結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2012年03月22日(木曜日)

イオンとセブン&アイ2011年度決算比較と豊田泰光「麦踏み」の効用

日経新聞一面に、
「イオン、経常益5年ぶり最高」の記事。

先週金曜日の16日には、やはり一面に、
「セブン&アイ、営業最高益 前期5年ぶり」の記事。

これで、日本の小売業の二強が、
5年ぶりに過去最高利益を出すことになる。

どちらも日経のスクープといえばスクープ。
日経の特権となったリーク。
正式発表前だから、「らしい」という言い回しばかり。
私がまだ㈱商業界社長だったら、
広報にクレームをつけたいところ。

でも、商業界は月刊雑誌社で、
日刊紙ではないし、
私はもう商業界社長ではないから、
「まあ、いっか?」

「イオンの2012年2月期の連結経常利益は、
前の期比15%増の2100億円強」

対するセブン&アイは、
前の期に比べ2割増の2900億円強。

ずいぶん接近してきた。

イオンの連結営業収益(売上高)は5兆2000億円弱。
これは2%増。

セブン&アイの連結売上高は4兆8000億円前後、
6%減。

だからイオンがセブン&アイを抜いて、
国内最大売上高の小売業となる。

イオンは昨年11月1日にマルナカと山陽マルナカを完全子会社にしたが、
このマルナカグループの年商約3300億円がなくても、
ギリギリのトップだったか。

いずれにしても両雄が抜きつ抜かれつのデッドヒート。

ちなみに総合スーパー・イオンリテールの既存店売上高も、
かろうじて0.3%増。

しかしPB「トップバリュ」の売上高は2割増の5500億円弱で、
「総合スーパーの月次売上高に占めるPBの比率は足元で18%程度」
1年前と比べると5ポイントもアップした。

前年の2011年2月期決算は、以下。
セブン&アイ・ホールディングス
年商5兆1197億円 伸び率0.2% 経常利益2429億円 伸び率7.0%

イトーヨーカ堂 年商1兆3737億円 伸び率-1  経常利益5,124    23.9
セブン‐イレブン・ジャパン(本部)
年商5491億円 伸び率2.6%  経常利益1761億円 伸び率7.1%
セブン‐イレブン・ジャパン(全体)  総年商 2兆9476億円 伸び率5.8%
そごう・西武 年商8468億円 伸び率 -1.5%
ヨークベニマル 年商34334億円  伸び率  -1.5% 経常利益103億円 伸び率-5.5%
ヨークマート 年商1105億円 伸び率1.7% 経常利益31億円 伸び率-1.7%
ロフト 年商844億円  伸び率5.3%  経常利益30億円 伸び率5.5%
赤ちゃん本舗  年商783億円 伸び率-1.0%

イオン
年商5兆0966億円 伸び率0.8%  経常利益1821億円 伸び率39.8%

イオンリテール 年商1兆7114億円 伸び率-7.5% 経常利益308億円 伸び率77.1%
イオン九州  年商2547億円 伸び率-1.6%  経常28億円 伸び率537.3%
マックスバリュ西日本 年商2444億円 伸び率9.4%  経常利益77億円 伸び率6.8%
イオン北海道   1662億円  0.0%  42億円 109.3%
マックスバリュ東海  1564億円 8.9%  43億円 19.7%
マックスバリュ九州  1189億円 5.1%  26億円 42.5%
マックスバリュ中部   1184億円 1.2%   23億円 13.7%
マックスバリュ東北   909憶円 1.0%  4億6900万円 77.0%
マックスバリュ北海道  775億円 1.2% 4億7700万円 9.7%
ミニストップ  1139億円 4.6%  86億円 74.0%
ウェルシア関東  1470億円 10.4%   64億円 19.8%
CFSコーポレーション   1220億円 -15.5% 23億円 -7.3%

どちらもすごいグループになってきた。

同じ日経新聞に「ドラッグストア、国内販売伸び最低に」の記事。
日本チェーンドラッグストア協会提供の情報。

2011年度の国内ドラッグストアの総売上高は
5兆8026億円、

2010年度比3.1%増。

2000年度の調査開始以来、拡大の一途だが、
2011年度の伸びは過去最低。
「ドラッグストアの成長にも陰り?」

記事には、「09年の改正薬事法施行を受け、
コンビニやスーパーなどが医薬品販売に参入。
ドラッグストア側は客を奪われている格好だ」とあるが、
ドラッグストア側も食品を強化して、
逆に売上げを奪取しているから、
それだけではない。

日本の経済の成長率、消費の拡大率、
それらにやっとドラッグストアがフィットしてきた。

一方、アジアのドラッグストア市場は成長著しい。
富士経済調査によると、
11年の中国のドラッグストア市場
10年比13.3%増の1700億元(約2兆2000億円)
2ケタ成長を続けている。

だから日本のドラッグストアもアジア進出。
日経が好みそうな話題。

まずは住友商事の「トモズ」
台湾1号店を今夏に開業。
トモズはスタートの頃、
私も少し、お世話した。

中国進出は何とも言えないが、
台湾の三商行(台北市)と今夏、
現地に合弁会社を設立する。
これは正解だと思う。
早期に「50店舗体制50億円規模」を目指す。

このブログでも取り上げたが、
台湾では香港系のワトソンズと現地・統一のコスメドの2強体制。
そこにジャパン・テクノロジーを旗印に食い込む。

ツルハはタイ1号店を出す。
こちらも現地の流通大手「サハグループ」と提携。
2年後、バンコク中心に10店舗。

グローウェルホールディングスは、
中国企業と合弁で、上海に海外1号店を開業。
5年間で120店舗を展開する計画。

まだまだ、緒に就いたばかり。
日本のドラッグストアのマネジメントが、
海外進出で成功をもたらすかどうかは、
大きな疑問だが、
まずは海外に出ようという意欲は買える。

もうひとつのニュースは、
「東急電鉄、駅売店をローソンに全店切り替え」

私は東横線の妙蓮寺を使っている。
だからいつも東急電鉄のキオスク「toks」を利用している。
それが全店、「ローソン」になる。

記事では「知名度が高いローソンに替えることで顧客を取り込む」とあるが、
これは間違い。

そんなことで顧客は取り込めない。
さらに「ローソン側は駅構内の集客力が高い立地を確保できるメリットがある」
これは確かだろう。

「今回の切り替えで売店の売上高を2割程度引き上げる計画」

ん~ん、
売上げは上がるかもしれないが、
利益は確保できるか。

これまでの電鉄社内の漠としたマネジメントの方が、
安全だったかもしれない。

売店は65店舗ある。
それを順次、ローソンに転換。
店舗面積は10~17㎡。
おにぎり、スイーツ、東急の鉄道グッズなど、
1000~1500SKUの品揃え。

「1店舗あたりの改装費用は数百万円程度で、
両社で負担する」

「東急の子会社がローソンに加盟し店舗を運営する」
フランチャイズ方式にすると、
厳密な利益が要求される。

果たしてしっかりと利益が出るビジネスモデルなのか。

電鉄の子会社だから、
そこそこに赤字は出していなかった。
それがこれまでの真相ではないのか。

前例は、京浜急行のセブン-イレブン。
外から見ると、よいコラボレーションかもしれないが、
小型コンビニで利益を出すのは至難の業。

岡目八目の評論をさせてもらったうえで、
高みの見物を決め込もう。

最後に日経スポーツ欄のコラム『チェンジアップ』
豊田泰光が切る。
今日のテーマは「試練がチームの根を強く」

事例はソフトバンクとジャイアンツの対比だが、
アナロジーが面白い。

ソフトバンクの今年のチーム事情に、
「そのたくましさに、
踏まれて伸びる麦の強さを思った」

「農作業の『麦踏み』
麦の芽が出て少し伸びたところで、踏む。
なんだかいじめているようだけれど、
踏まれた麦は軟らかな土で伸び放題にしておくより、
強い根を張るようになる」

この麦踏み、
経営者を育てるのに、
必須のプロセス。

私はそう、確信している。

「他を寄せ付けない強さで日本一になったソフトバンク。
さあ常勝球団へ、というところで
遊撃手の川崎宗則を含め主力がごそっとぬけた。
これはきつい。球団として望んだ試練ではない」

「けれども、これが麦踏み的な効果をもたらし、
チームの足腰が一段と強くなりつつあるのかもしれない」
豊田はソフトバンクの試練を評価する。

「かたやソフトバンクから杉内、ホールトンを獲得した巨人。
こちらは麦踏みなどという面倒なことはあまりせず、
実を収穫するばかりの株を求めて移植するというやり方が得意だ」
巨人には辛口。
私と同じ九州の西鉄フリークだから。

「『4番松井秀喜』の時代以来、生え抜きで4番を打った選手は
高橋由伸、二岡智宏、阿部慎之助、長野久義の4人で、
試合数でみると圧倒的に外様が多い」
麦踏みの経験のない読売巨人軍。

「強化の根の細さをうかがわせる。
主力をごっそり抜かれるという経験をなかなかできないのが、
このチームの不幸といえば不幸か」

豊田泰光の「麦踏み」の比喩。
これをこそ、ナレッジという。

豊田は水戸商業出身。
高卒だ。

しかし豊田のナレッジは、
野球界で際立つ。

私の提唱する「知識商人」も同じ。
学歴ではない。

ピーター・ドラッカー『ポスト資本主義社会』から。
「夕食に招く客には教養のある人がよい。
だが、砂漠では教養のある人はいらない。
何かのやり方を知っている人がよい」

「マーク・トウェインが1889年に書いた小説の主人公、
コネティカット出身のヤンキーは教養ある人間ではなかった。
ラテン語もギリシャ語も知らず、
シェイクスピアを読んだこともなく、
『聖書』もほとんど読まなかった。

しかし彼は、機械のことなら、
電気を起こすことから電話機をつくることまで
すべて知っていた」

イオンにもセブン&アイにも、
ツルハやフローウェルやトモズにも、
そしてローソンや東急にも、
「ナレッジ・マーチャント」が増えてほしいと願う。

本当にそう思う。

<結城義晴>

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