結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2020年06月25日(木曜日)

「読む人・聞く人」「話す人・書く人」&「心地よい要素・真実な要素」

今日は一日中、
「聞くこと」に徹した。

もちろん聞いてから考えて、
それに答えて話す。

ピーター・ドラッカーは問う。
「自分が読む人間か、
それとも聞く人間か」
Drucker57899999

理解の仕方に関する二つのタイプ。

「世の中には読み手と聞き手がいる。
しかも、その両方であるという人は、
ほとんどいない」

小売業やサービス業は、
聞く人が多いように感じられる。
実際に、聞く訓練ばかりしているから、
聞く人が多くなるのかもしれない。

しかしマニュアルが好きな人は、
読む人間だ。

スマホやメールで情報を得るのが好きな人も、
実は読む人間だ。

ドラッカーは書いている。
「講義、書物いろいろある。
大切なのはいかに学ぶかだ。
書物から学べない人がいる。
講義から学べない人もいる。
私の知る中には講義、書物ともに
学べない人さえいる」

つまり読む人でも聞く人でもない人。

この後が傑作。
「実は私もそうだ」

「私は教えることによってしか学べない」

「読む、聞く」が、
情報や知見のインプットの方法だとすれば、
「話す、書く」は、
アウトプットの方法だ。

コミュニケーションは、
この4つの方法で行われる。

「話すことと書くこと」に関しては、
ブレーズ・パスカルが「パンセ」に書いている。
DSCN2408-448x509
「話はうまいのだが、
書くのがへたな人というのがいる」
〈断章四七〉より。

私もずいぶんそういう人と出会ってきた。

「それは、話す場所があり、
聴衆がいることが、その人を熱くし、
その人の精神から多くを引きだすからだ」

話す人にとっては、
聞く人が必須なのだ。

誰も聞く人がいないのに話すのは、
落語家の稽古だ。

「ところが、話す場所や聴衆がいないと、
その人は熱くなれないので、
精神から何も出てこないのである」

しかし話す人は、
訓練次第で書く人になれる。
一定以上の書き手には、
誰でもなれる。

そして書く人も、
訓練次第で話す人になれる。

私は経験を通じて、
固くそう信じている。

パスカルは「雄弁」についても書いている。
「雄弁――
聞いていて心地よい要素と、
真実な要素の両方がなくてはならない」

「しかし、心地よい要素とは、
それ自体、真実な要素の中から
生まれてくるものなのだ」
〈断章二五〉

聞く人か読む人か、
書く人か話す人か。
書けて話せる人か。

自分がどちらの人間か、
あるいはどちらでもないかを、
知っておく必要がある。

自問自答してほしい。
それが仕事の成果を左右する。

私に関しては、
最近になって気づいたのだが、
「教えることによって学ぶ人間」だった。

ドラッカーには及びもつかないが。

さて、柳沼克彰さんとともにヒアリング。
つまり聞く人間となった。

柳沼さんはKMW㈱ユニットマネジャー。
ナレッジ・マーチャントワークス。DSCN94560
対象は近畿地区のブロックマネジャー4人。

しかし聞きつつ、
教えている自分に気づかされた。

サミット㈱本社を訪れて、
インタビュー。

加藤豊さん(中)。
総務部総務グループマネジャー。
広報室/社長秘書の植川肇さんが、
付き添ってくれた。DSCN94510
ここでは聞くことに徹したが、
やはり聞きつつ、話す。

とてもいい内容で、私は感動した。
ありがとうございました。DSCN94530
詳細は月刊商人舎7月号。

最後は㈱紀文食品本社へ。DSCN94580
緊急事態宣言が解除され、
東京アラートも停止されて、
久しぶりに情報交換。

私の隣から副社長の弓削渉さんと、
常務執行役員営業本部長の國松浩さん、
営業企画本部営業企画部部長の林直人さん。DSCN94590
ここでも聞いて、話して、
その相互の交換。

ありがとうございました。

COVID-19禍で、
「三密」を避けなければならない。
マスクをして、
会話はできるだけ控える。

これが続くと、
コミュニケーションは、
「読む」「書く」のサイドに、
ちょっとだけシフトするかもしれない。

もちろん、
オンラインでのcommunicationは、
「話す」「聞く」要素を補完してくれる。

しかしインターネットも、
読む・書くである。

動画が入ってくると、
話す・聞くもあるが。

確かなことが一つだけある。

それは、
コミュニケーションが、
変質してくることだ。

しかし変化したコミュニケーションも、
「心地よい要素」と「真実な要素」の、
両方がなくてはならない。

そして「心地よい要素」とは、
それ自体、「真実な要素」の中から
生まれてくるものなのだ。

〈結城義晴〉

2020年06月24日(水曜日)

柳井正さんの「京大基金」とそれぞれの”ノブレス・オブリージュ”

家を出て、
最寄りの駅のホームに立ったら、
スマホを忘れたことに気づいた。

取りに戻る時間もないし、
電話連絡しようにもその道具がない。
駅のホームには公衆電話がない。
しかたないと思った。

しかし行先までのルートと時間を、
あらためて確認しようと思ったら、
それもできない。

いつものように電車の中で、
スマホの新聞を読もうとしたら、
それもできない。

メールもできない。
写真も撮れない。
録音もできないし、
録画もできない。

取材や編集の仕事にならない。

日課の日々の詰将棋4題でもやって、
時間をつぶそうとしても、
それもできない。

何か調べ事をしようと思っても、
わざわざパソコンを出さねばならない。

私の携帯電話はiPhoneだが、
この道具に頼り切っていた。

いつからなのだろうと考える。

今回のCOVID-19禍で、
いつからなのだろうと、
振り返ることが多かった。

今日は㈱True Data株主総会。
第20回定時株主総会。

創業してから20年を経過する。
もと元の社名は、
カスタマー・コミュニケーションズ㈱。
考えてみると私はこの会社に、
12年も関わっていることになる。

㈱商業界の代表取締役社長を退任して、
翌年に非常勤取締役として、
お招きいただいた。

それからの12年間でも、
ビッグデータマーケティングは、
産業社会の主流となった。

株主総会の場所は、
東京・浜松町の貿易センタービル。
カンファレンスセンター。

コロナ禍で株主の参加も少なく、
取締役も監査役も、
全員が総会会場に参列することもなく、
略式で総会は終わった。

その後、役員会。

もう21期がスタートしているが、
コロナの影響も少なくて、
トランスフォーメーションに取り組む。
困難なことはいつでも、
私たちに降りかかってくる。
頑張ろう。

その後、昨日と同じ、
コンサルティングへ。
今日は近畿地区のゼネラルマネジャー。

さて、柳井正さん。
㈱ファーストリテイリング会長兼社長。
photolib_portrait14l
京都大学に総額100億円の寄付をする。

京大はこの資金をもとに、
「柳井基金」を設立。

本庶佑特別教授のがん免疫研究。
honjo2_-448x326

山中伸弥教授のiPS細胞実用化研究。
41VY57NkNfL._SX335_BO1,204,203,200_
柳井基金から支援がなされる。

お二人ともノーベル賞受賞者だ。

本庶さんも柳井さんも、
ともに山口県出身で、
県立宇部高校の先輩後輩。

柳井さんは記者会見でコメントした。
「医学の最大の問題は、
がんとウイルスではないかと思っている。
今後、京大と一緒に研究できればうれしい」

「ノブレス・オブリージュ」
“noblesse oblige“はフランス語だが、
もともとはラテン語。
“Honos habet onus”
「ホノース・ハベト・オヌス」
直訳すれば「名誉は、重荷を、持つ」

塩野七生さんの「ローマ人の物語」に、
詳しく書いてある。

古代ローマでは、
皇帝や元老院議員などが、
道路や建物などの建築費を自腹で支払った。
つまり社会のインフラストラクチャー整備を、
持てる者が身銭を切って請け負った。

ユリウス・カエサルをはじめとして、
アウグストゥスもポンペイウスも、
ほとんど例外なく、
ホノース・ハベト・オヌスをした。

それがヨーロッパの貴族たちに引き継がれ、
さらに現代の成功者たちにも受け継がれた。

柳井さんの京大への寄付は、
ノブレス・オブリージュそのものだ。

イオン㈱名誉会長の岡田卓也さんも、
㈱イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんも、
同じようにノブレス・オブリージュを、
自ら実践している。

㈱ヤオコー会長の川野幸夫さんも、
財団をつくったり美術館を設立したりして、
ノブレス・オブリージュをする。

柳井さんの、
がんとウイルスの研究への寄付は、
現時点で世界的に有意義なことだ。

率直に敬意を表したいし、
商売を仕事にしている人の代表として、
誇りにしたい。

一方、日本の政治家はと見ると、
自分の選挙のために政党助成金をばらまく。
自ら贈賄行為をしなくとも、
それを黙って見ている態度は、
同じ次元のものでしかない。

見事に対照的だ。

しかしノブレス・オブリージュは、
成功者だけのものではないと思う。

自分の身の丈に合った社会活動をする。
それもノブレス・オブリージュの精神だ。

恵まれない人たちに、
わずかでも募金をする。
これもノブレス・オブリージュだ。

東日本大震災で被災した子どもたちに、
チャリティー活動を行う。
これもノブレス・オブリージュだ。

毎週、駅のトイレ掃除をする。
これもノブレス・オブリージュだ。

私はどうも、
お金を稼ぐことに関しては、
意欲も才能も乏しいようだ。

そのかわりにわずかな知識や情報を、
ささやかに提供したいと思っている。
これもノブレス・オブリージュになるか。
胸を張れるほどのことではないけれど。

[今年の商人舎標語]
世のため、人のため。

ひとつひろえば、
ひとつだけ街が美しくなる。

1本植えれば、
1本だけ地球がよくなる。

ひとつ売れば、
ひとつだけ喜びが生まれる。

ひとつつくれば、
ひとつだけ価値が生じる。

ひとつ運べば、
ひとつだけ経済が回る。

世のため、
人のため。

客のため、
店のため。

街のため、
国のため。

母のため、
父のため。

子のため、
孫のため。

妻のため、
夫のため。

愛する人のため、
未来の人のため。

2020年代の初頭、
令和2年のはじまりに。

ひとつひろえば、
ひとつだけ街が美しくなる。

1本植えれば、
1本だけ地球がよくなる。

ひとつ売れば、
ひとつだけ喜びが生まれる。

世のため、
人のため。

客のため、
店のため。

己のため。2020_01tobira-448x292

新型コロナウイルスは、
「世のため、人のため」の精神も、
私たちに教えてくれた。

〈結城義晴〉

2020年06月23日(火曜日)

“Integrity/真摯さ”とチェーンストア現代化の作法

今週から商人舎も、
急に仕事が動き始めた。

昨日の月曜日は、
商人舎オフィスに、
鈴木國朗さんがやって来てくれた。IMG_73290
スーパーマーケットに関しては、
当代一の一流コンサルタント。
顧問先企業に対して、
極めて真摯に対応する。

ピーター・ドラッカーは、
マネジャーに必要な資質は、
Integrityであると言いきっている。

Integrityとは、
「高潔、誠実、清廉、完全な状態」。
英語ではHonestyをさらに突き詰めたもの。

故上田惇生先生は、
ドラッカーのIntegrityを、
「真摯さ」と訳した。

その「真摯さ」とは、
「まじめでひたむきなこと」

倉本長治先生は教える。
「損得より先に善悪を考えよう」
これはIntegrityである。

商業界の編集長のころ、
3年に1回くらいの頻度で、
特集を組んだ。
「コンサルタントの活用の仕方」

故川崎進一先生に、
メインの原稿を書いてもらった。
川崎先生も真摯さのない者は、
コンサルタントになってはいけないと、
強く指摘した。

故藪下雅治先生も、
コンサルタントの心得帳を書いた。
要約すれば「真摯さをもて」。

みんな故人となってしまったが。

それがないコンサルタントは、
詐欺師以下の存在だ。

ドラッカーの『マネジメント』より。
「インテグリティの欠如した者は、
人間という最も重要な資源を破壊し、
組織の精神を損ない、
業績を低下させる」

マネジャーやコンサルタントに限らない。
政治家も役人も、医者も科学者も、
アーティストもジャーナリストも、
Integrityがなければいけない。

その鈴木さんと、
真剣に論議した。
IMG_73270

私はコロナの中で生やした髭をいじりながら、
考えては話した。
IMG_73600

対談というのは、
インスピレーションのキャッチボール。
自分がもともと考えていたこと、
その考え方にひらめきが加わっったもの、
それらが次々に現れる。
IMG_73530

ソーシャルディスタンシング。
IMG_73620

全部終わってみると、
3時間くらい話していた。
IMG_73710

心から感謝。
月刊商人舎7月号。
IMG_73280
楽しみにしてください。

今日は朝から、
ZOOM会議。

㈱True Data社長の米倉裕之さん。
201910_truedata_12-448x322
そして外山敬晃さんと岡本佳子さん。

米倉さんや若い人たちから、
新しい時代の新しい事業について、
いろいろなことを教えてもらい、
そのうえで意見を交換した。

有意義だった。
感謝したい。

紫陽花の花が美しい。IMG_73900

今日は午後から、東京・神田。
コンサルティング。

私はあまりコンサルティングはやらない。

しかしヒアリングを繰り返して、
組織をどう改善するかの提案はする。

ドラッカーは、
オーストリアからイギリスにわたり、
アメリカにやって来て最初に、
ゼネラルモーターズを
コンサルティングした。

それは聞くことから始まった。
それが第3作目の著作となった。
『企業とは何か』
“Concept of the Corporation”
51ss-5GYB4L._SX339_BO1,204,203,200_
私のやり方も同じだ。

ゼネラルマネジャー、
ブロックマネジャー。
合計で8人のマネジャーたちと、
ゆっくり話し合った。

古典的なチェーンストア理論は、
会社を急成長させるときには、
確かに役立った。

しかし会社が大きくなったり、
上場したりすると、
そこにほころびが出てくる。

ドラッカーは書いている。
「ある程度の規模や複雑さに達するや
摩擦が随所にみられるようになる。
急速に誤解と反目を生み、
やがて帝国と化す」
Drucker57899999
そのほころびは、
ほとんどの大企業に共通している。

特別なことは少ない。
だからどう処方すればいいかは、
たいてい同じだ。

社内では標準化至上主義が、
声高に標榜されているのに、
その標準化が、実はできていない。

誤解の激しい「標準化」の意味が、
組織内で理解されていない。
認知されていないし、
納得されていない。

そして世界を見渡せば、
新しいチェーンストアの方法がある。
新しい「標準」の考え方がある。

鈴木敏文さんはそれを、
「脱チェーンストア」と言った。
㈱セブン&アイホールディングス前会長。

柳井正さんは、
「超チェーンストア」と呼ぶ。
もちろん㈱ファーストリテイリング会長兼社長。

そして川野幸夫さんは、
「チェーンストアとしての全員参加型個店経営」
㈱ヤオコー会長。

アメリカのトレーダー・ジョー。
コストコホールセール。
そしてスペインのメルカドーナ。

Harvard Business Reviewが評価した、
世界の「好循環小売企業」

これらのチェーンストアには、
日本の古典的チェーンストアにない、
現代化のManagementがある。
ドラッカーと上田惇生は、
「ポストモダンの作法」と称した。

私のこれからの役割の一つは、
旧いチェーンストアのほころびを、
繕って歩くことにあるのかもしれない。

〈結城義晴〉

2020年06月22日(月曜日)

柳井正「生活感が変わった」と倉本長治「高い値打ちと低い値段」

Everybody! Good Monday!
[2020vol㉕]

2020年第26週。
6月第4週。

昨日の夏至が過ぎ、
6月もあと1週間と2日。

中国・武漢のCOVID-19が、
WHOに報告されたのが、
昨年の大晦日だから、
もう半年が経過しようとしている。

夏至から小暑、大暑と、
ほぼ15日間ずつに区切られて、
季節が移っていく。

その間、
コロナの新規感染者を減らそう。
重病患者を救おう。
死者をなくそう。

フィジカルディスタンシングを、
堅守しよう。

マスク、手洗いの励行を続けよう。
自ら免疫力を高めよう。

そして秋以降の第二波があると想定して、
それに備えよう。

今日の日経新聞朝刊の「ニュース一言」
柳井正さんが登場。
㈱ファーストリテイリング会長兼社長。photolib_portrait13l
「新型コロナウイルスで、
生活感が変わった」

生活信条だとか、生活哲学といわれるものだ。

「これまでは服そのものが
ライフスタイルと思われていた」

だから衣料品分野は、
「ファッション」と呼ばれた。
㈱商業界のアパレル分野の雑誌は、
『ファッション販売』だった。

柳井用語の「服」そのものが、
流行を示すものだった。

「今後は自らのスタイルに合わせて
服を着る時代になっていく」

これを「ライフスタイル」という。

在宅勤務などが定着することによって、
「普段の生活を大事にする人が増える」

「ファッションも高価に着飾ることより
“家の中や外で自然に着られる服”が選ばれる」

だからユニクロは、
「生活に身近な究極の普段着を
追求していく」

倉本長治の88の言葉を集めた
『あきないの心』
31idfYZ5qaL._SX282_BO1,204,203,200_
10番目の一節のタイトルは、
「商店への至上命令」

「黄金やダイヤモンドが貴重だとする
人間の考え方に何か
間違いがあるのではないか」

ズバリ、問題提起する。

「私には、空気や水の方が、
それらの稀有金属宝石などよりも、
人間にとって貴重だと思われるのだが、
誰もその空気や水に
高い値段を払うような人は
おらぬようである」

「モノの値打ちと値段が別なのがわかる」
その通りだ。

「ということは、値段の高い品、
めったに手に入りにくい品ほど、
人間の生活にあまり深刻な関係が
ないものだという意味に通じ、
その考えをよく考察すると、
商店というものが、
繁盛する一番の早道が
見つかるのではあるまいか」

「それは空気や水のように
誰でもが必要とし、
人間にとっての価値は高いが、
値段の低いモノを売ることだと
断じられそうである」

「すべての人にとって、
“高い値打ちがあり、
誰にも買える低い値段”
ということが、
人間すべての願望である以上、
これこそ商店経営者への
至上命令なのだと言えよう」
BK-4785502800_3L
柳井さんが目指す、
「生活に身近な究極の普段着」は、
これである。

チェーンストアが、
スーパーマーケットが、
真に追及し続けるものも、
「すべての人にとっての高い値打ち」と、
「誰にも買える低い値段」である。

それが「至上命令」である。

儲かる品ばかり追いかけてはならない。
至上命令を日々、探求しているうちに、
自然に儲かるものなのだ。

コロナはこの至上命令を、
あらためて教えてくれたと思う。
H
では、みなさん、今週も、
「至上命令」を追求しよう。
Good Monday!

〈結城義晴〉

2020年06月21日(日曜日)

梅雨・夏至・日蝕と「父の日の自戒を一つ減らしけり」

今日はもう夏至。
昼の時間が最も長い。

今年の時間は早い。

梅雨ながら且つ夏至ながら暮れてゆく
〈相生垣瓜人(あいおいがき かじん)〉

瓜人は明治31年(1898年)に生まれ、
昭和3年(1928年)に没した仙人のような俳人。

夏至の句も数多く作っている。

この句は「季重なり」で、
梅雨と夏至の二つの季語が入っている。

通常は禁じ手だが、
この句はそれがいい。

瓜人には梅雨と夏至の句が多い。
梅雨が又終日夏至を虐(しいた)げし

梅雨であり、夏至である今日。

さらに今日は、
日蝕(にっしょく)となった。

太陽が月によって覆われ、
欠けて見えたり、
全く見えなくなったりする現象。

「日食」とも書くが、
私には「日蝕」が好ましい。

鳥取砂丘。
IMG_7309

午後5時8分にピークを迎えた部分日蝕。

地球から見ると、
後ろに太陽があり、
前に月があって、
太陽を部分的に月が隠してしまう。IMG_7280

沖縄県の石垣島は、
午後5時16分に、
美しい部分日蝕となった。
IMG_7302

さらに台湾では、
金環蝕が見られた。
IMG_7295

太陽が月の外側に光輪状にはみ出す。
IMG_7307

梅雨の時期の日蝕は、
雨が降ったり雲に覆われたりして、
見えないことが多い。

梅雨明けした沖縄や台湾だから、
この時期の日蝕が美しく見えた。

今日は日本海側の諸地域で、
日蝕を見ることができた。

正岡子規にも日蝕の句がある。
日と月と重なりあふて昼暗し

天文学の標語のような句だ。

梅雨、夏至、日曜日。
そのうえ今日は、
父の日。

娘がやって来て、
プレゼントをくれた。
IMG_73180
父の日の自戒を一つ減らしけり
〈鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)〉
1930年(昭和5年)生まれの俳人。

梅雨の夏至の日蝕の日曜日の父の日。

しかし正岡子規。

病苦安眠せず
夏至過ぎて吾に寝ぬ夜の長くなる
〈正岡子規〉

明治29年(1896年)の句。
「寒山落木」収蔵。

日清戦争は明治27年(1894年)から、
翌明治28年(1895年)に起こった
清国との戦争。

子規は28年に、
新聞「日本」の従軍記者となって中国に渡る。
しかし帰国の船内で喀血。
翌29年2月には脊椎カリエスと診断され、
3月に手術を受けた。

その年の夏至の句。

眠れない夜が続くが、
夏至を過ぎてから、
その眠れぬ夜が長くなっていく。

コロナは時間を早めるが、
子規の眠れぬ夜は、
長くなっていった。

最後に朝日新聞「折々のことば」
今日は第1852回。

ななおさかきの詩集、
『ココペリの足あと』から。
41Uq86HK78L._SX298_BO1,204,203,200_

今度 生まれる ときは
雑巾に
瑠璃色の 雑巾に なろう

使えば 使うほど
今日の空に 近づく
瑠璃色の 雑巾に なろう

おのれを 汚して 窓ガラスを
台所を 便所を 拭きあげよう
また 差別を 戦争を 拭きとばそう

もし 世界が あるならば
その 片隅から 磨くとしよう
もし 永遠が あるならば
いつもの 一瞬を 輝かすとしよう

榊七夫は、
1923年生まれで2008年没の詩人。
51caeSrxqCL._SX345_BO1,204,203,200_
「世界を放浪し、行く先々で
ビート詩人たちと詩会を開き、
コミューンをつくって
山河を護(まも)る活動を行った」

もし、世界があるならば、
ありつづけるならば。
その片隅から磨くとしよう。

自戒をひとつずつ、
減らしながら。

〈結城義晴〉

2020年06月20日(土曜日)

デニーズの「本部在宅勤務」とメルカドーナの「分散型テレワーク」

休業や国内移動が全面解除された。
とは言っても自粛要請の解除で、
あくまで要請レベルの話だが。

それに応じて私も、
令和名人会拡大版。

梅雨の合間に、
絶好のゴルフ日和。IMG_72670

ホームコース。
IMG_72730

ブルーチップ㈱社長の宮本洋一さん、
㈱アイダスグループ代表の鈴木國朗さん。
そして商人舎GMの亀谷しづえ。IMG_72660
満足のラウンドだった。

反省会のランチは川崎のデニーズで。

日経新聞にその「デニーズ」の記事。
本社全従業員・基本は在宅に

ファミリーレストランのデニーズ。
㈱セブン&アイ・フードシステムズの店。

本社勤務の全従業員約200人を対象に、
在宅勤務を基本的な働き方に改めた。

6月16日から。

凄い意思決定だ。

会社への出社は交代制にして、
1人当たりの出社日数を、
月10日以内に制限する。

効率的な働き方ができるし、
交通費などの削減につながる。

フードサービスのチェーンストア。

COVID-19感染防止対策として、
本社の130~140人を、
テレワークにしていた。

必要性が乏しい会議をはじめ、
余分な業務が減った。
家族と過ごす時間も増えた。

働き方に一定の改善効果があった。

セクションごとに出社する人を決めて、
1日当たりの出勤人数を60~70人に抑える。

将来的には本社の勤務場所の縮小も検討する。
交通費は出勤日数に応じて実費で支払う。
本社の家賃も削減できる。

固定費は大きく削減できる。

しかし在宅勤務は、
従業員の勤務実態や成果が見えづらい。

デニーズは当面、
勤務内容を従業員が毎日、
上司に報告する。

そして評価基準の見直しを進める。

意欲的な試みだ。
私は高く評価する。

多数の店舗をもつサービス業でも、
本部や本社の在宅勤務は可能である。

すかいらーくホールディングスは、
6月いっぱいで在宅勤務を終了する。
対照的だ。

この件で思い出したのが、
スペインのメルカドーナ。
5

かの国ではZARAのInditexに次ぐ、
第2位の小売業で、
1700店舗ほどのスーパーマーケットを展開、
9万人に及ぶ従業員。
スペイン国内の4分の1のシェアで、
2019年総売上高は 262億5600万ユーロ。
日本円換算で3兆1507億円。

私はこの会社に惚れ込んで、
何度もバルセロナを訪れた。

月刊商人舎2013年11月号特集は、
奇跡のMERCADONA!
絶不調スペインの絶好調小売業研究
4_02

この特集は今、読み返しても、
手前味噌ながら、実にいい。

2014年5月号では、
[特別規格]
再びMERCADONAの奇跡

ジュアン・ジリさんにインタビュー。
ジリさんは広報ディレクター。
155f9b9641bab8aef0cca6b702050173
ジリさんのコメント。
「メルカドーナには、
いわゆる本社がありません。
従業員も、店長も、
自宅のそばの店で勤務しています。
ロジスティックセンターは物流のみです」

ジリさん。
「コーディネーターがいて、
彼らが店舗へ指令を出します。
彼らも自宅のそばの店舗で
勤務しています」

「各地の店舗の中の事務所に
本部スタッフが散らばっています。
中央オフィスをつくったら
経費ばかりかかってしまいます」

会社全体のコミュニケーション。
「1カ月に1回は
自分の上司、部下と会議があります。
従業員の訓練センターが
ついている店がありますので、
そこに関係するスタッフが集まります。
しかし、移動すると経費がかかりますので、
通常は電話やインターネットを通じて
コミュニケーションをします。
そして年に1回は全員で集まります」

テレワークの先取りである。

バイヤーたちも、
「もちろん一番近い店に
オフィスを持っています。
基本的には、
社長がいるところも店ですし、
経理や財務のスタッフが
いるところも店です。
店の2階をオフィスに
したりしています」

ホアン・ロッジCEOも、
タベルネスブランケス店にいる。
バレンシアから5 キロほど離れた、
田舎に立地する同社1号店だ。
5_02

「日本と基本的に異なるのは、
家族との生活が一番大事だと
考えていることです」

「スペインでは転勤になると
半分の人がその会社を辞めてしまいます。
片道5分の職場に行くのと、
1時間かけて行くのでは
家族との生活が大きく異なります。
一番近いところで働けるということが
従業員にとって大事なのです」
da65ccc3347587e649807f81307687aa
会社が大きくなることに関して。

「われわれは、
80年以上の歴史のある会社で、
結果として大きくなりました。
大きくなるためには
ハードな仕事をこなしています」

「働いている人たちが幸せでないと、
お客さまにも
本心とは違うと伝わるはずです。
販売スタッフも笑顔では接客できません」

「メルカドーナは、
普通のオーナー企業とは異なります。
オーナーだけが
儲けているわけではありません。
例えば初任給は1200ユーロ、
4年経つと1500ユーロと
給料が決まっています」

「初任給の1200ユーロは
スペイン政府が定めた最低賃金の2倍です」

「誰がいくらの給料をもらっているかを
皆がわかっています」

「1年目の人、4年目の人、
そして私のように階級が一つ上の人間が、
いくらもらっているかがルール化されて
オープンになっています」

「メルカドーナ全体で、
営業利益が出たときには、
全員に還元されるシステムがあります。
社長から一番下の社員に至るまで、
1カ月分の給料相当を
手当てとしてもらえます」

「こうした社風を社員は好ましい、
幸せだと思っているはずですし、
それは家族の幸せにも
つながるのではないでしょうか」

1600店を超えるチェーンストアで、
スペイン第2の小売業が、
テレワークを基本としている。

多数の散らばっている店舗に、
本部機能が「分散型」で存在する。

それによって、
働く人たちの幸せも担保される。

コロナはいろいろなことを教えてくれる。
また、スペインに行きたくなった。

〈結城義晴〉

2020年06月19日(金曜日)

旺文社マネジメントスクール講義「コロナ禍の中の流通概論」

COVID-19禍からの帰還。

都道府県境をまたぐ移動は、
全面的に解禁された。

主要な鉄道の駅や空港では、
出張や旅行が通常に、
戻り始めた。

しかし感染リスクが、
消えたわけではない。

ピーター・ドラッカーは言う。
「経済活動は、社会のごく一部の
機能を担うものに過ぎない」

人と社会が第一である。
Drucker57899999
経済のための自粛解除ではなく、
人と社会のための解除だ。
それが経済を回す。

それを忘れてはならない。

ライブハウスやナイトクラブなど、
接客を伴う飲食業の営業も、
可能になった。

コンサートなどのイベントも、
参加数上限は1000人に引き上げられた。

プロ野球もほぼ3カ月遅れの開幕。
史上初の無観客での公式戦。

パシフィックリーグ。

ソフトバンクホークス、
千葉ロッテマリーンズ
2対1でホークス。

東北楽天ゴールデンイーグルス対、
オリックスバッファローズ。
9対1の大差で楽天。

そして西武ライオンズ、
日本ハム北海道ファイターズ。
3対0の完封でライオンズ。

セントラルリーグは、
中日ドラゴンズ対ヤクルトスワローズ。
9対7でドラゴンズ勝利。

広島カープ対DeNA横浜ベイスターズ。
5対1でカープ。

読売ジャイアンツ対阪神タイガース。
3対2でジャイアンツ。

ん~。

さらに将棋名人戦第二局。
豊島将之名人vs渡辺明三冠。

腰掛銀の凄い将棋だが、
158手で豊島が制した。
61bl4UC7rJL._AC_UL640_QL65_
すこしずつ「いつもの生活」が、
戻ってくる。

とても、とてもいいことだ。

ただし昨日と今日、
COVID-19の状況は、
何一つ変わっていない。

朝日新聞デジタル。
生物学者の福岡伸一さん。
現在は青山学院大学教授。
「コロナ後の世界を語る」シリーズに登場。

「生命の必然、
ロゴスでは抵抗できない」

福岡さんは実にいい。
5222e702a63502a992171b90c6714a3a

「生命としての身体は、
自分自身の所有物に見えて、
決してこれを自らの制御下に
置くことはできない」

「私たちは、
いつ生まれ、どこで病を得、
どのように死ぬか、
知ることも
選(え)り好みすることもできない」

「本来の自然と、
脳が作り出した自然。
本質的な対立がある。
前者をギリシャ語でいうピュシス、
後者をロゴスと呼んでみたい」

ピュシスは自然そのもの。
ロゴスは言葉や論理のこと。

「生命はピュシスの中にある。
人間以外の生物はみな、
約束も契約もせず、
自由に、気まぐれに、
ただ一回のまったき生を生き、
ときが来れば去る」

「ピュシスとしての生命を
ロゴスで決定することはできない。
人間の生命も同じはずである」

「それを悟ったホモ・サピエンスの脳は、
計画や規則によって、
つまりアルゴリズム的なロゴスによって
制御できないものを恐れた」

人間が制御できないもの。

「それは、ピュシスの本体、
つまり、生と死、性、生殖、
病、老い、狂気……。
これらを見て見ぬふりをした。
あるいは隠蔽(いんぺい)し、
タブーに押し込めた」

「しかし、どんなに精巧で、
稠密(ちゅうみつ)
ロゴスの檻(おり)に閉じ込めたとしても、
ピュシスは必ずその網目を通り抜けて
漏れ出してくる。
溢(あふ)れ出したピュシスは
視界の向こうから襲ってくるのではない。
私たちの内部にその姿を現す」

「そんなピュシスの顕(あらわ)れを、
不意打ちに近いかたちで、
我々の目前に見せてくれたのが、
今回のウイルス禍ではなかったか」

ピュシスの自然が、
ロゴスに凝り固まった人間に、
不意に襲い掛かってきた。

科学者は意外にも、
文学的な表現をする。

「ウイルスは
無から生じたものではなく、
もとからずっとあったものだ。
絶えず変化しつつ
生命体と生命体のあいだを
あまねく行き来してきた」

「ウイルスの球形の殻は、
宿主の細胞膜を借りて作られる」

ウイルスはヤドカリである。

「ウイルスも生命の環(わ)の一員であり、
ピュシスを綾(あや)なすピースのひとつである」

「ウイルスが伝えようとしていることは
シンプルである」

「医療は結局、
自ら助かる者を
助けているということ、
今は助かった者でもいつか
必ず死ぬということ、
それでもなお、我々がその多様性を
種の内部に包摂する限りにおいて、
誰かがその生を
次世代に届けうるということである」

自ら助かる者だけが助かる。
しかしいつか必ず死ぬ。

「一方、
新型コロナウイルスの方も、
やがて新型ではなくなり、
常在的な風邪ウイルスと化してしまう」

「宿主の側が免疫を獲得するにつれ、
ほどほどに宿主と
均衡をとるウイルスだけが
選択されて残るからだ」

極めて論理的なコロナ論である。

「明日にでも、
ワクチンや特効薬が開発され、
ウイルスに打ち克(か)ち、
祝祭的な解放感に包まれるような未来が
こないことは明らかである」

同感。

「長い時間軸を持って、
リスクを受容しつつ
ウイルスとの動的平衡をめざすしかない」

この「動的平衡」こそ、
福岡伸一の持論だ。

「ゆえに、私は、ウイルスを、
AIやデータサイエンスで、
つまりもっとも端的なロゴスによって、
アンダー・コントロールに置こうとする
すべての試みに反対する」

同感。

「それは自身の動的な生命を、
つまりもっとも端的なピュシスを、
決定的に損なってしまうことにつながる」

ピュシスとの「危うい動的平衡」。
それがこれからの人類の生き方だ。

そしてこの危うさや緊張感が、
人間の時間を早める。
202005_coverpage-448x635

本質的に時間は変わらない。
しかしこの動的緊張によって、
人間自身が感じる時間が早まる。

だからコロナは時間を早める。

中世のペストが、
そして100年前のスペイン風邪が、
人間の時間を早めた。
それを人類は近代化の進化と、
勘違いしてしまったのかもしれない。

さて今日は、
学習院マネジメントスクール改め、
旺文社マネジメントスクール。

昨2019年から衣替えされ、
スポンサーが旺文社となった。DSCN94289-448x336

私は2007年から、
この故田島義博先生創設の経営塾の、
「流通概論」を担当している。

昨年の巻頭講座は5月24日だった。
事務局長の林純子さんの挨拶。
DSCN94309-448x336

このスクールの新学長は、
生駒大壱さん。
旺文社代表取締役社長。
DSCN94339-448x336

そして講義開始。
DSCN94369-448x301

昨年も2時間以上、
語り切った。
DSCN94389-448x336

そして記念の全員写真。
IMG_70829-448x324

しかし今年は、
オンライン講義に変わった。

だから今日は林純子さんが、
パソコンに向かって挨拶。
IMG_72610

私も腕時計を外して準備。
IMG_72620

そして座って、
講義を始めた。
IMG_72630
今回のテーマは、
「コロナ禍の中の流通概論」

画面に受講者たちの顔が小さく映る。
しかしその表情ははっきりとは見えないし、
人間の集団の「意志の動き」は感じられない。
IMG_72640
私は立って講義するのが常だ。

それがピュシスである私の肉体による、
ロゴスの解明に役立つと思うからだ。

しかし今日は座りながらも、
できる限りクールにロゴスの解説に努めた。

ご清聴を感謝する。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年11月
« 10月  
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.