結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年04月15日(水曜日)

「行ってきまーす」の明日への希望

「ほぼ日」の糸井重里さん。
巻頭エッセイは「今日のダーリン」。
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「みんなが”その場を動かないで”
と言ってるときに、
動かなくてはならない人がいる」

これをテーマに歌を創ろうとした。
もちろん作詞担当で。

そこで病院に行くお母さんが出てくる。
「家のなかにいるこどもに
“行ってきまーす”と言って、
出かけようとしている女性」

「こどもたち 行ってきます
いいこでいてね」

そんな一行をノートに書きつける。

「この人はどこへ行くのかといえば、
仕事場に行くのだ。
最初のイメージでは、
その仕事場とは病院だ」

「そして、その人にも、
同じようにこどもがいたりする。
さらには、その、
病院に向かうおかあさんに代わって、
こどもを世話してくれる
保育士さんがいる。
そして、その保育士さんにも
こどもがいて…。」

「みんな、いちばん大切な
かわいいこどもに、
せいいっぱいの笑顔を向けて、
“行ってきまーす”
と言ってるのだろう」

同じように、
物を運ぶトラックの運転手さん。
鉄道の線路の保守点検をしている人たち。
デリバリーの食事をつくっている人。

「そういう人たちと、
そのこどもたちのことを想像した」

いい話だ。
糸井さんの歌が完成することを祈りたい。

私もこの発想から、
イメージが広がった。

春キャベツ。
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農業を営む若いお父さんとお母さん。
秋に種を撒いて、
春に収穫する。

内部まで黄緑色を帯びて、
みずみずしくて、
味のよい春キャベツが育つ。

それを収穫する。

朝、子どもたちに、
「行ってきまーす」と言って、
畑に出かける。

子どもたちは、
学校が休校だから、
うちにいる。

二人して一所懸命収穫する。

そのキャベツ。

軽トラックに積んで、
契約しているスーパーマーケットにもっていく。

お店の入り口に、
「産地直送」の売場がある。

そこにキャベツを並べる。

お店では店長さんがやって来て、
にこやかに挨拶してくれる。

その店長さんも、
朝、うちを出るときに、
子どもたちと奥さんに、
「行ってきまーす」

若いチーフも、
パートタイマーさんも、
キャベツの売場にやってきて、
「ありがとう」と声をかけてくれる。

若いチーフは、
朝、うちを出るときに、
お父さんやお母さんに、
「行ってきまーす」

パートタイマーさんも、
うちを出るときに、
子どもたちに、
「行ってきまーす」

そうやって、
産地直送の売場ができる。

新型コロナが感染拡大していても、
全員がマスクをして、
手洗いをして、
体温を測って、
仕事する。

売場にはお客さんがやって来る。
そのお客さんも、
うちを出るときに、
家族に言う。
「行ってきまーす」

こうして、
キャベツは収穫され、
運搬され、
売場ができて、
家庭に届けられる。

キャベツだけではない。
お魚もお肉も、
お惣菜も、
牛乳も卵もパンも、
菓子も加工食品も、
ドリンクも。

それぞれに「行ってきまーす」と、
朝、うちを出て、
働いた人たちの成果として、
生産され、製造される。

それを運ぶのが、
問屋さんや物流会社の人たちだ。
この人たちも家族に、
「行ってきまーす」

店に着いたら、
部門ごとに荷受けをして、
バックヤードに運び、
売場に陳列する。

みんな「行ってきまーす」と言って、
うちを出て、働いている。

在宅勤務はできない。

テレワークやリモートワークと言われる。
けれどそれができない仕事こそ、
いま、とても大切だ。

だからこそテレワークできる人たちは、
全員が徹底的にそれをやって、
一刻もはやく、
感染拡大を抑えたい。

いま、このときこそ、
一つひとつの仕事の大切さが、
実感される。

仕事こそが、
コロナウイルスと闘う時の、
私たちのよりどころになると思う。
礎になると思う。

その真剣さを見ていた子どもたちが、
真剣に考えて、
将来、自分の仕事を選ぶ。

それが私たちの未来だ。

小さな喜び、
ささやかな幸せ、
明日への希望。

それが「行ってきまーす」である。

〈結城義晴〉

2020年04月14日(火曜日)

「過熱報道への要望」と「コロナ・ワクチン」と「Just in House」

商人舎SuperNews。
スーパーマーケットnews|
3団体が過熱報道自粛を要請

全国的に異常事態宣言が発せられ、
営業自粛の要請を受けた業種業態。
逆にスーパーマーケットなど、
顧客が殺到する業態。
こちらの現場は疲弊している。

国民はストレスの極みにある。
理不尽なクレームをつける顧客もいる。

全員手袋せよ。
一人がレジを通過したら、
その都度消毒しろ。
セルフレジを入れろ。
野菜も果物もすべて袋詰めしろ。

激しく怒鳴ったり、
長々とまくし立てたりする顧客もいる。

あの店からコロナ感染者が出たといった、
デマやフェイクの情報が、
ネット上を駆け巡ったりもしている。

現場は本当によく頑張っている。

この現状を鑑みて、
3つの協会がマスコミに向けて、
過熱報道の抑制を要請した。

マスメディアも、
視聴率や部数や広告といった観点は、
二の次にして報道すべき時にある。

以って自戒とすべし。

スーパーマーケット3協会だけでなく、
出来ればもっと枠を広げて、
消費産業を挙げて、
アピールしていくのがいいと思う。

要請だけではいけない。

こういったことは利益抜きに、
自分都合だけでなく、
やり遂げるという決意を見せることも、
必要となる。

昨年末に掲げた2020年の商人舎標語。
「世のため、人のため。」

さて新型コロナウイルスのパンデミックに、
いいニュースと、
悪いニュース、
それを打ち消すニュース。

まず、いいニュース。

イギリスの「タイムズ」の報道を、
日経新聞が伝えた。
孫引きで恐縮。

オックスフォード大学の研究チームが、
新型コロナウイルスのワクチンを、
早ければ9月にも実用化する。

候補となるワクチンは、
4月中に臨床試験を始める予定。

リーダーのサラ・ギルバート教授。
「8割の確率で新型コロナに効く」
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凄い。

一方、悪いニュース。
コロナウイルス感染から回復した患者が、
再発するケースがあるという研究発表。

これは深刻だ。

感染者数が減ったからといって、
ロックダウンを解除できない。

しかしそれに対する反論。
世界保健機関(WHO)の感染症専門家、
マリア・ファンケルクホーフェ博士。
〈UN Web TVより〉maria
再び新型コロナにかかった患者について、
体内のウイルスが再活性化したのか、
新たに感染したのかは不明、と発言。

テドロス事務局長も。
「新型コロナの感染は非常に速い一方、
減速はかなり遅い」

「規制はゆっくりと
解除されなければならない」

2020年の新型コロナは、
2009年の新型インフルエンザより、
「致死率が10倍高い」

だからこそ冷静に恐れよう。

さて今日は午後から、
横浜商人舎オフィスに、
㈱ダイエー出身のお二人がやって来てくれた。
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當仲寛哲さんは、
USP研究所代表取締役所長。
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もう、おなじみのITの超級専門家。

佐々木桂一さんは、
リテイリングワークス㈱代表取締役。
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ダイエーから、
㈱ジェーソンへ移籍し、
2003年、代表取締役社長。
さらに大黒天物産㈱副社長、
㈱富士薬品専務など歴任。

新型コロナのパンデミック。
この状況は日本の小売業をどう変えるか。
どう変わらなければならないか。

ソーシャルディスタンシングで大いに語り合った。

今日の私は聞き手に回った。
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充実した時間だった。
写真撮影の時だけマスクを外した。
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感謝したい。

最後に日経新聞「オピニオン」
[Deep Insight]
コメンテーターの中山淳史さんが書く。
「技術革新は家でも起きる」

フランスでは3月中旬から、
ロックダウンが続いている。
多数のレストランが閉鎖に追い込まれた。
そのなかでシェフたちが、
ある連鎖的な行動をとった。

それが反響を呼んでいる。

大切なレシピをインターネットで公開したのだ。

それに反応して、世界中の数百万人が、
ユーチューブやインスタグラムを閲覧し、
自宅で料理を楽しむようになった。

いい話だ。

南仏ニースの松嶋啓介オーナーシェフ。
ミシュランの一つ星を獲得した。
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松嶋シェフも「減塩レシピ」を投稿した。

「経済的な見返りは期待していない。
喜んでもらえればうれしいのと、
日ごろの問題意識をこの際知ってもらい、
食生活や習慣が変わる一助になれば」

素晴らしい。

コメンテーターは、
キーワードを提案する。
「Just in House」

テレワークを実施する企業は、
99カ国約4千社を対象にした調査で、
89%に達した。

「世界で起きているのは
オフィスや工場、学校から
家へのとてつもない規模での人口移動だ」

2020年以前のコンセプトが、
「ジャスト・イン・タイム」なら、
これからは、
「ジャスト・イン・ハウス」

巣ごもりやネスティングは、
コロナ禍の後の消費に、
大きく影響を与えるに違いない。

それができる人は、
家で仕事する。
家で食べる。
家で料理する。
家で楽しむ。

小売業はそれらを手伝う。
「ジャスト・イン・ハウス」

店は、だから、
ザ・サードプレイスであることを、
もっともっと追求しなければならない。

新型コロナワクチンの朗報は、
次の時代の仕事や事業を、
大きく広げてイメージさせてくれる。

貫かれるはずの、
「世のため、人のため。」は、
まったく変わらない。

〈結城義晴〉

2020年04月13日(月曜日)

ローマ教皇の「恐れることはない」と「我々の冷静な恐れ」

Everybody! Good Monday!
[2020vol⑮]

2020年第16週。
4月第3週。

月曜日だけれど、
曜日感覚が麻痺した感じだ。

安倍晋三首相の緊急事態宣言が、
先週火曜日の4月7日。

翌8日水曜日の午前0時から、
緊急事態が始まって、
東京都との間に食い違いがあって、
日本は混迷した。

その間も、感染者数は増え続けた。

ジョンズ・ホプキンス大学の集計。
全世界のコロナ感染者数は今日11時で、
184万6963人。
死者数は11万4101人。

アメリカは感染者55万6044人で、
死者数2万2073人。

ニューヨーク市では昨日の12日夕方で、
感染者10万4410人、死者6182人。

全米の感染者の2割弱、
死者の4分の1を占める。

ああ。

一方、中国の情報は、
なぜか4月3日でストップしていた。
その時点で総感染者数8万1620人、
死者数3322人だった。
が、今日13日に中国政府が新情報を発表。
有症感染者の累計は8万2160人、
前日比108人増。

数字そのものは、
どこまで事実かどうかはわからない。

しかし中国・湖北省武漢市から始まった、
この新型コロナパンデミック。

その責任は永遠に消えることはない。
しかし感染拡大を抑制することはできる。
われわれは、
我々のやり方で、
それを可能とする。

バチカンのサンピエトロ大聖堂では、
フランシスコ教皇が、
「復活徹夜祭」の説教をした。
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今年のイースター(復活祭)は、
昨日の12日だった。

「恐怖に負けてはいけない。
これは希望のメッセージだ。
私たちに向けられた言葉だ。
神様はまさに今夜、
この言葉を繰り返される」

イースターは西暦30年に、
イエス・キリストが処刑され、
3日目に復活した日。

ちょうど1990年前のことだ。

その復活のときイエスは言ったとされる。
「恐れることはない」

復活徹夜祭には毎年、
数千人が集まる。

しかし今年は封鎖措置で、
誰もいない大聖堂で教皇は祈りをささげた。

恐怖に負けてはいけない。
ただし冷静に恐れること。

やれること、
やるべきことは、
やろう。
やれないことは、
やらない。

それがわれわれのやり方だ。

今日はテレワーク中の商人舎オフィスに、
福島道夫さんがやって来てくれた。
(株)ロピア前社長で現在、営業統括。IMG_61400

ソーシャルディスタンシングで、
2時間近くも話し合った。
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ありがとう。

さて、月刊商人舎4月号。
特集「真似る。」
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特集のサブタイトルは、
「模倣の経営」の真贋

これはブログの愛読者の皆さんにも、
全員に読んでもらいたい特集です。202004_contents
特集のまえがきは、
「希少性と模倣困難性」
もちろん結城義晴。

それから商人舎特任研究員の嶋内仁。
「チェーンストア経営の模倣理論」
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トップマネジメントはもちろん、
経営幹部、その幹部を目指す人、
店長やバイヤー、チーフまで、
必読の理論です。

さらに鈴木哲男「巨匠の提言」
真似る技術と模倣できない企業
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[店舗クリニック&徹底議論]
鈴木國朗×結城義晴
真似るな! 学べ!!
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充実のラインナップです。
㈱商業界が自己破産して、
「販売革新」や「食品商業」が出ないから、
その分まで熱意を込めて編集した。

ご愛読をお願いしたい。

そして[Message of April]
創意を尊びつつ良いことは真似よ

創意を尊ぶ。
良いことを真似る。
その両方を行きつ戻りつしながら、
創造と模倣を進化させる。
これこそイノベーションである。

あるとき、
私は気づかされた。
故倉本長治は、
古き良き、美しき日本語を使って、
イノベーションを教えたのだ。

その倉本長治が創設した㈱商業界が、
2020年4月2日、
自己破産を申請して倒産した。
ずっと前にイノベーションが止まって、
そのコンセプトを信条とした会社が潰れた。

歴史の皮肉が顔を出したのだろうか。
企業存続の鉄則が貫かれたのだろうか。
見えざる神の手が働いたのだろうか。
時代がそれを要請したのだろうか。
はたまた自壊だったのだろうか。

ドラッカーが説くイノベーションとは、
新しい、より大きな富を生み出すことだ。
ここでいう「富」とは「人々の幸せ」である。
そして人々の幸せを願って仕事する限り、
会社や店が潰れることはない。

真似ることはイノベーションの一面である。
しかし誰も真似のできないほどの、
完璧な真似ができれば、
それはおのずと
創意を生み出すことになる。

その創造と模倣とが、
「模倣困難性」を創出する。
そしてこの模倣困難性が
持続的競争優位を
約束してくれる。
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では、みなさん、今週も、
われわれには我々のやり方がある。
Good Monday!

〈結城義晴〉

2020年04月12日(日曜日)

[日曜漫歩]菜の花

最初の日に神は、
天と地をつくった。
そして暗黒の闇の中に、
光を生み出して、
昼と夜とを分けた。
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次の日に神は、
空をつくった。

次の次の日には、
海と地をつくって、
地に植物を茂らせた。

次の次の次の日には、
太陽と月と星をつくり、
その次の日に、
魚と鳥をつくった。

さらにその次の日に神は、
動物をつくった。
この日、神は自分に似せて、
男と女を創造した。
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そして最後の七日目に、
神は、休んだ。
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以来、日曜日は安息の日となった。

その2020年3月最後の日曜日。

神は珍しい雪を降らせた。
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桜は満開にした。
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雪と桜を融合させた。
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神は安息の日に、
人間たちにも和合を求めた。DSCN02790

世界にコロナウイルスが拡大していた。
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今日の日曜日、
全世界の感染者は183万人を超えた。

アメリカ合衆国が最多の54万人を超え、
スペインが16万人超、
イタリアが15万人超となった。

全世界の死者は約11万人となった。

アメリカは約2万2000人に達した。
イタリアが約2万人で、
スペインが約1万7000人、
フランスが約1万4000人となった。

アメリカの死者はこの1週間で、
1日2000人のペースで増えた。
合衆国政府は最終的な死者数は、
20万人になる可能性があると警告した。202003_message
日本国内では感染者は7268人となった。
死者は138人となったが、
退院者も767人に増えた。

東京では今日166人の感染者が判明した。
神奈川では31人の感染が確認された。

東京も神奈川も、
緊急事態宣言が発せられた。

その横浜のセブン‐イレブン。
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明るい店内。
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チェックスタンドには、
透明なビニールが張られた。
ソーシャルディスタンシングが施された。IMG_61040

こんなとき神は、
菜の花を地上におくった。
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水色の空と白い雲と黄色の菜の花。IMG_61080

菜の花は盛り上がった。
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ナのナのナの花 ナニヌネノ。
ナのナのナの花 ナニヲイウ。
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雪の中の桜から、
曇り空の菜の花へ。

神は季節を一歩、
前に進ませた。

〈結城義晴〉

2020年04月11日(土曜日)

「歯に衣着せぬ」日経社説の「損得より善悪」

緊急事態宣言後の週末。

午後1時半、
不要不急の要件で、
東横線に乗った。

最後尾の車両で私を含めて4人。
ソーシャルディスタンシング。IMG_60960

しかし自由が丘のいつもの花屋。
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フランスのパリ17区に、
モンソー公園がある。

公園一角のアパルトマンの地階に誕生。
だから店名はモンソー公園の花。
fleursは英語でflowers。

日本でフランチャイズ展開するが、
その本店がこの自由が丘店。

店の外の街路に面した売場には、
2人ずつ3組の顧客。

結構、賑わっている。

みなさん、もっと離れてください!
ソーシャルディスタンシングですよ!!

店の前の遊歩道には、
チューリップが咲く。IMG_61010

春の花々も。
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花屋は生活必需の店か。
これは極めて重要な論点だ。

私は2020年の日本ならば、
「生活必需」に入ると思う。

だからソーシャルディスタンシングを、
もっともっと意識して、
爽やかな春の土曜日の午後に、
花の美しさを顧客に見せる。

それは生きるに必需のことだ。

日経新聞社説。
私、ときどき注文をつけるが、
今日は実にいい。

他紙は「奥歯に物が挟まる」、
日経は「歯に衣着せぬ」。

タイトルは、
「休業の要請に待ったかけた国は猛省を」

いきなり言い始める。
「最後の切り札である緊急事態宣言の
効果をおとしめる仕打ちではないか」
コラムニストは怒っている。

「新型コロナウイルス対策で
幅広い業種に休業を
要請しようとした東京都に、
政府が待ったをかけた」

「都は政府と協議を重ねて
ようやく折り合い、
10日に休業要請の対象業種を発表した」

小池百合子知事はちょっと株を上げた。
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「緩やかな行動制限で
収束をめざす日本では、
個人の行動の見直しと
企業の協力が不可欠だ」

「休業して
協力しようとしている事業者を
逆なでするような迷走をもたらした
政府に猛省を促したい」

三越伊勢丹も松屋も、
首都圏などの店舗について、
デパ地下を含めて休業を継続している。
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大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、
東急百貨店、高島屋、阪急阪神百貨店は、
一部店舗は休業したり、
食品売場だけ営業したりしている。

「休業要請は外出自粛とともに、
人の接触機会を8割減らす対策の両輪だ」

「政府は外出自粛の効果を
2週間みたうえで
休業を要請する方針を示しているが、
それでは効果が薄まろう」

「危機感が高まる都に、2週間待たずに
休業要請を認めたのは当然だ。
首都圏3県も足並みをそろえれば
効果が上がる」

足並みがそろわない現状は、
「コロナ軍」からすれば、
思うつぼの敵失だ。
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「休業要請の対象から
百貨店や居酒屋を
外させたのも疑問だ」

この点も賛成である。

「百貨店は広域から集客し、
対面販売で狭い食品売り場は
感染リスクが高い」

ソーシャルディスタンシングを、
徹底できない商売。
そういった店は今、
営業してはならない。

「大手百貨店の多くは
すでに休業しており、
営業再開には業界内から
反対する声がある」

百貨店業界の見識は、
政府以上ということになる。

「居酒屋も時間を短縮するとはいえ、
酔って騒げば”三密”になりやすい」
これも正しい。

だから国や都が、
「補償」(損失を埋め合わせること)を、
「保証」(請け負うこと)して、
休業するのがいい。

店の側も売上げや利益を我慢する。

そこで「三方一両損」となる。
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「政府が休業要請に慎重なのは、
経済への打撃とともに
補償への警戒感がある」

「しかし今は感染拡大の防止が第一で、
補償がないからといって
休業しなければ危機は深まる」

最大の経済対策は、
感染拡大抑制と、
治療薬・ワクチン開発だ。

私の持論。

「海外でも休業による損失を
全額補償する国はない。
従業員給与の一定割合を給付したり、
定額を支給したりする例が多い」

「東京都の休業協力金も
50万円の定額給付である」

もちろん50万円では全然足りない。

「こうした補償なら
経済対策に盛り込んだ中小企業への
最大200万円の給付や、
1兆円の自治体向け交付金などを工夫し、
迅速に実行すれば、ある程度賄える」

「足りなければ柔軟に追加すべきだ」

それが政治だ。

真摯な議論と迅速な結論。

「今回の問題は
司令塔があいまいな実情も
浮き彫りにした」

これはマネジメントの問題だ。

「特措法は具体策を知事に委ねている。
感染状況や事業者への影響は
地域によって異なり、
地元の事情に通じた知事が
総合判断するのが望ましいからだ」

小池さんは、
「代表取締役だと思っていたら、
中間管理職だった」と、
皮肉を言った。

「国が目標を示すのはよいが、
細部にまで介入しては、
知事の手足を縛りかねない」

これもビジネスやチェーンストアの、
マネジメントの大原則だ。

日経社説は、
商売や経済の観点に立っている。
だから「歯に衣着せぬ」となった。
それが実にいい。

商売の観点の一番の原則は、
「損得より先に善悪を考えよう」
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今、倉本長治の言葉が光っている。

〈結城義晴〉

2020年04月10日(金曜日)

月刊商人舎4月号発刊とイオンWeb記者会見のcommunication

月刊商人舎4月号、本日発刊。202004_cover
通巻84号。
毎月毎月、
1冊の単行本のような雑誌を作って、
84カ月。

まるまる7年間が経過した。

読者の皆さんに、ご愛読を感謝したい。

企画から始まって、
取材や編集、執筆、
制作やデザイン、校正、
印刷、製本。
多くのプロセスに多くの人がかかわる。
雑誌づくりは総合作業だ。

すべての人に感謝したい。

今月のテーマは、
「真似る。」

ずっと頭の中にあったテーマ。

[Cover Message]
「真」に「似る」と書いて「まねる」。完璧に模倣すること。正しく見倣うこと。小売業やサービス業の商売は「真似る」ことで成り立ち、成長してきた。江戸時代のお店(たな)は、真似の殿堂だった。丁稚どんとして商売の道に入り、番頭さんの真似をし、店主の真似をし、やがて暖簾分けでお店を保有する。チェーンストアの時代になると、業界の最優秀店舗を真似して、プロトタイプをつくり、その自分のプロトタイプを真似して、多店化していった。チェーンストアは合理的、科学的、論理的に模倣するビジネス成長戦略であった。その最優秀店も、消費と流通の先進国アメリカやヨーロッパに範を求め、真似た成果であった。しかし模倣の戦略と戦術ばかりが市場にあふれ、その市場も飽和に近くなると、成長は止まり、収益性は落ちてくる。そこで独自性や差別化、差異化、そしてポジショニングが求められてくる。しかしこの局面に至っても、真似る行為の優秀性はいささかも棄損されるものではない。完璧に模倣する。正しく見倣う。そして他が真似できない境地に至る。これは実に深い。模倣から生まれた模倣困難性こそ、「真似る」ことの神髄である。

そして[contents]
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今月号はトップに、
[特別提言]
米英トップ小売業の
コロナ対策に学べ

刷り上がった雑誌を手に取る。
至福のときです。
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誰が言ったか、
やってみたい三つの仕事。

野球の監督と、
オーケストラの指揮者と、
雑誌の編集長。

さて今日は夕方5時半から、
イオン㈱の決算記者会見。

初めての試みだが、
Web決算説明会。
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映像は良くない。
音声はまあまあ。

真ん中が、
イオン㈱吉田昭夫代表執行役社長、
左が山下 昭典代表執行役副社長、
山下さんは財務・経営管理担当。
右が三宅香執行役で、
環境・社会貢献・PR・IR担当

私は横浜のオフィスで、
パソコンの大型モニターで見た。IMG_60720

初めてのことなので、
吉田さんも山下さんも、
そして三宅さんも緊張気味だった。

吉田さんは社長就任後、
初めての本決算説明会だが、
そつなく語っていた。
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内容は商人舎SuperNewsで。
イオンnews|
営業収益8兆6042億円過去最高も経常利益4.3%減

営業収益は過去最高で8兆6000億円。
前年同期比1.0%増。
期中に消費増税などあって、
この図体でよく増益したと思う。

営業利益が2155億3000万円で1.5%増、
経常利益が2058億2800万円の4.3%減。

㈱セブン&アイホールディングスは、
年商6兆6443億5900万円で、
前年同期比2.2%減だった。

こちらの商人舎SuperNewsは、
セブン&アイnews|
’20年2月期年商6.6兆円2.2%減も経常利益2.8%増

セブン&アイは決算説明会を中止した。

減収だったが、営業利益(3.1%増)、
経常利益(2.8%増)、純利益(7.5%増)は、
いずれも過去最高益。

営業利益率は6.4%、経常利益率は6.3%。

両者の収益の違いが鮮明になった。

さてイオンの説明会。
コロナウイルスの影響。
営業的には第3四半期までピークが続き、
年末商戦まで影響を受けるとの見方。

総合スーパー、スーパーマーケット、
そしてドラッグストアは好調だけれど。

したがって、今期予想は、
営業収益は8兆から8兆4000億円だが、
営業利益は500億から1000億円。
利益は半減、あるいは4分の1。

そうだろう。

1時間余りの説明会。
三宅さんと吉田さんの説明が、
一通り終わると質疑応答。
IMG_60800

画面の下段に2つのボタンがある。
「チャット」と「手を挙げる」。
参加したアナリストやジャーナリストが、
これを押して使命を受ける。
指名されたら質問できる。
IMG_60790

私はずっと押し続けたが、
指名されたのは記者会見の常連ばかり。

残念。

コロナが落ち着いたら、
吉田さんと直接、
じっくり話し合おう。

NHKや日経新聞の記者、
流通報道記者会の記者、
ゴールドマンサックスのアナリスト。

こんな顔が突然、アップで出てきて、
質問し、それに答える。
IMG_60780

指名された記者やアナリストは、
数字や営業のことばかり聞いていたが、
比較的あっさりと終わってしまった。IMG_60820

そのあとも映像は流れて、
4人の安ど感が伝わってきた。IMG_60830

吉田さんと山下さんが、
身振り手振りで解放感を表した。IMG_60850

三宅さんも笑顔で応えた。
IMG_60870

ご苦労様でした。
IMG_60880
Webでの説明会。
新しい試み。

とてもよかった。

しかしコミュニケーションは、
フェイス・トゥ・フェイスでなければ、
コミュニケーションにならない。

直接のやりとりをしなければ、
本質はわからないし、
本当のところは伝わらない。

それを非常に強く感じた。

コミュニケーションと情報は別物である。
コミュニケーションは知覚の対象であり、
情報は論理の対象である。
コミュニケーションにとって重要なものは
知覚であって情報ではない。

いずれもピーター・ドラッカーの言葉。

Web会議も同じだ。

これからのビジネス、
これからのチェーンストア、
これからのマネジメント、
これからの仕事。

コミュニケーションの差によって、
雌雄が決する。

間違いない。

〈結城義晴〉

2020年04月09日(木曜日)

柳井正Message「信じること」と「三方一両損」の精神

柳井正さんがメッセージを発信。
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ファーストリテイリングnews|
柳井正会長兼社長のメッセージ

「――私は今回のことを通じて、
改めて世界がつながっていることを
実感しました。

今こそ世界が強く、
ひとつになることが必要です。

感染拡大により世界が分断され、
そのつながりが切れてしまっては
ならないと思います。

私自身、そのことを
深く心に刻みたいと思います。

後から振り返ったとき、私は、
ファーストリテイリンググループが、
この危機が発生する前よりもさらに強く、
もっと社会から必要とされる企業に
なっていると信じています。

当面は全世界的に
困難な時期が続くかと思いますが、
その後にはきっと
明るい未来が待っています。

未来に希望を持ち、
健康第一でお過ごしください」
〈柳井 正〉

そして今日は中間決算報告。

ファーストリテイリングnews|
第2Q売上収益4.7%減・営業利益21%減

上半期で売上高1兆2085億円。
しかし前年同期比4.7%減。
営業利益は1367億円で20.9%減。
減収減益。

それでも営業利益率は11.3%と高水準。

減収減益の理由は、
新型コロナウイルス感染症の影響。
韓国とグレーターチャイナでの打撃。

世界26の国と地域に、
約3500の店舗を展開。

グローバル企業だからこそ、
新型コロナの影響は大きい。

「後から振り返ったとき、
この危機が発生する前よりもさらに強く、
もっと社会から必要とされる企業に
なっていると信じています」

私たちも、
この危機が去ったとき、
以前よりも強くて、
もっと社会から必要とされる存在に、
なっていると信じよう。

昨日のこのブログで、
私の見解を書いた。

まず第1に、
外出自粛と休業要請は、
同時にすべきだ。

外出自粛はこれまでもやってきたが、
休業要請や使用制限が伴わねば、
効果は半減する。

「特に東京都はすぐにもやるべきだ」
そう書いたが、
その東京都の感染者数は181人、
最多となって急速に拡大した。
大阪も92人で最多。

第2に地域ごと業態ごとに、
明確な方針を出す。

7都府県に緊急事態宣言がなされたが、
愛知県と京都府が対象に入れてほしいと、
政府に要請した。

世の中、要請ばかりだが、
政府もこれはすぐに聞き入れたほうがいい。

そして第3に休業要請をしたら、
その営業保証をすべきだ。

ここは大岡政談。
「三方一両損」の精神である。
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江戸の町奉行・大岡越前のもとに、
事件が持ち込まれる。

三両の金を拾った者と、
その金を落とした者。

どちらも、
「そんな金はいらねー」と言い張る。
江戸っ子気質だ。

そこで大岡越前は、
懐から自分の一両を出して、
四両の金にする。

そして四両を二両ずつ、
落とした者と拾った者に、
分け与える。

落とした者は三両損するところ、
二両で済んだから一両の損、
拾った者は三両もらえるところ、
二両に減ったから一両の損。
「奉行も一両の損」。

これで両者、納得。

これが「三方一両損」の物語。

国と自治体と業者とが、
互いに相応に、
それを分担する精神。

もちろん今回は奉行である国が、
すべてを負担すると言い切ったら、
一番すっきりする。

しかし精神は「三方一両損」だ。
いや「百両損」「千両損」「「万両損」を、
覚悟しておかねばならない。

だとしたら政府の負担しかない。

ずっと言い続けているが、
対コロナの最大の経済政策は、
「感染拡大の抑制」である。

国も都道府県も業者も、
一斉に休業して、
いち早く感染率の拡大を止めれば、
それだけ経済的負担が少なくて済む。

真摯な議論と迅速な結論。
そして「三方一両損」の精神。

毎日毎日、新型コロナウイルス感染の記事。

商人舎SuperNewsで、
[検索]の窓に言葉を打ち込む。
「コロナ」と「感染」。
間に空白を入れる。

そうすると関連する記事が並ぶ。

企業が感染者を出した記事を抜き出す。
新しい順に列挙すると、
4月上旬だけでも以下のようになる。

(2020.04.09)
そごう・西武news|
西武池袋本店取引先社員1名が新型コロナウイルスに感染
セブン-イレブンnews|
FC店「尼崎下坂部3丁目店」従業員2名がコロナ感染
コストコnews|
尼崎倉庫店の従業員がコロナ感染/8日営業再開
はるやまnews|
東京本社内勤従業員1名が新型コロナウイルスに感染

(2020.04.08)
しまむらnews|
しまむら江戸川台店従業員がコロナ感染
TSUTAYAnews|
武生南店の30代女性従業員がコロナ感染
高島屋news|
岐阜店8日臨時休業、食品フロア従業員が新型コロナ感染
イトーヨーカ堂news|
IY船橋店・アリオ札幌店従業員がコロナ感染

(2020.04.07)
サンエーnews|
「和風亭しおざきシティ店」従業員の近親者が感染
ファミマnews|
ファミリーマート田辺栄町店従業員1名コロナ感染

(2020.04.06)
ヨークベニマルnews|
成島店(山形県米沢市)の従業員がコロナ感染
ヨークベニマルnews|
南中山店の従業員がコロナ感染
ユニクロnews|
多治見店の従業員家族がコロナ感染し従業員も陽性

(2020.04.06)
三越伊勢丹news|
三越恵比寿店と伊勢丹浦和店の2名が新型コロナに感染
ファミマnews|
ファミリーマート春野町西分店(高知市)従業員3名コロナ感染

(2020.04.03)
西友news|
高野台店(東京)・大和町店(宮城)従業員2名新型コロナウイルス感染

(2020.04.02)
平和堂news|
京産大卒の新入社員が新型コロナウイルス感染

(2020.04.01)
アマゾンnews|
小田原FCで従業員1名が新型コロナウイルス感染
ファミマnews|
ファミリーマート麻布十番店の従業員がコロナ感染
オオゼキnews|
練馬店(東京都)従業員がコロナ感染、4/1臨時休業

始まりは3月の9日だった。

(2020.03.09)
西友news|
新長田店従業員家族がコロナウイルス感染のため休業
サミットnews|
東中野店従業員が新型コロナウイルスに感染
セブンーイレブンnews|
山梨上石森店の従業員が新型コロナウイルスに感染

名だたる企業の店で、
コロナ感染者を出した。

そしてここまで来た。

もう、感染ルートを確認する段階を過ぎた。
全体規制しかない。
都市封鎖のロックダウンではないが、
「人との接触8割減」を、
すべての個人が実現させる。

コロナ感染拡大抑制こそ、
それが去ったあとの商売繁盛への近道だ。
そして必ず、
前よりも強くなれること、
前よりもなくてはならない店になれることを、
信じることである。

〈結城義晴〉

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