ウォルマートを中心に回るメリーゴーランド。
それが現在の米国小売業界。
だからスーパーマーケットも、
ドラッグストアも、
衣料品店も、
ホームセンターも、
ウォルマートの動静抜きには、
自分のマーチャンダイジングを考えられないほどになっている。
そのウォルマートの4つのフォーマット別店舗数[1月末決算時現在]。
①スーパーセンター 2257店。
②ディスカウントストア 1070店
③メンバーシップホールセールクラブ 579店
④スーパーマーケット 112店
1990年代後半から現在までの主力となっているのが、
いわずと知れたスーパーセンター。
この米国最強フォーマット、米国内飽和状態に向かって、
まっしぐら。
だからレギュラータイプを大胆に、
アップスケールした実験店を出した。
昨2006年3月、テキサス州ダラス・プラノ地区。
高額所得者が集中的に居住するエリア。
しかも全米でも名だたるチェーンストアがズラリ出店する地区。
世界中から視察者が訪れる地区。
そのウォルマート・プラノ店。
ウォルマートはこのプラノ店で、
180度、プロモーション手法を転換させた。
主通路で積極展開していたアイランド陳列を全面撤廃したのだ。
売上げをつくる主武器を放棄したも同然の実験に入ったのだ。
私は最初にこの店に接した時、
しばらくレジ後ろのベンチに座って、立ち上がれなかった。
ウォルマートの勇気に対して、なんというか、
驚きと尊敬とが入り混じった気持ちになったのだ。
店内への入り口すぐのスペースのファーマシー売り場も、
写真のように変わった。
全体に徹底して虚飾を廃した店となったのだ。
ウォルマートは、ご存知、エブリデーロープライスの企業である。
これは価格プロモーションをしない企業と言い換えてもよろしい。
最初から特売価格並みの低価格を出す。
その代わり、価格を変動させて、顧客をひきつける販促はやらない。
だから逆に言えば、店内販促はあの手この手、奥の手、裏の手、
何でもありの企業といえる。
これはサム・ウォルトンの時代からのウォルマートの伝統なのだ。
しかし、プラノ店では、
コンコース上のアイランド販促を全面撤廃した。
その分、ゴンドラエンド陳列が見違えるように変わった。
極めて原則的で教科書的なエンドが出来上がった。
以下、プラノ店の午前10時時点のエンドをご覧いただこう。
価格パネルが、トップに大きく掲げられている。
3アイテムまでに絞り込まれている。
カラーコントロールが行き届いて、遠くからも引き付ける。
アイテムごとの陳列線は見事に揃っている。
ゴンドラエンドとゴンドラ内との陳列調和が図られている。
ノンフーズの大き目の商品エンドも、整然とつくられている。
ボリュームエンドだけでなく、
ライフスタイルも上手にされている。
ユーモアやサプライズも盛り込まれている。
一言で言えば、ソフィスティケートされた売り場。
洗練されたプレゼンテーション。
それも高額所得者に必需の普段の生活を突き詰めている。
この店のこのプレゼンテーションも、最後には、
売上げや収益で評価されるのだろう。
しかし、ウォルマートがそのプロモーションの主武器を捨てて、
シンプルで原則的な店づくりに挑戦したことは尊い。
私はそう思う。
それがこのエンド陳列に、はっきりと表れた。
私はそう思った。
ウォルマートのチャレンジ精神に、学ぶべし。
<結城義晴>