまでと品揃えを変えたわけだ。

「朝イチで読めるコンテンツを作る
夜に働くチームを編集部に置いた。
こうした取り組みが現在の
編集24時間体制につながっていった」

ではデジタル時代に対応するために、
「人材の入れ替え」は必要なのか。

「もちろん、ワシントン・ポストは
テクノロジーに精通した人材も雇用した。
だが、伝統的なジャーナリストの
存在の重要性は変わっていない」

「人材の入れ替えが進んだわけではない。
大半の人材がいまでも編集部で働いている。
メディアの形態が変わったことを認め、
その状況に対応すればいいだけだ。
私も旧来型のジャーナリストだ」

「担当する分野に精通した記者は
かけがえのない存在だ。
編集部は、いい情報源を持ち、
きちんとした記事を書ける記者を
必要としている」

「自分が1番詳しい。この分野で権威だ」
記者がそう考えることはいいことだ。

「だが、その記事を
読者に読んでもらうためには、
デジタル時代に対応する必要がある。
対応した形で届けなかったら、
対応した別の記者の記事が
先に読者のもとに届いてしまうからだ」

ラストワンマイルの実態は、
新聞でも変わった

「いい記事」「いい記者」の定義は変わったか。

「変わっていない」

「質の高いジャーナリズムの定義に
変更はない。
届け方が変わっただけだ」

「今までよりもっと早く、
デジタル媒体で見やすいかたちで
届けることが重要だ。
こうした状況に対応することは
そんなに難しいことではなく、
ワシントン・ポストでは実行した」

デジタル時代の商売も同じだ。

「電子版のいいところは、
有料読者がどんな記事に
関心を示しているのかが
はっきりと分かることだ」

私の経験で言えば、
すぐ、その日が終わった瞬間にわかる。

「ワシントン・ポストの読者は、
奥の深い記事、分析のある記事、
調査報道を求めている。
ワシントン・ポストでしか読めない記事に
お金を払っているのだから、
我々はそこに投資する義務がある」

アマゾンに買収されたワシントン・ポスト。
ネット時代のローカルチェーンに通じる。

〈結城義晴〉

2021年03月12日(金曜日)

ヤオコー蕨錦町店オープンとライフ蕨駅前店の「蕨の陣」(?)

今日も1日、横浜商人舎オフィス。

執筆。

夕方、暗くなってきたら早めの夕食。
オフィスの前の幹線道路。
岡野町交差点からランドマークタワーが見える。IMG_21541

夜の新田間川。
IMG_21511

そしてオフィス裏の遊歩道。IMG_21441

暖かくなってきたし。
桜も咲き始めて、
いい気分だ。
IMG_21461
執筆も進んで、
成果は上がった。

商人舎流通スーパーニュース。
ヤオコーnews|
789坪で初年度35億円目指す「蕨錦町店」3/17出店

ヤオコー蕨錦町店。
3月17日水曜日にオープン。
ビバモール蕨へのテナント出店だ。
売場面積は789坪。

ヤオコーの中でも大型店。
バックヤードを含む延床面積は1167坪。

そして初年度目標は35億円。
控えめな数字で40億円行けば、
店長は胸を張れるが、

ビバモール蕨は、
イトーヨーカドー錦町店の跡に出店。

スーパービバホーム蕨錦町店は、
3月10日に開業した。

ドラッグストアはココカラファイン、
バラエティストアはダイソー、
それ以外に専門店・飲食店、
サービス業も入って約40店舗。

駐車台数は1239台。

ヤオコーの生鮮部門は約1280アイテムで、
売上構成比38.6%。

これも40%を狙っているはずだ。
オープン当初の売場構成比では、
4割を超えるはず。

とくに青果部門は圧倒的な価格を出してくる。

惣菜は約370アイテムで、
売上構成比15.2%を計画。

グロサリーは1万2800アイテムで、
売上構成比46.3%の計画。

こうしてオープン前に記事を書いているだけで、
その売場が頭に浮かんできて、
ワクワクする。

この蕨錦町店の出店で、
ヤオコーの店舗数は計169店舗になる。
埼玉県92店舗、千葉県30店舗、
群馬県16店舗、東京都11店舗、
神奈川県8店舗、茨城県7店舗、栃木県5店舗。

埼玉県の蕨市には、
ライフ蕨駅前店がある。

2018年6月28日オープン。
このブログで紹介した。
ライフ蕨駅前店オープン

清水信次会長。
??????????

岩崎高治社長。
??????????

そして月刊商人舎2018年7月号で、
PhotoReport。
ライフ蕨駅前店の「ライフらしさ」の完成度

カ ットフルーツのコーナーは、
幾何学模様の壁面デザインが目を引く。
life_20180710_13

英字の売場サインはライフ店舗の特長だ。
茶系の店内色調に映える白文字サイン。
??????????

水産売場は第1コーナーの突き当たりに配した。
シースルー窓で作業風景をすべて見せる。
??????????

惣菜からベーカリーへ続く売場は、
湾曲させて配置している。??????????

奥壁面の精肉と加工肉の売場。
長い陳列線に、1カ所だけ柱が見える。??????????

酒売場はレジに向かう最終コーナーに配置。
??????????

スポット照明と間接照明を使った天井。
美しさは秀逸だ。
??????????
大スパン工法によって、
店内の柱は3本だけとなっている。

商人舎のバックナンバーを持っている人は、
取り出して見てほしい。

月刊商人舎のIDを持っている人は、
パソコンやスマホで見てほしい。

年決め購読をしていたら、
いつでもどこでもすぐに見ることができる。
便利です。

年決め購読は、こちらへ。
是非、購読してください。
お願いします。

しかしこの秀逸のライフ蕨駅前店と、
ヤオコー蕨錦町店が、
直接競合することになる。

ライフ蕨駅前店。
こちらもイトーヨーカドー蕨店跡への出店。

イトーヨーカ堂からライフへ、ヤオコーへ。
時代の変化と主役の交代が、
よくわかる「蕨の陣」だ。

こんなことをブログに書いていると、
大阪の陣、前橋の陣に続いて、
蕨の陣も企画しようかと思ってしまう。

みなさん、よい週末を。
私は、執筆。

〈結城義晴〉

2021年03月11日(木曜日)

3・11から10年/経営の「グランドデザイン」と「知恵と覚悟」

3・11。
10年前の今日、東日本大震災。

COVID-19パンデミックとは違って、
日本だけの、東日本の災禍だった。

今日、東京の国立劇場で、
東日本大震災追悼式が開催された。

天皇陛下、初めてのご出席。
「震災を過去のこととしてではなく、
現在も続いていることとして
捉えていく必要があると感じます」

何度も推敲した文章。
大切なところも淡々と読む。

菅義偉内閣総理大臣のスピーチとは、
ずいぶんと違う印象の追悼の言葉だった。

今日も私は横浜商人舎オフィス。
午後2時46分には合掌して黙とうした。

裏の遊歩道の桜。
IMG_21301

1日分、開花が進んだ。IMG_21341

昨日発刊された月刊商人舎3月号。IMG_21361
最近の号は、表紙もとてもいい。
気に入っている。

巻頭には私も書いた。
「東日本大震災から10年、
ともに未来を目指す」
IMG_21411
「平成23年3月11日の東日本大震災から
10年が経過する。
この間、私たちは何をしてきたのか、
そしてこれから何をしていくのか。
亡くなられた方々に、
心から哀悼の意を表しつつ、
そのことを考え、決意せねばならない」

「しかし令和3年となった今2021年2月13日、
福島県沖でマグニチュード7.3、
最大震度6強の地震が発生した。
東日本大震災の余震であると言われる」

「政府の地震調査委員会は、
“余震は今後10年程度続く”と
厳しい見解を発表した」

「10年前の大震災の影響で、
東北地方太平洋沖では
地殻に加わる力が変容し、
ひずみが生じた。
研究者たちは、
“余震以外の大地震にも注意が必要”
と警戒を喚起する」

「私たちは地震列島の上で生活し、
商売を営んでいる。
そのことは片時も忘れてはいけない」

(中略:このあと堺屋太一さんの復興の鉄則を紹介)
???????????????????????????????
「それにしても阪神淡路大震災のあとに、
東日本大震災は予想もしなかった。
そして東日本大震災後の10年間、
COVID-19パンデミックなど、
これまた想像もしなかった」

「堺屋太一さんが指摘してくれた”鉄則”は
生き続けるし、役立つものだ」

「その意味で、私たちは
経験を積み重ねている」

「老いも若きも、その経験を共有して、
この街をこの地域を、
この国を”振興”させる未来を見ている」

「被災した人々とともに歩むとは、
ともに未来を目指すことである。」sinsai04

日経新聞の連載。
「日本は変われたか 大震災10年」

10年が経過したからこそ、
その総括は必須だ。

連載⑴の3月9日(火曜日)の記事は、
岡本全勝さんに聞いた。
元復興庁事務次官で、
福島復興再生総局事務局長。

タイトルは、
「地域再生、ばらまきの限界」
???????????????????????????????

「”壊れたら、直ちに元に戻す”という
長年の経験でインフラ復旧に乗り出した」

「ただ人口減少下で元に戻すことを急いだら、
結果的に過大なものができてしまう。
そこは哲学を変える必要があった」

2012年12月26日に、
民主党から自民党に政権交代したが、
どちらの政府も哲学を変えきれなかった。

「津波で壊れた漁港、
水浸しの農地の復旧は
急ピッチで進んだ。
がれきを片付けた街で
かさ上げの造成工事が進み、
海岸にはより高い防潮堤が築かれた」

「公共投資は被災地の再生を後押ししたが、
前面に出たのは、全国一律の規格で
地方に補助金を配り、
地域の実情と関係なく開発する
ばらまき行政の姿だった」

総復興予算は32兆9000億円となる。

「いまの日本に必要な哲学は、
人口減や働き方の変化に応じ、
暮らしやすい空間をつくることだ」

人口減や働き方の変化。
それに合わせた暮らしやすい空間。

これは、
ポスト・コロナ時代の哲学でもある。
??????????????????????????????????????????????

「”災後”にあわてて計画をまとめていては、
手になじんだばらまきを繰り返すだけになる」

「国土利用のグランドデザインを描き直す。
問われるのは予算の大きさより知恵と覚悟だ」

まず、グランドデザイン。
そして予算の大きさよりも、
知恵と覚悟。

これは産業や企業や店舗の再生にも通じる考え方だ。

〈結城義晴〉

2021年03月10日(水曜日)

商人舎3月号のRetail「DX」とロピア決算報告会の「成長と革新」

月刊商人舎3月号、本日発刊。

特集は、
Retail「DX」
Digital Transformationの小売業的狂騒と瞑想202103_coverpage
第9巻第3号、通巻95号。
つまり9年目の3号目、通しで95号。
記念の100号までもう少し。

1号ずつ積み上げてきました。
それも読者の皆さんをはじめ、
取材先の皆さん、
執筆者の皆さん、
厳選された広告スポンサーの皆さん、
デザイナーや印刷・製本の皆さん、
そして編集や校正の皆さんのおかげです。
心から感謝します。

さて、今月号。
[Cover Message]
小売流通業の「デジタルトランスフォーメーション」。新型コロナウイルス感染拡大とともに喧伝され始めた印象がある。きっかけは2004年のA4判6ページの短い論文だった。スウェーデンのウメオ大学エリック・ストルターマン教授。論文タイトルの「INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIFE」において、教授は情報技術がより良い生活やより良い人生を創出させると主張した。それが巡り巡って、COVID-19パンデミックの影響もあって、今、リテール「DX」狂騒曲となった。しかし本誌は、深く、静かに瞑想しつつ、その本質に迫る。

目次をご覧いただきたい。
202103_contents

小売業のデジタルトランスフォーメーション。

その前に、
「デジタル」とは何か、
デジタルの本質を、
知らねばならない。

そこで[Message of March]
アナログとデジタルを融合させよ。

指折り数える。
それが、
「デジタル」の語源だ。

ラテン語の“digitus”。
ここから派生した英語の“digital”。
どちらにも「指」の意味がある。

デジタルは、
その指で数える「整数」のことだ。
現象を数値化して記録したものだ。

だからデジタルは劣化しにくい。
複製にも、伝送にも適している。
再現性が高い。

一方のアナログは人間的な「知覚」だ。
情報量が多い。
表現も豊かだ。

が、再現性が乏しい。
コピーしにくい。
劣化しやすい。

時計はもともとアナログだった。
温度計もアナログだった。
それがデジタルとなった。

不思議なようだが算盤はデジタルだ。
駒の種類が多い将棋はアナログだが、
黒石白石の囲碁はデジタルだ。

小売りの仕事はアナログだ。
サービスの業務もアナログだ。
近代化はそれをデジタルに変えた。

アナログは次々にデジタルとなった。
そしてデジタルが世の中を高速化させた。
デジタルが世界を爆発的に膨張させた。

アナログのデジタル化はこれからも加速する。
だから逆にデジタルのアナログ化が必須となる。
かくてアナログとデジタルの融合が進む。

それがDXの本質だ。
それがポスト・コロナの仕事の態度だ。
ポスト・モダンの商売の在り方だ。
〈結城義晴〉
202103_message

DXの本質を私がどう考えるかについては、
明日のブログでちょっとだけ紹介しよう。

さて今日は夕方から、
東京・品川へ。

品川プリンスホテル。
そのメインタワー。
IMG_21251

ロビーにはステンドグラス。IMG_21261

そしてモニュメント。
IMG_212791

30階の大会議室で、
㈱ロピアの50期決算報告、
51期方針社内発表会。IMG_21291
毎年3月上旬に開催している。
2月末日に締めた決算を、
1週間で全社内に公開し、
次の方針を発表する。

このスピードがロピアの特長でもある。

昨年はコロナ禍のなかで、
報告会・発表会は中止された。

しかし今年は、十二分に、
ソーシャルディスタンシングをとって、
部長以上だけの参集で開催。

午後4時からまず、
高木勇輔代表取締役社長が、
ロピアのビジョンをベースに、
最近考えていることを淡々と語った。

この高木勇輔の発想こそが、
ロピアの原動力とも言えるものだ。

その次に福島道夫取締役営業統括部長。
㈱関西ロピア社長を兼務する。

節目となる50期決算数値を、
会計士のような緻密さで、
わかりやすく解説した。

それから内田貴之取締役管理本部長が、
ロピアの成長戦略を説明した。

そのあと4つの営業本部長、
子会社の社長たちが、
次々に51期の営業方針を説明した。

例外なく自信に満ちている。

最後に結城義晴の講演。
??????????
熱を入れて60分。
ロピアのポジションに基づいて、
私が期待するところを語った。

高木さんや福島さん、
そのあとの発表者たちの話を聞いていて、
柳井正さんと岡田元也さんの言葉を思い出した。

そこから入って、
現時点のロピアの幹部が、
大いに気をつけねばならないこと、
陥りやすいあい路を、
私なりに咀嚼して語った。

最後に故田島義博先生の言葉。

「企業の成長は、
革新によってしか
もたらされない」

革新のない拡大は、
膨張に過ぎない。

〈結城義晴〉

2021年03月09日(火曜日)

「収斂進化」の中国経済発展と「フォーマットによる業態間競争」

商人舎オフィス裏の遊歩道。

窓から見下ろすことができるが、
今日、桜が開花した。
IMG_21151

多分、横浜で一番早い桜だ。IMG_21141

今日、達筆の手紙が届いた。
亀ヶ谷純子さん。
㈱カメガヤ名誉会長。IMG_21181
近況や月刊商人舎を読んだ感想、
ときに決意表明などが書かれている。

亀ヶ谷さんは勉強家だ。
1年前にユヴァル・ノア・ハラリの
『ホモ・デウス』を読んだそうだ。
41pGEawjlAL._SX337_BO1204203200_
「人間至上主義を捨て
データ至上主義を選んだホモ・サピエンスは、
感染症含むすべての困難を克服し、
ホモ・デウスを目指してしまう、
と知らされたばかりにところに
このコロナ!!」

「アンパンマンと同じように、
ばいきんまんとの共存を
早く手に入れたいと願っております」

素晴らしい。

ありがとうございます。
ブログでご紹介してしまいました。

さて、日経新聞の巻頭コラム「春秋」。
生物学の「収斂進化」を紹介する。
「しゅうれんしんか」と読む。

「ハトは鳥類でコウモリは哺乳類なのに、
どちらも翼を羽ばたかせて空を飛ぶ。
モグラとケラは同じような形の前脚を使い、
土の中を器用に掘り進む」

「種類が違っても暮らす場所が同じだと、
生き物はときに似た姿形に進化する」

「環境に適応し、
共通の特徴を持つにいたるさまは
生命の神秘というべきか」

「だが見た目は似ていても、
栄養の取り方など
体内の構造の多くはなお別物」

英国の生物学者アンドリュー・パーカー。
その著『眼の誕生』(渡辺政隆・今西康子訳)
51G3VNJA17L._SX345_BO1,204,203,200_
動物を分類する際は、
「外部形態よりも
内部の体制のほうが一般に重要」

コラムが言いたいのは、
中国の体制の話だ。

現在開催中の全国人民代表大会。
「全人代」と略されるが、
便宜上「国会に相当」と注釈されている。

「だがその言葉で想像するものとは異なり、
響くのは礼賛の拍手の音ばかり。
国会とは似て非なる空間で、
香港の議会から民主派を排除する
ルールづくりが進む」

つまり資本主義と共産主義の、
「種類」は違う。

一方、
「2021年の成長目標は6%以上」

「グローバル化が進む経済環境にうまく適応し、
株式会社や資本市場など
他の国と似た仕組みを整え、
デジタル金融でモデルをつくろうとする」
51zD93DeP4L._SX298_BO1,204,203,200_
「経済規模は遠からず
米国に並ぶという予測もある」

経済は似てくる。

「だが内部の体制」は別物だ。

小売業で言えば、
ドラッグストアとスーパーマーケットは、
「業態」の種類が異なる。

しかし顧客が暮らす場所が同じで、
競争が激化すると姿形は似てくる。

私は、業態が成熟すると、
それは徐々に細分化されていって、
フォーマットになると考える。

神戸大学名誉教授の田村正紀先生の持論。
『業態の盛衰』でその詳細が描かれる。
b0918
そしてこのフォーマットの時代になると、
店舗の姿形が似てくる場合がある。

例えばドラッグ&フードと、
フード&ドラッグ。

しかし組織風土や経営体質などの、
「内部の体制」は別物だ。

どちらがいいとか、
どちらが強いとか。
それは断言できない。

かつて、
業態間競争は起こらないと言われた。

業態とは社会的機能である。
したがって社会的機能が異なる業態間に、
競争は起こらない。

ところが現在は明らかに、
「業態間競争」花盛り。

「収斂進化」と名づけられたごとく、
「業態間フォーマット競争」は「進化」である。

かくて資本主義と共産主義も、
イデオロギーを無視して競争する。
こちらにも「進化」を期待したいものだ。

〈結城義晴〉

2021年03月08日(月曜日)

国際女性デーの「ファッションと営業時間は自由だ。」

Everybody! Good Monday!
[2021vol⑩]

2021年第10週。
そして3月第2週。

一月、往ぬる。
二月、逃げる。
三月、去る。

今日は朝から東京・八丁堀。
日本食糧新聞社本社。

今野正義会長兼CEO。
私の一回り年上の新聞社トップ。
2008年4月の商人舎発足の会では、
発起人になっていただいた。
DSCN0006-1-448x336

それから千野和利さん。
一般社団法人離島振興地方創生協会理事長。
もちろん㈱阪急オアシス前会長兼社長。
img_kazutoshi-senno_01
お二人とミーティング。

充実した内容だった。
ご期待ください。

千野さんは忙しい。
会議のあとは長崎へ直行。
長崎の離島振興が協会の仕事のひとつ。

そのあとも出張は続く。
体だけは大事にしてもらいたい。

それでも千野さんは剣道五段の達人で、
鍛錬に余念がないから大丈夫だと思う。

さて今日の3月8日は、
「国際女性デー」
International Women’s Day。
1975年の国際婦人年に、
国際連合が国際婦人デーと決めた。

㈱ファーストリテイリングのGU。d11182-151-731410-1
新しいテレビCMを1日限定で流す。
「ファッションは自由だ。」

さらに今日、新プロジェクトを始動。
名づけて「GU BODY LAB」。
d11182-151-924626-2
女性特有の健康課題に着目して、
女性の健康をサポートすることが目的。

この目的に沿った商品を開発し、
それに合わせた販売方法を考案する。

女性を主たる顧客にする小売業、
女性から支持されるサービス業。
国際女性デーを目いっぱい活用するGUを、
大いに見習ってもらいたいものだ。

森喜朗発言などがあったからこそ、
それは格好の「テーマ資源」である。

日経新聞の記事だが、
サイゼリヤが、
コロナ後も夜10時閉店を続ける。

つまり午後10時以降の営業を、
正式に取りやめる。

緊急事態宣言のもと、
時短営業を続けてきた。

2020年8月期決算は、
売上高は1268億円で前年比19.0現、
営業損失38億円、経常損失21億円。
saizeriya

そのサイゼリヤは、
宣言が解除されても、
さらに感染が収束しても、
深夜の客足の回復は見込みにくいと判断する。

堀埜一成社長が日経の取材に対して答えた。

同社は2020年6月から一時的な措置として、
全1000店で午後10時閉店としてきた。
2度目の緊急事態宣言下では、
自治体の時短要請に応じて、
午後8時や午後9時に閉店する店もある。

宣言解除後は、
一部店舗を除いて午後10時閉店とする。

国内ではワクチン接種が始まった。
それでも、
「売上げはコロナ前の7割にしか回復しない」

そこで夜間の総人件費を減らす。
夜間人件費は昼間に比べて割高である。
早期に黒字化する体制を整える。

妥当な戦略だ。

ファミリーレストランでは、
すかいらーくホールディングスが、
午後11時半以降の営業をやめた。

デニーズもロイヤルホストもいまのところ、
新しい方針を出してはいない。

コンビニではファミリーマートが、
20年3月にFC契約を改定して、
24時間営業を続けるかどうかを、
加盟店の判断で決められるようにした。

新型コロナによる生活スタイルの変化、
そして人手不足。

ポスト・コロナ時代の営業時間の短縮は、
幅広い業種業態に広がる可能性がある。

フードサービスの営業時間が変わり、
小売業の営業時間も変わる。

営業時間の短縮化は、
そのまま企業の戦略の差異となる。

2000年6月1日に廃案となるまで、
大規模小売店舗法は、
厳しく営業を規制した。

最終的に500㎡以上の店は、
営業時間が規制された。

それが大規模小売店舗立地法になって、
時間規制はなくなった。

その結果、深夜営業や24時間営業が増えた。

しかしコロナ禍によって、
顧客のライフスタイルが変わると、
自ら営業時間を選ぶことになる。

コストコホールセールは、
20時までの営業だ。
DSCN99010-448x336

ロピアもほとんどの店で、
20時までの営業である。
IMG_14681-448x339

オーケーは21時までの店が多い。
IMG_98000-448x336

ヤオコーは22時まで。
DSCN99360-448x336

サミットストアは23時までが多い。
DSCN98470-448x341

法律による営業規制ではなく、
ライフスタイルの変化と、
企業のポジショニングによって、
営業時間は自ら戦略的に選ぶ。

「営業時間は自由だ。」

コロナはそんな時代をもたらす。

では、みなさん、今週も、
自分の顧客のために店を開けよう。

Good Monday!

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

国内研修会
ミドルマネジメント研修会
商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年9月
« 8月  
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.