結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年10月13日(火曜日)

一般社団法人「離島振興地方創生協会」千野和利理事長のビジョン

今日も素晴らしい秋の日だ。
お昼前に東京駅。IMG_90310

駅側から皇居側を臨む。IMG_90290

東京駅前の丸ビル。
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その35階。
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皇居を見下ろす絶景。
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今日は千野和利さんとランチ。IMG_90370
㈱阪急オアシスの社長、会長を歴任。
現在は、全国スーパーマーケット協会副会長。

それよりも千野さんの活動の中心は、
一般社団法人離島振興地方創生協会理事長。
「Japan Food Islands」
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今年4月のコロナ禍の中で設立され、
社員総会と理事会が開催された。

設立時の社員企業は、
三菱食品㈱、㈱日本アクセス、
ヤマエ久野㈱、㈱類設計室。

専務理事は元大塚食品㈱の高岡久さん、
理事は㈱いなげや前会長の遠藤正敏さん、
マックスバリュ東海㈱元社長の寺嶋晋さん、
そして三菱食品の中野勘治さん、
伊藤忠食品の濱口泰三さん、
三井食品の水足眞一さん、
日本アクセスの吉野芳夫さんなど、
大手卸売業の元社長・会長がずらり。

その目的は、
「国境離島振興と地方創生」をめざして、
3つの活動をしていく。

1 食品産業の育成
2 食品産業の基盤整備
3 住民の生活環境整備

この3つのテーマを中心に、
バリューチェーンを構築する。
そして離島と地方の生産基盤づくりを行う。

そのために官民一体となって、
総合コンサルティンググループを築いていく。

このバリューチェーン構築が、
いかにも千野さんらしい着想だ。

日本は6852の島嶼(とうしょ)から成り立つ。
いわば「海洋島嶼国家」である。
本土が5つの島。
離島は6847あって、
有人島は416、無人島が6432。
法対象となるのが304島で、
離島振興法の対象となるのは255島。

この離島振興と地方創生のために、
バリューチェーンを築く。

5年間のビジョン。
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すでに半年にして、
正会員が69社、
賛助会員が61社。
名だたる製造業と卸売業、
そして小売業が参集した。

イトーヨーカ堂、
エイチ・ツー・オー食品グループ、
エブリイ、
関西スーパーマーケット、
サンシャインチェーン本部、
東急ストア、
万代、
ヤオコー。

さらにイオン九州、
いなげや、
小田急商事、
ハローデイ、
富士シティオ、
ライフコーポレーション。

もちろん、全国農業協同組合連合会、
一般社団法人全国スーパーマーケット協会、
一般社団法人日本惣菜協会も、
参画している。

私はまだまだ小売業、
特にスーパーマーケットの参加が、
足りないと思う。

実に意義のある仕事で、
しかも地方や離島の生産物は、
バリューチェーンがサポートすれば、
マーチャンダイジングに貢献する。

千野さんは3つのチャネルを考えている。
第1が道の駅、
第2がeコマース、
そして第3がスーパーマーケット。

まずは長崎県の五島列島で、
最初のプロトタイプをつくり、
順次、鹿児島県や福島県で、
そのモデルを展開していく。

4月から9月の半年間に、
五島・上五島を4回訪問し、
壱岐・対馬は3回訪れた。

受託者の支援によって、
20品目が開発された。

千野さんがこの協会を設立したきっかけは、
長崎県の中村法道知事との交流。
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中村知事に招かれて、
五島を訪れて、
感じるものがあったそうだ。

そこから千野さんらしく、
一気呵成に協会を設立すると、
初動開始。

あっという間に、
多くの成果を上げた。

その行動力には感服。

ご協力をお約束して、
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まったく偶然だけれど、
月刊商人舎10月号のMessageで書いた。

小さな島に、
たった一店。

その店がとてもよく考えて、
お客さまをよく知って、
いつもその要望に応えてくれたら、
それはとても幸せな島だ。

しかしその店がちょっと迷って、
お客さまの期待に背を向けて、
儲けしか見えなくなったら、
すぐに不幸な島となる。

小さな島の、
たった一店は、
とても、
責任が重い。
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どういう縁だろう。
私も小さな島のことを考えていた。

〈結城義晴〉

2020年10月12日(月曜日)

商人舎10月号「ロピア飛来! 大阪寝屋川の陣」を紹介します。

Everybody! Good Monday!
[2020vol㊶]

2020年第42週。
10月第3週に入った。

秋真っ盛り。

毎年、この時期は欧米にいる。
だからこの10年ほどは、
日本の秋を堪能することはできなかった。

今年はコロナのおかげで、
日本の秋を味わえる。

とりわけ朝の気分は爽快だ。

月刊商人舎10月号。
本日、発刊しました。
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発刊が2日ほど遅れました。
申し訳ありません。

今回の特集の主役は、
「ロピア寝屋川島忠ホームズ店」
その新規開店が9月29日だったので、
11月号に回そうとも考えたのですが、
何とか早くお届けしたいと、
執筆・編集、デザイン、印刷・製本を、
10日間の突貫工事で仕上げて、
何とか今朝、刷り上がりました。

ご協力くださった小売企業の皆さん、
執筆陣の先生方、
デザインや印刷の皆さん、
そして商人舎スタッフの皆さん、
ありがとうございました。
心から感謝します。

それから年間購読の読者の皆さん、
さらに今回は予約販売をしましたが、
ご購入くださった皆さん、
今日、発送しましたので、
近日中にお手元に届きます。

ご査収ください。

そして機会があれば、
寝屋川を訪れてみてください。

[特集]タイトルは、
ロピア飛来! 大阪寝屋川の陣
平和堂・ライフ・万代の棲み分け競争を描き出す。
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商人舎特有の[Cover Message]
9月29日、大阪寝屋川市に衝撃的なスーパーマーケットが登場した。㈱関西ロピア1号店。50年前の1971年、神奈川県藤沢市に肉の宝屋藤沢店として創業。1994年にはスーパーマーケット業態に参入。社名は㈱ユータカラヤからロピアに変わり、ユニークなフォーマットを開発して、毎年、15%から20%の成長力を誇る関東の雄。一方、迎え撃つのは滋賀県に本社を置く㈱平和堂。そのショッピングセンターのアル・プラザ香里園。ダイエー香里店やジャスコ寝屋川店といった伝説店舗を退けて、地域一番店として残った総合スーパー。さらに京阪本線香里園駅前のライフ香里園店は2層の中型総合スーパー。関西ダントツを標榜する万代香里西店は300坪型の「地域の冷蔵庫代わりの店」。この4店舗はコロナ禍にもかかわらず、それぞれのポジショニングを確立したうえで、レース型競争とともにコンテスト型競争を繰り広げる。それぞれのユニークさ、「らしさ」を競う。自分をもった者、強い者同士の競争。これを機に日本の店舗競合が変わる。コロナは競争も変えたのか。

目次を紹介しましょう。IMG_90190

[CONTENTS]
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「特集のまえがき」は、
結城義晴が執筆。
LOPIAが巻き起こした「寝屋川の陣」の真相IMG_90220

それから現地を訪れる人のために、
決戦場「大阪寝屋川」の全貌
寝屋川市の競争のデータと歴史が、
わかりやすく描かれています。

わかりやすくて面白いのは、
[Photo Report]
結城義晴の寝屋川行動記IMG_90250
厳選した写真112枚ほどで、
9月28日と29日の寝屋川の競争を再現。
ロピア寝屋川島忠ホームズ店と、
平和堂アル・プラザ香里園、
ライフ香里園店、万代香里西店。
ロピアの開店前日と開店当日の、
それぞれの動静をウォッチしました。

それを結城義晴の目線で追った、
Photo Report。

たとえ寝屋川に行かなくとも、
追体験できるような仕立てです。

関東圏のロピアの社員の人たちさえも、
このPhoto Reportを見れば、
現地の状況がざっとわかる。

私は関西ロピアの若い人たちに、
「関西ロピアの創業だ」と言った。

だから「初心、忘るべからず」
生きている限り、
この感動を忘れないでほしい。

今回の本編は、
気鋭のジャーナリスト柴田正輝さん書下ろし、
[商人舎クリニックチーム同道記]
一気に読める現場リポートと、
結城義晴・鈴木國朗の解説。

さらに新谷千里さんの分析。
関西ロピアの独自の生産性対策を読み取る
超繁盛店の特異なローコスト・オペレーション

この切り口は商人舎独特のもの。
他では読めない。

そして巨匠・鈴木哲男先生。
[仮想クリニック分析]
関西ロピアはお客に支持されるか?
大阪食品小売業界に与えるインパクト度

鈴木先生にはオープン前に、
4社競争のシミュレーションをしていただいた。

見事に本質をとらえていた。

そして最後に、
結城義晴の[特集のあとがき]
闘い去って日が暮れて[三次元分析]

全編を見て、読んでから、
考えてください。

それが商人舎の願いです。

その考察の役に立つかどうか。

[Message of October]
大きな街の私だけの店

小さな島に、
たった一店。

その店がとてもよく考えて、
お客さまをよく知って、
いつもその要望に応えてくれたら、
それはとても幸せな島だ。

しかしその店がちょっと迷って、
お客さまの期待に背を向けて、
儲けしか見えなくなったら、
すぐに不幸な島となる。

小さな島の、
たった一店は、
とても、
責任が重い。

しかし大きな街の、
たくさんの店はどうしたらいいか。
どうすれば幸せなお客さまをつくれるか。
幸せな街になれるか。

大きな街のすべてのお客さまの心を、
小さな島のたった一店のように、
ぜんぶとらえようとしたら、それはできるのか。
いや、それはできない。

だから大きな街の、
お客さまをよく知る店は、
それぞれに私のお客さまを見つけて、
その私のお客さまを喜ばせる。

大きな街の、
私のお客さまのための、
たった一店になろうとする。
ほかにない一店であろうとする。

しかし大きな街の、
たくさんの店がみんな、
同じような商売をしたら、
それは幸せな街なのか。

そして大きな街の、
たくさんの店がみんな、
価格だけで競うとしたら、
それでお客さまは喜ぶのか。

これは小さな島の
たった一店が、
儲けしか考えないのと
同じだ。

かくて、大きな街で、
お客さまをよく知る店は、
私のお客さまを見つけて、
そのお客さまのための店になろうとする。

大きな街で、
小さな島の悪い一店になったら、
すぐにお客さまから見放されて、
消えてなくなる。

だから大きな街で、
私のお客さまのための、
たった一店でなければならない。
ほかにない一店でなければならない。
〈結城義晴〉
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ブログも長くなってしまいしたが、
記念すべきコロナ禍の中の一冊。
月刊商人舎2020年10月号。
新しい競争時代がやってきた。

ありがとうございました。

では、みなさん、今週も、
考えて、考えて、考え抜こう。
Good Monday!

〈結城義晴〉

【追伸】
ご注文は以下からお願いします。
http://www.shoninsha.co.jp/wp-content/themes/shoninsha2015/pdf/magazine_202010_application2.pdf

2020年10月11日(日曜日)

「私の履歴書」KDDI小野寺正さんの「加入者」と「お客様」

日経新聞の「私の履歴書」
今月は小野寺正さん。
KDDI㈱相談役、72歳。

はじめは日本電信電話公社に入って、
それから不退転の転職。
やがてKDDIのトップとなる。

菅義偉総理が河野太郎大臣を起用して、
「聖域なき行革」を推進しようとする。

そのタイミングで、
小野寺正さんを取り上げた。
日経の「ジャーナリズム感覚」。
まったくの偶然ではないだろう。

政権への「忖度」はない。
連載を組むには準備期間が必要だからだ。

電電公社は1985年に民営化されて、
日本電信電話㈱(NTT)に変わる。

その年、小野寺さんは、
京セラ㈱の稲盛和夫さんが設立した、
第二電電企画㈱に転職する。

さらにこの第二電電(DDI)と、
トヨタ自動車のKDDなどが統合して、
KDDIとなって、NTTに対峙する。

小野寺さんは2001年に、
そのKDDI社長に就任する。

小野寺さんは宮城県仙台市生まれ。
父は宮城県庁の職員だった。
仙台第二高等学校から東北大学工学部。
そして「電電公社」に入る。
図1
その小野寺さんの電電公社の時代に、
いわゆる「土光臨調」が発足した。

政府諮問機関の「第2次臨時行政調査会」。
土光敏夫さんが会長を務めた。
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土光さんはもともとはエンジニアだ。
石川島播磨重工業の社長から、
東芝の社長・会長を歴任、
経済団体連合会会長に就任し、
「ミスター合理化」と呼ばれた。

「土光臨調」は1981年に設置されて、
1983年に解散したが、
「増税なき財政再建」を掲げて、
三公社の民営化などを推進した。

この1981年、
電電公社の大改革のために、
真藤恒(しんとうひさし)さんが、
総裁として送り込まれた。

真藤さんは石川島播磨重工業の再建で、
辣腕を振るった経営者である。
もちろん土光さんが信頼する後輩だ。

電電公社の最後の総裁。
NTTの初代社長。

こちらは「ドクター合理化」と呼ばれた。
真藤恒
その電電公社総裁となった真藤さんは、
“課金”や”加入者”といった言葉を
「電電語」と名づけて忌み嫌った。

課金は電話代の使用料金を「課する」こと。
その使用料も「課金」という。
「加入者」は当時、電話に加入した人。

国が経営する公社は独占事業体である。
「加入者」に「課金」して、
収益を得た。

小野寺さんの述懐。
「私も末席に連なったある会議で
真藤さんが突然激怒したのを目にして、
驚いた覚えがある」

真藤さんは「加入者」のことを、
「なぜ”お客様”と言わないんだ」
と叱責した。

小野寺さん。
「ただ私の肌感覚でいえば、
真藤さんの改革への熱意は、
電電公社に十分浸透しなかった」

「あれから40年近くたつが、今もNTTは、
加入者という電電語を使い続けている」

「三公社」と言われた。
国が経営する事業体。

日本専売公社。
日本電信電話公社。
日本国有鉄道。

いずれも中曽根康弘内閣時代に、
民営化されてJT、NTT、JRとなった。
アルファベットで象徴される会社。
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中曽根さんはすごい総理だった。

公社に決定的に欠落していたのが、
「お客様」の視点であり、
「お客様」の発想だ。

真藤さんはそれを払拭しようとした。

日本の官僚は「公僕」と呼ばれる。
その役所や官僚が、
国民を「お客様」と見たら、
ずいぶん変わるのだろう。

もちろん小売業やサービス業は、
その視点や発想を失ったら、
瞬く間に自壊する。

巨大化した小売業組織も、
茹でガエルとなったら、
「土光臨調」が必要になる。

巨大化しないまでも、
「中小企業の大企業病」となったら、
「ミスター合理化」や「ドクター合理化」が、
求められる。

しかしそれも古いやり方では、
成就はしない。

土光さんの「モーレツ経営」も、
東芝では失敗し、
真藤さんも電電公社の体質まで、
変えることはできなかった。

だから最後に、
レーズ・パスカル。
鹿島茂編訳『パンセ抄』から。
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「人を効果的にたしなめ、
その人が誤っていることを教えるには、
その人がどの方向から、
ものごとを見ているかを
しっかりと見極めなければならない」

「というのも、
その人が見ている方向からは、
ものごとはたしかに真に見えるからだ」

「そして、それが真に見えることを、
認めてやる必要がある」

ここがパスカルの真骨頂。

「しかし、同時に、
別の方向から見ると誤っている事実を、
発見させてやらなければならない」

「そうすれば、その人は満足するだろう」

人間の心理。

「というのも、
自分が誤っていたのではなく、
全方向的に見入る術(すべ)を
欠いていたにすぎないと
気づくはずだからだ」

ここで人間の本質を突く。

「人は、全方向的に見ることができない
と言われても腹を立てないが、
誤っているとは言われたくないものである」

激怒して改革を唱えても、
すぐには改革は成就しない。

別の方向から見ると誤っている。
その事実を発見させてやることだ。

パスカルは鋭い。

〈結城義晴〉

2020年10月10日(土曜日)

台風14号の極端気象と日本学術会議の「Conflict」

台風14号。

それでも本土に上陸しなかったのは、
全体としては助かった。

被害を受けたのは、
紀伊半島から東海地方、
伊豆諸島や伊豆半島、
神奈川県南部、千葉県南部。

伊豆諸島の三宅島や御蔵島では、
「50年に一度」の豪雨・突風で、
大雨特別警報。

三宅島にも、
せんだい、スーパーTsuchiyaなど、
スーパーマーケットがある。

昨年の台風15号や19号はすごかった。
だから想定される地域は、
早めの警戒態勢を敷いた。

木本昌秀東京大学教授の警告通り。
[極端気象]
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木本先生は大気海洋研究所教授で、
日本の気象の最高権威。
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その提言は、
地球温暖化による「極端気象」に備えよ!

地球温暖化は確かに進んでいる。
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そのため環境というピンボールの台が、
傾いてしまった。
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だから降る雨の全体量は同じでも、
集中豪雨が発生する。 202001_kimotoslide10
今回の台風の豪雨の原因もこれだ。

木本先生との対談の[結城義晴の述懐]。
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「真理を探究する科学者の識見においても
“地球温暖化”は明白で、
深刻な状況に追い込まれている」

「全人類にとって、
“ゼロエミッション”は必須の要件である」

「エミッション」は「排出」。
炭素の排出を「ゼロ」にすることが、
「ゼロエミッション」である。

結城義晴の述懐。
「企業を経営し、
店舗を運営する者としては
“リスクマネジメント”が
これも必須の課題である」

「そのことを強く強く認識させられた」

木本教授に対しては、
「東京大学教授のエリート感はまったくない。
反骨の研究の徒である。
それは京都大学やUCLAの土壌が
生み出したものだろう」

いま、反骨の研究者の存在は重要だ。
体制側に立った研究者は、
体制に迎合する。忖度する。

そこからは真理が見えてこない。

日本学術会議の問題。
新会員候補6人の任命を、
菅義偉新首相が拒んだ。

火曜日の10月6日に、
政府が公開した文書には、
各領域で実績のある新会員が列記され、
任命を拒否された6人の学者は、
黒く塗りつぶされている。
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1949年に日本学術会議が発足した。
その式典での吉田茂総理の祝辞。

朝日新聞の天声人語にある。

「日本学術会議は、
もちろん国の機関ではありますが、
時々の政治的便宜のための
“掣肘”を受けることのないよう、
高度の自主性が
与えられておるのであります」

「掣肘」は「せいちゅう」と読んで、
あれこれと干渉して、
自由に行動させないこと。

この吉田茂発言は、
学者に対しても自立性を求めているし、
時々の政治に対しても暴走を戒めている。

吉田茂という腹の座った政治家は、
「金は出すが口は出さない」を貫徹した。
それが結局は、政治のため、
国民のためになる。

ただし今回、
学術会議候補者の任命に際して、
拒否理由は説明されなければならない。

「総合的・俯瞰的」ではわからない。

菅首相がちょっと、
孤立してきたらしいところも、
気にかかる。
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私のマネジメント講義を聞いた人は、
わかるだろう。

ピーター・ドラッカーも、
ケン・ブランチャードも、
「対立(Conflict)」こそが、
マネジメントには必須であるとする。

ドラッカー。
「マネジメントの意思決定は、
全会一致でなされるようなものではない」
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そしてこうも言う。
「意見の”対立”を見ない時には
決定を行ってはならない」

「ある案だけが正しく、
その他の案はすべて間違っていると
考えてはならない」

「自分は正しく、
他の人は間違っていると
考えてもならない」

対立を排除してはならないし、
反骨の研究者の存在は貴重である。

会社組織にも、
自分の意見をまっすぐに言う人間は、
必ず必要である。

その対立した意見や知見を、
正しく評価するリーダーを、
組織は求めている。

〈結城義晴〉

2020年10月09日(金曜日)

ライフ決算記者会見の岩崎高治「守る・攻める・変える」

今日は朝一番で東京大手町。
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毎月通っていた検査と診察は、
この新型コロナウイルス禍で、
2カ月に1回くらいに減らした。

大手町プレイス内科。
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私の主治医は田嶼尚子先生。

テレワークであまり歩かなくなった。
そのうえ私の場合は、
海外出張が激減した。
取材や講演の機会も減った。

そうすると、動かない。
しかも妙にワインを飲み過ぎる。

検査の結果は、やはり思わしくはない。
田嶼先生はそれでも、
患者のモチベーションを下げはしない。
絶対に褒めるし、前向きにしてくれる。

これこそ名医だ。

今日は最後に、
季節性インフルエンザワクチンを
注射してもらった。

高齢者はちょっと時期が早い。
ありがたい。

午後の3時からは、
上半期決算記者会見は、
㈱ライフコーポレーション。
丸の内二重橋ビルの東京商工会議所5階。

岩崎高治社長は上機嫌。DSCN22190

私はオンライン会見のほうに参加した。IMG_89940

今年はオンラインとリアルの両方で会見。
つまりマルチチャネル。

まるでライフの営業のようだが、
そのために大阪開催の記者会見は中止。
その大阪はずっと、
森下留寿専務取締役(右)が発表していた。

だから今日は岩崎さんとともに、
森下さんも出席した。DSCN22300
この中間決算の上期業績は、
営業収益が3867億3800万円、
前年同期比9.4%増。

営業利益は169億1400万円で204.0%増。
経常利益も173億3500万円で190.4%増。
親会社に帰属する当期純利益は、
117億500万円で205.4%。

利益はいずれも前年同期の3倍前後。

結果として、
営業利益率は4.37%、
経常利益率は4.47%。

いつも1%台だったライフの利益率。
4%台というのは、
高度成長時代にもあったかどうか。

オンライン参加だったので、
広報にちょっとだけ聞く、
というわけにはいかなかった。

既存店は売上高が前年比8.5%増、
客数は6.0%減、客単価が15.4%増。

巣ごもり消費、買い溜め購買。
コロナ禍の大トレンドだった。

商人舎流通SuperNews。
ライフnews|
第2Q営業収益3867億円・利益3倍/ネットスーパー140%

岩崎さんの話で印象的だったこと。
三つの軸をもって政策を決定し実行した。

第1に「守ること」
第2に「攻めること」
第3に「変えること」
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COVID-19から攻められ続けた半年。
だから経営上も守ることは重要だ。
詳細に厳密に継続すべきだ。
つまり徹底すること。

しかし守ってばかりでもいけない。
だから攻めることは絞り込んで明確に。

そして「変化させること」と、
岩崎さんは言ったが、
私は「変えること」だと思った。

これだけの利益が出たのだから、
「変えること」に投資しなければ、
それこそもったいない。

守ること・攻めることは、
現在のためだが、
変えることは、
未来のためだ。

それがよくわかっている。

岩崎さん、
結果がよかったから、
機嫌がよかったのではない。

結果をつくったから、
機嫌がよかったのだ。

最後に、
食料醸界新聞の関西の記者から質問。
「大阪に進出した某DSのこと、
どう思いますか?」

これはロピアのこと。

岩崎さんは、
「まだ見ていないし、
他社さんのことはお答えできません」

その通りだろう。

実は見に行ったが、
ロピアの前に平和堂の店に行って、
夏原平和会長と遭遇して、
結局、ロピアには行かなかったらしい。

しかしこの質問に関して一言。
ロピアは「DS」ではない。
念のために。

DSがあんな店づくりはしない。
あんな品揃えはしない。

久々に「折々のことば」
朝日新聞一面コラム。
第1958回。

今日の哲学教師が、
教え子に料理を出すのは
教え子の気に入る味
だからではなく、
教え子の味覚を
変えるためである。
〈ヴィトゲンシュタイン〉
ヴィトゲンシュタイン
編著者の鷲田誠一さん。
「哲学だけではない。
ほんとうの助言、ほんとうの学びは、
同じものでもこれまでとは違うふうに
見るよう誘うものである」

岩崎さんの「変えること」を、
ヴィトゲンシュタインも語っている。

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン。
オーストリア出身の哲学者。
ピーター・ドラッカーより20歳ほど上。

イギリスのケンブリッジ大学で、
あのバートランド・ラッセルの弟子となった。
メイナード・ケインズとは親友だった。

「考えるとは、
あれこれと思い量ること」

「見たいものを
見たいように
見ることではなく、
ものと交わり、
ものに促されつつ
おのれの視力を
矯正しつづけること」
〈『反哲学的断章』(丘沢静也訳)から〉

見たいものを、
見たいように、
見る。

安心できるし、気分はよい。
ドナルド・トランプも菅義偉も。
あなたも私も。

しかしその誘惑は退けねばいけない。

〈結城義晴〉

2020年10月08日(木曜日)

寝屋川市へのさとう出店とイオン・セブン&アイの上半期決算発表

今日の10月8日、
大阪府寝屋川市に、
㈱さとうの986㎡店舗がオープン。
業態はスーパーマーケット。
バナーは「フレッシュバザール」
その「寝屋川公園駅前店」
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JR西日本の学研都市線寝屋川公園駅の前。
住所は寝屋川市打上高塚町。

話題のロピア寝屋川店(略称)や、
アル・プラザ香里園とは、
ずいぶん離れていて、
直接競合はしない。

さとうのフレッシュバザールは、
むしろ寝屋川のもう一つの激戦地、
寝屋川南地区に近いし、
イオンモール四条畷とも競合する。

寝屋川南地区には、
平和堂・バロー・万代が並んでいる。

平和堂は「フレンドマート」で、
「ビバモール寝屋川」に入居する。
それからバロー寝屋川店、
さらに万代寝屋川宇谷店。

いずれにしても競合の激しいエリアへの、
さとうの勇気ある出店である。

京都府福知山市に本部を置くさとうは、
食品スーパーマーケットを66店、
大阪府にはもう5店出ている。

ローカルチェーンは、
県単位に収まっていては、
成長を見込むことはできない。

もうリージョナルチェーンの時代である。

そして異なる商勢圏に出店していくとき、
わが社、わが店の他との違いが必須となる。

それを「ポジショニング」という。
そして2020年の今、
「ポジショニング戦略」は必須である。

この戦略に関しては、
誤解も多いのだけれど。

さて昨日今日と、
上半期の決算発表が相次いでいる。

「第2四半期」と呼ぶことが多くて、
その営業収益や売上高は、
第2四半期までの累計で公開されることが、
これまた多い。

私は「上半期」と呼ぶのも好きだ。

昨日の10月7日は、
イオン㈱の上半期決算発表。
コロナ禍でオンライン記者会見。
もう当たり前になった。
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吉田昭夫社長は、
このオンラインでの発表もうまい。

イオンnews|
営業収益4兆4705億円・純損失575億円/6~8月利益改善

3月から8月までのイオンは、
営業収益4兆2705億万円で、
前年同期比0.5%減。

私は最近は、
「コングロマーチャント」と呼んでいるが、
それだけにコロナの影響が出た。

営業利益は39億200万円で60.7%減、
経常利益は279億7600万円で64.9%減。
当期損失は575億5600万円。
前期は37億9100万円の当期利益だった。

吉田さんの発言。
DSCN21650
「新型コロナウイルスの影響で
変化が早くなった」

「スピード感を持って対応し、
変化からチャンスを見出したい」

これこそ「コロナは時間を早める」である。

右端が井出武美イオンリテール㈱社長。
DSCN21730
「仕入れと在庫の適正化を進めて、
粗利益率が改善できた」

井出さんの着眼点もとてもいい。

コロナ禍の中では「入りと出」を把握し、
「在庫」の動きをしっかり察知して、
そのうえで「適正化」を目指す。

「適正」とは何か、
適正値は何か。

それらをしっかり議論してほしい。
その根拠を知覚してほしい。

一方、今日は、
セブン&アイ・ホールディングス。
こちらは電話記者会見。

ええっと思ったが、
あらかじめメールで教えられた、
〈050〉から始まる電話番号に、
こちらから電話する。
そのあとパスコードとピンコードを打つ。
これもメールで教えられている。

すると電話で声が聞こえてくる。
ビジュアルはない。

資料だけ示されているから、
これはネットで見る。

延々と井阪隆一社長が、
電話の向こうから説明する。
原稿や資料を読んでいるようでもあり、
時々は自分の言葉が加わる。

しかし残念ながら、
その表情などが見えない。

写真は去年のこの時期の上半期決算発表。
DSCN76589-448x333

米国スピードウェイの買収の時も、
電話記者会見だった。
私はそれを聞くことができなかったが。

しかし余計なおせっかいだろうが、
これはすぐにオンラインに変えたほうがいい。

日本を代表する上場企業。
イオンと並ぶコングロマーチャント。

トップは自分の顔を見せて、
コミュニケーションしたほうが、
絶対にいい。
そうしなければいけない。

そのセブン&アイの上半期決算。
セブン&アイnews|
第2Q 収益2兆7884億円15.8%減/国内コンビニ10%減

営業収益2兆7884億円で、
前年同期比15.8%減。

営業利益1797億3800万円で12.4%減、
経常利益1752億4100万円で13.8%減。
親会社に帰属する当期利益は、
34.5%減ながらも725億1900万円。

イオンは当期損失だったから、
よく頑張った。

私はスピードウェイの買収を評価した。
一度、挫折しかかったときには、
「もったいない」を繰り返した。

この電話会見でも井阪さんは、
日米のセブン-イレブンを、
グループのコアとすると表明。

前から言っているが、同感だ。

その日米セブン‐イレブンなどの総売上高は、
上半期で5兆4211億6700万円。
これは9.6%減だったが、
セブン&アイの半期営業収益の1.94倍。

しかも米国のコンビニは、
いまだ寡占状況まで時間がある。
つまり伸びシロがある。

成長軌道を描くことができる。

もちろんイトーヨーカ堂や、
ヨークベニマルとヨーク、
そごう西武なども見放していいわけではない。

現時点で強化するのは、
「首都圏での食品販売」らしいが、
この計画には成長性のビジョンが足りない。

ずっと先の、長いスパンで見れば、
やがてヨークベニマルも、
統合していくのだろうが、
このあたりの井阪さんの説明は、
用心深すぎるか。

イオンとセブン&アイ。
オンラインと電話。

コミュニケーションにこそ、
何よりも神経を使わねばいけない。

〈結城義晴〉

2020年10月07日(水曜日)

「大きな街の私だけの店」と第2四半期決算三者三様

今月の商人舎標語。
それは月刊商人舎の10月号の、
[Message of October]
大きな街の私だけの店

小さな島に、
たった一店。

その店がとてもよく考えて、
お客さまをよく知って、
いつもその要望に応えてくれたら、
それはとても幸せな島だ。

しかしその店がちょっと迷って、
お客さまの期待に背を向けて、
儲けしか見えなくなったら、
すぐに不幸な島となる。

小さな島の、
たった一店は、
とても、
責任が重い。

しかし大きな街の、
たくさんの店はどうしたらいいか。
どうすれば幸せなお客さまをつくれるか。
幸せな街になれるか。

大きな街のすべてのお客さまの心を、
小さな島のたった一店のように、
ぜんぶとらえようとしたら、
それはできるのか。いやそれはできない。

だから大きな街の、
お客さまをよく知る店は、
それぞれに私のお客さまを見つけて、
その私のお客さまを喜ばせる。

大きな街の、
私のお客さまのための、
たった一店になろうとする。
ほかにない一店であろうとする。

しかし大きな街の、
たくさんの店がみんな、
同じような商売をしたら、
それは幸せな街なのか。

そして大きな街の、
たくさんの店がみんな、
価格だけで競うとしたら、
それでお客さまは喜ぶのか。

これは小さな島の
たった一店が、
儲けしか考えないのと
同じだ。

かくて、大きな街で、
お客さまをよく知る店は、
私のお客さまを見つけて、
そのお客さまのための店になろうとする。

大きな街で、
小さな島の悪い一店になったら、
すぐにお客さまから見放されて、
消えてなくなる。

だから大きな街で、
私のお客さまのための、
たった一店でなければならない。
ほかにない一店でなければならない。
〈結城義晴〉
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雑誌の責了が、
今日まで伸びてしまった。

しかも今日は、
5000字ほど書いた原稿が、
一瞬にして消えてしまった。

スタッフ総がかりで、
私のパソコンを探してくれたが、
見つからず。

これは気分が落ち込む。

しかし、そこで気を取り直して、
全部、はじめから書き直して、
何とか完成させた。

こんな時の心構え。
気持ちの奮い立たせ方。

書き直したら絶対に、
前よりもいい原稿が書ける。

そう信じることだ。
それしかない。

今日もそうして、
書き直した。

しかし紙の原稿用紙に、
万年筆で原稿を書いていた時代は、
こんなことはなかった。

アナログにもいいところがある。
それも忘れたくはない。

さて商人舎流通SuperNews。
上場各社の上期決算が発表されている。

イオンモールnews|
営業収益1261億円21.7%減・純損失109億円

第2四半期までの累計連結決算。
ショッピングセンター事業の3月~8月。
新型コロナウイルス感染に直撃されて、
営業収益は対前年同期比78.3%、
営業利益は40.3%、経常利益は35.7%。
純損失109億円。
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それでも、
営業利益率9.3%、経常利益率7.1%。
高収益体質は変わらない。

一方、
サンエーnews|
営業収益1030億円2.8%増・経常利益2割減

沖縄のサンエーの上半期は、
営業収益1030億で2.8%増。
しかし営業利益は14.5%減、
経常利益は21.3%減。
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6割を占める食品は好調だったが、
衣料品や外食が減収で減益となった。
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総合スーパー業態や、
ショッピングセンターは、
この半年、苦戦した。

それでも営業利益率4.8%、
経常利益率5.0%。

よく踏ん張ったと評価できる。

さらに、
オークワnews|
営業収益1401億円・7.3%増/営業利益470%増

和歌山に本拠を置くオークワ。
上半期営業収益は1401億円で7.3%増。
営業利益はなんと470.4%増、
経常利益も385.4%増。

こちらはコロナ禍の巣ごもり特需。

営業利益率3.0%、
経常利益率3.1%。
水準に達してきた。

オークワは今、
何をやるか、何に投資するか。
余計なお世話だろうが、
この原資を前向きに使うべきだ。
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イオンモールは減収・減益・純損失。
サンエーは増収・減益。
オークワは増収・増益。

三者三様だった。

COVID-19禍の緊急事態宣言などは、
業態ごとの成果に、
大きな格差を生んだ。

しかしコロナは商人を鍛える。

だからこそ、
私のお客さまのための、
たった一店でなければならない。
ほかにない一店でなければならない。

〈結城義晴〉

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