結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2011年01月13日(木曜日)

セブン-イレブン井阪隆一社長「サービス・インフラ業」とローソン新浪剛史社長「サービス・エンターテインメント業」の差異

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科。
私が教授として勤める社会人MBAのビジネススクール。

その修士論文・調査研究レポートの提出期限が、
今週末に迫る。
もうギリギリ。

雑誌の締め切り間際のよう。

雑誌は、印刷所や製本所に無理を言って、
締め切りを過ぎた原稿も何とか放り込んだりできるが、
論文はそうはいかない。

提出時間を1秒でも過ぎると、
扉は締め切られ、終わり。
もう1年、履修し直さねばならなくなる。

昨年の結城ゼミの一人は、
10分前に提出し終えた。
ホッとしていると、
あとからやってきた院生は間に合わず、
「もう1年」となってしまった。

今年の結城ゼミ生も、
本当にギリギリとなった。
私が一字一句、丁寧に読むものだから、
その時間も必要となる。

私もゼミ生も徹夜徹夜で、へとへと。

それでも少しでも良い論文に仕上げたい。
雑誌編集長時代から言っているが、
最後の「磨き」で作品は見違えるほどに変貌する。

これは売場づくりにも通じる。
私の僚友・鈴木國朗先生はこの第一人者。

私は何に対しても、
絶対に、決して、断じて、
手を抜かない。
これが私の強み。

いちばん最後に提出することになる渋木克久さんにメールを送った。
「慌てず、急げ」
私のモットーのひとつ。

渋木さん、誰よりも長編の修士論文を書いている。
英語の原書、原文を読みこんでいる。
あと30時間。
それで終わる。
みんな、力の限りを絞り出してほしい。

私も、ともに頑張る。

さて、私の愛読するコラム。
日経新聞スポーツ欄
「豊田泰光のチェンジアップ」。
「食べ物、食べ方」について書いている。

プロ野球界に入って、
新成人の頃からレギュラー選手となるころまでの回想だが、
「『食育』という言い方はわざとらしくて好きではないが、
何をどう食べるか判断できるようになることが、
大人になるための条件であるのは確かだろう」

同感。

「人間の器官のなかでも、
成熟するのに案外時間がかかるのが口と舌」
これも、重要なテーゼ。

だから時間をかけて、 口と舌になじむ商品を提供すれば、
ロイヤルカスタマーになっていただける。

「年齢は大人でも、 好みが極端だとか、
食べ方がきたないとか、
口の幼い人がたくさんいる」

「口まで大人になるのは、
思うほど易しいことではない」

この意味で、 大人の口をもった顧客をつくりたいものだ。
幼い口の顧客は、 すぐに逃げてしまう。
ロイヤルカスタマーとは、
大人の口と舌をもったわが店だけの顧客である。

さてさて、昨日の日経MJ。
いつも思うが、1面の第1特集、 なんとかならないものか。
どうもインパクトに欠ける。
全体像が描かれていない。

それはそれとして、インタビューやニュース、調査は良い。
「11月の主要スーパーの販売実績」
前年同月比の良いランク。
1位、東武ストア+3.2%
2位、ユニー+2.9%
3位、ライフコーポレーションとサミット+2.6%
5位、カスミ+1.8%

悪いランク
1位、ダイエー▲9.4%
2位、イトーヨーカ堂▲5.8%
3位、コープこうべ▲4.3%
4位、いなげや▲2.9%
5位、東急ストア▲2.4%

ダイエー、イトーヨーカ堂。
かつての両雄から最低の数字が出る。

コープこうべ、いなげや、東急ストア。
かつての栄光をかなぐり捨てて、
「蛻変」を図らねばならない企業や組織。

まだまだ、遅くはないし、
今の努力は、必ず報いられる。

その日経MJ にトップインタビュー。
セブン-イレブン・ジャパン井阪隆一社長、
ローソン新浪剛史社長。

井阪さんは就任直後にいい経験をした。
「公正取引委員会からの排除措置命令」
例の弁当の見切り制限問題。

こういった体験は、社長を成長させる。
だから私、井阪さんを買っている。

そのセブン-イレブン、既存店売上高が好調。
平均日販も久しぶりに増えている。
「昨年扱い始めた青果は6割の店舗に拡大して好調」
「セブンプレミアムゴールドは内食・家飲み傾向もあって、
ハンバーグやビーフシチューが安定して売れている」
鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長張りに、
具体的な商品の事例が飛び出してくる。

「銀行窓口、ガソリンスタンド、クリーニング店など、
あらゆるサービス拠点が減少する中で、
我々が社会貢献できる分野はすごく増えている」

これこそコンビ二の社会的機能であり、
その役割の方向性を示すコメント。

「来店客のうち8%近くは、
ATM利用や収納代行、チケット購入など
サービスの利用者になっている」

「サービスによる手数料収入は、
03年は13位だったが現在は5位にまで上がっている」

まさにコンビニはサービス・インフラ業である。

一方のローソン新浪剛史社長。
元ファーストリテイリング社長の玉塚元一さんを副社長に迎えて、
自身は世界戦略を進めていく。

日本国内のコンビニの飽和問題について。
「客層を拡大すれば成長性はある」

「今後10年で見れば、 店舗数は3~4割は増えるだろうし、
売上げは間違いなく2倍に増やせる」
追う者の強み、強気。

商品とサービス戦略がいい。
「商品は突拍子もないものは やらないようにしている」
結城義晴流に表現すれば、
「最良のベーシック」

「オーソドックスな商品を徹底的に良くするしかない」
昨年、「プレミアムロールケーキ」を大ヒットさせた。
これも「最良のベーシック」。

「低価格志向の流れは変わってきた。
消費者が『安かろう、悪かろう』を経験した」

最後に「店舗はモノを売るだけじゃなく、
楽しくなきゃいけない」

ローソンはサービス・インフラ業ではなく、
サービス・エンターテインメント業を志向する。

セブンとローソンのベクトルの差異こそ、
極めて興味深いものだ。

かつて流通産業研究所所長の上野光平先生は、
「生活マネジメント」と「生活エンターテインメント」の両極を示した。

セブンが「生活マネジメント」の極で、
サービスインフラというフォーマットを志向し、
ローソンは「生活エンターテインメント」の極、
サービス・エンターテインメントのフォーマットを目指す。

どちらもコンビニエンスストアという同じ業態。

いよいよ日本のコンビニ産業は、
基幹産業として地肌をむき出しにし始めた。

<結城義晴>

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